偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

夏休みを活かす受験までの学習について

夏休みに入って一週間が過ぎましたね。講習に宿題に、基礎のまとめとテストのやり直し。子供も親も、どこが休み!って感じでしょうか。

6年生の方は、あと半年で子供と一緒に闘える時間が終わってしまいます。1月10日までは167日、2月1日まで189日。受験が終わって振り返った時に、最も濃く思い出に残る半年間です。

講習や合宿では早解きや難問に挑み、膨大な宿題と格闘することもあるでしょう。塾が一生懸命に火をつけようとしてくれるので、徐々に緊張感が出てくる子もいます。授業中だけで、家ではまだまだって子も多いけど、だんだん周囲の真剣な温度を感じ始める時期。

何度か触れましたが、応用系の難問や論理性を高めるトレーニング自体は、基本的には塾に丸投げのスタンスで良いです。これらの難問を解く技術は、すぐには出来るようにならない方が普通。自転車に一人で乗れるようになるのと、上手に乗りこなせるのは別ですね。一人で乗り始めた頃は、速度も出せないし、ちょっと何かあればふらつく。

応用も同じで、理解した、使って解けたという段階と、様々な形で出てきた問題に時間内に対応して正解できる段階には隔たりがあります。夏に「乗れるように」なったとしたら、そこから数ヶ月の演習を経て、11月頃にやっと「乗りこなせるように」なります。学校別やプリントで嫌ってほどやらせてくれるから、しっかり喰らいついてこい、って背中を押せば良い。

まとまった時間を取れる夏は、基礎の穴埋めにも、応用の土台作りにも本当に大事。でも、誤解してはいけないのは、これらは「夏に終わらせる」のではなく、「夏から受験まで継続して周回する」ということ。

特に親がプッシュした方が良いのは基礎。基礎。基礎。基礎。ってくらい基礎が大事。日々の計算、基礎トレ。漢字の要、言葉ナビ。基本を組み合わせた応用の初歩で間違った問題の周回。このあたりを毎日続けましょう。

 

夏期講習の内容は、受験まで周回を続けるもの

算数は夏に地力をつけて秋の学校別で演習で叩きこみ、国語は秋に論理性と過去問で得点力を上げる。用語知識系は直前まで何十回も回す、というのが基本形。特に、理社と漢字などの知識系は、受験前日まで力が伸びます。

算国でしっかり得点が取れていれば、理社の知識系は「後半の伸びしろ」くらいの意識でも良いですが、手をつけないのとは違います。夏からある程度細かい知識にも触れる回数を増やし、覚えきれないものを周回に加え、受験当日までに出会う回数が多くなるほど定着率は上がります。

まず、夏期講習で配られるプリント、私が詳しく見たことがあるのは四谷とSAPIXだけですが、どれも本当に実戦的な内容のお宝です。例えばSAPIXで配布される地理のデータバンク。夏の間に覚えても良いけど、覚えきれなくても問題はありません。大事なのは、まだ半年も周回に使えるタイミングで貰うこと。

受験まで周回するのに適した内容だからこそ「夏に」配布される。夏期講習でやるものは、ほとんど全部にそういう意図が入っていると考えて良いです。

特に記憶系は、夏休み明けに覚えていても受験当日に忘れていては意味がない。半年もあればかなり忘れますよね?もちろん、算数などは学校別についてこれる下準備の意味もありますが、基本的にはここで大量の知識に触れ、それを半年かけて自分のものにしてください、ってことです。

プリントで言えば、算数でも年末には解法と知識の最終チェックなどが配布されます。他塾や独学なら自分でうまくまとめる必要のあるものを、最激戦区で鎬を削るSAPIXや四谷のトップ講師がプリントにまとめてくれる。これらは直前まで何度も繰り返し目を通すだけの価値があるので、必ず活用するようにしてください。

 

正答率の高いものを確実に潰していく

算数は志望校と同等の偏差値を目指しつつ、正答率の高いものを漏らさずに正答すること、落としたら染み込むまで何度でも読み直す習慣をつけることが大切です。

こちらの記事のB型娘さんのように隙間なく正答しているのが理想ですが、毎回うまくいかなくても、漏らしを埋めていくように心がけてください。やることはどんどん増えていきますが、出来ないことがあるまま先に進んでも実力は上がりません。

子供はクラス内での競争や与えられる課題に注意が向きやすくなるので、親が埋めるポイントに意識を向けてあげることが有利に働きます。

日々の計算や基礎トレは毎日コツコツ続けてください。もちろん宿題やテスト対策も大事ですが、宿題10割で計算や漢字を0にするより、宿題が8割しか出来なくても、欠かさず基礎を続ける方を勧めます。


記憶系は休憩や隙間も活用する

机に向かわない時間も、ゴロゴロしながら受験に役立つものに触れておくようになると、記憶系の定着には役立ちます。4科のまとめやコアプラス白地図やアトラスも良いですが、勉強感が強いので休憩に回せる子は限られます。

以前も紹介した間違いを清書した野帳を眺めたり、山川の日本史図録などを与えても良いでしょう。冬にはSAPIXの重大ニュースや四谷のニュース最前線も取り入れて。

円周率や平方数、三角数なども含め、数字は暗記でかなり対応力が上がります。この記事でも紹介した基礎の数字や、簡単な計算変換を馴染ませるために、かるたを取り入れる手もあります。

白札の無地かるた自体は、市販されているものを使うのが便利。画像は上が無地かるた100枚、下は白札200枚入りのセットです。

 

計算は、例えば掛け算と割り算の混合式なら、掛け算を分子、割り算は分母に入れた分数にしてみたり、掛け算の片方を2倍、もう一方を半分にして九九で瞬殺できるようにしてみたり、99倍を100倍-1倍で計算したり、といった典型的なもので良いです。1行問題などからパターンを抜き出して使用しても良いでしょう。

かるたは休憩がそのまま記憶の周回になる点でオススメで、ハマる子はお正月にもやるくらいなので、好きそうな子には試す価値あり。数字だけでなく、歴史や地理から生物、漢字まで記憶系全般に使えるので、工夫してみてください。

漢字は横棒が一本抜けたり、止め跳ねを間違えたところだけ赤を入れたりしても良いし、ジャンルを混ぜたり、途中式と答えの2枚を揃える取り方をするなど、工夫次第でリラックスしながら覚えていくことが出来ます。

かるたは時間的に可能なら子供に書かせましょう。自分の間違った問題の解法を清書するのと同じで、真剣に書くとそれが記憶の土台になり、周回の効率を上げてくれます。1日5〜10枚でも1ヶ月で150〜300枚になるので、まとめて100枚とか作る必要はありません。むしろ少しづつ追加していく方が馴染みも早いです。

親が作る場合はプリンタで出力したものを貼ったり、名刺カードに出力するなどして手間を減らした方が良いでしょう。名刺カードはかるたよりボロボロになるのが早いので、データを残しておいてプリントし直すと良いです。読み上げ用の問題はA4などにプリントし、答えの方だけかるたに記入する形で十分使えます。


図を正確に描く練習

図形を普段方眼紙だけで描いていると、入試の時に手早く描けない可能性があります。図が苦手な子はいきなり3分割、5分割しようとして崩れるケースが多いので、2+1とか4+1の感覚をつけてあげると良いです。いわゆる図形問題だけでなく、線分図や平均の面積図など、正確に描くと視覚的に補強される問題は多く、線分が正確でないと図が歪むので、これは結構大事。

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5分割のパターン

あとは、苦手にしている立体切断など、なんでも良いので毎日一題描くようにすると上達します。立体切断は対面は必ず平行、などの決まりごとを覚えていれば難度としては高くない分野ですが、苦手な子は隣接する面と混乱したり、大事な線が抜けたりするので、基本形を描いて覚えてしまうのが早道です。

 

中学受験に挑む子供を支える、夏から秋にかけての親の心構え その3

例年、四谷大塚の上位層(偏差値55以上、S〜C)では、6月〜9月の組分けでかなり上下動があります。3月には1桁や10番台のトップクラスを取った子が、100〜200番台に順位を下げることも珍しくありません。上位に限らず、48〜52あたりでも数ポイントの上下は頻繁に起こります。

特に、夏休み明けの組分けと合不合で低下すると「他の子が伸びてウチの子が落ちた」「天王山で失敗したんじゃないか」と深刻に受け止める方が多いので、特に5年〜6年前半で良い成績だった場合には「受験期の実力は6年の冬にならないとわからない」ということを説明していました。

6年の前半のスコアは、5年までの範囲でしっかり取れるかどうかの目安。中盤では、難問を幾つ取れたかで上下動が出ますが、秋冬にはほとんどカバーを終え、この時点での実力が1〜2月の受験で発揮される。9月のテストで良くても安心は出来ないし、悪くても心配もない。淡々と11〜12月まで学校別などで実力を積み上げた子が合格していきます。


6年の成績変動が起きやすい理由

以下は受験までの学習範囲をざっくり示したものです。

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まず、4年生の学習では、受験に使う植木算や等差数列などの概念が入ってきます。まさに基礎の基礎で、負荷が低い分計算の工夫などが身につきやすいメリットもあり、早くから通塾している子は5年時には有利な位置を取りやすくなります。

5年では受験のほぼ全範囲をカバー。5年から通塾開始だと、素質のある子でも最初の周回では4年以前から学習を始めている子には負けやすくなりますが、出来るまでやることを徹底すれば6年前半でもう一周する時に追いつくので、秋までに5年開始組が毎年1〜2割、Sや学校別に入ってきます。

6年前半でもう一周した後、夏休みではレベルに応じて難関校クラスの応用問題に取り組んだり、基礎を総ざらえしたりといった取り組みをします。秋からは学校別コースに進むか、もう一周応用レベルで周回するかに分かれます。こういうカリキュラムの中で、6年の3月〜9月の組分けでは、偏差値63以上のSクラスの子でも上下動がかなり発生します。

理由は大きく二つ。ひとつめは、より密度の濃いカリキュラムをこなすため、授業や宿題などが増加する上に、個々の弱点克服にも取り組む必要があり、更に学校でも最高学年で様々な学校行事に責任が生じたりすることで、5年時のペース配分では対応できなくなることです。個人差もありますが、これに慣れて自分なりの学習のリズムを掴むのには結構時間がかかります。

もうひとつは、応用レベルの全体的なカバーには半年〜9ヶ月ほど必要なことです。3月の組分けは5年の範囲がどの程度身についたかの目安で、ここに6年時の学習で応用力を乗せていきますが、組分けや合不合で正答率の低い問題を解くのに必要な力を満遍なくつけるには時間が必要なので、その途中段階での模試では得意不得意、覚えたところが出る出ないの運が得点差になります。

学習量を4年で3、5年で7とすると、6年では10以上が要求されます。基礎力10を積んだ上に、応用力を10積む。最終的に20になるとしても、途中経過の12や15の段階では、身についた2〜5の力がハマる問題だと高得点、まだの部分から出れば得点できず、となります。

しっかり積み上げていれば、咀嚼吸収するのが10月あたりなので、合不合で言えば10〜12月の3回、または11〜12月の2回が出揃ったところが併願校決定の目安と考えましょう。第6回の結果まで待ってからでも出願などは間に合いますから、そこまでしっかり歩みを進めることが大事です。

受験前日まで実力は伸びます。合不合と難関校では問題のレベルが違うので、学校別や志望校別でみっちり対策をやった子が得点を上積みできる可能性は高いですし、記憶系は本当に直前にやり直したことで5点や10点稼ぐことは多々あります。受験はその数点を争う闘いなので、前日までやり抜くことが大切です。

第一志望についても、私は基本的に80偏差値基準で話しますが、実際の進学先の生徒の平均は50偏差値に近くなります。例えば開成の80偏差値は71ですが、合格者の平均偏差値は68で、50偏差値の67の方に近いです。つまり、50偏差値なら入る生徒とほぼ同格で、学校によっては3〜40%くらいの判定になる偏差値でも実際の入学者平均に近いこともあります。

合格したい気持ち≒不合格への恐怖が強いほど、4〜50%くらいの判定に不安感を覚える心情は理解できますが、合否の可能性は半々くらいでも、目指して努力して入学する生徒と同等の学力まで辿り着いて、諦める必要は全くないですね。

ただ、特に12月までに思うような成績が出ない場合は、幅広く受けておくことは大事なので、そこまでにきっちりと併願校候補を調べておきましょう。

 

順位や偏差値の捉え方について

以前の偏差値の記事でも触れているように、上位はわずかな人数で偏差値が大きく動きます。例えば6位から60位になると順位は10倍、偏差値は7ポイント低下しますし、100〜200位台になれば桁数も1桁から3桁になり、偏差値も10ポイント以上落ちます。数字の見た目に大きな変化があるので衝撃を受けやすくなりますが、実質上位5%内に留まっているので志望校変更の必要はなく、9月や10月の一回の模試などには参考程度の価値しかありません。

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こういった成績の上下動で親が一喜一憂することは、合格の助けにはなりませんので、5〜10%程度の人数幅を基準にして集団の中での位置を把握するようにしてください。

上位5%校を目指す場合は10%、10%校を目指す場合は20%というように、ひとつ下の幅までの上下動ならあまり気にする必要はありません。年末までしっかり努力すれば必要な学力はつくと考え、継続することが大事です。

特に、夏休み明けの組分けで3〜5くらい偏差値が下がっても、決してがっかりしたり、他の子より怠けたからだ、などと見当違いのことを言わないこと。目安としては以下のような把握の仕方をお勧めしています。

5%校=80偏差値67以上。63までは許容範囲。
10%校=80偏差値63以上。58〜59までは許容範囲。
20%校=80偏差値59以上。55までは許容範囲。
30%校=80偏差値55以上。50〜52までは許容範囲。

もちろん、下振れの許容範囲を超えても即アウトではありませんが、大幅な低下が見られる場合は、意欲の低下や他の心配事などを抱えている場合もあるので、しっかり話を聞いてあげた方が良いかも知れません。「話し合い」ではなく、「話を聞く」ということを心掛けましょう。

繰り返しますが、数%くらいは問題次第で簡単に上下します。怠ければもっと大幅に落ちるので、そこを無理解に責めるようなことがないように注意してください。呑気に構えろとまでは言いませんが、11〜12月までの6年の学習全体で合格力をつける勝負ということはしっかり理解しておいた方が良いです。

9月の組分けや9〜10月の合不合あたりは、まだブレの大きい段階なので焦らないこと、逆に良いスコアでも、たまたまと考えて気を抜かないことが大事です。11、12月の合不合や学校別内での位置で併願プランを確定する気持ちで、そこまでは途中のチェックポイントとして捉えるように心がけてください。

本人は良い点を取るために受ける意識が強いでしょうが、親は「何が足りていないかの検査を受けに行っている」と考えることが大事です。6年の前半のスコアは、5年までの範囲でしっかり取れているかどうかの目安。中盤では難問を幾つ取れたかで上下が入れ替わり、ほとんどカバーを終える11〜12月時点での実力が受験で発揮されるので、良くても悪くても途中経過にすぎません。

ラソンで言えば、30〜40km地点まで先頭集団から脱落していなければ、その集団内での順位は入れ替わっても、最後の数km〜トラックでの勝負になるのと同じです。先頭集団の選手が手を抜いていないように、集団から脱落していない子がサボって意欲もないということもありません。ちょっとした上下動はあるものとして、必要な努力の選別に尽力してあげてください。

 

夏から秋にかけての親の心構え その2の補足

前回の記事で、認識のチェックについて触れたところがありました。

だから、枠を広げて、気楽な構えをなるべく作っていく。「子供は別の人格」「目の前のことに集中しやすい=他のことは忘れる」「友達の影響も受けやすい」「感情の影響が大きい」...いろいろありますが、見聞きしたものから、自分の子供に似ていること、ハマると感じることがあったら、それをしっかり認識できているか、チェックしてみてください。

期待をしちゃいけないって意識ではなく、現在の子供の能力や状態に対して適切な幅の期待かどうかに注目しましょう。自分の子供に対する期待なんて、そうそう捨てられませんから。出来もしないことをやるより、出来ることで前進する方が、遠くまで行けます。

この部分についてご質問があったので、補足しておきます。

理想基準でなく、子供本人を基準にした期待にする。

期待はあったほうが良いです。誰にも期待されないのは良いことではありません。親が期待するから、中学を受験する環境を与える。そのこと自体は、野球やサッカー、空手や剣道、ピアノやバレエ、英語や電子工作、そういう習い事やお稽古事の環境を与えてあげるのと変わらない。どの分野にも困難はあるし、上に行くほど厳しい闘いにもなる。

将来の年収と教育コストの比とか、そういう計算なんかもあるけど、割に合う合わないで考えるのは難しいです。学びやすい、刺激を受けられる仲間のいる環境を与えてあげる。その結果、難関大学や海外に行くかもしれない。医者や法曹や官僚や研究に進むかもしれない。起業するとか言い出すかもしれないし、芸能や全然ジャンルの違う世界に進むかも知れない。与えられるのは可能性や選択肢で、リターンを求めるのは難しい。

それなりの時間やお金をかける以上、その選択肢が広がる「良い学校」に行って欲しいくらいのことは思う。どうでも良いとはなりにくいし、なる必要もないけど、その基準を間違えると、目標に手が届かないどころか、無用の傷を負うリスクが高い。

難関校に合格した子の話とか、合格するために必要なこと、あるいは合格に必要な勉強量や勉強に対する姿勢、偏差値など。こういう情報を頭に入れるほど、つい「あるべき姿」が自分の中で形成されて、基準になってくる。でも、適切な度合いを超えた期待は、却って目標から遠ざけます。

ちょうど良い期待というのは、実力に見合っていて、もう一歩先に進むことを期待し、しかもそれがどうすればできるようになるのか、方法や道筋が見えていること。遠いゴールを目指すのは良い。でも、次の一歩を期待する。その後押しをして、一歩の前進を喜べる状態を自分の中に作る。

以前の記事でも書いたように、今できることの一歩先を期待して、励まし支える方が効果が高いし、何より自分の期待で相手を傷つける言動をするリスクが減る。自分の感じる辛さ、しんどさも少ない。親がやった方が良いのは比較じゃなくて、方向があっているかのナビゲーターや、回復を助けること。

たくさん勉強できる子。自分で管理のできる子。主体性を持って取り組める子。質問を活用している子。成績の良い子。そういう子の話をどんどん頭に入れていくと、そっちが理想になり、それに比べてうちの子は〜ってなる。優秀な子を見て、自分の子にがっかりする。これで得することは本当にないです。

理想形の「良いわね〜」じゃなくて、「うちの子も〜っ」て感じるやつが、子供本人の姿に近いから、モノサシにできる。その状態から、一歩先って何だろう。どうすれば踏み出せるだろう。この工夫。自分の意識のチェック。理想の子と比べていないか。子供にとって無理なこと、そもそも子供に合っていないことを求め、がっかりしてみたり、攻撃的になったりしていないか。

今のレベルや性質に合った次の一歩に期待する。初心者だけに限ったことじゃなく、偏差値70でも40でも、入試1ヶ月前でも3年前でも、これは変わりません。今の本人と、次の一歩が大事。「そこまでは無理でもせめてこれくらいは」って言うのは、自分ではハードルを下げてるつもりでも、肝心の子供の姿が入っていない。

子供に時間やお金を使うのは、子供を追い詰めるためでも、失望するためでもないですよね。元気に頑張らせて、なるべく勝てるようにサポートして。苦しい道のりや、負けてボロボロになって帰ってきたら、それを癒してあげる。このあたりのイメージを保った方が、結果も出しやすいから、二重に美味しいです。

親の強みは何なのか。

別に自分が泳げなくても、信頼できるコーチを見つけて、子供にはしっかり先生のいうことを聞きなさい、って言えば良い。親が泳げないからって、子供が泳げるようにならないわけじゃない。

親の存在が大きいのは、環境を与えるためにお金を出すこと。子供が何度約束を破ろうが、失敗しようが、見捨てないで寄り添えること。これまでも一番長い時間を過ごし、10年以上成長を見てきていること。これからも家で時間を共有すること。この、他人にはできない圧倒的なつながりが親の武器です。

コーチングとか心理学とか、学んで取り入れるのは素晴らしい。勉強そのものを教えるのも良いし、何をやらせるかの管理はやった方が良い面もあるけど、そこが親の最大の強みではありません。塾や外部の人間が出来ることを代わりに家で出来るなら、外に金を使わずに済むだけ。

出来るようになると信じ、出来たら喜ぶこと。一段一段積み上げて行った先が、最高到達点です。それが志望校なら、目標は適切だった。そこにかすりもしないなら、高望みしすぎてた。学力的には勝負できるところに届いたけど落ちたなら、時の運。

やってみないとわからないから、願望のゴールは高くたって良いです。でも、一段ずつ上がっていくしかないし、時には停滞や後退だってある。疲れたら回復を目指すのも立派な次の一歩だし、無限に次の目標をクリアし続けなきゃいけないわけでもない。

親に出来る最大のことは、期待して支えることだから、自分の子供に適切な量の期待をすることが、とても大事。期待値を下げましょう、ってニュアンスではなく、ちゃんと子供本人に合わせましょう、ってこと。あとは宿題やプリントの管理とか、顔色や行動を良く見てあげるとか、自分の出来ることをやって支えていけば良い。

合ってないことをやった分だけ、自分も子供も負担が大きくなるし、傷ついたり、傷つけたりも増える。そのマイナスの分だけ、目標からは遠ざかります。性質、才能、習慣、今の実力。親が良く知っている、見えていることを大事にして、ちょうど良い期待に調整して、次の一段を上がれるように支えてあげてください。

 

 

 

中学受験に挑む子供を支える、夏から秋にかけての親の心構え その2

ここしばらく、結構な数のご相談がありました。色々な悩みや不安を感じたりすることがあっても、懸命に受験に向き合っている方が多いことを実感しています。全ての人に合う必勝法みたいなのは書けませんが、他者の視点を知るひとつとして活用して頂けるような記事を書いていければと思います。

今日はちょっとまとまりのない記事になったので、あとで加筆修正するかも知れませんが、暫くお休みしていたので公開しておきます。

 

おならぐらい出ちゃっても良い。

人間なんで、毎日食べて出して眠ります。子供がいるのもちょっとした秘め事の結果で、そんなに大っぴらに語るようなものでもないけど、恥じるものではないですね。

弱さや汚れもあるけど、それを人に見せずに始末したり、綺麗に身支度することだって出来る。数日お風呂に入らなければ臭うけど、体を洗って清潔な衣類を身につければ臭わない。用もトイレで済ませば良い。

親になったら完璧な人間になれる?自分よりはるかに弱い子供にとって、絶対的な存在だから?そうあろうとする努力は続ける方が良いですね。でも、そんな簡単になれるもんじゃない。失敗して、反省しながら成長していくしか手はないです。

子供の前で完璧を目指す必要もないし、おならぐらい出ても良いでしょう。家族なんだから、少しくらい隙が出ることもある。でも、顔の前でするとか、まして●まで投げつけたりするのはまずいですね。

自分の弱さも同じこと。それなりに遠慮して、始末する。わざと人にぶつけないし、うっかり出たらあら失礼。そういうエチケットが大事で、弱さや未熟さが無くなったら凡人は超えてる。世の中には素晴らしい人もいるみたいだけど、そんなに凄くならなくても受験は乗り切れます。

だから、自分の弱さも“おなら”で留めることを考えましょう。節度ってもんがあるし、やっぱり一番の味方でありたい。子供のこと、特に人格とか可能性を否定するような言動に気をつける。もちろん肉体的な暴力も振るわず、心と体を傷つける事がないように。

 

短気になるのは自分の期待値から。

例えば、手紙を出したとします。ポストに投函してすぐ、自宅の郵便受けを覗くって人は、そういないですね。翌日も見ないでしょう。文通だと、一週間や二週間気にしない人や、忘れてる人もいるでしょう。

メールだと、翌日くらいまでには返事を期待することが多くなります。業務メールだと数時間とか数十分にまで縮むこともある。これがSNSスマホ宛メールだと数分〜数十分単位も割と普通で、いつものペースで既読がつかないと心配になったり、既読スルーだとすごく気になって、嫌われてる不安や怒りまで感じたり。

同じ、自分が伝えたことへの相手の反応を待つだけなのに、手紙、メール、SNSで全然違いますね。自分が「こういうものだ」と思っている枠組み+期待(≒不安)の組み合わせはとても強力で、短気とか怒りはこの影響をものすごく受けます。

親の介護が辛いのも、この期待値の影響が大きいです。恋人同士や夫婦間、友人や職場との人間関係でも。相手がこうしてくれるだろうと思っている期待値、過去のその人だったり、普通はこうって意識だったり。

だから、枠を広げて、気楽な構えをなるべく作っていく。「子供は別の人格」「目の前のことに集中しやすい=他のことは忘れる」「友達の影響も受けやすい」「感情の影響が大きい」...いろいろありますが、見聞きしたものから、自分の子供に似ていること、ハマると感じることがあったら、それをしっかり認識できているか、チェックしてみてください。

期待をしちゃいけないって意識ではなく、現在の子供の能力や状態に対して適切な幅の期待かどうかに注目しましょう。自分の子供に対する期待なんて、そうそう捨てられませんから。出来もしないことをやるより、出来ることで前進する方が、遠くまで行けます。

 

自分のパターンを知って、少しずつ対処を覚えていく。

頭にきてしまう時は、一歩下がりましょう。例えば成績を見て話す時に失敗した経験があるなら、成績は一人で見るようにして、子供へのメッセージは手紙や日記を書いてみる。一晩おいて、これを他人に言われるとどう感じるか想像してみる。

書くことで、目と手を使えます。この作業を挟むことで感情の激しい波が収まったり、一旦外に出して目から再入力することで、客観的な位置を取りやすくなる効果は大きく、時間を置いて読み返すと最初に書いたことは結構言い過ぎだったりします。

感情の赴くままに書き出し、それを客観的に眺めることで、自分の鬱陶しさや恩着せがましさ、怒りや見下す気持ちなどを詳らかにしていくことは、人に伝える上でとても有効なこと。誰にも見せずに鼻毛を処理するようなものとして、習慣化すると良いです。

書くこと自体に、自分の鬱憤を吐き出す効果もあるので、誰かにぶつけずに消化する手段としても有効です。心からそのまま言葉を出すと、自分の正当性で相手を殴ろうとしてしまうけど、殴る相手をノートに変えれば傷つく人はいない。「書き殴る」ですね。

これを幾つかのパターンで整理していくと、自分のスイッチが固まってることも見えるはず。そこが、自分の不安とか、人から評価されたいところ。大抵は、正当化とセットになります。

 

教育で、正当性の主張ほどタチの悪いものはほとんどない。

正当性の主張は、正義の鉄槌方式で自分の攻撃性を肥大させるから。攻撃は、相手を潰すためにやるもの。少なくとも何かを伝え、相手を育てる役には立ちません。今やってることを正しいって信じるのは大事。で、本当に正しいなら、キャンキャン喚かない。頑として、落ち着いて、引き算で、低い声で。

苦しいこと、疲れること、面倒なこと、負けること、そういう全てから逃げるより、困難でも粘り強く取り組むことは大事です。登山でも、工作でも、スポーツでも、芸術でも、学問でも、全てのジャンルで大変さはある。

絵を描いてたって、色塗りに失敗して癇癪を起こしたり。ゲームで負けてイライラして泣いたり。工作で難しさに嫌気がさして放置になったり。かけっこで負けたらもう行かないとか。そういうの全部OKではないですね。

ただ楽しいだけで伸びることは稀で、壁を乗り越える大変さはどこにでもあるし、好きなことしかやらないと他の能力を伸ばし損なう。

もしその子が、本物の天才で出会いにも恵まれたら、1つのことしか出来なくても幸せになれるかも知れない。でも、ほとんどの子は、好きなことだけ一日中やっても日本一にさえなれないし、出来ないこと、人より劣ることで攻撃されたり、疎外されたり、見下されることは山のようにある。

楽と楽しいは似てるから、楽な方にだけ流れやすくなるし、大変なことから全部逃げて、好きなことだけやらせても、生き辛くなる可能性は少なくない。今、一生懸命勉強することで、将来に色々な可能性が広がってくる。大体このあたりまでは、悪くないと思います。

では、困難を乗り越えるとか、苦手に感じても努力する、決めたことをやり抜く、ってことを教えるのに、殴ったり、怒鳴ったり、バカにして良いのか。ここがダメです。

出来るまでやる。決めたことを守る。壁を抜ける喜びを教える。負けから立ち上がらせる。どれにも、怒鳴ったり殴ったり侮辱したりは必要ありませんね。社会に出てそういう目に遭うことはあるかも知れないけど、親が子供にやる必要はない。正しいときは相手を攻撃しても良いって考えから、まず自分が離れる。

 

もし、やらかしてしまったなら。

学ぶこと、努力することの先に何があるのか。受験の先に、どんな将来が広がっているのか。そういう話をしても全くやらない子は、受験に参加さえしていない方が多いでしょう。ほとんどの子は、先に良いことがあるなら、山を登りたいと思う。で、しんどさから逃げたり凹んだりしてるだけ。正しいことくらいわかってる。

山を登っている人は今苦しいから、そこをどう切り抜けたか、って話が良い。次点は、頂上の景色とか、休憩所まで後どれくらいって励ますこと。足並みを見て、水を飲ませてあげるのも良い。でも、いかに自分が選んだルートか正しいか力説するのは、黙ってた方が良いレベル、マイナス気味の無駄になる。まして攻撃はマイナスそのもの。

挙句に「お前は意思が弱い」「お前は嘘つきだ」「何回言っても直らない」とかね。なってほしい姿の逆暗示かけて何がしたいのか。もう言いましたか?もし十回言ったなら、二十回は上書きしましょう。「お前の中には強い意思がある」って。百回なら、二百回。千回だって良い。

最近も衝突してるなら、その中の意思を認める。最近はなくても、ちっちゃな頃、良い子になるもっと前の、意思を示した時のこと。おもちゃを手放さなかったり。片付けなかったり。きっとどこかに、自分の意思を示して、通そうとした時があったはず。それを話せば良い。「私は間違った。あなたの中には強い意思があった。まだそれが勉強には使えていないだけ。」これで良いです。

子供は、まだ体も顔も変わりますね。心も同じで、まだ大きく形が変わっていくから、傷ついても治る力も持っている。子供に傷をつけたら一生残る?知ったことじゃない。少なくとも、だから手遅れ、何もしない理由にはならない。深い傷なら浅く。浅い傷なら薄く。薄い傷なら見えないくらいに。痛みがあるなら和らぐように。親の手当てより効くものはないです。

 

答えはとっくに見えているかもしれない。

攻撃することは、尊厳を傷つけるだけでなく、学力の向上にもマイナスです。心や脳が萎縮するから、十全に能力を発揮できなくなる。

サボってる奴隷を無理やり歩かせるには、ムチも有効かも知れません。では、全力疾走してるランナーや、真剣に作業してる職人を殴るとどうなるか。遅くなりますよね。

叱ってやらせるのは、やらないよりやった方がマシって段階でしか伸びない。同じだけやるグループに入ったら、勝ちたい方が勝つ。だから、偏差値55くらいから上の闘いは、奴隷方式で上がっていくのがどんどん難しくなります。特に6年の秋以降は、ほとんどの子がまとまった可処分時間の大半を勉強に注ぎ込む。どこで差が付くかというと、脳が暇な時間です。

1日16時間、塾と家庭で勉強5〜6時間として、残り10時間。学校にいる間や塾への往復、帰宅後〜就寝前の隙間時間の方が、トータルでは大きいですね。休みの日だって、せいぜい8〜12時間くらいで、残りは脳が暇にしてる。この間の時間は、本人が好きなことしか考えません。どう強制しても、一緒に居ない間のことはコントロールできない。それどころか、むしろ居ない間は反動が出ます。

スイッチとか、ポケモンとか、カードとか、お笑いとか、Youtubeとか。こういうのを、即日覚える仕組みが、脳が暇な時の反芻です。この反芻は、気になっていることか、興味のあることしかやらない。ヒマさえあれば考えてる、これが最強なので、勉強を嫌いにさせたら、特に上位層では高確率で競り負けます。

嫌がっていると、周辺に逃げます。塾にはいくけどボーッとしてる。家でも延々と用意とかしてて、勉強はなかなか始めない。わかってるから、逆方向にはいきません。なるべく周辺の、関連してそうなことに逃げる。せっかくやらせるのに、足を引っ張っても仕方ないですね。

大人は失敗の経験もあって割と早くから不安になるから、5年生くらいから気になって反芻を始める人もいる。だから、空き時間全部やって欲しくなる。でも、子供が落ちるかも、って不安を感じるのは、6年の夏くらいだと早い方、遅いと1月になってから。不合格を手にして、やっと感じる子さえいる。

だから、不安由来での反芻を子供に求めても感覚のギャップがあって噛み合わない。楽しむとか、興味とか、勝ちたいとか、凄いって言われたいとか。プラス方向の反芻をしやすくなる工夫をしないとなかなか届きません。

それに、楽しんでいることへの接し方には、学習のヒントが詰まってます。じっと本を見る。何度もカードをひっくり返しては並べ直す。謎の紙にリストを書く。僕の考えたモンスターの絵。やたらと喋って説明したがる。歌って踊る。好きな何かを覚えるときに、自然と繰り返しているパターンにも、個性があります。

これこそがその子の得意な学習パターンで、自分の記憶回路をどう使えば良いか、とっくに見えてることが多い。おしゃべりな子に書かせるとか、歌う子に読ませるとか、効率の悪いことをやってると、これも競り合いで負ける差を生む。子供をよく見てください。親が一番目にしてきた成長過程に、その子の特性がいっぱい見えてるはず。


子供が元気で笑顔、言いたいことを言える関係ならOK。

中学受験の指導を頼むとき、開設したばかりの塾や指導経験のない講師より、多くの合格実績がある塾や経験豊富な講師を選びたくなるのは、経験に期待する部分があるからですね。

何度か触れたことがありますが、ほとんどの親は中学受験を支えるのは初めての経験か、あっても2〜3回。中には最初からとても上手に出来る人もいるでしょうが、そっちの方が珍しい。ざっくり言えば、みんな悩むし、失敗もします。

元気で言いたいことが言える空気なら、苦労しようが、辛かろうが、負けて泣こうが、挫けて意気消沈しようが、良いです。成績が伸びるかどうか、第一志望に合格するかどうか。そんなの、ほとんどは子供の努力と資質が決めること。

中学受験は親が何割とか、気にしすぎは良くありません。手厚いサポートがある方が良いけど、学力や合格に占める割合では、一番大きいのは子供自身の努力と才能、次は塾のテキストやカリキュラムで、親や周囲の力など微々たるものです。

親の責任が大きいのは、自分で勝手に受験を決める事は出来ないから。サポートが必要なのは、努力を継続したり才能を伸ばすことが、まだ小学生の子供だけの力では難しいから。ここを混同しない方が良い。

より良い環境を目指して努力すること。その結果、勝ったり負けたりする経験をすること。頑張ることや、負けを経験すること自体が可哀相なんてのは相手にしなくて良いです。負けることもあるし、失敗することもある。成長するっていうのは、そこから学ぶこと。

何より、努力が必要な状況に身を置いてこそ、自分の弱さを知ることが出来る。やれば出来るとか、根性を出すとか、軽々しく口先で言うより何倍も困難なことを実感できる。工夫して、自分の弱さと向き合えば、大袈裟でなく5年先、10年先、場合によっては一生モノで役立つ知恵と経験が手に入る。

学校や塾では、ほぼ画一的にこうしなさい、って「正しい学習方法」を押し付けられる。覚えてる漢字でも何回も書き取りさせられたり、わかってなくても次に進んだり。当然、ハマらない子には苦痛が多い割に収穫が少ない。努力の割に、結果が伴わないから、劣ってることになる。無限に上にはいけないけど、そこを改善することで、まだ伸びしろがあることはとても多いです。

 

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個別のご相談についてのお知らせ

このところ、ブログ経由でご相談を受ける機会が増えてきました。成績を見ての学習相談、志望校選択に対するアドバイス、子供との接し方や自己コントロールなどについてのご相談、愚痴や自慢でも気兼ねなく話せる外の繋がりなど。対応できるもの、難しいもの、大してお役に立てないもの、いろいろあると思います。 

ご相談・成績分析お申し込み時に希望される方には、個別サポートについてもご案内します。個人対応のため、ご縁のできた方のみのご案内とさせて頂きます。(2021.2.24)

受付再開します。(2023.2.5)

→成績分析について

→ご相談・成績分析お申し込み受付

※ 2022.9.9 改訂

①成績分析、②併願校検討シート作成、③学習内容などについてのご相談は、全て初回無料で対応します。有料での対応となるのは以下のケースです。

・再度分析やご相談をお申し込みの場合

・毎週、毎月などの継続的なサポートをご希望の場合は個別サポートをご案内します。

ご相談で知り得た個人情報を回答以外の目的に使用したり、口外することは一切ありませんし、例えば成績推移や合格実績などと謳って個人を特定可能な情報を無断で掲載することもありません。周囲に相談しにくい悩みができた時や、塾や家庭教師以外のセカンド〜サードオピニオンとして、お気軽にご相談ください。

詳細な成績分析と学習指導については、お受けすることが可能な時期もあるかも知れませんが、費用も最低で数万円、内容によっては夏期講習くらいの金額になります。テスト結果履歴や答案などの個人情報を頂く必要もあるので、何度かのご相談を通して信頼関係の構築が出来た方のみ、ご要望を伺った上での個別対応とさせて頂きます。

最後に、ご相談を受けた方にお願いして、お寄せ頂いた感想を掲載します。喜んで頂けて嬉しい反面、自分で貼る事に気後れするくらい褒めて頂いているので、これからご相談を検討される方は、あまり期待値を上げすぎないようにお願いします。

 


 

今年受験を控えている、小6女子の母です。

改さんの対象とされている読者の方々と比べるとお恥ずかしい成績の我が子ですが、ブログから伝わってくる暖かくて明確なお人柄に惹かれ、今回ご相談させて頂きました。

今回無料でご対応頂く事が本当に申し訳ないほど丁寧なお返事に感激しています。頂いたアドバイスはプリントアウトして、いつでも読めるようにいたしました。子供に接する時にはいつも心がけたいと思います。

受験まで、またご相談させて頂くこともあるかと存じます。勝手ながら心強い味方が出来たようで、嬉しいです。

 


 

小6の男子の母です。

先生の分析とアドバイスは、私にとってはこれまでに使ってしまった講習会の参加費用を全てお支払いしたいくらいの価値がありました。

自分が盲目的になりやすいことに気をつけていたつもりですが、愚かな母です。子供にどれほど無駄な負担を強いてしまったのかと思うと涙が出ます。

まだ時間はありますものね。子供の元気を支えるを合言葉に、どんな結果が待っていようと私が彼を傷つけることのないように心がけていきます。

 


 

地方在住小5女子の母です。

地元の学習塾に通っていますが、塾の先生には相談しにくい内容や首都圏受験についてアドバイスを頂ける先生を探していました。

今思えばかなり漠然とした内容の相談だったと思いますが、改先生は家族の意思や背景を汲み取って下さって、丁寧にご返答下さいました。

改先生の長年の経験と分析に基づくアドバイスはさすがの説得力でしたし、勉強面以外の不安についても解消する事が出来ました。

今後も改先生にサポートして頂きながら、合格に向けて家族で努力し続けていきたいと思っています。

 


 

私は小5の息子を持つ母親です。

先生は拙い質問内容から、我が子の特徴や家庭のことを良く把握してくださり、とても驚きました。理路整然として、それでいて優しいお人柄も伝わってきました。

ご教授頂いた内容を何度も読み返しております。私自身しっかりと受け止め、息子にも伝えていきたいと思います。

何度も家庭教師をお願いしてしまい申し訳ございません。今後ともご指導よろしくお願いいたします。

 


 

小5男子の母です。

暖かくて明確なアドバイスをありがとうございます。とても心に響きました。

私の期待と焦りが、子供の自信や意欲を奪う方向に動いてしまっていたこと、気をつけるべきことがよく分かりました。

先生に直接指導を受けられたお子さまたち、お母様方が羨ましいですが、今後もサポートして頂けるということで安心しております。

多くの時間をかけて丁寧に説明して下さったこと、とても感謝しています。ありがとうございました。

 

中学受験に挑む子供を支える、夏から秋にかけての親の心構え その1

夏が終わると、親の方はかなりプレッシャーが強くなってきます。順調でもそこそこ心配だけど、成績や子供の意欲の低下なんかに直面すればもっともっと心配。実際に大変なレベルに突入する人は少なくても、大事な話だと思うので少々深刻めに書きます。

これから自分に起こることを想定しておく。

まず、どんなことでもプレッシャーがかかれば、自分の弱い面が出やすくなりますね。親も子供の中学受験は初体験の人が多いし、1人や2人の経験があっても、上の子とは性質や成績が全然違うこともある。だから、自分はそんなにうまくやれない可能性もある、弱いところが出ることもあるだろう、という備えをしておくと良いです。

子供にも話すことですが、他人からの評価より自己評価が高いことが珍しくないのは、本人は長所を自分だと認識しているのに対して、他人はアラが目につくことが多いから。

でも、長所も短所も含めた全部が自分です。どこか一部だけ切り取ることは出来ないから、良いところだけ出そうとするより、全部でバランスを取ることを考えた方が良い。

自分の傾向、辛い時に塞ぎこむのか攻撃的になるのか、頑固になるのか迷いやすくなるのか。これまでにしてきた失敗、自分が弱ったり、人を傷つけたりした時のことを、もう一度思い返してみてください。

それを子供や家族との関係で出し過ぎないように、できる予防をしっかりやっておく。甘く見ていて失敗した、想定外でパニックになった、期待を裏切られて攻撃的になりすぎた、溜め込んだ不満が爆発した。いろんな過去があると思いますが、それを経験して今になっているわけですね。少なくともその点で、子供より対策の取りようがある。

致命的な言動を避けるだけで、備える意味はある。完璧は求めなくて良い。

この後、過去問対策などの記事も書きますが、親がやれることは本当にたくさんある。そして、子供より経験を積んだ親の方が、隙間時間にも心配事を何度も反芻しやすくて、脳内を受験が占めている時間も長くなる。

自分の多くを捧げたことは、報われたいものです。親だから、受験を支える側だからって、その欲から完全に離れることは難しい。そもそも期待していない場合は、安定も保ちやすいですね。ただ元気で頑張ってることを喜べて、弁当作って送り出すくらいなら余裕を持てるのは当然。

でも、現在の中学受験で、ある程度の親の協力なしで難関上位校に入れるのは、素質や出会いに恵まれた一握りだけ。残りの席は、親子の総力戦での奪い合いです。もちろん実力相応の志望校選定なども大事だけど、努力が報われるようにしてあげたいと思うと、自然と厚めのサポートも必要になる。

仕事や家事と並行していつも頭を悩ませている中で、子供が思うように動かなかったり、頑張っているのに伸びない状況に直面する姿を見たりすれば、平静から遠くなる可能性も増えて当然です。そして、その確率は何割かある。

そして、年齢的な問題。中学受験期の親は30代後半〜40代が多いので、仕事のストレスと更年期がダブルで来ることもある。障害と言うほど重くなくても、ホルモンバランスが変化してくるので、感情の振れ幅も大きくなりやすい時期だし、女性に限った話でもない。だから、自分の不安定さを観察する意識を持ちましょう。なるべく一人で何とかしようとしない。

信頼できる人と繋がること、自分の参考書を決めること。

私が関わるのは大半が父親繋がりの紹介ですが、秋冬に母親繋がりの紹介で駆け込んでくる人がいる。これまでに相談を受けた人数は、実際に勉強を見た人数の数倍です。

その半数近くは、言い方は悪いけどタチ悪いのに引っかかったら大変なことになりそうな鴨ネギ状態に仕上がってる。不安定になるほど、つけ込む隙が大きくなります。

この人たちに共通するのが、それまでかなり一人で抱え込んでいること。もうちょっと早く繋がってくれていたらなぁ、って人も多いけど、それでも繋がれただけマシ。初心者+不安+孤立、これは本当にカモになる条件を揃えたような状態ですね。

秋冬にパニックになってからでは少し遅い。家庭崩壊とか重大事件に発展するなんてことはなくても、受験に間に合わなくなって、余分に傷つく可能性が増えてしまう。なので、夏〜秋までに、人と繋がる工夫をすること、中学受験がゴール!という意識から少しでも離れること、この二つに取り組んでください。

こういうブログやSNSでの繋がりも良いけど、通常の人間関係以上に攻撃性などのマイナス面も出やすい上に、発信側は承認欲求か儲けが原動力になっていることが多く、依存心ウェルカムの信者集め構造にもなりやすいので、弱った時に頼る相手としてはリスクが高い。適当に使えそうなところを摘み食いするくらいでちょうど良いです。

人との繋がりがプラスかどうかは自分で決めれば良いこと。その人と話すことで冷静になったり、元気が出るかどうか。落ち着いて安定する状態に近づくことが大事です。

直接的にカウンセラーや受験コンサルに繋がるのは、時間や金銭的な問題だけでなく選ぶ基準も難しいので、まずは塾講師+本、可能なら複数の受験経験者の親の組み合わせがオススメ。

塾講師は、自分と子供のフォローだけに特化してくれるわけではないですが、直接子供を見ている、最も繋がりやすいプロです。ファーストオピニオンとして、しっかり頼る方が良い。可能なら校舎長+子供が信頼している講師など、複数と話せると理想的です。

次が本。既に受験本なども幾つか読んで参考にしている方も多いと思います。その中から1〜2冊、自分にとっての参考書を決めましょう。「こうすると良い」って理想型や方法論だけでなく、弱さへの対処法が丁寧に書いてあって、それに共感できるものを選んでください。最初の受験は、守破離で言えば守の段階で終わるので、しっかり実践するものを決めておくと良いです。塾講師と違い、選べるのも利点ですね。

Webの記事は、瞬間的にその部分だけに触れる人が多いので、どうしても端的に「正論」や「やるべきこと」を書くことになりやすい。それに比べると本は全体を読んでもらうことを前提に書けるので、その人の経験に基づいた知見を体系的に書きやすいですね。単にあるあるで共感したいとか、憧れたり縋ったりする藁が欲しいだけなら「○○の親」的な立場からの本も面白く読めますが、本気で参考書にするなら現場で場数を踏んだプロの本がおすすめです。

ママ友なら、同学年でなく受験終了組のママ。なるべく複数の先輩が良いです。協力的な親(子供にとっての祖父母)なら、赤ちゃんの時にフォローしてもらった時以上に助かることもあるけど、逆に無神経な言動が気になるなら受験が終わるまで少し距離を置いた方が良い。

それでもバランスを崩したら、婦人科やメンタルクリニック心療内科、精神科などの医療に繋がることを選択肢に。受験コンサルはまだ新しい分野で、大したことないのも相当数いるジャンルなので、切羽詰まってからだと悪質なのにカモられて終了の可能性が高い。風邪で内科に行くのと費用もそんなに変わりません。調子悪いと思ったら行ってみれば良い、って頭に入れておいてください。

大事なのは、自分の弱さを出せることと、誰かに気にかけてもらえること。弱さを出せて、客観的な話を聞ける場が他にあれば、子供に弱さをぶつけるリスクは軽減できます。

 

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勉強の合間の雑談(1)適材適所の話

受験勉強の合間には、よく雑談をします。既に教えた子の半数以上は社会に出ていますが、今でも覚えていて良く話題に出るのは当時の雑談の内容。大人扱いされて聞く最初の段階だから、強い印象を残せるのだと思います。聞いた経験が少ない子供には新鮮というのもあるでしょう。

お金のこと、仕事のこと、生活のこと、人間関係のこと、政治、思想、信条、宗教。どう受け取るかは本人次第ですが、親の人生観や価値観を伝える良い機会になりますし、たまたま論理力の育成に役立ったり、時事問題を吸収してくれたら儲けもの。教科や単元が独立したものではなく、様々な繋がりを持つことも伝わるかも知れません。

私が話したことをざっくり書いていきますが、ご自分の経験や人生観を伝えるネタとしてご活用頂ければ幸いです。効果を期待するのではなく、何か一つ二つ残ればラッキーな種まきとして、色々な話をしてあげてください。

適材適所の話

集団で仕事をするとき、何かが足りない人がいたら、その人の持ち物は何かを考える。誰かの出来ることで、その人に預けられることがあれば、その人の不足を別で補えばチャラに出来る。

仕事を10種類に分けて、1人は10個出来るけど、もう1人は6個だとする。そのまま足すと16。で、能力の低い部下が〜ってやってる大人は多いけど、守備範囲が6でも、範囲内のことなら10の量を出来ることは結構ある。

例えば作業能力はあるけど、管理やバランスが苦手な奴とかゴロゴロいる。この人に、作業エリアで2人分の10を持たせる。他の人に、管理やバランス中心に10預ける。そうするとトータル20。誰かに14も背負わせると潰れるし、他の4人に11だと潰れにくい代わりに不公平感が出るけど、1人あたり10に出来れば持続性がある。

だから、どうやっても人材や道具のバランスが悪い時は、そこを調整する。儲かってなくても人を入れたり、機械やソフトを入れる決断が必要なこともある。どこかにしわ寄せで乗り切れるのは短期で勝てる時だけ。どうしても金を引っ張れない時はしわ寄せ方式で行くしかないけど、負ける率が上がる。気力も体力も有限だし、成果が出ないで頑張れる時間はかなり短い。

その上、偏ってる人は出来ることだと割と得意なこともあって、うまく回すと10の負荷で12とか15できる人も見つかったりする。こういうのがいてくれると、トータル25になる。これが儲ける一番簡単な方法。2人で16→25だと業績は5割増しだから、上昇分に段階的に振ってる成果報酬契約だとかなり美味しい。

適材適所っていうのは、自分が儲かって喜ばれる仕事。人にラベリングして見下すと、そこから遠くなる。手持ちをどう使い切るか、足りない部分をどこから引っ張るかを考えるのが、一番簡単な方法。つまり、偏ってて評価が低くて、まだメンタルが壊れてない人を見つければ、大して苦労せずに儲けられる可能性がある。

定型で切り分けるのは無駄が多い。手持ちの武器でどうやって勝負できるようにするかを考える。全勝は無理でも、結構やれるところまでは持っていける。しかも、6しかないってことで損をしていた人は、自分が評価されることで感謝までしてくる。儲かった上に感謝までもらえて、自分がいい人間になったような気がするから、報酬2倍。

みんなが正直で、違いを受け入れて、努力する社会って理想だけど、もしそうなったら、例えば正直でも努力しても普通だから、「高い評価」はされない。ズルをする奴とか怠け者がいるから、正直で努力するだけでも価値になる。やらない奴の存在は、努力する側の相対的な価値を高めてくれる。

受験サポートも、適性が全くなければ無理だし、本人の努力が足りなくても無理。でも、合格すると感謝してくれる。努力したのは本人なんだけど、それを言っても「いや、おかげ様で」とか。塾とか今までの環境より良かったおかげで、感謝される。頑張れるやつの環境を整えるだけで良い。

ほとんどの人には得意不得意がある。自分の経験や常識があるから、そこから外れるところがあると目につきやすい。その裏に、得意があることは多い。何かが出来ないと感じる相手を見つけたら、その性質に注目すれば出来ることが見つかることが多いし、不得意なことを人並みにさせるより、得意なことを余分に持たせる方が楽なことも多い。

ノコギリとハサミがあって、板20と紙が200あったら、ノコギリには板を20切らせて、紙をハサミで200切るのが一番効率がいい。どっちにも板10枚、紙100枚ってのが一番損をするけど、これが割と多い。みんなに絵と作文と計算と掃除と料理をやらせるより、得意な奴に振ってバランスを取る方が良い。

 

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こんな感じですね。雑談は全く違うことでも、逆の内容になっても良いと思います。自分の価値観を伝えて、子供なりに勝手に受け取る。仕事の時は家にいない、家では家事をやるか説教するだけが親じゃなくて、子供の何倍も生きてきた経験を持つ大人だって伝わると良い効果があります。何かが刺さると、それこそ座右の銘みたいに残ることもあるから、楽しんで種まきをしてください。