偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験の天王山!夏に向けて(1) 5年の基本を完全に仕上げる

これから夏に受ける講習などでは、合不合で言えば正答率20%台以下になるような難易度の高い問題にも取り組むことが増えてきます。芳しくない点数を取ったり、子供の自信や意欲が低下したように見えることもあったり。偏差値や様々な情報で不安になってくる方もいるかも知れません。

2月に合格点を取れるようになる子も、当然ながら半年前の段階では取れません。夏の段階で取れたら、秋以降は知識の劣化を防ぐ周回だけ。理想的ですが、そんな受験生はほとんどいません。今はまだ出来ないから、この後の半年があるんです。

だから、親はあまり成績は気にしないこと。もし子供の成績を見て何かアドバイスをしたいなら、正答率とバラつきに注目してください。1日1時間を穴埋めに使うとしても、まだ年内に180日以上あります。1問2分とすれば、180時間で5,400問。500問で10周以上、詰めることが出来ますね。着実に進んでいくことが出来るなら、まだ焦る時期ではありません。

基本を仕上げることの大切さ。

合不合では正答率30%以上の問題を完答すると、偏差値60くらいは確保できます。これを完答出来る子は、もう少し正答率が低い問題も幾つか出来ることが多いので、偏差値63くらいに届くことも出てきます。このラインが、難関上位校の基準。平均偏差値が63くらいでも麻布や開成に受かる子はボチボチ出てきますし、駒東や武蔵、海城などは80%に届きますね。

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四谷大塚合不合の正答率ごとの完答得点と偏差値(算数)

何度か記事で触れていますが、正答率30%以上の問題を完答するために必要なのは、5年上下と4科のまとめをしっかり仕上げること。後は予備的に6年上下や週テストの不正解分を問題集代わりに活用するくらいで、本当に63くらいには届きます。

この仕上げがとても大事です。極論すれば今の成績に関係なく、年内にこの3冊を完璧に仕上げれば大半の学校で五分五分の勝負出来る見込みはあるということ。いろんなプリント、問題集や受ける講習を増やしても、まず成績は上がりません。もちろん、焦りや追い詰めも効果はないと考えた方が良いですね。

確実に合格を取りに行くためにも。

5年上下をきっちり仕上げた、合不合で正答率30%以上の問題を完答出来るレベルは、偏差値55くらいの学校の入試で合格者平均点以上を取れるレベルとほぼ一致します。過去問を数回やって合格者平均を上回る得点を取れることを確認したら、後は知識補完用に間違った問題のプリントを作る程度で、特別な対策なしでも合格を取りやすい。

つまり、本命校に全力を注ぎ込めるわけですね。1〜2月のマネジメントを考える上で、これが非常に大きい。だから、あらゆる受験生にとって5年上下を完璧に仕上げることは有効だと考えています。偏差値70くらいあっても、スラスラ全問解いてみれば良い。1問平均1分や1分半の仕切りで、瞬殺して確実に100点が取れるかどうか。

言い換えれば7割の受験生は、僅か3冊のテキストを仕上げれば出来る問題でさえ、どこかを落とすということ。今、偏差値的に苦戦している子なら、尚更5年の上下が大事です。仕上げれば必ず成績は伸びる。これをしっかり伝えることが大切です。

時間を区切って基本を練習することは、本番での余裕を作ることにも繋がる。

以前の記事でも触れましたが、合格者平均偏差値や80%偏差値を上回る、受かっても良さそうな子でも、何割か落ちます。理由は幾つかありますが、そのひとつが「満点が取りにくいように」入試問題を作成しているから。

難関上位校の問題は、受験者のレベルを想定し、その子達でもなるべく時間が足りなくなるように作ります。ごく一部のトップクラスの子は余りますが、平均点が5〜6割くらいを目指す感じ。知識が受験範囲から逸脱すると、たまたま知っている子に有利な宝くじになってしまうので、文章の量を増やしたり、組み合わせて難解にする手を使います。知識以外の部分、冷静さや時間配分、問題文への注意力や思考力で篩にかけるわけです。

もちろんそれを解けるようになるには、思考力や応用力も必要ですが、普通のことを安定してサクサク処理する能力も同じくらい大事です。全てが難問ではないので、容易な問題で1問も落とさず、かつ時間を節約出来ること。本番の緊張感の中で、少しでも時間に余裕があることが、ケアレスミスを防ぎ、勝負の分かれ目になることもあります。

基本的な問題を、ミスをしにくい形で、速く正確に解く力をつけるには、基本問題を高速で解くことが良い練習になります。基礎は本当に役に立つので、焦らず着実に仕上げることを支えてあげてください。