偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

国語の得点力の強化

以前、国語の地力の向上の記事を書きましたが、夏から秋にかけて今度は得点力を上げていく段階になります。地力さえ付いていれば、秋から冬あたりでも間に合う可能性は高いのですが、子供も親もそれなりの成果が欲しくなるのと、得点力の強化に必要な論理性は他の教科でも役に立つので、夏あたりから強化することが多いです。

論理性には、土台になる語彙力、時間内に読み通す速さ、一読で内容を把握する力も必要です。だから語彙力と読解力などの強化が先決なんですね。

得点に結びつける考え方

まず、選択問題・記述問題に共通する考え方として、一日で採点を済ませられる=明確な答えがある、ということをしっかり理解することが基本です。どの学校でも「どちらとも取れる」問題はないように、工夫して問題を作っています。

普通の読書、特に小説ではお話の筋を追い、登場人物にも感情移入して、次の展開にハラハラドキドキしたり、好き嫌いなども感じながら読みますね。娯楽としてはとても良いです。論説文でも、書いてあることに共感したり、疑問に思ったりしながら読む。これも知識の獲得には有用ですね。でも、国語の回答には必ずしも有効ではありません。

国語の得点には、本文だけでなく出題者との会話力が不可欠です。出題者が何を聞いているのか、その条件は何かという理解が必要で、これ抜きで成績は上がりません。読書好きなのに国語の得点に結びついていない子は、この会話の意識が低め。自分がどう感じるかに重心が偏っているんですね。

例えば「この時の感情を説明せよ」という問題があったとして、その文章を読んで自分が感じたことから答えを描き、それを文章にする方法で正解するのは難しい。出題者が根拠にしている、感情の現れとなる言動を見つけ、言葉を選んで文章にまとめるような流れが必要です。

難関校になるほど「傍線部の前後」などというお手軽なテクニックでは対応しにくくなるものの、キーワードの設定は必ずしてあります。全受験生の回答を論文を読み込むように目を通し、文章の優劣でA+〜Fなどの評価をつける採点は出来ないからですね。

記述の採点基準は、まず第一に回答の根拠になる文言が入っていること。次に、NGワードが入っていないこと。そして、規定の文字数に収まっていること。この3つをクリアすれば、基本的には丸が付きます。流石に日本語になっていないレベル、主語述語がおかしすぎる文章ではまずいので最低限はありますが、文章として美しい、推敲を重ねたような作文を書く必要はありません。

選択問題は更に楽で、普通は「出題意図にあっていない」「文意にあっていない」「条件には合うけど文中に根拠がない」などを混ぜた中に、「文中に根拠があって条件にも合うもの」がひとつだけ入れてあります。普通に考えれば正しいことや、感情の流れとしては理解しやすいことなどを混ぜて、混乱を誘う手も使います。オーソドックスな問題だと、5個のうち2〜3個はすぐ消せて、残ったもので頭を悩ませる感じですね。

正解を選び、不正解を弾く論理性

正しい答えに辿り着く力をつけるには、解答の読み込みが有効です。単に「これが正解だった」という形では役に立ちませんし、「キーワードがこれだった」というポイントだけでも伸びは悪い。選択問題でも、間違いと断定出来る根拠を理解し、その論理的な思考を吸収してくることが大切。

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国語は正解を説明してふんわり納得させても、読書と同じような効果しかありません。無駄とまでは言わないけど、成績に直結する効果は出にくい。言葉の意味と接続による関連付けといった「仕組み」を見る意識、根拠を探す意識が大切です。感受性ではなく、論理性が要求されるんですね。

当然、塾や個別でも一定レベル以上では、この部分の解説をします。それでも子供はなかなか受け取れないことがある。理由は、正解に意識を向けてしまう癖がついているから。頭の中で「どれが正解だったの」って言ってるのと、「どうしてこれじゃいけないの」って言っているのでは差が出てきます。考える必要があるのは算数の応用も同じですが、正解を覚える意味が一番薄いのが国語です。根拠を持って不正解を弾き、正解を見つけて書き切る練習をしないと、得点力が伸びません。

親が「教える」必要はない。

やらなければ対策にならないので、志望校別や最上位クラスの授業では、表現は違っても必ずこのことを教えています。ですから、まともな塾に通わせているなら、例えばこの記事などを参考にして親が一生懸命教える必要はありません。

比較的簡単なキーワード発見のテクニック+漢字と語彙力で偏差値55〜58くらいまでは届くので、平易な内容の授業で足りる。必要なレベルになれば、講師と授業の質を上げて対応できる仕組み。塾のクラス分けや志望校別などは、単に優越感を煽るとか集金目的だけでやっているわけではなく、こういった目的と内容の違いもあります。

だから、親がやるべきなのは、(1)「不正解になる理由」や「根拠の導き方」を教えてくれている時こそ、集中して聞くこと。(2) 納得いかなければ、講師に質問してくること。(3) 文章的に気持ち悪さがあっても、根拠のある取捨選択をした言葉で文を書き切ること。などを伝えることです。討論する力につながる部分ですね。

そして、国語に対する誤解を解く。自分の感情を重視する意識や、文章の受け取り方は色々あるという考え。どちらも正しい場面はあるけど、国語の問題を解く=出題者に回答する上では、曖昧な逃げ道になります。人としての情緒はとても大事だけど、コミュニケーションには筋道や論理性、説得力といった要素も大切。それを求めてくるのが上位校の問題です。

国語が不得意な子が、志望校別や最上位クラスに入らずに難関上位校を目指すなら、この部分の指導を出来る家庭教師や個別をつける必要があるかも知れません。正解の解説だけでは、勉強を続ける伴走役にしかなりませんから、しっかり見極めてから利用してください。

 

女子向け:受験本番に向けてのイメージトレーニング

私自身はメインでは男子しか見ていないので、これを機に相談できる人に聞いたり、お子さんと予めイメージを共有しておくようにしてください。直前の緊張感が高まってからではなく、今のうちから「そういうもの」として話をしておくと良いです。

生理への備えとイメージトレーニン

受験期は1月校から数えればほぼ1ヶ月に渡るので、既に生理の始まっている子なら、どこかで影響を受ける可能性が高いです。まだ初潮を迎えていない子も、当日や前日に迎えることもあり得ますから、想定しておくことは大事。

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塾で女性講師に相談したり、婦人科の医師に相談したりしておくのも良いです。ピルでのコントロールは年齢的にも推奨されないことが多いので、使うことは想定しない方が良いかと思います。

予め、イベントなどのタイミングでなることがあるのも伝えておくと良いですね。「なっちゃった」ってガッカリするより、気合の入っているサインとして捉えられるくらいになると良いです。

痛みなどが同じ系統とは限らないけど、先輩として経験談を話してあげるのも良いです。実は痛みが強かったり、匂いや漏れに恐怖感を持っていても自分からは相談しない子はいるので、話を振って自分や周りの体験談として話をしてあげるのもアリ。

まだの子もナプキンなどの生理用品は練習しておきましょう。特に試験時間中に来ると動揺も考えられるので、嫌でなければ予め装着しておく作戦もあります。装着感に慣れないと気になることも考えられるので、装着したまま過ごす練習も選択肢です。

もし痛みが強かったり、自分の想定を上回ることが起きたら、女子校・共学校に関わらず、すぐに保健室に駆け込む。対応に慣れている保健の先生がいます。

中学受験での話は聞けたことがないですが、高校や大学受験でもしんどかった話は聞きます。まして小学生なので、考えられる状況にはしっかり備えてあげてください。

鎮痛薬

眠くなる成分を含まず水なしで飲めるバファリンルナJや、小粒の小中学生用ノーシンピュアなどの市販薬があります。婦人科の医師に相談して、予め処方薬を貰っておくのも良いです。

慣れていない鎮痛薬は、思った以上に強く効くこともあるので、眠くなる成分についてはしっかり確認しておきましょう。必要ないのに飲むのは抵抗があると思いますが、既に生理が始まっている子は生理時に試しておくと安心です。

腹巻

ご存知でしょうが、今はとても薄く伸縮の良いものや、肌着のような肌触りの良いものまで選択肢は広いので、気にいる物を見つけておくと良いです。ポケット付きなども良いですね。

貼るカイロ

一般的には温めると楽になるので、余分に1〜2個持っておくと良いです。

生理用品と替えの下着など

ここまでは子供の所持品ですが、親も一緒に行くので替えの衣類も持っておくのもあり。着衣に漏れた場合、保健室に行って母親が替えの衣類を持っていることを伝えれば、着替えも可能です。

デリケートな問題だからこそ、早い段階から当然に起こりうることを想定に織り込んでおいて損はないので、話し合う時間を取ってあげてください。

 

中学受験の天王山!夏に向けて(3) 意欲の低下と闘争心、予定の立て方、特性に合う努力。基礎の周回と復習が大事。

前回の記事でも書いたように、塾のカリキュラムについていく「だけ」の意識を、少し変える。今回の範囲は終わったから次回の範囲をやる、という考え方を変えていかないと、抜くことは難しい。ここから上げていくには、いかにその子のベストの状態を引き出すか+最適化が大事です。

中学受験に挑む子供の意欲低下の原因を、親の接し方や教育虐待的な文脈で語りたがる人もいるけど、実情は少し違う感じ。受験は頭を使った競技で順位が決まるだけで、能力のどの部分を鍛えようがそれ自体に功罪はない。鍛えた能力を、自分や家族、周囲の人や社会のために役立てれば良いし、悪用はダメなだけ。

基本的には、問題と競争の質の変化で子供が困難に直面して元気を失う→頑張るべき時期に意欲や成績が低下するのを見れば親も焦る→関わり方を間違うと合否や教育、親子関係の上でのマイナスになりやすい、という流れだと考えています。

成績向上のために、他の子の何倍もの量をこなすのは現実的ではありません。本人がやるのを止める必要はないけど、親がノルマを押し付けるのは避けた方が良い。その方法で行けるのは肉体的、精神的に特別な才能がある子だけで、普通の子がやったら潰れるか、オーバーワークで学力は低下します。なるべく客観的な視点をキープしましょう。

意欲が低下する原因

前の記事で書いた、“発想力〜注意力の持続を試す” って部分。これを言い換えると、「自由な発想を保ちつつ、丁寧に地道な作業もして、時間は足りなくなるけど焦っちゃダメ」ってこと。かなり無茶な要求をして、それに負けない子に来て欲しいって言ってる。

高度って言えば聞こえは良いけど、半ば嫌がらせみたいな、調子よく勉強することが難しい問題が増えるのに加えて、ライバルは強くなる。

5年生までは有利な武器を持ち、練習不足の相手に勝てば成績は上がりやすかったけど、この時期からの上位層では、同じような武器で相手も練習してくる中で勝たないと順位=偏差値は上がらない。

バイオハザードなんかで言えば、敵に与えるダメージ量が多くて受けるダメージの少ないイージーモードから、設定が逆のハードモードに変わる。「簡単すぎて退屈だった子」には良くても、「楽勝で活躍できるから楽しめた子」にはしんどい。

低学年から勉強していた子は強くてニューゲームみたいな状態で、塾では2〜3周目で1周目の子に勝てば良かった。自分が賢いと思っていたら、6年生で周りも2周目3周目になるとそれほどでもないよ、って突きつけられる。やることが増えて報酬が減れば、意欲が下がりやすいのは当然ですね。

これは多くの子供にとって初めての体験だけど、人生無敵モードはどこかで止まるから、ここで乗り越える経験には価値がある。当たり前だけど、無敵モードじゃなくてもゲームはクリアできます。

この時期に注意した方が良いのは、親の感情的には逆のことを思いやすいこと。ここで伸びなかったら合格できない!もっと頑張らないと!って、自分の見えるところでの頑張りや量を求めたくなる。そうすると、手を引く、背中を押す、伴走する位置でなく、向き合って問い詰める位置に移動しやすい。

でも、単純な量が足りずに基本も出来ない下位層と、頑張って応用に苦しむ上位層では、質が全く違う。下位層は一定量をこなすことで順位も上げやすいけど、上位層は量で差をつけにくいから、調子に乗せる、元気を回復する、闘争心を持たせる、っていうのが一層大事になります。

強い闘争心を持てる条件

闘争心は「負けん気」って言うくらいで、勝てると思うからこそ湧く気持ち。勝てる気がしないのに、熱い台詞や将来のことで叱咤激励されても湧いてこない。だから、勝ち筋を教えないと、闘争心に火なんか着きません。勝ち筋を教えるか、一緒に闘い、応援する位置取りをすること。

塾も授業の内容で惹きつけたり、頑張りを褒める工夫をしてくれるから、向いている何割かは「燃えるタイプ」に近づけて貰えます。でも、全員というわけにはいかない。

本当に意欲を失えば、そこで勝負しないから辛くない。意欲があって、それを挫く問題や状況に晒されるから疲れる。でも、これを乗り越えれば、合格にもグッと近付く。逃げないなら、闘い方を教えた方が良いですね。

これまでは、自分に優位性があるから頑張れば伸びるとか、興味があるから覚えたいっていう基本的な意欲が中心だった子に、自分の弱さに対応していく技術と意欲を足してあげる。指導するときは、こういう仕組みも話します。

賢くて努力できる子たちを篩に掛けるために、問題が意地悪になってくる。ここで闘うのはひと握りだけの特権で、その分厳しい。それに負けない方法を教えるから、頑張ってみるか?って感じ。目標を少し遠く、つまり目先のテストだけでなく受験に置くことと、自分の分析に目を向けること。視点をまず変えていくことで、対応力が増します。

夏期講習中と、何もない日のスケジュールの組み方。

夏休みの予定を立てる際には、講習期間中と休みで分けて考えましょう。夏期講習は長時間拘束で、内容的にも高度化するので、帰ってきたら抜け殻でも良いくらい。更に宿題も出たりして、家で他のことをやるのは時間的にも体力的にもきつめ。

塾の説明会でもそういったことを聞くと思いますが、期間中はとにかく授業に頑張ることを全力でサポートする。可能ならその日にやったことを聞いたり、復習や宿題に付き合う。睡眠はしっかり取らせた方が良いです。

小テストやプリントなどが、しつこく言っているお宝の山の可能性があるので、親はそれをチェックして仕分けしてあげると良いです。

休み中も宿題や課題を与えられると思いますが、ココで復習にも取り組む。宿題とは別に1時間でも良いので、間違った問題を分析、ポイントを清書、更には暗記するくらい暇を見つけて見直す、という仕組みを作ると良いです。

以前の記事でも書いた測量野帳などに清書して、同じものを日替わりでホワイトボードに書いてみたり、プリントアウトしてトイレや目につくところに掲示する。書いた日から1週間後にその問題を解いてみるなどの取り組みで、自分の癖と向き合い、刷り込めば出来るようになる経験をさせられると有効です。

各塾の夏期講習の説明会の様子などを記事にされている方もいるので、他の塾や校舎の様子なども参考にしてみてください。

5年生だけど、個別を検討して面談で得た感触を書かれています。講師と話す内容などの参考に。

子供に合う方法「だけ」を厳選して

原因と特性に合わないことを強いても、成績は上がりません。努力して成績が上がらないと辛いだけ。何かをプラスしてやらせるなら、上がるまで責任を負う。より大きな効果を感じるからこそ、やる気が続きます。

何度も書いているように、基本は塾のカリキュラムをこなせているかどうかの管理と、塾に相談するなどの活用。ここに乗せられるものだけを厳選して乗せる。子供の時間も集中力も有限なので、大切にしてください。

医療でも症状から推測して投薬と経過観察、精密検査などで原因を絞り込んでいき、適切な治療をしますね。セカンドオピニオンを得るのは良いけど、根拠もなく取捨選択するのは「●●には▲▲が効く」って民間療法に飛びつくのと同じで、大抵はマイナスの結果に終わります。

勉強の内容や方法に口出ししなくても、食事や睡眠の管理、宿題の進捗やテストで間違った問題の抽出、過去問の分析や学校調べなど、親がやってあげられることは山盛りです。それを踏まえた上で、子供の状況やタイプに合わせた取り組みの例を幾つか。

難問になること。範囲が広くなること。相手が強くなること。同じように成績が伸び悩んで見えても、成果の出やすい解決策はそれぞれ異なります。

コツコツやってきたけど、速度と容量が厳しい場合。

他が頑張るから、優位性が失われる。何か取り柄を作る必要があるけど、なかなか難しい。偏差値55以上なら自分次第でどの大学にだって進める十分な進学環境なので、自己肯定感を下げずに今の実力相応の学校の合格をしっかり取って、中高での成長を目指す方が良い場合もあります。

大学受験では非常に広い範囲から出題できるので、殊更捻って難度を上げる必要がなく、東大を始めトップクラスの大学でも、問題の質は素直なものが多い。つまり努力した量の価値が高くなるので、継続出来る資質は大学受験や推薦狙いには有利ですね。

自主性の記事でも触れたように、中高では年齢的にも自分の行動を決める能力もついてくるので、それを活かせば地頭が良い「だけ」の奴には負けなくなる。

別の言い方をすれば、中学受験のスパンで考えると最初からSでなくAやBからスタートでも、最終的にSへと階段を上がって難関校に合格、って悪くないですよね。これをもう少し長期の視点で見れば、中高でCからSへと成長して大学は国公医まで選び放題って言うルートもあるし、コツコツやれる子はその素質が十分にある。

5年生から大学進学までの8年間で考えれば、中学受験までは最初の4分の1に過ぎない。もっと言えば中学受験しない公立ルートもあるけど、中学受験に限っても最難関だけが成功ではありません。

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こんなに早い時点で志望校を諦めるという意味ではなく、単純に目に見える成績(偏差値)の上昇だけでなく、継続している事やその位置をキープしていることの素晴らしさを評価してあげるということ。先の記事でも書いたように、偏差値はCでも合格点を取る力をつけて御三家に合格する子も、毎年必ずいます。

決めたことを守る力、自分がなりたいものになれる力を既に持っているのに、自信を失わせるのは損なので、コツコツやれる長所を自覚して貰うことが大事。基礎を万全に固め、志望校に絞った対策をすればチャンスもあります。

成績を落とさずきっちり合格を取るためにも、精神的な安定と受験校選びがとても大切なので、進学意識と校風が合うところを探してあげましょう。射程内でも納得のいく進学先を見つけ、親がどこでも大丈夫という気持ちで支えてあげてこそ、最後のひと伸びもしやすくなります。

記憶系科目や基礎問題には強くて、応用系が弱い場合

応用問題には発想力やしつこく考える力が必要ですが、算数の記事でも触れたように、考えようによっては暗記でも対応できる。線分図や分配法則なども含め、図と言葉を駆使してポイントや解説を書く清書が効果的です。

捻って難解にしているポイントに注目して、「条件の積み上げや組み合わせ」「必要条件と解き方の推理」という記憶を増やす感じ。同時に、自分の思考の癖、見落としや勘違いのパターン、使いたがる解法と抜け落ちやすい解法の傾向も把握していく。

暗記化にはとにかく何度も読み返すのが有効なので、測量野帳など常に携帯できるパターン帳を作るのがオススメ。この場合、夏期講習での授業やテストの後に、取り組む問題の抽出は親がやってあげて、パターン記憶の手助けをしてあげると有利です。

ケアレスミスの増加

間違いやすくなるように圧をかけてくるから、それに対処する準備をしておかないとやられる。ケアレスミスは、単に注意力散漫なタイプだけでなく、失敗が嫌いで几帳面なタイプや、素直な子にも多いです。枠に合わせる意識が強すぎて、急ぐから漏れる。

運転初心者が、多くの車が走っている高速での合流ほど焦るのと同じ。ミラーの確認やウィンカーでもたつくのは、まだ自動化されていないものが多く、プレッシャーがかかることで、落ち着いてやれば出来る簡単なことでもミスをするからですね。

このタイプには、敢えて枠を無視することが有効な場合もあります。良く言う時間配分の逆、頭から順番に出来る問題だけ解いていって、終わったところまで。その代わり、手をつけて回答した問題では正答率100%を目指す、といった目標を設定します。

枠による焦りで損をしていること、闘える力があることを確認し、あと何問か増やせば良いことを自覚させる。そして、次の1問を稼ぐための方法を教える。速度を上げるための省力化、計算の簡略化などで身についていない部分を徹底するのもオススメです。

記憶系、知識量の不足の場合

量をやれば良いのが正論だけど、本人としては割と頑張っていても時間が足りない。これは、隙間の使い方を覚えて、机以外の時間で補う仕組みを作ることを意識します。

例えば社会だと、SAPIX白地図と歴史年表。本のままでも良いですが、一度ざっと回して間違ったところ、調べたことやポイントだと思うところ、特になければ近現代などからノートに転写して、隙間で読む習慣にする。

 

 

これにオススメなのが、コクヨの文庫本ノート。算数の記事で紹介した測量野帳より少し高いけど、文庫本のカバーが使えて70枚綴り、表紙が柔らかい。無印にもページ数が多い文庫本ノートがあるけど、紙が薄くて裏に響くから学習向きじゃない。ミドリのMDノートは高価なので、定価で半額以下のこちらがオススメ。しおりと見出し罫もあって、社会などの記憶系のチラ見に最適です。

 

文庫本ノートなどの暗記帳は、ブックダーツと組み合わせて使うのがオススメです。ここまで読んだ、次までにここを読む、書き途中、など好きなところに何箇所か挿す。些細なことだけど、こういう作業が好きな子は本当にノートを作って合間に読むことを楽しみ始めるので、試しても損はないと思います。

 

似たタイプに、短期記憶が強くて、一夜漬けに近いレベルで得点していたような子もいますね。このタイプも、周回で脱落を埋めるのは同じだけど、関連付けや大きなつながりのノートを作ること、フローチャートなどを書くことがより有効です。雑談を含め、深い話をたくさん放り込んで知識の広がり感を与えてあげるのも良いでしょう。

まとめ

長い記事になりましたが、夏以降は怠らずに基礎の周回を続けることと、復習の質が成績の向上や合否に大きな影響を与えます。

基礎の周回に関しては出来る範囲であれば1日30分とか、サッと撫でる程度でも良いけど、毎日継続すること。これから受験までの200日あまり、毎日コツコツ周回を続けることで取りこぼすリスクを防ぐ、とても大事な習慣です。

復習は自分の間違った「箇所」に注目して、思考のクセ、間違いやすい状況などを明確にする。図は丁寧に書き直し、どういう失敗をしたのか赤字やコメントを入れる。これを続けていくと、特に図形問題など特定の分野や、ケアレスミスについてのコメントで同じような言葉が並び易い。そこをどうするか、子供と相談する。

作ったリストやパターン帳を持参して、塾で質問してくるように勧めるのも良いです。一概には言えないけど、子供が工夫して積み上げているものを見ると一定の評価をしてくれる講師は多い。親以外の第三者、指導する側の人間にも承認されると、意欲にプラスの働きかけになります。

中学受験の天王山!夏に向けて(2) 応用・難問が増える理由と塾の活用

6年の夏前の段階では、ほとんどの子は「テストで良い点を取るため」や「偏差値(クラス)を上げるため」に勉強をしてきています。この意識を「合格する力をつけるため」「自分を強化するため」に変化させていくことが大事になります。

この記事では特に、6年生で四谷偏差値55以上、C〜Sクラスで上を目指して行く場合に必要な考え方について書いていきます。

難関上位校に挑むレベル。

他の記事でも書きましたが、四谷大塚の生徒は小学生全体の上4分の1くらいに入る学力の子が主体で構成されています。これを3つに分けた上のブロック(偏差値55以上)にいるのは、その中でも努力ができて、賢さを幾つか持っている子。SAPIX内部だと大体偏差値45〜48くらいから上が同じ帯ですね。

ここは全体から見れば上位8%、小学校で24人のクラスからトップの男女だけ集めた感じ。周りを見渡せば、もう怠け者や賢くない子はほとんどいない。普通より賢くて、努力できる子の集団。もし並の出来でここまで来れたなら、もう十分ってくらい努力しているゾーンです。

クラスの代表だけを集めた30人で競い、トップ10に入れば偏差値63以上のS。中10人が偏差値 59〜62で、残り10人が偏差値55〜58になる。ずば抜けて賢い1割は同じことを続けるだけで上に入るから、残り7席を賢さと努力の資質が同じくらいの27人で争うイメージ。もう一歩他の子に勝るポイントを作らないと勝てません。

難解な問題が増えてくる理由。

中学受験は小学生相手だから、範囲は限られる。素直に知識を問うような問題だと、このレベルでは満点を取れる子が多くて差がつかない。でも入試では、こういう子達に順位を付けないといけないから、問題をより高度化する必要がある。

大きく分けると、発想力や多角的な視点、そして演習量を問われるような捻った問題。根気と丁寧さを問われる、条件積み上げの必要な問題。そして、これらの問題を組み合わせて分量を増やすことで時間を奪い、冷静さや集中力、注意力の持続を試す。

6年の夏だから応用問題が出てくるんじゃなくて、基礎をできる子達に優劣を付けるために、難関校の入試では応用を出してくる。それに対応するために、塾でも上位コースでは応用に取り組む、という流れです。

もっと言えば、6年で応用をやる時間を確保するために、5年で1周させておく。この期間で基本を身につけられた優秀な子だけ応用をやらせますよ、っていうのが上位クラス。

だから、その下の位置から上を狙うなら、まず基礎を固めないと勝負にならない。予習シリーズ5年はどこでも出来るレベルになってからが、次の段階です。

合格する力を付けるために。

この難関校入試の性質、出題者の意図の変化に対応するのが、ここから必要なこと。だから、塾ではとにかく演習量が増えてきます。授業やテストでは応用パターンを増やすことで難問に対策し、記憶の劣化に対応するために基礎の周回も含めた宿題もある。

集団塾の優位性は、一緒に頑張る空気と競える相手、優れたテキストやカリキュラムなどの蓄積された受験のノウハウ。弱点は、ピンポイントで個人用のカリキュラムではないこと。そこで優位性を稼がないと、ここから上に行くのは難しい。

別の記事で過去問分析などについても書くつもりですが、親が入試分析して必要なことだけやらせます、っていうのはあまり勧めません。それなりの経験や分析力があるなら有効な可能性もあるけど、基本的な力を広い範囲でつけておき、最後の追い込みで対策も仕上げる方が、落とすリスクが低い。

四谷もSAPIXも素晴らしい教材があり、長年の多くの子供を見てきたノウハウの蓄積があるから、そこに乗った方が有利です。

塾の講師も頼りましょう。

あくまで「塾の授業や課題を軽視させない範囲」で復習に力を入れる。基礎トレや宿題などがこなしきれない場合は、塾と相談しましょう。

間違った箇所をこのくらいやらせたい。残りの時間でこなせる量がこれくらいだ。宿題や基礎と復習のバランスをどうすれば良いか、悩んでいる。こういう切り口で相談すれば、なんらかの返事をもらえるでしょう。

頭ごなしに、とにかく宿題だけやれば良い!って言ってくる講師なら、少し付き合いを考えた方が良いけど。大抵の講師なら「じゃあこうしましょう」とか、「これだけはやった方が良いです」って提案をしてくれる。

自分の子だけを見てくれるわけじゃなくても、経験のある第三者の視点や分析には有益なものがあるから、講師の話には敬意を持って取り入れる。その上で子供には、自分の失敗を分析したり、何度も目にして馴染ませることの大切さを伝えましょう。

目先の偏差値を上げることには、こだわり過ぎない。Cから麻布や開成に合格する子が毎年いるのはマグレではなく、自分にとって必要な力をしっかり付けることに成功したから。80%偏差値は通過点で、子供にはそこを通るのは当たり前と教えますが、見守る側が一喜一憂するようなものではないです。

もちろん、週テストや講習判定テストには努力する。そして、その結果得た自分の傾向を大事にする。この感覚が薄いままだと、偏差値を上げないと!って目先の宿題とテストに全力を費やし、せっかくの宝を無駄にしてしまう。

この前進と復習のバランスを取っていく舵取りが、夏からの親の役目です。テストの結果が悪い。責める。もっと頑張れ、って次の範囲をやらせる。これだと本当に伸び悩む子が出てきます。せっかく2周目をやって、間違った、出来なかったところ。ここを本当に大事にしましょう。

 

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次は、難度が上がったことによって起きてくる子供の変化について書くつもりです。


算数の応用とか、伸び悩みなどについて

A型ママさんのブログで、投稿したコメントを記事にして頂きました。

嬉しい中に、ちょっと緊張も感じるような。このコメントに書いたことの補足というか、算数の応用や、試行錯誤することの捉え方などについて書いてみます。前段はA型ママさんのブログでご覧ください。

 

算数の応用

算数の解法パターンをパズルに例えると、最初の段階では同じ形を当てはめれば正解できますね。正答率50〜70%以上くらいの問題は、本当に嵌めるだけの問題が多い。

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その次の段階では、こんな感じで、いくつか組み合わせる形になります。

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このピースを以下の枠内に入れよ、みたいな感じ。

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複数のピースを枠に入れ込むには、回転や組み合わせの工夫が必要になりますね。答えはこんな感じ。

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もちろん、試行を繰り返して答えを見つける根気もあった方が良いんですが、この45度回転させるパターンを知っておくことや、

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例えばこういう風に、大きな形が小さな形の集合で出来ているということに気づいている(≒知っている)と、

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当てはめる形も小さな形の集合で出来ていることがわかり、あとは数をカウントしていくだけのお仕事になる。反転させる時は同時に必ず小さな形が2枚一緒に動くことも理解しておくと、速さも安定しますね。

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パズルで例えましたが、算数や物理化学の応用は概ね同じ仕組みです。分解の仕方や回転などの組み合わせは、結局のところ理解→演習の繰り返しが重要になります。コメントにも書いた、算数には思考力や応用力が大事だ!って人もいれば、算数なんて暗記だ!って人もいる根っこは、大体同じことですね。

 

よくわからない時に頭の中がモヤっとする感じは、記憶のフックになる。

この応用パターンを理解して使う繰り返しの習熟スピードは、自分で考えるかどうかで全然違ってきます。ただ動画を眺めるように解説を見て聴いて、だとあまり効率が良くない。

最初から出来たかどうかは重要でなく、むしろ頭の中に「わからない」「間違った」「失敗した」というフックを作ることこそが、理解や記憶に意味を生み、記憶の定着や正確な理解にも繋がっていく。

だから、指導する子には常々「初見で間違うこと」や「テストの間違った問題」が宝、という伝え方をします。初見で間違う、わからないというのは、頭に引っ掛かりができること。この頭の中にフックすることが、使える知識を増やす一番の近道だと。

 

間違えた問題は宝物

そして、ひと通り勉強したはずのこと、類似の問題を解いたことがあったのに間違う問題があるなら、それこそが自分の理解の曖昧さや、間違いやすい癖を教えてくれる。だから、何をどうして間違ったのか、間違った時の思考のルート、解いた手順を丹念に見ていく。

ここの線分図がおかしい、ここの数字の記入をミスってる、自分の字を読み違った、出ていく量をカウントし損ねた、電車の長さを忘れた、ここの補助線に気付かなかった、ここでひっくり返せば良かった、、、全部がお宝です。

それを、綺麗に書き直す。この線を引けばよかったんだ、という線だけを赤で書いたり、これは面積図でやる方が早かった、ここの計算をこう間違った、この条件を漏らした、という注釈をつけたりする。

これをノートにまとめるのも良いですが、特に複雑な図形問題とか、踏み台を何個か作った平均や流水算などは、移動の際や隙間時間に眺めやすい小型の手帳などにまとめることもやります。よく使うのが測量野帳。表紙が硬いので、これ一冊だけ別で持って色々な隙間でチラ見するのにも便利です。1冊150円くらい。

私はいつもレベルブックを何十冊かまとめ買いするので、教える子には何冊かまとめてプレゼントしています。図を書く場合は、方眼付箋を併用したり。表紙が耐水になっているタイプや、無地のスケッチもあります。

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入試はともかく、なんで毎週テスト受けたりするのかって言えば、「人と比べるため」「クラス分けのため」じゃない。何が出来るようになっているか。まだ出来ない問題は何か、これを調べるため。健康診断や人間ドックで、レントゲンやPET-CTを使うのと同じ。

途中経過を気にしないっていうのは、「悪くても大丈夫、まだ間に合うよ」って意味より、「間違うところを見つけるために受けるんだよ」って意味が大きい。

もちろん、記憶系の小テストなんかだと、明らかに勉強不足が出る面もあるから、努力が足りなかったね、って反省もあり。でも、ほとんどのテストは、何が出来ないのかに注目して、手当てするための検査みたいなもの。

入試を本番として、その前にしっかり転んでおく。転ぶことが練習。親もそういう意識を持って、失敗を責める、残念がるより、そこから何かを拾ってくるために転んでいる、ってことに注目してあげると良いです。

 

迷路の行き止まりを、どう捉えるかの感覚。

もうひとつの考え方として、迷路を使った説明も良くしています。マッピングしながら進んでいくロールプレイングゲームのイメージ。

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よくある紙上の迷路は、最初からこういう感じで迷路全体が見えていますね。シンプルに行き止まりを塗りつぶしていけば、そのうちルートが浮き上がる。

で、ロールプレイングゲームなんかだと、画面ではこういう3次元風画面のみだったり、あらかじめマップ全体の大きさもわかっていなかったりするので、ある程度攻略慣れしていれば、自分でマップを作りながら進む感じになります。

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最初から踏破を目指してマッピングする意識だと、なんの問題もないですね。正解のルートがわからない中で進んでいき、行き止まりになる。これを、ひとつ潰せた、とカウントする。極端に言えば、ゴールを見つけても、マップに空白地帯があればまた戻るっていう。

ダンジョンの深さ、難易度などからフロアの大きさを想定し、何割くらいマップが埋まったか。全部埋めれば確実、運が良ければその前に、ゴールや次の階層へのルートが見つかることもある。ところが、この途中経過も、捉え方ひとつで泣きそうになる。

 HPとMPとか、回復アイテムとか、現実にゲーム出来る時間とか。切羽詰まっている時に落とし穴とか、敵の入った宝箱とか、難解な仕掛けとか。またダメだ、また行き止まりだ!

この意識差が、算数でもかなり大きいです。思考の行き止まりや方向選択の変更を、過程と捉えるか、失敗と捉えるか。失敗と感じやすいほど、算数の難問が嫌いになりやすい。

算数の問題も、難度高めのRPGも、必ず正解が用意されている。出題者は、これだけヒントがあれば解けるよね、っていうものを用意している。例えば、こっちの道に石がある。別の壁には穴がある。嵌めると道が開く、みたいなやつ。

だから、条件を書き出すこと。視覚化して、何が欠けているのか、何がわかっているのか、常に頭の中で整理し直す。で、これがわかれば良いのに、あ、これを先に出せば良いのか、って推理の仕方をどんどん増やしていく。

 

失敗は、ゴールに至る過程。出来ることは全部置いてくる。

最後に、今出来ることを全部置いてくること。試験とか試合という言葉に使う「試」の文字は、試行錯誤、試しにやってみる、という言葉にも使われている。更には、あなたのしてきた努力、今の実力はどれくらいか見せてくださいな、って意味もある。

時間内に、高得点を取る。テストで他の子より良い結果を出したり、勝ったりする。こういうイメージだけが強すぎると、焦りにつながりやすい。勝ちたい、良い結果が欲しい気持ちは無くならないけど、そこにプラスして、自分の出来ることは全部置いてくる、という意識をなるべく植え付ける。

テスト前には、出来ることを全部やっておいで、という声かけ。終わった答案を見ながら、やったことは出来たね。ここでやり直ししたのが効いたね。更に、間違った問題をお宝として扱う。このあたりの意識がとても大切です。

 

おまけ

このブログも開設から3ヶ月が経ち、少しづつ読んでいただける方も増えてきました。さっき見たら、ちょうどスターと日数とブックマークがゾロ目。

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これからもどなたかのお役に立てることが少しでもあるように、記事を書いていきたいと思います。

中学受験の天王山!夏に向けて(1) 5年の基本を完全に仕上げる

これから夏に受ける講習などでは、合不合で言えば正答率20%台以下になるような難易度の高い問題にも取り組むことが増えてきます。芳しくない点数を取ったり、子供の自信や意欲が低下したように見えることもあったり。偏差値や様々な情報で不安になってくる方もいるかも知れません。

2月に合格点を取れるようになる子も、当然ながら半年前の段階では取れません。夏の段階で取れたら、秋以降は知識の劣化を防ぐ周回だけ。理想的ですが、そんな受験生はほとんどいません。今はまだ出来ないから、この後の半年があるんです。

だから、親はあまり成績は気にしないこと。もし子供の成績を見て何かアドバイスをしたいなら、正答率とバラつきに注目してください。1日1時間を穴埋めに使うとしても、まだ年内に180日以上あります。1問2分とすれば、180時間で5,400問。500問で10周以上、詰めることが出来ますね。着実に進んでいくことが出来るなら、まだ焦る時期ではありません。

基本を仕上げることの大切さ。

合不合では正答率30%以上の問題を完答すると、偏差値60くらいは確保できます。これを完答出来る子は、もう少し正答率が低い問題も幾つか出来ることが多いので、偏差値63くらいに届くことも出てきます。このラインが、難関上位校の基準。平均偏差値が63くらいでも麻布や開成に受かる子はボチボチ出てきますし、駒東や武蔵、海城などは80%に届きますね。

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四谷大塚合不合の正答率ごとの完答得点と偏差値(算数)

何度か記事で触れていますが、正答率30%以上の問題を完答するために必要なのは、5年上下と4科のまとめをしっかり仕上げること。後は予備的に6年上下や週テストの不正解分を問題集代わりに活用するくらいで、本当に63くらいには届きます。

この仕上げがとても大事です。極論すれば今の成績に関係なく、年内にこの3冊を完璧に仕上げれば大半の学校で五分五分の勝負出来る見込みはあるということ。いろんなプリント、問題集や受ける講習を増やしても、まず成績は上がりません。もちろん、焦りや追い詰めも効果はないと考えた方が良いですね。

確実に合格を取りに行くためにも。

5年上下をきっちり仕上げた、合不合で正答率30%以上の問題を完答出来るレベルは、偏差値55くらいの学校の入試で合格者平均点以上を取れるレベルとほぼ一致します。過去問を数回やって合格者平均を上回る得点を取れることを確認したら、後は知識補完用に間違った問題のプリントを作る程度で、特別な対策なしでも合格を取りやすい。

つまり、本命校に全力を注ぎ込めるわけですね。1〜2月のマネジメントを考える上で、これが非常に大きい。だから、あらゆる受験生にとって5年上下を完璧に仕上げることは有効だと考えています。偏差値70くらいあっても、スラスラ全問解いてみれば良い。1問平均1分や1分半の仕切りで、瞬殺して確実に100点が取れるかどうか。

言い換えれば7割の受験生は、僅か3冊のテキストを仕上げれば出来る問題でさえ、どこかを落とすということ。今、偏差値的に苦戦している子なら、尚更5年の上下が大事です。仕上げれば必ず成績は伸びる。これをしっかり伝えることが大切です。

時間を区切って基本を練習することは、本番での余裕を作ることにも繋がる。

以前の記事でも触れましたが、合格者平均偏差値や80%偏差値を上回る、受かっても良さそうな子でも、何割か落ちます。理由は幾つかありますが、そのひとつが「満点が取りにくいように」入試問題を作成しているから。

難関上位校の問題は、受験者のレベルを想定し、その子達でもなるべく時間が足りなくなるように作ります。ごく一部のトップクラスの子は余りますが、平均点が5〜6割くらいを目指す感じ。知識が受験範囲から逸脱すると、たまたま知っている子に有利な宝くじになってしまうので、文章の量を増やしたり、組み合わせて難解にする手を使います。知識以外の部分、冷静さや時間配分、問題文への注意力や思考力で篩にかけるわけです。

もちろんそれを解けるようになるには、思考力や応用力も必要ですが、普通のことを安定してサクサク処理する能力も同じくらい大事です。全てが難問ではないので、容易な問題で1問も落とさず、かつ時間を節約出来ること。本番の緊張感の中で、少しでも時間に余裕があることが、ケアレスミスを防ぎ、勝負の分かれ目になることもあります。

基本的な問題を、ミスをしにくい形で、速く正確に解く力をつけるには、基本問題を高速で解くことが良い練習になります。基礎は本当に役に立つので、焦らず着実に仕上げることを支えてあげてください。


 

塾による偏差値の違い SAPIX/四谷大塚/日能研/市進/首都圏模試(女子)2020年度版

2020年度予想偏差値の塾別比較、女子最新版です。全体的な傾向は男子と大きく変わりませんが、男子より女子の方が塾による学校偏差値順の上下動が大きく、受ける模試によって合格確率が高く出たり、低く出たりする学校が多くなっています。

→塾別偏差値2020年度版(女子)2019秋はこちら 

→塾別偏差値2020年度版(男子)2019秋はこちら

合否判定に差が出やすい学校

例えばSOと合不合で、2月1日の頌栄女子、学習院女子、立教女学院を比較した場合。SOでの偏差値は頌栄女子(50)、学習院女子(50)、立教女学院(48)ですが、合不合では頌栄女子(60)、学習院女子(57)、立教女学院(61)です。立教は、SOでは3校の中で最も難度が低いと評価され、逆に合不合では最も難度が高いと評価されていることになります。

つまり、SOで偏差値48を取った子には頌栄60%、学習院60%、立教80%くらいの判定が出ますが、同じ子が合不合で偏差値57を取ると、頌栄は同じ60%でも、学習院は80%に上がり、立教は50%くらいに下がった判定が出ることになります。

こういう変動が特に出やすい学校を、入試日別の一覧にしてみました。模試との相性もあって、得点しやすさも変わるので一概には言えませんが、参考まで。

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模試別に見ると以下のようになります。

サピックスオープン

合格確率が低めに出る:
公文国際2/1、三田国際2/1、成蹊2/1、学芸大小金井2/3、共立女子2/3pm

合格確率が高めに出る:
横浜共立2/1、横浜雙葉2/1、明中八王子2/1、香蘭女学校2/1、都市大等々力2/1pm、國學院久我山2/2、横浜南2/3

四谷大塚合不合判定テスト

合格確率が低めに出る:
横浜共立2/1、横浜雙葉2/1、香蘭女学校2/1、立教女学院2/1、山脇学園2/1pm、日本大学2/1pm、田園調布2/2、青山学院2/3、YSFH2/3

合格確率が高めに出る:
東洋英和2/1、横浜共立2/3、清泉女学院2/1pm、山手学院2/1pm

日能研全国公開模試

合格確率が低めに出る:
清泉女学院2/1pm、香蘭女学校2/2pm、東京女学館2/2pm

合格確率が高めに出る:
公文国際2/1、山手学院2/1pm、普連土2/2pm、横浜南2/3、YSFH2/3

 

学校別の偏差値比較一覧

サピックスオープンで偏差値を出している学校を基準に、複数入試のある学校は偏差値が低い方の入試を採用してあり、平均偏差値順になっています。それぞれの背景色は、赤が偏差値63以上で母集団の上位1割。黄が偏差値55〜62で上位3割、緑は偏差値45〜54で中間層を示しています。

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平均偏差値63以上

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平均偏差値57以上

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平均偏差値52以上

同じ実力でも受ける模試によって判定が変わり、何より模試と実際の入試では難易度や配点も違うので、偏差値や合否判定は基礎的な力がどの程度固まっているかを見るペースメーカーとして捉え、志望校対策にしっかり取り組むことが大切ですね。

元データは四谷大塚合不合80偏差値(4/14)サピックスオープン80%(6月)日能研R4(5/16)市進80%(6/4)首都圏模試80%(7月版) です。複数回入試や午後入試も含めた入試数159、全85校分のデータは以下よりご覧ください。