偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

6年生の夏休み前までに取り組んでおきたい基礎固め

この時期の成績分析の際には、知識系の積み上げと5年の総復習をおすすめすることが増えます。集団塾はひと通りのことに触れる場所として有効な反面、個々の理解度や習熟度に関わらず次に進むことで、穴が空いたままになりやすいリスクもあります。この穴を埋めていくことは、夏以降の演習の効果を増すことにもつながります。過去記事もご参考に。

なお、ここに書いたものを全て乗せると1時間半〜2時間は必要ですが、大事なのはひとつひとつに集中し、自信を持てるものを増やしていくことです。やることを増やした結果が疲れて集中も意欲も低下するだけでは本末転倒なので、まずは1〜2種類で1日あたり15〜30分の確保から着手してみるのも良いですね。

 

知識系の積み上げ

期間はここからGWまでと、夏休み前までの2つに区切るとやりやすいです。春休みからGWまでに1周し、夏休みに入るまでにもう1周するイメージですね。

取り組みは1日15分くらい確保して、一定量を10分で覚える→翌日5分でチェック→不正解は覚え直し、といった流れで継続していくのがおすすめです。覚える10分も5分×2回などに分割して、日中〜夕方と就寝前などに取り組んでみるのも良い方法です。

取り組む対象は理社の用語知識や漢字語彙で、ベーシックなもの(コアプラスやメモリーチェックなど)を一冊仕上げることを目標にします。これには以下のようなメリットがあります。

・土台になる知識がつく
・秋冬の負担を抑えられる
・一冊終えた経験がものさしになる

夏以降、特に秋冬は入試向けの演習が増えます。また、模試の頻度も増えて日曜日が埋まったり、過去問にも取り組むようになるため、時間配分が難しくなりがちです。

このとき知識系の積み残しがあると負担も大きくなりますが、積み上げが終わっていれば周回チェック程度の時間を確保すれば良いので、演習に時間を取りやすくなります。

また、日々継続して一冊マスターした経験には、何をどのくらい取り組めば出来るようになるかをイメージしやすくなる効果もあります。中学以降も「毎日○分で1周に○日、3周して計○ヶ月で仕上げる」といったプランを立てやすくなり、学校や部活と並行して自学を進める助けにもなりますね。

なお、理社+漢字語彙の3冊で計45分、5年の総復習も合わせると合計1時間半くらいは欲しくなりますが、焦って集中力の低い時間を増やしても逆効果ですから、集中して取り組める分量に調整してください。

 

5年の総復習

こちらは各塾の算数のカリキュラムです。ほとんどの範囲を5年でカバーし、6年前期では少し発展的な内容でもう一度回す流れになっていますね。

 

また、同様に理科も5年で広い範囲をカバーしています。

 

ですから、入試問題には5年の範囲だけでも取れる問題が一定量含まれ、特にY50以下では合格ライン付近まで得点可能な入試も多くあります。

逆に5年の範囲が緩いと、6年以降の学習内容を詰めても安定せず、易問での失点が続くことにも繋がります。また、夏期講習以降は塾のカリキュラムも総復習+演習になるので、夏までに基礎をしっかり固めておくと有利に働きます。


理科・社会

理科の電流、てこ、滑車、浮力、水溶液、天体の動き、人体の構造は、5年の範囲を正確に説明できるレベルを目指しましょう。テストの不正解問題の解説を読んで「わかる」だけでは不十分で、テキストに戻って復習し、白紙に仕組みを書いて説明できる状態にするのが望ましいです。数をこなすより、1日ひとつでも良いので自信を持てる範囲を丁寧に積み上げてください。

社会は用語知識固め優先でも良いのですが、時間が取れるなら地理の基礎部分、都道府県名や県庁所在地、主な山脈や河川などが正確に入っているか確認しておきましょう。ここがしっかりしていると産業や歴史などを乗せやすいので、こちらも白地図などを利用して自信ありの項目を積み上げるイメージで取り組んでください。

 

国語

読解力や記述力の強化には、論説文と物語文でそれぞれ5〜10回の演習を勧めることが多いです。個別の添削や家庭教師を利用せず、家庭で補強に取り組む場合は、読解力養成の参考書を軸にすると良いでしょう。

参考書を用いる場合は、読んで理解→意識することを明確化→大問で実践練習→使えているか確認&解き直し、というサイクルで5〜10回程度の演習を積むと馴染みやすくなります。全部一気にではなく、ターゲットを絞った段階的な取り組みがおすすめです。

例えば「文章読解の鉄則(井上秀和)」を用いる場合、まずは「説明的文章(≒論説文)」の鉄則を読み込む→太字の鉄則部分を書き出す→それを意識して大問ひとつを解く→鉄則を踏まえて取り組めたかを確認する→足りないところを書き直したりしてみる、という流れで、終わったら次は「物語文」で同じように取り組むイメージです。

大問は模試や週テスト、入試過去問などから適当なものを選び、10〜20分程度で取り組みます。確認と解き直しにも同じくらい時間をかけるので、1問あたり30〜40分は欲しいです。確認や解き直しが疎かだと効果は薄いので、時間を確保できる日に集中して取り組むことが大事です。


算数

算数では基本的に、5年の組分けや月例テスト、週テストやDCなどの不正解を潰していきます。理解が怪しいものはテキストに戻り、基本問題から安定して書き出したり仕組みを説明することができるか確認していきましょう。

成績分析では正答率50%以上をS、30%以上をA、10%以上をB、10%未満をCとして分類していて、現在の偏差値や目標ラインによって、取り組む問題の正答率も変わってきます。

偏差値50までを目指す段階では、S問題を確実に仕上げ、なるべくA問題も解けるようにしておくことが目標です。55以上を目指す場合はA問題まで仕上げ+B問題も理解、60以上を目指している場合はB問題までを完璧に仕上げるイメージですね。

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「仕上がる」というのは、設問を読むと手が動き、滞りなく解き切れる+人に説明することもできる状態のことです。正解でも悩んで時間がかかったりする場合は、すんなり解けるまで練習しましょう。

また、同時進行中の6年前期の教材にも丁寧に向き合うと良いです。例えばSAPIXの「基礎力トレーニング」やグノーブルの「基礎力テスト」は既習範囲で解ける内容で、タイトル通り基礎を固められます。

こちらも同様に、正解でも時間がかかる問題は十分なレベルに達していないので、高速で正確に解けるまで練習すると良いです。1問あたり30〜45秒くらいを目標にすると良いでしょう。

 

繰り返しになりますが、通常の学習にそのまま乗せるとかなりの負担増になるので、まずはひとつかふたつに絞ってバランスを保ちつつ、丁寧に仕上げる、固めるといったイメージを持つようにしてください。