偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

夏休みを活かす受験までの学習について

夏休みに入って一週間が過ぎましたね。講習に宿題に、基礎のまとめとテストのやり直し。子供も親も、どこが休み!って感じでしょうか。

6年生の方は、あと半年で子供と一緒に闘える時間が終わってしまいます。1月10日までは167日、2月1日まで189日。受験が終わって振り返った時に、最も濃く思い出に残る半年間です。

講習や合宿では早解きや難問に挑み、膨大な宿題と格闘することもあるでしょう。塾が一生懸命に火をつけようとしてくれるので、徐々に緊張感が出てくる子もいます。授業中だけで、家ではまだまだって子も多いけど、だんだん周囲の真剣な温度を感じ始める時期。

何度か触れましたが、応用系の難問や論理性を高めるトレーニング自体は、基本的には塾に丸投げのスタンスで良いです。これらの難問を解く技術は、すぐには出来るようにならない方が普通。自転車に一人で乗れるようになるのと、上手に乗りこなせるのは別ですね。一人で乗り始めた頃は、速度も出せないし、ちょっと何かあればふらつく。

応用も同じで、理解した、使って解けたという段階と、様々な形で出てきた問題に時間内に対応して正解できる段階には隔たりがあります。夏に「乗れるように」なったとしたら、そこから数ヶ月の演習を経て、11月頃にやっと「乗りこなせるように」なります。学校別やプリントで嫌ってほどやらせてくれるから、しっかり喰らいついてこい、って背中を押せば良い。

まとまった時間を取れる夏は、基礎の穴埋めにも、応用の土台作りにも本当に大事。でも、誤解してはいけないのは、これらは「夏に終わらせる」のではなく、「夏から受験まで継続して周回する」ということ。

特に親がプッシュした方が良いのは基礎。基礎。基礎。基礎。ってくらい基礎が大事。日々の計算、基礎トレ。漢字の要、言葉ナビ。基本を組み合わせた応用の初歩で間違った問題の周回。このあたりを毎日続けましょう。

 

夏期講習の内容は、受験まで周回を続けるもの

算数は夏に地力をつけて秋の学校別で演習で叩きこみ、国語は秋に論理性と過去問で得点力を上げる。用語知識系は直前まで何十回も回す、というのが基本形。特に、理社と漢字などの知識系は、受験前日まで力が伸びます。

算国でしっかり得点が取れていれば、理社の知識系は「後半の伸びしろ」くらいの意識でも良いですが、手をつけないのとは違います。夏からある程度細かい知識にも触れる回数を増やし、覚えきれないものを周回に加え、受験当日までに出会う回数が多くなるほど定着率は上がります。

まず、夏期講習で配られるプリント、私が詳しく見たことがあるのは四谷とSAPIXだけですが、どれも本当に実戦的な内容のお宝です。例えばSAPIXで配布される地理のデータバンク。夏の間に覚えても良いけど、覚えきれなくても問題はありません。大事なのは、まだ半年も周回に使えるタイミングで貰うこと。

受験まで周回するのに適した内容だからこそ「夏に」配布される。夏期講習でやるものは、ほとんど全部にそういう意図が入っていると考えて良いです。

特に記憶系は、夏休み明けに覚えていても受験当日に忘れていては意味がない。半年もあればかなり忘れますよね?もちろん、算数などは学校別についてこれる下準備の意味もありますが、基本的にはここで大量の知識に触れ、それを半年かけて自分のものにしてください、ってことです。

プリントで言えば、算数でも年末には解法と知識の最終チェックなどが配布されます。他塾や独学なら自分でうまくまとめる必要のあるものを、最激戦区で鎬を削るSAPIXや四谷のトップ講師がプリントにまとめてくれる。これらは直前まで何度も繰り返し目を通すだけの価値があるので、必ず活用するようにしてください。

 

正答率の高いものを確実に潰していく

算数は志望校と同等の偏差値を目指しつつ、正答率の高いものを漏らさずに正答すること、落としたら染み込むまで何度でも読み直す習慣をつけることが大切です。

こちらの記事のB型娘さんのように隙間なく正答しているのが理想ですが、毎回うまくいかなくても、漏らしを埋めていくように心がけてください。やることはどんどん増えていきますが、出来ないことがあるまま先に進んでも実力は上がりません。

子供はクラス内での競争や与えられる課題に注意が向きやすくなるので、親が埋めるポイントに意識を向けてあげることが有利に働きます。

日々の計算や基礎トレは毎日コツコツ続けてください。もちろん宿題やテスト対策も大事ですが、宿題10割で計算や漢字を0にするより、宿題が8割しか出来なくても、欠かさず基礎を続ける方を勧めます。


記憶系は休憩や隙間も活用する

机に向かわない時間も、ゴロゴロしながら受験に役立つものに触れておくようになると、記憶系の定着には役立ちます。4科のまとめやコアプラス白地図やアトラスも良いですが、勉強感が強いので休憩に回せる子は限られます。

以前も紹介した間違いを清書した野帳を眺めたり、山川の日本史図録などを与えても良いでしょう。冬にはSAPIXの重大ニュースや四谷のニュース最前線も取り入れて。

円周率や平方数、三角数なども含め、数字は暗記でかなり対応力が上がります。この記事でも紹介した基礎の数字や、簡単な計算変換を馴染ませるために、かるたを取り入れる手もあります。

白札の無地かるた自体は、市販されているものを使うのが便利。画像は上が無地かるた100枚、下は白札200枚入りのセットです。

 

計算は、例えば掛け算と割り算の混合式なら、掛け算を分子、割り算は分母に入れた分数にしてみたり、掛け算の片方を2倍、もう一方を半分にして九九で瞬殺できるようにしてみたり、99倍を100倍-1倍で計算したり、といった典型的なもので良いです。1行問題などからパターンを抜き出して使用しても良いでしょう。

かるたは休憩がそのまま記憶の周回になる点でオススメで、ハマる子はお正月にもやるくらいなので、好きそうな子には試す価値あり。数字だけでなく、歴史や地理から生物、漢字まで記憶系全般に使えるので、工夫してみてください。

漢字は横棒が一本抜けたり、止め跳ねを間違えたところだけ赤を入れたりしても良いし、ジャンルを混ぜたり、途中式と答えの2枚を揃える取り方をするなど、工夫次第でリラックスしながら覚えていくことが出来ます。

かるたは時間的に可能なら子供に書かせましょう。自分の間違った問題の解法を清書するのと同じで、真剣に書くとそれが記憶の土台になり、周回の効率を上げてくれます。1日5〜10枚でも1ヶ月で150〜300枚になるので、まとめて100枚とか作る必要はありません。むしろ少しづつ追加していく方が馴染みも早いです。

親が作る場合はプリンタで出力したものを貼ったり、名刺カードに出力するなどして手間を減らした方が良いでしょう。名刺カードはかるたよりボロボロになるのが早いので、データを残しておいてプリントし直すと良いです。読み上げ用の問題はA4などにプリントし、答えの方だけかるたに記入する形で十分使えます。


図を正確に描く練習

図形を普段方眼紙だけで描いていると、入試の時に手早く描けない可能性があります。図が苦手な子はいきなり3分割、5分割しようとして崩れるケースが多いので、2+1とか4+1の感覚をつけてあげると良いです。いわゆる図形問題だけでなく、線分図や平均の面積図など、正確に描くと視覚的に補強される問題は多く、線分が正確でないと図が歪むので、これは結構大事。

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5分割のパターン

あとは、苦手にしている立体切断など、なんでも良いので毎日一題描くようにすると上達します。立体切断は対面は必ず平行、などの決まりごとを覚えていれば難度としては高くない分野ですが、苦手な子は隣接する面と混乱したり、大事な線が抜けたりするので、基本形を描いて覚えてしまうのが早道です。