偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験の天王山!夏に向けて(2) 応用・難問が増える理由と塾の活用

6年の夏前の段階では、ほとんどの子は「テストで良い点を取るため」や「偏差値(クラス)を上げるため」に勉強をしてきています。この意識を「合格する力をつけるため」「自分を強化するため」に変化させていくことが大事になります。

この記事では特に、6年生で四谷偏差値55以上、C〜Sクラスで上を目指して行く場合に必要な考え方について書いていきます。

難関上位校に挑むレベル。

他の記事でも書きましたが、四谷大塚の生徒は小学生全体の上4分の1くらいに入る学力の子が主体で構成されています。これを3つに分けた上のブロック(偏差値55以上)にいるのは、その中でも努力ができて、賢さを幾つか持っている子。SAPIX内部だと大体偏差値45〜48くらいから上が同じ帯ですね。

ここは全体から見れば上位8%、小学校で24人のクラスからトップの男女だけ集めた感じ。周りを見渡せば、もう怠け者や賢くない子はほとんどいない。普通より賢くて、努力できる子の集団。もし並の出来でここまで来れたなら、もう十分ってくらい努力しているゾーンです。

クラスの代表だけを集めた30人で競い、トップ10に入れば偏差値63以上のS。中10人が偏差値 59〜62で、残り10人が偏差値55〜58になる。ずば抜けて賢い1割は同じことを続けるだけで上に入るから、残り7席を賢さと努力の資質が同じくらいの27人で争うイメージ。もう一歩他の子に勝るポイントを作らないと勝てません。

難解な問題が増えてくる理由。

中学受験は小学生相手だから、範囲は限られる。素直に知識を問うような問題だと、このレベルでは満点を取れる子が多くて差がつかない。でも入試では、こういう子達に順位を付けないといけないから、問題をより高度化する必要がある。

大きく分けると、発想力や多角的な視点、そして演習量を問われるような捻った問題。根気と丁寧さを問われる、条件積み上げの必要な問題。そして、これらの問題を組み合わせて分量を増やすことで時間を奪い、冷静さや集中力、注意力の持続を試す。

6年の夏だから応用問題が出てくるんじゃなくて、基礎をできる子達に優劣を付けるために、難関校の入試では応用を出してくる。それに対応するために、塾でも上位コースでは応用に取り組む、という流れです。

もっと言えば、6年で応用をやる時間を確保するために、5年で1周させておく。この期間で基本を身につけられた優秀な子だけ応用をやらせますよ、っていうのが上位クラス。

だから、その下の位置から上を狙うなら、まず基礎を固めないと勝負にならない。予習シリーズ5年はどこでも出来るレベルになってからが、次の段階です。

合格する力を付けるために。

この難関校入試の性質、出題者の意図の変化に対応するのが、ここから必要なこと。だから、塾ではとにかく演習量が増えてきます。授業やテストでは応用パターンを増やすことで難問に対策し、記憶の劣化に対応するために基礎の周回も含めた宿題もある。

集団塾の優位性は、一緒に頑張る空気と競える相手、優れたテキストやカリキュラムなどの蓄積された受験のノウハウ。弱点は、ピンポイントで個人用のカリキュラムではないこと。そこで優位性を稼がないと、ここから上に行くのは難しい。

別の記事で過去問分析などについても書くつもりですが、親が入試分析して必要なことだけやらせます、っていうのはあまり勧めません。それなりの経験や分析力があるなら有効な可能性もあるけど、基本的な力を広い範囲でつけておき、最後の追い込みで対策も仕上げる方が、落とすリスクが低い。

四谷もSAPIXも素晴らしい教材があり、長年の多くの子供を見てきたノウハウの蓄積があるから、そこに乗った方が有利です。

塾の講師も頼りましょう。

あくまで「塾の授業や課題を軽視させない範囲」で復習に力を入れる。基礎トレや宿題などがこなしきれない場合は、塾と相談しましょう。

間違った箇所をこのくらいやらせたい。残りの時間でこなせる量がこれくらいだ。宿題や基礎と復習のバランスをどうすれば良いか、悩んでいる。こういう切り口で相談すれば、なんらかの返事をもらえるでしょう。

頭ごなしに、とにかく宿題だけやれば良い!って言ってくる講師なら、少し付き合いを考えた方が良いけど。大抵の講師なら「じゃあこうしましょう」とか、「これだけはやった方が良いです」って提案をしてくれる。

自分の子だけを見てくれるわけじゃなくても、経験のある第三者の視点や分析には有益なものがあるから、講師の話には敬意を持って取り入れる。その上で子供には、自分の失敗を分析したり、何度も目にして馴染ませることの大切さを伝えましょう。

目先の偏差値を上げることには、こだわり過ぎない。Cから麻布や開成に合格する子が毎年いるのはマグレではなく、自分にとって必要な力をしっかり付けることに成功したから。80%偏差値は通過点で、子供にはそこを通るのは当たり前と教えますが、見守る側が一喜一憂するようなものではないです。

もちろん、週テストや講習判定テストには努力する。そして、その結果得た自分の傾向を大事にする。この感覚が薄いままだと、偏差値を上げないと!って目先の宿題とテストに全力を費やし、せっかくの宝を無駄にしてしまう。

この前進と復習のバランスを取っていく舵取りが、夏からの親の役目です。テストの結果が悪い。責める。もっと頑張れ、って次の範囲をやらせる。これだと本当に伸び悩む子が出てきます。せっかく2周目をやって、間違った、出来なかったところ。ここを本当に大事にしましょう。

 

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次は、難度が上がったことによって起きてくる子供の変化について書くつもりです。