偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験に挑む子供を支える、夏から秋にかけての親の心構え その1

夏が終わると、親の方はかなりプレッシャーが強くなってきます。順調でもそこそこ心配だけど、成績や子供の意欲の低下なんかに直面すればもっともっと心配。実際に大変なレベルに突入する人は少なくても、大事な話だと思うので少々深刻めに書きます。

これから自分に起こることを想定しておく。

まず、どんなことでもプレッシャーがかかれば、自分の弱い面が出やすくなりますね。親も子供の中学受験は初体験の人が多いし、1人や2人の経験があっても、上の子とは性質や成績が全然違うこともある。だから、自分はそんなにうまくやれない可能性もある、弱いところが出ることもあるだろう、という備えをしておくと良いです。

子供にも話すことですが、他人からの評価より自己評価が高いことが珍しくないのは、本人は長所を自分だと認識しているのに対して、他人はアラが目につくことが多いから。

でも、長所も短所も含めた全部が自分です。どこか一部だけ切り取ることは出来ないから、良いところだけ出そうとするより、全部でバランスを取ることを考えた方が良い。

自分の傾向、辛い時に塞ぎこむのか攻撃的になるのか、頑固になるのか迷いやすくなるのか。これまでにしてきた失敗、自分が弱ったり、人を傷つけたりした時のことを、もう一度思い返してみてください。

それを子供や家族との関係で出し過ぎないように、できる予防をしっかりやっておく。甘く見ていて失敗した、想定外でパニックになった、期待を裏切られて攻撃的になりすぎた、溜め込んだ不満が爆発した。いろんな過去があると思いますが、それを経験して今になっているわけですね。少なくともその点で、子供より対策の取りようがある。

致命的な言動を避けるだけで、備える意味はある。完璧は求めなくて良い。

この後、過去問対策などの記事も書きますが、親がやれることは本当にたくさんある。そして、子供より経験を積んだ親の方が、隙間時間にも心配事を何度も反芻しやすくて、脳内を受験が占めている時間も長くなる。

自分の多くを捧げたことは、報われたいものです。親だから、受験を支える側だからって、その欲から完全に離れることは難しい。そもそも期待していない場合は、安定も保ちやすいですね。ただ元気で頑張ってることを喜べて、弁当作って送り出すくらいなら余裕を持てるのは当然。

でも、現在の中学受験で、ある程度の親の協力なしで難関上位校に入れるのは、素質や出会いに恵まれた一握りだけ。残りの席は、親子の総力戦での奪い合いです。もちろん実力相応の志望校選定なども大事だけど、努力が報われるようにしてあげたいと思うと、自然と厚めのサポートも必要になる。

仕事や家事と並行していつも頭を悩ませている中で、子供が思うように動かなかったり、頑張っているのに伸びない状況に直面する姿を見たりすれば、平静から遠くなる可能性も増えて当然です。そして、その確率は何割かある。

そして、年齢的な問題。中学受験期の親は30代後半〜40代が多いので、仕事のストレスと更年期がダブルで来ることもある。障害と言うほど重くなくても、ホルモンバランスが変化してくるので、感情の振れ幅も大きくなりやすい時期だし、女性に限った話でもない。だから、自分の不安定さを観察する意識を持ちましょう。なるべく一人で何とかしようとしない。

信頼できる人と繋がること、自分の参考書を決めること。

私が関わるのは大半が父親繋がりの紹介ですが、秋冬に母親繋がりの紹介で駆け込んでくる人がいる。これまでに相談を受けた人数は、実際に勉強を見た人数の数倍です。

その半数近くは、言い方は悪いけどタチ悪いのに引っかかったら大変なことになりそうな鴨ネギ状態に仕上がってる。不安定になるほど、つけ込む隙が大きくなります。

この人たちに共通するのが、それまでかなり一人で抱え込んでいること。もうちょっと早く繋がってくれていたらなぁ、って人も多いけど、それでも繋がれただけマシ。初心者+不安+孤立、これは本当にカモになる条件を揃えたような状態ですね。

秋冬にパニックになってからでは少し遅い。家庭崩壊とか重大事件に発展するなんてことはなくても、受験に間に合わなくなって、余分に傷つく可能性が増えてしまう。なので、夏〜秋までに、人と繋がる工夫をすること、中学受験がゴール!という意識から少しでも離れること、この二つに取り組んでください。

こういうブログやSNSでの繋がりも良いけど、通常の人間関係以上に攻撃性などのマイナス面も出やすい上に、発信側は承認欲求か儲けが原動力になっていることが多く、依存心ウェルカムの信者集め構造にもなりやすいので、弱った時に頼る相手としてはリスクが高い。適当に使えそうなところを摘み食いするくらいでちょうど良いです。

人との繋がりがプラスかどうかは自分で決めれば良いこと。その人と話すことで冷静になったり、元気が出るかどうか。落ち着いて安定する状態に近づくことが大事です。

直接的にカウンセラーや受験コンサルに繋がるのは、時間や金銭的な問題だけでなく選ぶ基準も難しいので、まずは塾講師+本、可能なら複数の受験経験者の親の組み合わせがオススメ。

塾講師は、自分と子供のフォローだけに特化してくれるわけではないですが、直接子供を見ている、最も繋がりやすいプロです。ファーストオピニオンとして、しっかり頼る方が良い。可能なら校舎長+子供が信頼している講師など、複数と話せると理想的です。

次が本。既に受験本なども幾つか読んで参考にしている方も多いと思います。その中から1〜2冊、自分にとっての参考書を決めましょう。「こうすると良い」って理想型や方法論だけでなく、弱さへの対処法が丁寧に書いてあって、それに共感できるものを選んでください。最初の受験は、守破離で言えば守の段階で終わるので、しっかり実践するものを決めておくと良いです。塾講師と違い、選べるのも利点ですね。

Webの記事は、瞬間的にその部分だけに触れる人が多いので、どうしても端的に「正論」や「やるべきこと」を書くことになりやすい。それに比べると本は全体を読んでもらうことを前提に書けるので、その人の経験に基づいた知見を体系的に書きやすいですね。単にあるあるで共感したいとか、憧れたり縋ったりする藁が欲しいだけなら「○○の親」的な立場からの本も面白く読めますが、本気で参考書にするなら現場で場数を踏んだプロの本がおすすめです。

ママ友なら、同学年でなく受験終了組のママ。なるべく複数の先輩が良いです。協力的な親(子供にとっての祖父母)なら、赤ちゃんの時にフォローしてもらった時以上に助かることもあるけど、逆に無神経な言動が気になるなら受験が終わるまで少し距離を置いた方が良い。

それでもバランスを崩したら、婦人科やメンタルクリニック心療内科、精神科などの医療に繋がることを選択肢に。受験コンサルはまだ新しい分野で、大したことないのも相当数いるジャンルなので、切羽詰まってからだと悪質なのにカモられて終了の可能性が高い。風邪で内科に行くのと費用もそんなに変わりません。調子悪いと思ったら行ってみれば良い、って頭に入れておいてください。

大事なのは、自分の弱さを出せることと、誰かに気にかけてもらえること。弱さを出せて、客観的な話を聞ける場が他にあれば、子供に弱さをぶつけるリスクは軽減できます。

 

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