偏差値60の壁なんてない

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中学受験の天王山!夏に向けて(3) 意欲の低下と闘争心、予定の立て方、特性に合う努力。基礎の周回と復習が大事。

前回の記事でも書いたように、塾のカリキュラムについていく「だけ」の意識を、少し変える。今回の範囲は終わったから次回の範囲をやる、という考え方を変えていかないと、抜くことは難しい。ここから上げていくには、いかにその子のベストの状態を引き出すか+最適化が大事です。

中学受験に挑む子供の意欲低下の原因を、親の接し方や教育虐待的な文脈で語りたがる人もいるけど、実情は少し違う感じ。受験は頭を使った競技で順位が決まるだけで、能力のどの部分を鍛えようがそれ自体に功罪はない。鍛えた能力を、自分や家族、周囲の人や社会のために役立てれば良いし、悪用はダメなだけ。

基本的には、問題と競争の質の変化で子供が困難に直面して元気を失う→頑張るべき時期に意欲や成績が低下するのを見れば親も焦る→関わり方を間違うと合否や教育、親子関係の上でのマイナスになりやすい、という流れだと考えています。

成績向上のために、他の子の何倍もの量をこなすのは現実的ではありません。本人がやるのを止める必要はないけど、親がノルマを押し付けるのは避けた方が良い。その方法で行けるのは肉体的、精神的に特別な才能がある子だけで、普通の子がやったら潰れるか、オーバーワークで学力は低下します。なるべく客観的な視点をキープしましょう。

意欲が低下する原因

前の記事で書いた、“発想力〜注意力の持続を試す” って部分。これを言い換えると、「自由な発想を保ちつつ、丁寧に地道な作業もして、時間は足りなくなるけど焦っちゃダメ」ってこと。かなり無茶な要求をして、それに負けない子に来て欲しいって言ってる。

高度って言えば聞こえは良いけど、半ば嫌がらせみたいな、調子よく勉強することが難しい問題が増えるのに加えて、ライバルは強くなる。

5年生までは有利な武器を持ち、練習不足の相手に勝てば成績は上がりやすかったけど、この時期からの上位層では、同じような武器で相手も練習してくる中で勝たないと順位=偏差値は上がらない。

バイオハザードなんかで言えば、敵に与えるダメージ量が多くて受けるダメージの少ないイージーモードから、設定が逆のハードモードに変わる。「簡単すぎて退屈だった子」には良くても、「楽勝で活躍できるから楽しめた子」にはしんどい。

低学年から勉強していた子は強くてニューゲームみたいな状態で、塾では2〜3周目で1周目の子に勝てば良かった。自分が賢いと思っていたら、6年生で周りも2周目3周目になるとそれほどでもないよ、って突きつけられる。やることが増えて報酬が減れば、意欲が下がりやすいのは当然ですね。

これは多くの子供にとって初めての体験だけど、人生無敵モードはどこかで止まるから、ここで乗り越える経験には価値がある。当たり前だけど、無敵モードじゃなくてもゲームはクリアできます。

この時期に注意した方が良いのは、親の感情的には逆のことを思いやすいこと。ここで伸びなかったら合格できない!もっと頑張らないと!って、自分の見えるところでの頑張りや量を求めたくなる。そうすると、手を引く、背中を押す、伴走する位置でなく、向き合って問い詰める位置に移動しやすい。

でも、単純な量が足りずに基本も出来ない下位層と、頑張って応用に苦しむ上位層では、質が全く違う。下位層は一定量をこなすことで順位も上げやすいけど、上位層は量で差をつけにくいから、調子に乗せる、元気を回復する、闘争心を持たせる、っていうのが一層大事になります。

強い闘争心を持てる条件

闘争心は「負けん気」って言うくらいで、勝てると思うからこそ湧く気持ち。勝てる気がしないのに、熱い台詞や将来のことで叱咤激励されても湧いてこない。だから、勝ち筋を教えないと、闘争心に火なんか着きません。勝ち筋を教えるか、一緒に闘い、応援する位置取りをすること。

塾も授業の内容で惹きつけたり、頑張りを褒める工夫をしてくれるから、向いている何割かは「燃えるタイプ」に近づけて貰えます。でも、全員というわけにはいかない。

本当に意欲を失えば、そこで勝負しないから辛くない。意欲があって、それを挫く問題や状況に晒されるから疲れる。でも、これを乗り越えれば、合格にもグッと近付く。逃げないなら、闘い方を教えた方が良いですね。

これまでは、自分に優位性があるから頑張れば伸びるとか、興味があるから覚えたいっていう基本的な意欲が中心だった子に、自分の弱さに対応していく技術と意欲を足してあげる。指導するときは、こういう仕組みも話します。

賢くて努力できる子たちを篩に掛けるために、問題が意地悪になってくる。ここで闘うのはひと握りだけの特権で、その分厳しい。それに負けない方法を教えるから、頑張ってみるか?って感じ。目標を少し遠く、つまり目先のテストだけでなく受験に置くことと、自分の分析に目を向けること。視点をまず変えていくことで、対応力が増します。

夏期講習中と、何もない日のスケジュールの組み方。

夏休みの予定を立てる際には、講習期間中と休みで分けて考えましょう。夏期講習は長時間拘束で、内容的にも高度化するので、帰ってきたら抜け殻でも良いくらい。更に宿題も出たりして、家で他のことをやるのは時間的にも体力的にもきつめ。

塾の説明会でもそういったことを聞くと思いますが、期間中はとにかく授業に頑張ることを全力でサポートする。可能ならその日にやったことを聞いたり、復習や宿題に付き合う。睡眠はしっかり取らせた方が良いです。

小テストやプリントなどが、しつこく言っているお宝の山の可能性があるので、親はそれをチェックして仕分けしてあげると良いです。

休み中も宿題や課題を与えられると思いますが、ココで復習にも取り組む。宿題とは別に1時間でも良いので、間違った問題を分析、ポイントを清書、更には暗記するくらい暇を見つけて見直す、という仕組みを作ると良いです。

以前の記事でも書いた測量野帳などに清書して、同じものを日替わりでホワイトボードに書いてみたり、プリントアウトしてトイレや目につくところに掲示する。書いた日から1週間後にその問題を解いてみるなどの取り組みで、自分の癖と向き合い、刷り込めば出来るようになる経験をさせられると有効です。

各塾の夏期講習の説明会の様子などを記事にされている方もいるので、他の塾や校舎の様子なども参考にしてみてください。

5年生だけど、個別を検討して面談で得た感触を書かれています。講師と話す内容などの参考に。

子供に合う方法「だけ」を厳選して

原因と特性に合わないことを強いても、成績は上がりません。努力して成績が上がらないと辛いだけ。何かをプラスしてやらせるなら、上がるまで責任を負う。より大きな効果を感じるからこそ、やる気が続きます。

何度も書いているように、基本は塾のカリキュラムをこなせているかどうかの管理と、塾に相談するなどの活用。ここに乗せられるものだけを厳選して乗せる。子供の時間も集中力も有限なので、大切にしてください。

医療でも症状から推測して投薬と経過観察、精密検査などで原因を絞り込んでいき、適切な治療をしますね。セカンドオピニオンを得るのは良いけど、根拠もなく取捨選択するのは「●●には▲▲が効く」って民間療法に飛びつくのと同じで、大抵はマイナスの結果に終わります。

勉強の内容や方法に口出ししなくても、食事や睡眠の管理、宿題の進捗やテストで間違った問題の抽出、過去問の分析や学校調べなど、親がやってあげられることは山盛りです。それを踏まえた上で、子供の状況やタイプに合わせた取り組みの例を幾つか。

難問になること。範囲が広くなること。相手が強くなること。同じように成績が伸び悩んで見えても、成果の出やすい解決策はそれぞれ異なります。

コツコツやってきたけど、速度と容量が厳しい場合。

他が頑張るから、優位性が失われる。何か取り柄を作る必要があるけど、なかなか難しい。偏差値55以上なら自分次第でどの大学にだって進める十分な進学環境なので、自己肯定感を下げずに今の実力相応の学校の合格をしっかり取って、中高での成長を目指す方が良い場合もあります。

大学受験では非常に広い範囲から出題できるので、殊更捻って難度を上げる必要がなく、東大を始めトップクラスの大学でも、問題の質は素直なものが多い。つまり努力した量の価値が高くなるので、継続出来る資質は大学受験や推薦狙いには有利ですね。

自主性の記事でも触れたように、中高では年齢的にも自分の行動を決める能力もついてくるので、それを活かせば地頭が良い「だけ」の奴には負けなくなる。

別の言い方をすれば、中学受験のスパンで考えると最初からSでなくAやBからスタートでも、最終的にSへと階段を上がって難関校に合格、って悪くないですよね。これをもう少し長期の視点で見れば、中高でCからSへと成長して大学は国公医まで選び放題って言うルートもあるし、コツコツやれる子はその素質が十分にある。

5年生から大学進学までの8年間で考えれば、中学受験までは最初の4分の1に過ぎない。もっと言えば中学受験しない公立ルートもあるけど、中学受験に限っても最難関だけが成功ではありません。

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こんなに早い時点で志望校を諦めるという意味ではなく、単純に目に見える成績(偏差値)の上昇だけでなく、継続している事やその位置をキープしていることの素晴らしさを評価してあげるということ。先の記事でも書いたように、偏差値はCでも合格点を取る力をつけて御三家に合格する子も、毎年必ずいます。

決めたことを守る力、自分がなりたいものになれる力を既に持っているのに、自信を失わせるのは損なので、コツコツやれる長所を自覚して貰うことが大事。基礎を万全に固め、志望校に絞った対策をすればチャンスもあります。

成績を落とさずきっちり合格を取るためにも、精神的な安定と受験校選びがとても大切なので、進学意識と校風が合うところを探してあげましょう。射程内でも納得のいく進学先を見つけ、親がどこでも大丈夫という気持ちで支えてあげてこそ、最後のひと伸びもしやすくなります。

記憶系科目や基礎問題には強くて、応用系が弱い場合

応用問題には発想力やしつこく考える力が必要ですが、算数の記事でも触れたように、考えようによっては暗記でも対応できる。線分図や分配法則なども含め、図と言葉を駆使してポイントや解説を書く清書が効果的です。

捻って難解にしているポイントに注目して、「条件の積み上げや組み合わせ」「必要条件と解き方の推理」という記憶を増やす感じ。同時に、自分の思考の癖、見落としや勘違いのパターン、使いたがる解法と抜け落ちやすい解法の傾向も把握していく。

暗記化にはとにかく何度も読み返すのが有効なので、測量野帳など常に携帯できるパターン帳を作るのがオススメ。この場合、夏期講習での授業やテストの後に、取り組む問題の抽出は親がやってあげて、パターン記憶の手助けをしてあげると有利です。

ケアレスミスの増加

間違いやすくなるように圧をかけてくるから、それに対処する準備をしておかないとやられる。ケアレスミスは、単に注意力散漫なタイプだけでなく、失敗が嫌いで几帳面なタイプや、素直な子にも多いです。枠に合わせる意識が強すぎて、急ぐから漏れる。

運転初心者が、多くの車が走っている高速での合流ほど焦るのと同じ。ミラーの確認やウィンカーでもたつくのは、まだ自動化されていないものが多く、プレッシャーがかかることで、落ち着いてやれば出来る簡単なことでもミスをするからですね。

このタイプには、敢えて枠を無視することが有効な場合もあります。良く言う時間配分の逆、頭から順番に出来る問題だけ解いていって、終わったところまで。その代わり、手をつけて回答した問題では正答率100%を目指す、といった目標を設定します。

枠による焦りで損をしていること、闘える力があることを確認し、あと何問か増やせば良いことを自覚させる。そして、次の1問を稼ぐための方法を教える。速度を上げるための省力化、計算の簡略化などで身についていない部分を徹底するのもオススメです。

記憶系、知識量の不足の場合

量をやれば良いのが正論だけど、本人としては割と頑張っていても時間が足りない。これは、隙間の使い方を覚えて、机以外の時間で補う仕組みを作ることを意識します。

例えば社会だと、SAPIX白地図と歴史年表。本のままでも良いですが、一度ざっと回して間違ったところ、調べたことやポイントだと思うところ、特になければ近現代などからノートに転写して、隙間で読む習慣にする。

 

 

これにオススメなのが、コクヨの文庫本ノート。算数の記事で紹介した測量野帳より少し高いけど、文庫本のカバーが使えて70枚綴り、表紙が柔らかい。無印にもページ数が多い文庫本ノートがあるけど、紙が薄くて裏に響くから学習向きじゃない。ミドリのMDノートは高価なので、定価で半額以下のこちらがオススメ。しおりと見出し罫もあって、社会などの記憶系のチラ見に最適です。

 

文庫本ノートなどの暗記帳は、ブックダーツと組み合わせて使うのがオススメです。ここまで読んだ、次までにここを読む、書き途中、など好きなところに何箇所か挿す。些細なことだけど、こういう作業が好きな子は本当にノートを作って合間に読むことを楽しみ始めるので、試しても損はないと思います。

 

似たタイプに、短期記憶が強くて、一夜漬けに近いレベルで得点していたような子もいますね。このタイプも、周回で脱落を埋めるのは同じだけど、関連付けや大きなつながりのノートを作ること、フローチャートなどを書くことがより有効です。雑談を含め、深い話をたくさん放り込んで知識の広がり感を与えてあげるのも良いでしょう。

まとめ

長い記事になりましたが、夏以降は怠らずに基礎の周回を続けることと、復習の質が成績の向上や合否に大きな影響を与えます。

基礎の周回に関しては出来る範囲であれば1日30分とか、サッと撫でる程度でも良いけど、毎日継続すること。これから受験までの200日あまり、毎日コツコツ周回を続けることで取りこぼすリスクを防ぐ、とても大事な習慣です。

復習は自分の間違った「箇所」に注目して、思考のクセ、間違いやすい状況などを明確にする。図は丁寧に書き直し、どういう失敗をしたのか赤字やコメントを入れる。これを続けていくと、特に図形問題など特定の分野や、ケアレスミスについてのコメントで同じような言葉が並び易い。そこをどうするか、子供と相談する。

作ったリストやパターン帳を持参して、塾で質問してくるように勧めるのも良いです。一概には言えないけど、子供が工夫して積み上げているものを見ると一定の評価をしてくれる講師は多い。親以外の第三者、指導する側の人間にも承認されると、意欲にプラスの働きかけになります。