偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

計算を書き始める場所を整える練習

成績分析やご相談の中で、テストの計算を

・狭いところにみっちり書く
・あちこちに分散している
・何度言ってもなおらない

といった内容が結構あります。今回の記事はこうなりやすい理由と、整える練習についての記事です。

 


普段の学習との違い

身体を動かさずに書きやすい場所は意外と狭く、正面から利き手側、手のひらふたつ分くらいの大きさです。紙のサイズはもっと大きいので、少し身体を動かしたり、左手でほとんど無意識的に紙の位置を調整しています。

上から見た書きやすい範囲

正面から見た書きやすい範囲


普段の学習でテキストを左、ノートを右という配置にしているときは良いのですが、テストでは問題の冊子に書き込みながら解き、答えを解答用紙に記入する形が多くなります。

この問題冊子を置くところを、普段のテキストに近い位置からスタートすると、多少動かしても書き込みは右に偏りやすくなります。

テキストとノートの配置

問題冊子と解答用紙の配置

どの子も多少なり調整しながら書くのですが、その調整幅があと数cm足りないと、右に寄ってしまうわけですね。子どもは経験も少なく体も小さいので、うまく使えていない場合は意識的に紙を動かす練習をすると良いです。

こういう部分には「なおす」とか「雑」などの言葉を使いがちで、イメージもそちらに寄りやすいですが、あまり正しい表現とは言えません。

彼らは異常なわけでも、壊れているわけでもなく、手を抜いているわけでもありません。まだ下手、まだ未熟、ということですから、練習すれば上手になり、年齢とともに成熟します。成熟には時間がかかるので、まずは練習ですね。

 

体格と目線

小学高学年だと肩幅30cm前後の子が多いですが、大人は女性で36〜40cm、男性で40〜45cmくらい。腕の長さは小学高学年で60cmほど、大人は女性67cm、男性は74cmくらいで、可動域も1〜2割違います。

サイズから考えると1.2〜1.5倍くらいですから、大人にとってのA4サイズ(210×297)の紙も、子どもにとってはB4(257×364)〜A3(297×420)くらいに見えていたりします。

だから、大人からは「狭く窮屈」に見えても、子どもにはいけそうに感じたりするわけですね。A3タテに問題を出力してみると、真ん中あたりから書き始めてもいけそうな感覚がなんとなくわかるかもしれません。

更に子どもは大人より座高も低く、視野も狭いことが多い上に、その視野に右手が触れるように動いていることも多く、設問文の最後が右終わりだと、その視点を回転して紙の真ん中あたりに動くのが限度だったりもします。

同じ目の高さ、腕の長さを想定して座ってみると感覚が掴みやすいと思いますが、頭の位置が低いと、視線の移動範囲も狭くなります。これで設問の読み終わりが右端だと、そこから左下に移動しても紙の真ん中あたりになるわけですね。

高い目線からの視野

低い目線からの視野
自然に選ぶことの違い

こういう動作には個々の性質と習慣が反映されやすく、例えばやりにくい位置のときに対象を動かすか、自分の動きで調整するかという選択にも傾向があります。

人によって自然に選択する行動が異なり、結果として獲得する経験も違ってくるので、逆にある程度の練習と意識づけに成功すると、自然には身に付きにくかったこともカバーできたりします。

例えば几帳面なタイプは自然とそういう行動を繰り返し、10年も経てば几帳面レベル10みたいなことになりますが、自然なレベルが1や2でも、第一選択がそういう行動ではないだけで、やってみればレベル5くらいまで上がることは珍しくなく、見える世界も結構変わります。

とても苦手なことに苦労して取り組むのは損が大きいこともありますが、ツボを押さえればさほど苦痛なく上達したり、成長に伴い変化していくこともあるので、なるべく簡単に分解して練習してみることは大事です。


意識より練習

言っただけでできることは、元々適性が高かったり、あと一歩、溢れる寸前まで来ていたこと。言っても出来ないことは、まだその準備が整っていないことです。

特に緊張して頑張る場面では、意識をいろいろなところにバランスよく向けることが難しくなり、自分にとって自然な動きになっていることしか出来なくなりがちです。そして自然に身につかないことは、練習しないと身につきません。

姿勢を高く保つなども良いですが、体幹の筋力や持久力の問題もありますし、背丈や腕の長さはすぐ伸びるものでもないので、紙を動かす練習をする方が即効性は高いです。

 

紙を動かす練習

個人差はありますが、メインの意識は右手や書きはじめの位置よりも、左手で紙を動かす動作に置くとやりやすいことが多いです。①設問に目を通す→②左手で準備→③右手で書き始める、というイメージですね。

問題冊子の見開き左側から最初の問題が始まる場合は、体の正面に冊子の左端がくる位置にセットします。練習のときは設問文の左端下=空きスペースの開始位置に予め目印をつけ、「そこが書きやすい位置にくるように左手で動かしてから」書くのも良いです。

書きはじめの位置を整える練習

テストを受ける時の机のサイズや隣席との距離などもありますし、やりやすい位置は快適さにもつながるので、紙を動かす感覚が馴染むように練習してみてください。問題用紙の書き込みと解答用紙の解答欄も、近い方が視線の移動が小さく、ミスも低減できたりします。

左端から書きやすい位置に整える手順に慣れることが目的で、大事なのは「紙を動かせばいい」+「書きはじめの位置を意識する」という感覚です。馴染んでくるまで、焦らずコツコツ練習してみてください。