偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験では、本気で併願校を選んでおくことも大事

夏が終わり、学校別なども始まりましたね。ここから年末までの模試結果、合不合なら4〜6回の結果は、受験期の実力を想定する大事なテストなので、きちんと結果を受け止めて、現実的に合格を手繰り寄せる戦略を立てる必要があります。

もちろん、第一志望目指して、足りないことを分析したり、基礎を更に固めて合格力を上げることは大事ですが、そろそろ併願のスケジュールも真剣に考えておくと良いですね。


合格をもらうことは、とてもとても大事

東京では1日に本命校の受験を迎える子も多くいますが、合格を取れなかった時の衝撃は大きなものがあります。1回しか受験機会のない学校だと、通える可能性が消えるわけですね。

4〜5年の頃から目指していたり、学園祭などにも足を運んでいたり。過去問も5年10年分、何度も繰り返し解いたり。毎週塾に通い、長期休みにも講習を受け、遊びにも行かず、秋から学校別に通い、正月も特訓を受けたり。そうやって目指してきた学校に、たった一回の試験で10人中6〜7人が蹴られる。もう一回やれば逆転合格もあるくらい、僅差の勝負で。

第一志望を失った喪失感と、本番の入試で何度もダメ出しをされ続ける辛さは、模試で悪い結果だった時の比ではありません。入試本番では力を発揮できないんじゃないか、なんて疑心も浮かんできてしまったり。客観的に見ればたまたまレベルでも、気休めにしか感じなくなったり。

後半に志望順位の高い学校の入試を残していて、1月校や1〜2日に80%を超える学校でしっかり合格を取っておけば、まだ後半勝負という意識も保ちやすいですが、合格なしで3日以降の受験を続けるのは、相当な負荷です。別に人生終わりませんけど、即日切り替わるような、軽いものでもない。ただのテストを連続で受けるのとは全く違うことをイメージしておいた方が良いです。

熱望校が複数あることや、そこに十分合格しやすいレベルまで実力がついていると有利ですが、そう都合よくいかないこともありますね。

だから、どの学校にも前向きに進学できる意識づけと、確実に進学先を確保するための併願校選びはとても大事です。できれば1月に、通えないことはない、レベル的にも通っても良いなと思える学校の合格をもらっておきましょう。

埼玉の栄東や開智は、2月校の入試がほぼ終了する日まで手続きが出来るので、入学金もかかりません。千葉の専大松戸も良い学校で、延納金は5万円で3日の午後まで待てます。熱望する子もたくさんいるのに、通うつもりがない保険のような意識では失礼にも感じますが、1月の受験者数はとても多く、それ自体も学校の経営に寄与していますから、遠慮はしなくて大丈夫。

そして、2月の1〜2日には、通いやすい範囲で、偏差値的に十分な余裕のある学校。多少ミスで得点を失っても合格ラインは超えるだろう、というところを受けておくと良いです。ダメ出し続きでなく、○を貰える学校があると元気をくれる。

今のうちから併願校を十分に調べて、ここに通っても楽しそうなポイントをたくさん仕入れておいたり、過去問の傾向をしっかり把握しておくと良いです。 

併願校の比較検討

どう選んで良いかわからなければ、過去問との相性が良いとか、家から近いとか、制服かわいいとかでも良いです。結局のところ、影響力が一番大きな友人になる子や担任という要素は、入学してみないとわかりませんから、直感や好みで選ぶのもアリですね。

 

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こちらは、比較検討用のシートサンプルです。自宅最寄り駅が人形町で、現在の偏差値が55〜58くらいのイメージ。学校ごとの入試日、偏差値、進学実績、通学ルートなどを一覧にしてあります。

通学は、6年で1500日くらい通うことになるので、電車が長ければ車中での学習習慣をつけるなど、けっこう差がつく大事な要素ですし、進学実績も学校のノリを想像する上でも大事ですね。

この例では青背景色の1日受験校をまだ3校から決めていない状態で、赤背景の2日午後、3日、5日は確定という感じ。こんな感じのものを、プリントして眺めながら考えたりするわけですね。

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これは入試日と入学手続き締切を一覧にしてあるシート。受験料に押さえの入学金、状況によっては前泊なども含め、受験期には結構な額が消えていきます。

この例だと、専大松戸は5万円で3日まで待てるけど、英和Bの発表までは待てない。国府台女子だと15万円になる代わりに、英和Bまで待てる。専大松戸を押さえておいて、3日までに他の安全校で合格を貰えば大丈夫、と考える線もある。

1日の午後は面接があるけど大丈夫か、出願早めにしないと、午前校からの移動時間は、1日午後は安全に合格を取りにいった方が良いかな、、、などなど。

こんな感じで、同一日程の中からどこにするか、選んでいきます。もちろん、併願する学校を決めたら、出願する学校だけでしっかりスケジュールを組みましょう。

 

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これは学校別シート。出願スケジュールなどはカレンダーで管理する必要がありますが、こういう紙でも目立つところに書いておきます。

 

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こちらは、過去問に手をつける順番や、どの日程でどこを受けるか考えるためのレベル表示シート。合格最低点や、50%と80%の偏差値を一覧にしてあります。赤ラインは5〜6年の平均偏差値、青ラインは6年の平均偏差値。この例では、5〜6年の通算平均が53、6年の模試だけの平均が56のイメージですね。赤で80%に余裕がある①、80%を超える②、青で80%を超える③、50%を超える④となっています。これはそのまま、併願校の過去問に手をつける順番にも使う感じです。

 

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こっちは日程順ですね。上昇してきている子の場合、このまま勉強を継続して秋以降にこの赤ラインを割っていく恐れはほとんどないので、この①②あたりで、通いやすくて好きになれそうな学校を見つけておくと良いです。

そして、過去問を一度解いてみましょう。学校によって出題形式や解答欄、問題文の読み取りなどで個性があり、ノリが合うかどうかでも得点は左右されます。同じくらいの偏差値でも、A校は余裕で得点できるけど、B校はギリギリなんてことは珍しくないので、算数だけでも試してみてください。

青ラインで80%を超えているのが普通の安全校、50%を超えているのが実力適正校になります。秋以降に青ラインから4ポイント以上あげるのはかなり大変なので、+3ポイントで50%圏に入る学校くらいまでがチャレンジ校の目安になります。まぁガーッと伸びる子もいるでしょうが、上方修正は気分が良いので、別にそうなっても困りませんね。

併願校の過去問も早い段階に目を通しておく

夏を終えた今の時期になれば、80%偏差値より数ポイント以上余裕のある学校の過去問は、かなり解けるようになっています。例えば直近の模試の偏差値が58なら、50前後の学校ですね。学校によって、他の問題は簡単だけど図形問題だけあまり見ない形などの特徴があるので、それを経験しておくのも良いです。

偏差値差のある学校を1日午後や2日に受験する場合、直前の本命校とかなり傾向も難度も異なるテストになるので、ペース配分や問題文読み取りの意識などを調整しておくと良いです。

早い段階でその学校の傾向を一度入れておくと、本番前の短い時間でサッと目を通すだけでも、あぁこの感じか、という調整がしやすくなりますから、余裕のあるレベルの学校の過去問も、数回はきちんと解いておくと良いでしょう。

 

使える人もいるかも知れないので、プリント用のPDFと、入力用のエクセルシートを貼っておきますね。

https://e-tutor.tokyo/data/0918/記入用_入学手続き.pdf

https://e-tutor.tokyo/data/0918/記入用_学校別シート.pdf

https://e-tutor.tokyo/data/0918/入力用_進学実績と通学シート.xlsx

https://e-tutor.tokyo/data/0918/入力用_過去問用レベルシート.xlsx


併願検討シートに使える合格実績などのデータと、出願や入試日程の一覧をnoteで公開しましたので、こちらもどうぞ。


 

やる気のなさと向き合うこと

入試終了から今まで、昨年よりも多いご相談がありました。特に多いのは、成績が伸び悩む、意欲がない、親子でバトルの三点。で、もちろんご本人は悩んでるわけですが、実際よく子どもと向き合ってると感じる方が多いです。中受層自体がそういう傾向で、更に一歩踏み出してメールをくれる人なので、当然かも知れませんね。

相談ではあまりに悪いところは出さないかも知れませんが、子どものことをよく見てる。親が一生懸命関わってること自体、恵まれてる方なんですよね。致命的な言動をやらかせばダメージも大きいので、煮詰まってくる秋冬、そこだけは注意した方が良いですけど。

みんな1人や2人、多くたって5人くらいしか経験ないんだから、親としての振る舞いが上手じゃないのが「普通」。初見の1ゲーム目なんだから。ほんと、5段階の親の通信簿があれば、悪くても4あげられるんじゃないかな。

子どもはひとりひとり違うし、兄弟姉妹に仕事、家庭環境やパートナーの協力、それぞれ違いもあるでしょうけど、その中で気持ちを向けて、一生懸命考えることが出来てるなら、それが親の仕事。ちゃんとやってますね。人格否定とか、肉体的な虐待とか、そういう「絶対しちゃいけないこと」の線だけ引いておけば、大丈夫です。

親が完璧じゃなくても一生懸命向き合って、熱意もお金もかけて、それでコケるなら子どもの運や才能の問題。いつまでも全面的に庇護してあげることは出来ないので、出来ることをやってあげるだけです。

 

何で勝負をかけるか考える

まず、4教科全部好き&偏差値70レベルで得意とか、かなり特殊です。算数イヤ〜、国語意味わかんない、そんなの普通。まるっきりアホなわけじゃなく、他は60あるけどこれだけ50切るとか、その程度のバラツキがあっても全然おかしくない。

だったらそのまま行かせるって手もあります。もちろん全然やらないのはまずいけど、どうやって受かるつもり?って真剣に考えてみる。4教科で合格点取れば済む話なので、均等に偏差値を上げる必要って特にないですよね。2教科や1教科の入試だってあるし。

ぼちぼち過去問の季節なので、問題に目を通しての印象と、合格最低点と受験者平均点から、取れそうな得点を考えてみる。実際に解けば早いですが、解かないで想像するだけなら、倍率にもよるけど50偏差値くらいの子が取るのが受験者平均点だと思えば良いです。

その上で、どこで点を稼ぐか。合格ラインを突破するために、何をどれだけ頑張れるのか、ちゃんと考えてみることです。算数これだけは出来るようになろう、理科はこれだけは仕上げよう、そういう目的意識をはっきり持たせることが、苦手科目と向き合う上でも大事です。

 

やる気がない理由を良く観察してみる

そして、出来ることのもうひとつが、子どもの状況を把握しようとすること。クラス落ちギリギリとか、偏差値上がらない、なのに家では気合が足りない。この理由をなるべく把握して、そこに対する向き合い方を少し変えると、良い流れになることが多いです。

特に、勉強自体に興味ゼロ、苦しんでもいないけど受験意欲がなくてサボってるだけ、ってパターンでなく、受験も辞めたくないし、悔しかったりするんだけど、もうひとつ踏ん張りが効かずにすぐ折れるとか、頑張ってるように見えるのに、全然上がり目が見えないとか、そういう場合ですね。

成績でクラス分けしてる塾は多くて、例えば四谷だとS/C/B/Aとかで区切るわけです。SC混合だったり、S1/S2で更に区切ったり、校舎の規模によって色々ですね。

で、クラス上位の子は学習量も多くて、叱られず前向きに課題に取り組み、成績も上々で、それに比べてウチの子は、、、ってパターン。これ、上位の子が一番頑張っていると思いがちですが、実は下位の子の負担が一番が多いことは珍しくありません。

例えば、前回の合不合の算数の得点と偏差値をBクラスの幅で見ると、54が86点、50が76点、45は64点で、これを1時間に解けた問題数に直すと14.3問/12.7問/10.7問になります。これだけ差がある子が、一緒に授業を受けるわけですね。しかも、算数だけで決めてるわけではないので、算数の偏差値がもっと低い場合もある。

そして、授業のペースはクラスのボリュームゾーンに合わせます。50前後に合わせると、1時間に13問くらいですね。そうすると、45くらいの子は2問の差になる。単純に考えても、同じ授業を受けて2問、穴を残して進むことになりますね。

しかも、一度全部解いてまとめて解説してから次の問題に進む形は少なく、理解が追いつかないうちに次の問題に進むパターンも多い。こうなると、授業でやった問題全部の理解度が低いってことになります。

そして疲労度も、上位の子には余裕のあるジョギングペースでも、下位の子にとってはオーバーペースでせっつかれながらハァハァ言ってる感じで、余裕がないので頭も回らない。小テストを受ければ下位で、気分もパッとしない。

こんな感じで、同じテキストをやっても、時間は余分にかかる、得点も低い、復習しないといけない問題も多い。出来る子の方が、時間は短く、得点は高く、復習の必要な問題数も少ないわけです。下位の子のほうが疲れますよね。一定期間の授業を受け続けても、上位の子は余裕で身につき、下位の子はヨレヨレになる割に身につかない、って構造です。

だから、クラス下位の子は、上位や中位の子に比べて、授業に出るだけ、小テストを受けるだけでも疲れて帰ってくることが多いです。そこをまず意識しておいてください。自分より早く走れる集団と一緒に走って、頑張った子が帰ってくるんです。

 

行動を変えるには、余力が必要

自分の子は賢いはずって思いに、もう上がっていかないと志望校に届かない!って焦りも加われば、盲目的になるのも仕方ないかもしれませんが、実際はこんな仕組みです。クラス下位なのに、もっと頑張らないといけないのに、意欲が薄い!家で頑張らない!って怒ってるのは、見当はずれの可能性が高い。頭がくたびれたら、意欲が出ないのは当たり前です。言ってみれば微妙にうつ状態みたいなものなので、そこに追い打ちをかけても凹むだけ、反発できればマシな方です。

よっぽど突き抜けた子でなければ、少しやれば出来るほどチョロいものではないし、何回か叱られたくらいで行動変容は出来ません。言われてすぐに変えるには、それを常に気にする余力が必要で、その余力自体がないと目の前のことで頭はいっぱいになる。余力のないところに叱っても、叱る→変わらない→もっと叱るのループになるだけです。

下位“なのに”頑張らないのではなく、下位“だから”気力が持たない。それでも歯を食いしばって、或いは気を逸らして、どうにか塾の時間を過ごしてきて。家に帰ると得点の低さ、意欲の少なさで責められる。これで勉強を楽しいと思う子がいたら、なかなかの変態さんです。成績上げたいのに、勉強嫌いにさせるの、逆走ですよね?

だから、表面的に在宅中の学習態度や得点だけで責めるようなことからは抜け出しましょう。どんな状況で、どう闘っているのか、ちゃんと想像してみる。自分の子ども時代、その友人だったとしたら。どんな気持ちで、どんなことを頑張っているだろうか。何が苦しいだろうか。

 

集団塾の指導は偏差値を上げるためのものではない

塾としては脱落者は出さないように頑張るので、時々は下位でもついてこれるペースにしたり、小テスト後の声かけとか、色んな工夫はしています。それでも、集団授業が下位や苦手な子にとってきついのは変わりません。公立の小学校と違って、上位の学力も可能な限り上げないといけないので、全面的に下位に合わせるわけにはいかないですね。

それに、通っている全員の学力が上がれば、塾内模試の偏差値は変わりませんから、通うだけでは偏差値は上がりません。その同じ塾、同じカリキュラムを受けている子の中で、他の子を抜いていくから上がる。塾の言っていることを全部やれば上がるんじゃなくて、そこにプラスαを乗せられるかどうかで変わってくるわけです。全部やれる子が少ないので、全部やれば上がるってのもありますけど、その中身、身につくかどうかが大事。

素質とか課金とか、何かを上乗せしなければ、他の子との相対的な位置は同じですね。部活なんかでも、ど素人からある程度覚えるまではそこそこ伸びますけど、ある程度の位置まで来るとそこで固定して、無限に伸びてはいかないですよね。

これは、どのクラスでも同じこと。B上位からCに入れば、今度は下の方になって、また次の組分けで弾かれてくる子もいますね。で、これがこの子の限界か、ってなったり。でも、常時70台くらいになるとちょっと特徴があるけど、例えば偏差値45と55の子って、そんなに頭の差はない。ハマったタイミングや運と言っても良い程度のきっかけ次第だったりします。だから、その差が固定化されない工夫が必要ですね。

そもそも、日本語が読めて理解できるなら、テキストがある勉強で一番効率がいいのは、最短時間かつ自分のペースでやれる独学。塾とかで教えてもらうのは、理解しにくい部分を説明されることでカバーするのと、一人では維持しにくい強度やペースを保ちやすくなるからです。

だから、とりあえず通って適当なスコアで良いならそのままで良いし、その中で上に抜けて行って欲しいなら、「ペースを保つ」から「利用する」に切り替えていくことが大事。誰かより劣ってるとか伸びてないってことを強調するのは、マイナス面を強化する使い方です。その逆で、何か他の子より損のある状況なことを把握して、自分にとって快適な状況になる手助けをしてあげる。

だって、素質的にお話にならないなら、そもそも期待したり、出来ないこと叱ったりするのが見当違いでしょう?素質がそんなに劣ってないはずなら、何か重石が乗ってるんです。だったら責めるんじゃなくて、重石を取り除くのが仲間のやること。

 

周りをある程度無視して、出来るまでやる。

勉強は正解があるので、そこそこの知能があって、出来るまでやれば出来ます。中受で偏差値40くらい取れる子なら、知能の方はだいたい足りるはずだから、あとは出来るまでやる時間さえあれば出来る。当然ですね。

でも、塾ではペースだけでなく講師やカリキュラムとの相性もあって、自分が出来るまでやれる最適な環境ではないことも多い。だから、そこを自分に都合よく捻じ曲げる工夫をするわけです。

そのために大事なのは、まず「出来るまでやれば出来る」って本当に思うこと。本当に思ってないと、ペースを握ろうとしても小テストの順位や提出物、偏差値なんかですぐ不安になって、しっかりやり切れません。やらせる側が腹を括らないと、人に与える影響はちっちゃくなります。

次に、何をやって進んでいる実感と自信を持たせるか、それでちゃんと合格に近づくか、作戦を練ること。それが決まったら、まずはやることを絞り込んで一点突破を図るのが、割と近道です。

○○が終わるまでやれ、は逆効果なことが多いですね。終わらせるのが目的になる。つまり、間違ってようが答え丸写しだろうが、終われば良いわけです。それはほぼ意味がないですね。

だから、出来るまで、わかるまで、納得いくまで、身につくまでやる。叱るほど、悩むほど熱量をかけられるなら、その方向を考える。いろんなことに手を広げるより、コンディションを上げて、やることを絞り込むのがおすすめです。

 
どう絞り込むか、どう取り組むか

クラス内での位置関係で算数が凹んでいる場合は、算数の強化が手っ取り早いことが多いです。ちょっと怖いですけど、一時的にでも全力を算数に突っ込む。この時に注意した方がいいのは、ただ長時間やるとか、たくさんページ数をこなすとかしても、あんまり意味がないってこと。もちろん、叱っても効果は薄いです。

私が大きく凹んでいる子を見る場合は、算数の範囲を四科のまとめの8章+計算の9つに分けて、まずその1つか2つを集中的にやります。これまでの模試結果を出題範囲別に分類して、正答率の高い問題でも不正解になっている範囲ですね。偏差値が50ない子は全般的に弱いことが多いので、その場合は割合と比、平面図形、数の性質のいずれか+計算の工夫から入ります。平均偏差値55前後のレベルでも、悪い回がある場合はどこか怪しいので、そこを見つけましょう。

基本テキストを使った流れは予習シリーズで説明するので、お持ちでない方は下記の見本PDFを参照してください。

予習シリーズ5年上見本

まず、ひとつの章全体に相当する類題を解いてみます。正解しても手順が正しいかチェック、不正解なら必修例題をしっかりやり直し。なるべく全ての手順の思考を説明しながら、納得いくように進めます。わかったことをノートやホワイトボードに書きながら、自分の口で説明してもらうと良いです。

納得いったら、もう一度類題を解き直し。本当に納得した直後なら、記憶もフレッシュなので類題くらいは出来ることが多いです。もし類題ができなければ、教えてるポイントが違ってる、抜けてると疑って、教える側がちゃんと自分の説明を見直すと良いです。

なんでわかんないの?さっきやったじゃない!ってのはNG。教えてわからない時に、通じてると思って通じてないポイントを探せないなら、外注した方がマシですね。生徒がわからない時に、自分の教え方を疑えないようなら、指導にはならないです。家の中に味方がいなくなるのは悲惨なので、ここは本当に大事。

無事に類題を通過したらその日は終わり。最初から出来た場合は、負荷軽めですね。翌日は前日の類題を見直して、基本問題に入りましょう。前日同様、まず解いてみる→思考を辿る→不正解を納得いくように教える→解き直す、の繰り返し。翌日は練習問題、復習問題と進めていきます。4日でひと通り終わったら2周目に突入、今度は初日に練習問題まで進めることを目標にします。2日目に復習問題までやったら、5年時の週テストの関連回を解いてみる。満点が良いけど、納得のいく偏差値レベル+数ポイントくらいの得点が出来ればとりあえずOK。不正解問題はキープしつつ、別の単元に進みます。

順調に章ひとつを1 週間〜10日で回せれば、全範囲でも3ヶ月かかりません。5年のテキストに自信を持てるようになると、6年の模試でも割と解けます。これも解けた、これもわかった、って問題を外したら、次の予定を立てる。これを入試まで続けていくだけですね。

並行して、計算の基本と工夫の見直し、基本の数字や相似形の暗記は別枠で進めると良いです。こちらは1日20個とか数を決めて日々練習、覚えきれない分は翌日に追加。例えば初日に20個覚えて、翌日のチェックで10個出来たら、別のものを10個追加という形で進めます。50個くらいをひと区切りにして、そこまで進んだら総復習を1日挟んでテスト。漏れはまた次の周回に入れていきます。

応用力とか思考力は、基本になる形を覚えて、自在に取り出せるようになってから、その使い方の工夫として身に付くものです。道具がなければ使いようがありません。基本形が身についてないことがほとんどなので、まずは基本をチェックしてください。必要ないレベルなら、チェックもすぐに終わります。

前進する力があるって感じること

今の時期にこんなことしてる場合じゃ、って思うかもしれませんが、「こんなこと」も出来ずに応用やっても苦しいだけ、劣等感を味わうだけで、ほぼ身につきません。小問集合、一行問題レベルを自信を持って正解できるようにしてからが、応用の出番。

そのためには、塾のカリキュラムに囚われ過ぎない方が良い。出来ることを確実に増やそう、って意識をどれだけ強く持てるかで、結果が変わってきます。必要なこと、何をやれば伸びるか、ってことだけ考える。出来るまでやる。励まし続ける。

知ることや出来るようになること自体が嫌いな子も滅多にいない。出来ることをやって、出来るようになって、それを認めてくれる人がいれば、割とやりがいを感じたり、楽しく感じたりするものです。無理なことをやって責められるのと、逆ですね。どうせ関わるなら、エネルギーを注入して、ちょっとでも元気に、前向きになってもらう方が良いです。

出来るまでやれば、あとは間に合うかどうかだけ。競争である以上、どこまでも上がれるものではないので、夢の志望校に間に合うかどうかはやってみないとわかりませんが、少なくとも、嫌いで苦手、自分は出来ない、って思いまで中学に持っていくことは避けやすくなります。自分の知っている以前の子どもの姿と比べてやる気や自信をなくしているなら、「やれば出来る」を取り戻すことは大事なことなので、やってみる価値はあります。

 

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受験勉強の合間の気分転換には、散歩、運動、音楽がオススメ。

娯楽の少ない受験生、ゲームやYoutubeやテレビで時間を消費してしまうのは勿体ない。読書や工作も良いですが、時間と集中力を結構使ってしまうので、たくさんは出来ませんね。

時間をあまり使わずに出来る気分転換として、散歩、運動、音楽、昼寝を勧めています。昼寝はガチ寝になってしまう子には逆効果なので、お子さんの体質を見極めて、短時間で頭スッキリ出来るタイプなら取り入れてください。

散歩は今の時期は早朝や夜、少し気温が下がる時間帯が良いですね。なるべく親子で、いろいろ話しながらのんびり20分くらい歩くと良いです。

 

運動は軽く汗ばむ程度で10分くらいでもOK。縄跳びや踏み台昇降でも良いし、今はYoutubeにもフィットネス動画が沢山あるので、その中からお気に入りを見つけて親子で一緒にやってみるのも良いです。こちらはアラサー健康ちゃんねるの一本。

これはハードなので、もう少し軽めが良いかも。短い動画もたくさんあるので、合うものを探してみてください。

 

そして音楽。もともとピアノなどをやっている場合、少し触る時間を持つと集中しやすくなる子が多いです。ただ、本当は続けたかったけど中断していると複雑だったりするので、それぞれの事情に合わせてですね。

聴く専門でも、気に入る音楽があると良いです。クラシックなども良いですが、元気をくれる歌があると、曲だけでも一休みして勉強を始める前とか、塾に行く前なんかに聴いて気分を盛り上げたりするのに結構効くこともあります。

 

WANIMA「やってみよう」

 

阿部真央「Believe in yourself」

  

フレデリック「オンリーワンダー」

 

PerfumeDream Fighter

 

DA PUMP「New Position」

 

満島ひかり「ファイト!」

 

ぼよよん行進曲

https://www.youtube.com/watch?v=nAjJluQCSGE

 

まだまだ長丁場、気を張ってるだけではベストの状態から遠ざかるので、うまく気分転換しながら最後まで元気に完走してください。親が眉間にシワを寄せている状態が続くより、休憩と笑顔を大事にするくらいになれると最高ですね。

 

塾による偏差値の違い2021年度中学受験用(男子)夏版 SAPIX/四谷大塚/日能研/市進/首都圏模試

ちょっと女子版から日数が空いてしまいましたが、2021年度中学受験用の各塾偏差値比較(男子)夏版です。

 

塾による偏差値の違い

抽出対象はSAPIX第2回志望校判定SO、四谷大塚合不合2回、日能研7月R4、市進6月、首都圏模試7月です。

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塾による上下の違い

女子版でも触れたように、塾によって各校の入試難度の順番も結構異なるケースは多いです。男子では、御三家などトップ層の併願としても人気の芝、本郷、サレジオと、算数午後入試で偏差値の上昇が目立っている巣鴨世田谷学園鎌倉学園をピックアップしてみました。偏差値の位置はほぼ中程の芝で揃えています。

まず2回入試の芝を見てみると、SOで5ポイント差、合不合とR4では4ポイント差で、最も安定しています。複数入試はこんなイメージを持たれやすいですね。

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3回入試の本郷は、SOで9ポイント、合不合で4ポイント、R4では6ポイントの差。開きはありますが、このくらいの違いなら他塾でもそう驚きはないですね。ほぼ同じスケジュールで同じくらいの位置を長期間維持していて、各塾での評価も安定していると言えます。

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2回入試のサレジオは、SOではAとBで6ポイント差があるのに対し、R4では2ポイント、合不合では0。合不合主体の子ならシンプルに2回チャンスがあると思えるところが、SOメインだとAでダメならBはもっと無理そうって思うような差ですね。参考にする模試でかなり印象が違う例です。

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次は算数受験のある巣鴨。SOでは相対的に最も高い位置で、1回とは15ポイントの大差。これに対しR4では6ポイント幅の中に収まり、他入試との比較でも鎌学算数、本郷3、芝2より低い。合不合では9ポイント幅ですね。

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世田谷もSOが最も幅広い分布で算数>3>2>1の並びですが、合不合では算数>2>1>3となっていて、幅も最も狭い6ポイント。ここに掲載の通常16入試回の中で、3次の難度評価はSOでは3番目なのに対し、R4では8番目、合不合では下から3番目です。

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鎌学は他3回の入試と比べ、算数だけ突出して高い傾向で、割とイメージされそうな形ですね。

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こんな感じで、偏差値が全くアテにならないわけでもありませんが、偏差値表によって難度の印象もかなり異なります。

そして、同じ偏差値の子が同じ学力とも限りません。どの教科、どの問題で得点したかによる相性、そのテストで出た問題以外の知識量、そして受験までの学習による伸び。むしろ、ある程度は違うのが当たり前ですね。

なので、とりあえず50%偏差値ラインまで届かせたら、あとはどれだけ安全志向/チャレンジ志向にするか、過去問との相性はどうか、といったことを重視して、合格するために必要な力を蓄えていくと良いです。

 

受験予定校の比較用一覧には、SOは偏差値45まで、合不合とR4は偏差値53までの範囲を入れてあります。

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偏差値に縛られる必要はないけど、50%もないレベルだと厳しいのも事実です。同じ偏差値でも同じ実力とは限らない=そのテストでは測れなかった部分はあるけど、模試5回くらいの平均で10ポイント以上差がある子に逆転するのは稀ですね。

もちろん入試まで実力は伸びますが、そこまでの2〜3年の間に一般向けの模試程度で負けるような取り組みで、入試前だけ頑張った結果周囲をごぼう抜きっていうのはなかなかの夢展開。

ですから、秋までは全体的な学力向上を目指して基礎と弱点をしっかり埋め、50%判定くらいはとった上で、合格を確実にする努力をする感じが良いですね。

 

昨年同時期との比較で上昇している学校

次は、昨年同時期のSAPIX第2回志望校判定SO、四谷大塚合不合2回、日能研8月R4との比較で上昇の目立つ学校です。
昨年の推移から今年の結果偏差値でも大きく上昇していた巣鴨世田谷学園はやはり1,2。ついで淑徳、開智日本橋、ドルトン東京の上昇が目立ちます。

その後に続くのは日大豊山東洋大京北、都市大等々力、学習院、法政第二といった大学附属系属。1月校では、大宮開成と青山浦和ルーテルが大きく上昇しています。

まずは学校ごとに、各日程の3塾合計での偏差値上昇をリストにしたものです。

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次は学校ごとに、それぞれの入試回の各塾の上昇の一覧です。

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最後は各入試回の各塾の上昇と合計を表にしてあります。偏差値は合不合第2回のもの。

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各塾の偏差値動向を入力してあるPDFはこちらで確認できます。

https://e-tutor.tokyo/data/20200821/昨年同期増減比較男子.pdf

 

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塾による偏差値の違い2021年度中学受験用(女子)夏版 SAPIX/四谷大塚/日能研/市進/首都圏模試

2021年度中学受験用の各塾偏差値比較(女子)夏版です。いつも男子からと言われるので、今回は女子から。

塾による偏差値の違い

抽出対象はSAPIX第2回志望校判定SO、四谷大塚合不合2回、日能研7月R4、市進6月、首都圏模試7月です。

 

塾による上下の違い

各塾の偏差値順はカリキュラムの内容や持っている経験とデータ、校舎のカバーするエリアによって違いがあり、例えば日能研は国公立の受験者数、合格者数とも多くなって偏差値が低め、23区内私立より神奈川千葉埼玉にやや強めなどの傾向があります。

次の表で着色してあるのは女子御三家と、併願候補の多い組み合わせで昨年の記事でも取り上げた学習院女子、立教女学院、頌栄女子に、東洋英和と香蘭女学校を加えた5校の入試9回です。SOは偏差値45まで、合不合とR4は偏差値55までの範囲を入れてあります。

対象の入試はSOでは7ポイントの幅に分布していて、学習院Bが最も高く、学習院Aも立教女学院より高くなっています。

学習院
②英和B=頌栄1=頌栄2=香蘭2
学習院
④立教
⑤ 
⑥英和A
⑦香蘭1

逆に合不合では立教女学院学習院ABより高く、4ポイントの幅に入っています。

①英和B=頌栄1=頌栄2=立教=香蘭2
学習院
学習院
④英和A=香蘭1

日能研では6ポイント幅で頌栄2が最も高く、立教女学院学習院Bより低く、学習院Aと同じです。

①頌栄2
学習院
③香蘭2
④英和B
学習院A=頌栄1=立教=英和A
⑥香蘭1

例えば香蘭1を検討していて、SOで見ると学習院Aは4ポイント上で厳しく感じるのに対し、四谷日能研では1ポイントしか違わないわけですね。逆に日能研では頌栄1は何とかなりそうでも頌栄2になったら大変そうに感じるし、SOや合不合だと同レベルで2回チャンスがあるように見える。

どの学校にも言えることですが、特にこのあたりの偏差値帯では倍率も高く、数ポイントの偏差値差よりも相性と当日の状態で結果がかなり影響を受けるので、そういうことも踏まえて出願校を絞り込んでいくと良いです。

 

昨年同時期との比較で上昇している学校

次は、昨年同時期のSAPIX第2回志望校判定SO、四谷大塚合不合2回、日能研8月R4との比較で上昇の目立つ学校です。

香蘭女学校は3塾で2回とも大きく上昇、続いて東京女学館昭和女子大附、開智日本橋、淑徳などが大きく上昇しています。

塾によっては昨年同期より6〜8ポイント上昇している回も結構あるので、併願候補の自塾以外の偏差値の動きもチェックしておくと良いでしょう。5年生の時は普通に併願安全圏だったはずの学校が、他塾では一歩早く本命と同じくらいの偏差値になっていることもあります。

まずは学校ごとに、各日程の3塾合計での偏差値上昇をリストにしたものです。

 

次は学校ごとに、それぞれの入試回の各塾の上昇の一覧です。

 

最後は各入試回の各塾の上昇と合計を表にしてあります。偏差値は合不合第2回のもの。

 

各塾の偏差値動向を入力してあるPDFはこちらで確認できます。

https://e-tutor.tokyo/data/202008/昨年同期増減比較.pdf

 

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/a/aswg-tutor/20190624/20190624065008.png

 

そうそう、女子は入試当日に生理だったり、タイミングによっては初潮を迎えるなんて事態も想定されるので、昨年も「女子向け:受験本番に向けてのイメージトレーニング」なんて記事を上げていたんですが、A型ママさんのブログでムーンパンツが紹介されている記事が。受験終了組の女子ママさんの記事なので、是非一読しておくことをオススメします。


もう一段上がるためにする工夫と、成績データ分析

いよいよ8月に入り、残り半年になりました。現在も感染者が増え続け、心配は尽きませんね。学校の対応、通塾の電車とか、塾の授業でも感染するかもしれないとか。また休講になったりしないか。動画授業や自宅学習では、思うように進まなかったり。入試自体、ちゃんとやれるのか、変わることもあるんじゃないかとか。

でも、不安や不利を数えても役には立ちません。不安に取り込まれない最良の方法は、今できることに集中して最善を尽くすこと。今年の受験生が例年と違う状況ではあっても、昨年の受験生と競うわけじゃない。競う相手は、同じ今年の6年生。

合不合やSOの問題と得点の分布を見ても、例年に比べて大きな変化はなく、どちらかと言えば中間層は少し落ちてるかなという印象。おそらく年間を通して、数万人のデータを比較すれば今年はこういう傾向だった、という特徴は出るでしょうが、まぁ過ぎた後でわかっても意味ないですね。

塾によって、小学校や担任によって、或いは家庭教師などによってハンデがある。これも毎年のことです。例年以上に自学自習力の高い子に有利な傾向はあるかも知れませんが、そもそも毎年、自学自習できる子と安定した家庭環境の組み合わせは最強です。

ですから結局、自分のペースを作って、一歩ずつ前進することに集中するのが一番有利ですね。ごく当たり前ですが、これが本当にわかっていて、実行できる人はそんなに多くないので、実行できればプラスです。

 

テストの内容と結果を分析する

前回の記事でも書いたように、まずは目標ラインに向けた問題を抽出して、どう進めるかを決めていきましょう。

各塾でデータベースがあり、模試結果などに正答率や分野ごとの得点傾向なども見ることができますね。これをきっちり活用しましょう。自分で色々と扱いたい時は、以下のように得点と正答率を入れた表を組みます。

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正答率順に並べるとこんな感じ。

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不正解分だけの抽出だとこうなります。

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で、これを過去模試や週テストの分を統合して、自分用の優先度の高い問題を抽出するわけですね。更に、分野別に整理して、特に弱い分野の対応テキストをやり直したり、問題集の同じ分野を全問解いたりします。

Sが全部スラスラ解ければ偏差値このくらいの子と同等になる、Aならこのくらい、という目安になります。独自の表に落とし込まなくても、塾のデータベースの活用でかなりのことが出来るので、自分なりに把握できるように工夫してみましょう。

ご相談の方と算数講座の受講者に、成績データ分析が好評だったので、この記事の最後に一時的に受付を設置しておきます。

通塾していない、模試以外の週テストなどがない場合は、仕上げる問題集を一冊決めて、時間を測って取り組みます。一周目でどのくらい正解しているかを把握して、周回プランを立てましょう。

 

ペースの守り方

未経験な上に、不測の事態も起こり得る状況でペースを守るには、「全部ちゃんとやろう」より、「必要なことをひとつずつやろう」という意識が大事です。優先順位を決める、緩衝地帯を設けておく、良い時間帯を大事にする、の3つがあると良いですね。

まず、やるべき内容を段階別に分けておきましょう。例えば休日なら①最優先2時間、②優先4時間、③普通2時間、残りは④余裕、といった感じです。最優先には、一日の中で一番良い時間帯を充てる。予定外のことで時間を使うときは優先度の低い方で吸収して、①や②には影響が出ないようにする。

一日中ずっと机に向かったところで、そうそう全部は頭に入りません。何度も抜けるので、それを丁寧に埋めていくだけ。ひたすら高速道路の拡張工事を行いながら、出来た範囲も日々点検して破損箇所の補修を続けるようなイメージですね。作りっぱなしでは崩落事故多発です。

1日6時間×週7日で42時間。25週として1000時間以上ある。多い分には困らないけど、塾の時間込みで、まずはこの枠でしっかり前進することが基準です。一日夏期講習に行ってる場合は、家では最低限の基礎練習くらいでも良い。

週休2日の週40時間勤務の大人でさえ、フルで集中してない人っていますよね。残業してる人でも、朝イチからフル回転とは限らない。もちろん、1日16時間働けるハードワーカーはいますけど、そういう人たちは、基本的に強制されてないし、高額な報酬や自己実現の一環だったりもしますね。

親が制限をかけるくらいの子でなければ、塾のある日はそこでお疲れが普通です。帰宅後や登塾前、そんなにがっつり出来ないのも珍しいことではない。だから、そういう面は許容しつつ、どうやってプラス1を乗せるかを考える。

 

受験は6〜70点で良い

子供に向き合う前に、まず自分を採点してみてください。100点満点じゃないにしても、0点でもないでしょう?怒鳴ったり、殴ったり、ネチネチ追い詰めたり。そういうのはマイナスとして、マイナスする前の素点、どのくらいあるか。

安心して眠れる家と布団はありますか?ご飯は毎日食べられますか?清潔な衣類はありますか?水道光熱通信費はきちんと払っていますか?塾やテキスト、筆記用具代は足りていますか?そこまでやると、親の役割としては、80点あげて良いと思うんですよね。あとは本来、子供の努力と塾の腕の問題でしょう。

入試なんて6〜7割で合格ですから、80点の親ならもう十分。マイナスなければ70点でも良いくらいです。あとは子供を有利にする下駄を履かせようとしてるだけ。他の家には、もっとスーパーな親や家庭教師がいるかも知れないけど、本当にスーパーな人なんて、そんなに転がってない。割とみんなフツーです。そんなに凄くもないし、そんなに酷くもない。

だから、まず1日に15分、自分の影響で「元気に一生懸命取り組んで前進する時間」を作り出せたら、かなり良いです。30分、1時間になれば相当すごい。全部をコントロールしようとしなくて良いです。元々80点あるところに、1点プラス。週に1点前進でも、入試までには満点な親になっちゃいますね。

 

テーマを決めて取り組む

15分の影響力を発揮するには、テーマを決めて取り組むとやりやすいです。ケアレスミス克服のための練習の時間でも良いし、算数の苦手分野をきっちり添削したり、漢字や地理用語を出題するクイズにしたり。その時間は一緒に楽しんで、集中しやすくなるようにする。

例えば、ケアレスミスの改善や高速化には、正解している問題をもっと楽に解いて見せると効果的です。1問2問でなく、毎日のように何十問の単位で見せてあげる。受験算数をある程度自力で解ける人なら、やってみる価値はあります。

正解している問題は、構造部分の理解は出来てストレスが低いので、その中でやっている計算の順序だったり、選ぶルートだったりの改善を目指すわけですね。もっとシンプルに解ける感じとか、計算が一瞬で終わる感じとか。こうしろって命令するんじゃなく、バカにするんでもなく、ただカッコ良いところを見せれば良い。

そうすると、時々真似をして、たまに上手くいく。そこを逃さずに褒める。そうすると、その回数が段々増えていく。それを繰り返していると、以前の方法と新しい方法を使う回数が逆転して、定着していきます。2〜3ヶ月で結構変わるので、まだ入試には余裕で間に合いますね。真似しないなら、それは子供が頑固な馬鹿者ではなくて、自分のやり方が魅力的でないのかも、と考える方が良いです。

見本が無理な場合は、教材のタイム計測をして、タイムと正解率が向上したら喜んで褒めちぎる係でも良い。前もって、これまでの類似問題の履歴を把握しておきましょう。最近の授業ノートとか、プリントでやった問題で×だったのを覚えておいて、前回不正解で解き直した問題を正解したら、更にもう一段テンションを上げて褒める。

解き直しをしたのに不正解の問題は、「あ〜これ苦手みたいだね〜」で良いです。出来た時に褒める。不正解でも、正しい方法をやっていたら、前に進もうとしていたら褒める。

週に40時間も勉強していれば、いろんなことをやっています。塾でやってきたプリントやノート、○×とか点数を見てもサポートにはあまり役に立たない。書いてあることを一文字ずつ追って、思考を辿ってみてください。何を気にして、どんな工夫をして、何に苦しんでいるか。

その40時間を把握もせず、上っ面の点数や家での態度だけを見て石をぶつけるようだと、せっかくの80点の親が台無しになりかねない。マイナスにするくらいなら、黙ってましょう。なにをどれだけ頑張っているか、どれだけ前進しているか。ちゃんと把握して、進んでいるところを褒める。

好きで×貰ってくる子はまずいません。○は他人も褒めてくれるから、○未満の前進を後押ししてあげるのが一番良いです。頑張ってるけどまだ結果が出ていない時にこそ、これで良いんだ、って思わせてあげましょう。楽だけどツマラナイではなくて、多少しんどくても楽しい、って流れが大事です。

 

目に見える必死さを求めない

80点の親が台無しになるマイナス、よくあるパターンは、子供に「必死」とか「真剣」を求めちゃうやつ。な〜んで中学進学ごときに、命の関わるワードで取り組まないといけないんでしょう。少なくとも、親や周囲に強制されたり、負い目を感じて絞り出すもんじゃないでしょう?

成績が横這いか、やや低下。意欲も見えない、とかね。みんな走ってる中で、一人だけ止まったらどうなるか。あっという間に遥か彼方ですよね。嫌気が差してたり、疲れたりしていても、どうにか頑張って走り続けているから、同じくらいの位置にいる。

みんな年間数十万、多い人は100万円以上かけて勉強してる。月10万超えもゴロゴロいる世界。週に何日も塾に通い、日曜日にはテスト、長期休みには季節講習。そんな子たちの中で、変わらない位置を維持しているなら、結構頑張ってるんでしょう。

親は内心は必死でも良いですよ。金も手間もかけてる。いっぱい考えて時間も使ってる。何より、子どもの人生に大きな影響を与えられるし、「いいとこ」に入れば見栄もついてくる。でも、その頑張りの成果が欲しいなら、その見返りに同じ必死さを子供に求めるのは損です。子供とはあらゆる物差しが違うから。

報われたいなら、下心たっぷりでもニッコニコ。勝ちたかったら笑いましょう。親の最大の武器は、家庭で意欲と体力のエネルギーを最大に回復させること。家庭学習の量とか、内容の精査も大事だけど、そういうのまとめて笑顔の次くらいです。

不快感。嫌悪感。怒り。苦しみ。怖れ。そういうものを、自分から撒き散らすのは、良くない方法です。子供が、親の影響力を打ち破って空気を良くするなんて、相当なこと。つまらなそうにしてる人がいると、場を盛り上げるの難しいですよね。逆に、ニコニコ楽しそう、相槌うまい、そういう人がいるところでは動きやすい。家庭って場で親は、空気を作る大きな役割を持てます。

出来ると面白いです。わかる。出来る。褒められる。得意になる。こういう循環を作るのに必要なこと、最初の一歩は面白がること。楽しそうにすることです。まずは楽しい空気、自分にしか見えなくて良いから、あったかくて楽しいオーラを放出しましょう。

人は、感情を増幅させる性質を持っています。怒れば怒るほど、どんどん怒る。不安になればなるほど、もっと不安になる。逆に言えば、ぶった切ってしまえば、大抵のことはそこまで大きくならない。はい次。今できることは?って向きを変えると良いです。

本当は、いつもなら、こうしていれば。それは、現実ではないことです。妄想の世界に逃げ込まないで、はい次。はい次。目の前の、今自分が変えられること、働きかけられることをプラスに動かす。正義の刀を振り回すんじゃなくて、幸せの団扇で風を送ってあげるくらいが良いです。

 

無料成績データ分析

対象は2021年受験予定の6年生で、先着順に対応します。ご希望の方には折り返し詳細をご案内しますので、こちらからお申し込みください。9月30日まで受付。

※通常はデータ受領後2〜3日で結果をお届けしますが、現在は5日ほどかかる状態です。分析データ量にもよるため、見込み日数はデータ受領時にご連絡します。(2020.8.6)

夏の間の弱点克服、算数の強化などについて

ご相談などの中で、割と頻出だったのが算数の夏休みの強化や穴埋めについてだったので、基本的な流れを書いておきます。テスト名は四谷のものを使っていますが、他塾でも同じなので、毎週のテストと模試などの全体テストで読み替えてください。

 

対象問題の抽出

まず目標とするラインを定めて、問題を抽出します。クラス別の週テストと、組分けや合不合などの全体模試は分けておきましょう。全体模試とレベル別テストでは偏差値の母集団が異なるので、志望校のレベルに合わせて調整します。

例えばBクラスの場合、偏差値45〜55あたりの集団の中での位置ですし、Cクラスは55〜63あたりの中での位置になります。志望校の偏差値が60なら、算数偏差値55が必須ラインで、60が目標、65が標準などと区切るイメージですね。

正答率で50%以上をS(最優先)、30%以上をA(優先)、10%以上をB(標準)、10%未満をC(余裕)などに分けます。この際、どの分野からの出題かもリストしておくと、重点強化すべき分野が見えやすくて便利です。正答率50%以上の問題を全て正解した場合の目安偏差値は55、30%以上で60、10%以上では65くらいのイメージです。

正答率は絶対的なものではなくて、正答率の低い問題が多い回、平均的に分布している回などによっても偏差値は異なってきます。例えば、7月の合不合では、正答率50%以上正解で偏差値50、30%以上で58、10%以上で60ですが、6月の組分けだと同52、62、67となります。このあたりは、目標偏差値との兼ね合いで適切なラインを引くようにしてください。

そして、それぞれのブロックを習得したら偏差値が幾つになるか、というのも明記しておきます。ここで大事なのは、1回解き直して正解した程度ではその偏差値相応の力はつかないということ。習得したと言えるためには、①何周か回してノーミスにすること、②テキストの関連問題と紐づけること、③より速く正確に解く工夫する意識を持つこと、そして④人に説明できるように解くこと、などが重要です。

 

周回のやり方

問題を分類し終えたら、まずはS問題のみ、或いはSA問題、などと区切ってプリントにまとめ、解き直しをします。算数の得意不得意によって、S〜A問題だけで80〜100問になる子もいれば、Cまで全てで10〜20問の子もいますので、適切なブロック分けをしてください。ひとまとまりを30〜50問程度にしておく方が良いです。

解き直しの際は、目安時間をテスト時間と問題数を参考に設定しますが、時間を超えても解き終えるまでやりましょう。実際に何分かかったかを記録しておくと良いです。

次は採点して、不正解問題は解説を読んでしっかり理解しましょう。この際、テキストの該当範囲の例題や類題で説明されていることもしっかり読んで、テスト中に使えなかった技術などを書き足しておくと良いです。翌日は不正解分を解き直し、採点して不正解なら上記をやりなおしで、全問正解まで潰していきます。これで1周目。

次は、1週間ほど空けてから、再度解き直しをしましょう。間違ったら繰り返し。目安は4〜5周くらいですが、2周目で全問瞬殺ならやめる、5周でも1回目で解けなかった問題はそれだけ抜き出して次の周回に入れるなど、適宜調整していきましょう。

基本的には正答率でバッサリ区切りますが、例えば50%と49%には大した違いはなく、90%と50%の方が差は大きいですね。なので、50%以上の周回問題数が減ってきたら、40%あたりまでのA問題を足すなど、適切な問題量になるように調整しても良いです。

また、S〜Bの間のどこかで、テスト時に正解した問題も全問解き直しを入れます。授業やテスト勉強をした直後は記憶が残っていて解けた問題も、暫くすると解けないことはそう珍しくないからですね。基本的な流れは、満点まで解き直す+テキストと紐付ける+暫く経ってからやり直す、ということです。

 

解き直しの際に注目すること

解き直しで大事なのは、内容をしっかり見ること。正解/不正解でなく、最も効率よく解いているかどうかを見てください。工夫は足りているか、検算はその場でできているか、混同しないように書けているか、同種のミスを繰り返していないか。

ただ同じ問題を解き直すだけでは、答え自体を覚えてしまっていることもあります。正解数を競うのではなくて、より良い形で解くことを身につける練習と捉えることが大事ですね。良いところ、他の問題での反省を活かした方法、新しい試みや工夫を見つけたら、必ず褒めましょう。

大事なのは解き方です。どんな手順で解いてるのか、それはベストか。いわゆる教科書通りの解き方、解説に載っている解き方というのは、手間が多くて上位校の入試に対応するには効率が悪いものも少なくありません。まとめるところ、潰すところ。比と等積変形、頭に入れておくべき数字などの工夫や練習が足りているかをチェックしましょう。

例えば図形の基本項目だけでも、対角線や補助線を引いて出てくる形(相似、合同、平行、錯覚や同位角を見つける)、30度や15度の時は正三角形を意識する、等しい角度を挟んだ辺の比で面積比を求める、などがありますね。どれかを使えば早いのに、別の方法で何倍も手数を踏んでいる場合などは、より良い形の練習をしておくことが後々効いてきます。

また、数字を約数の組み合わせで見る習慣がついていると、問題のポイントを掴んだり、分数計算などもかなり楽になります。例えば、18の平方数324は9*2*9*2なので、覚えていなくても81*4=324とやって求められますね。14*14なら、7*7*2*2=49*4=196(200より4小さい)と考えても良い。

こういう、数字の中の約数が使えると、九九+加減の形に持ち込める回数が増えて、頭の消耗が少なくて済みますから、平方数自体を忘れていて工夫で解いていても、褒めるポイントになります。平方数だけでなく、周辺の2桁も覚えてしまうと楽ですね。

 

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以前の記事の数字表などもご参考に。

より良い集中の状態を覚えるのも大事

1回やって終わり、正解すればOK、ではなくて、正解した問題の効率も見るようにしていくと、伸びるペースが速くなるので、丸つけで終わりにせず、思考を辿ってあげるようにしてください。

もちろん、そんな時間もない、良くわからない、ってこともあると思います。でも、それならスコアだけ見て文句を言うのはやめましょう。自分では満足にプレイもできない外野に「下手くそ〜」って言われてるのと変わらないので、プレイヤーからすればウザいだけです。

算数は、速く解こうとすると視野を狭くして全力疾走のようなイメージになる子が多いのですが、これはあまり良い方法ではありません。むしろ、背筋を伸ばして軽い感じで解いていく方が、視野を広く保ちやすく、数字の整合性をチェックしたり、別角度での検討をしたりという、ミスなく最短ルートを取るための能力を発揮しやすくなります。

リラックスして、面白がって、楽をしようとする意識を持てるようにするには、良いことを教えて、見せて、やったら褒めるに尽きます。ミスをしにくい、良い集中を身につけられるように、良い行動を褒めて、一緒に面白がってあげてください。