偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験の志望校・併願校を選ぶ心構え

秋の説明会、文化祭などの学校行事の日程もだいぶ出揃ってきました。ここで情報をしっかり収集して、受験する学校を絞り込んでいく。志望校を決める上で、大事だと思うことを書いておきます。子供の学習管理をしながら、とても忙しい日々だと思いますが、自分の体も気遣って、乗り切ってください。

 

子供は結構頑張っている。

自分の属する基本集団=小学校から離れ、週何日も塾に通い、帰宅後や塾のない日も自宅学習して、週末にはテストを受け、長期休みにも講習を受ける。重いバッグ背負って、電車にも乗ったりして。この時点で、結構な頑張りだと思っています。

中学受験の理由のひとつは、属する集団の空気が大学進学に有利なこと。学校外なら鉄緑やSEGやグノーブル、駿台河合塾まで幾らでも塾はあるのに、どうして進学実績と偏差値の高い難関上位校を目指すのか。同級生の空気や環境って大事ですよね。

で、今通っている小学校はどうでしょう。目指している進学校と同等の、進学意識の高い子だらけでしょうか。小学生が、周囲の進学意欲も高くない環境で、難関上位校を目指すのがどれほどのことか。個人的には、高校生が進学意識の高い環境で東大を目指すより、もっと大変なことだと考えています。

大人でも、会社に勤めながら週4〜5日講座に通い、毎週テストを受け、自宅でも頑張れる層がどれだけいるか。しかも休日も長期休暇も、旅行や遊びにもいかず、朝から晩まで勉強。

仕事ではストレスもある?子供は授業中も遊び放題、休み時間も寝ているだけでしょうか。普通の小学生も、ストレス低めの仕事と大差ない程度には、授業に人間関係、色々と頭や気を使っているものです。その上で通塾し、自宅でも勉強するなんて!なかなか凄いでしょう。

だから、休まず塾に通って授業を受け、しかも宿題までやってるなら、既に花丸級というイメージで接します。もちろん、上に行くには自宅学習が肝という話はします。勝たせるには、避けては通れません。

でも、頑張ってることを認めた上で勝ち筋を教えようとするのと、そのくらい当然、むしろ足りない、もっとやれ!って押し付けるのでは、子供の受け取り方は違ってくるもの。

まだ小学生だから親の影響を受けやすく、ある程度コントロールできてしまう。でも実際は、結構な努力をしています。そこを認めて、その成果を得られるように協力することが、大事な心がけ。子供が頑張ってるんだから支えて、努力に見合う結果を取らせてあげたい、合格させてあげたい。だからこそ、受験校の選定はとても大事ですね。

 

安全校を3〜4校は重ねた方が良い。

既に第一、第二志望はだいぶイメージが固まっている方が多いと思いますが、受験校は5〜7校は選んでおいた方が良いです。なるべく「偏差値とブランド」で選ぶ意識を抑えつつ、魅力を感じる学校を探すことをお勧めします。

第一志望50%、第二志望80%の子が10人いれば、確率的には1人は両方落ちます。参加者の1割が骨折するようなイベントには行かせない人も多いと思いますが、第一第二志望の連続落ちは、骨折などより大きな喪失感や辛さを味わう可能性がある。

私が見てきた中でも、栄東○-渋幕●-新座○-麻布●-学習院○-芝○(芝に進学)とか、渋幕○-早稲田●-学習院○-早稲田○(早稲田に進学)もいます。どちらも偏差値的には十分なレベルだったし、早稲田1回落ちの子なんて合格した渋幕と早稲田2回の方が偏差値は高い。それでも、受験では負けることもあるんですね。

どこまで行っても0%にはなりませんが、もう2つ80%を重ねると数字上は全落ち0.4%、250人に1人。更に1つ重ねれば全落ちは千人に1人未満。このくらいまで、安全策を講じたいものです。

本人が遊びの延長なら不合格も「悔しいだけ」ですが、記憶にある人生のかなりの割合を頑張ってきたので、ほとんどの子には「目的のために代償を支払ったのに得られなかった」という喪失感が付いてきます。

だから、第三、第四志望でも頑張ってよかった!と感じられるくらいの備えはとても大事。理想を言えば、第一志望以外は全部第二志望、ってくらいですね。

 

進学先では6年間を過ごす。

大学受験までを考えた場合、中学受験は小4から数えて3分の1、小5からだと4分の1を経過した段階に過ぎません。第一志望に入るかどうかは、先頭集団を更に細かく分ける組分けのようなものです。3〜4周あるレースの1周目の順位で、ゴールの順位が決まるわけもない。先頭集団は有利だけど、中団からの逆転もある段階。

塾の組分けと違うのは、一貫校なら6年続くこと。転校や外部受験という選択肢はありますが、合わないから転塾というほど気軽には移れませんね。しかも中高では授業と受験勉強だけじゃなく、部活や思春期の人間関係、留学まで様々なことがある。

だからこそ、入った学校で色々なことに熱心に取り組むことや、周囲と良い関係を築くことがとても大事。そのためには、第一志望以外の学校であっても胸を張り、希望を持って入学することが重要になってきます。

私の場合、出身校ではないけど学習院の環境がとても気に入っているので、もう一度中高生活を送れるなら通いたいくらいだ、って話していました。中高でも勉強しなきゃ難関大には入れない。東大行きたきゃ塾も使って頑張れば良いし、早慶には枠もあるし。って感じですね。

 

受験校の素晴らしいところ、通う理由を説明できるくらいに。

受験する学校には、進学する可能性があります。親に「ここしか行けなかったけどしょうがないね」って言われるほど気分を下げることは、そうありません。

「もっと美女と付き合いたかったけど、フラれてお前しか無理だった」とか「もっと良い子いるのに、なんでそんなのと付き合ってるの」って言われて、良い気分になる人って少ないですよね。普通は凹む上に、言った奴を嫌いになりそう。

学校に失礼とかのモラルの話ではなく、人生に対する向き合い方の話。その学校がこれから過ごす舞台なのに、進学後も授業や学校活動に真剣に取り組まず、同級生のことも、自分のことまで見下すようなスタートを切る可能性を高めてしまう。

どこでも現状を受け入れ、そこから幸せや可能性を広げていく人になって欲しいのか。それとも、少しレールから外れたら台無し、何にでも不平不満、不幸を撒き散らす人になって欲しいのか。

志望校が偏差値順に並ぶ可能性は割と高い。校風や教育内容が、外から見て優れているほど人気も出て難化する=偏差値も上がるし、大学進学実績と、学校名や偏差値自体によるブランド化もある。商売というか、広告の上手下手もありますね。でも、このブランドで満たされるのは入学〜せいぜい数年。

卒業後、学歴の必要のない道を選んで邁進するなら大学もどうでも良いですが、好きな進路にも進めず、浪人して更に見下すような大学に進むことになったら、それこそ大失敗。そうならないために大事なのは、中高でも真面目に学業に取り組むこと。

偏差値は、その学校の魅力そのものを示すものではなく、受験して合格した子の成績データ、あとは人気の指標。偏差値上位校の方が、学力や進学意識が高い子が集まるのは事実ですが、大学進学にはかなりの子が塾を利用するし、あくまで「メリットのひとつ」に過ぎない。人気店の味が口に合うとも限りませんよね。

その学校の教育方針、様々な課外活動、施設と周辺の環境、教師との出会い。何より、子供自身がその中でどんな役割を演じ、どんな取り組み方をしていくのか。

残念、見下す、仕方なく。こういった心構えで入れば、スタートに失敗し、自分の通う学校も愛せず、努力も足りないルートを辿る可能性が増えてしまいます。

人を見下し舐めてかかる態度は、自分を弱くするし、認められもしません。相手を敬い全力で取り組んでこそ、強くもなるし、認められもする。落ちてからフォローで言うのではなく、どこに進もうが道を切り開いていく心構えを持たせておく方が良い。

親の役割は、偏差値がひとつでも高い学校に合格させることではなく、充実した中高生活を送れる準備を整えてあげることだと思います。その先の大学進学や社会人としての成功、人としての魅力や逞しさを身につけて欲しいなら尚更ですね。

希望と意欲を持ってスタートを切らせたいなら、商品の魅力と注意点の全てを伝え、売り上げだけでなく顧客満足度も高いトップ営業のごとく、その学校を知り尽くすようにする。完全には無理でも、なるべく目指した方が良いです。

 

親は 「落ちたら公立」を多用しない方が良い。

地元の公立にも将来難関大学に進学する子もいるでしょうが、中学入学時点では、その子達も偏差値50に届きません。超えてくる子がいれば、国語力がずば抜けて高く読書量も並外れているか、中学は受験しないけど家庭学習でZ会や自由自在くらいは回している、などの条件を満たしているはず。ほとんどの子は模試を受けても偏差値20〜30台の知識量です。

もちろん、彼らがみな知的水準が低いってことではありません。中学受験は学校教科書のみで取れるものではなく、少なくない量の学習をこなしてやっと40台の成績が取れるものだから。

つまり、例えば「偏差値62以下の学校なら公立で良い」なんてのは、Sクラスが無理ならAクラス下位に入れってこと。何年も通塾させたにしては、随分と飛躍した考えに思えます。

メリットは学費の節約+通学時間、デメリットは偏差値が2〜30下のクラスに入ること。もちろんお金も大事だし、通学に時間をかけず地元で通塾して、高校入試で頑張るのも選択肢のひとつですが、正確に伝わるようにしないといけません。

良くないのは、成功できないお前に金は出さないぞ、みたいな脅しとか見下すニュアンスを持たせた使い方。これまで何年も何十万もかけて少しでも良い環境で勉強!ってやってきた人が、本番では○○以下はゼロ、ってのは一貫性に欠ける。

組分けで少しでも上を目指して努力したり、落ちたら挽回を目指して頑張ったり。中学受験を挟んでも、それを続けるだけのこと。

自尊心を傷つけたり、偏差値で人を見下す習慣をつけさせるために受験させる人はそういないはず。どこに行っても、そこで努力できる力をつけたり、良い刺激をもらえる仲間に出会える確率を上げるために受験させるなら、それが伝わる姿勢が大切です。

 

志望校の情報収集は徹底的に。

受けさせる以上、それぞれの学校の素晴らしさを見つけておくことは、親の義務と言って良いと考えています。口先のフォローでなく、素晴らしい学校生活を送ってね!って送り出せるようにする。

通学も大事な要素です。電車の方向、乗車駅や乗換駅。電車が空くタイミングで乗る駅なら、座ればラッシュの辛さは激減しますが、女子でなくても朝のラッシュは本当にきつい。痴漢とか、事件すれすれの暴力(強く押されるとか)に晒されることもある。

混雑を避けるために時間差通学するなら、何時から学校に入れるのか。早い時間から登校できる、推奨して早朝自学を設定している学校もあれば、始業時間近くまで敷地内に入れない学校もあります。それに、成長期の子供にとって早朝は結構きついことも加味した方が良い。

通学時はどの道を通るか。朝夕の様子はどうなるのか。通学ルートだけでなく、部活でランニングする範囲や、帰宅時の夜の街の様子はどうか。

制服は、持ち物は。サブバッグまで指定があって、指定以外のバッグの使用が原則禁止だったり。学校に教科書や部活の道具も置いておけないなど。様々なことが学校によって異なります。

こういう色々なことを、説明会や文化祭などの学校訪問時に聞いたり、きっちり調べましょう。電話は相手の仕事を中断させることでもあるので、どうしても説明会や文化祭で聞けなかった場合の最終手段にした方が良いです。

在校生や卒業生の活躍、留学などの選択肢まで、その学校で過ごす時間に想像が膨らむような、十分な下調べをしておきましょう。

 

本日受付開始の説明会等

説明会、公開行事等のリストを制作中ですが、本日8月1日からweb予約開始のものがあるので、取り急ぎ記載しておきます。

 

本郷 学校説明会(9/8)8時受付開始

http://www.hongo.ed.jp/wp/20190908_jh_2nd/

 

本郷 過去問解説会(9/21,22)9時受付開始

http://www.hongo.ed.jp/wp/20190716-2/

 

駒場東邦 学校説明会(10/12,13,20)9時受付開始

https://www.komabajh.toho-u.ac.jp/examination/32826/20170701_index.html

 

渋谷教育渋谷 オープンスクール(8/28)10時受付開始

https://mirai-compass.net/usr/shibusbj/event/evtIndex.jsf