偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

夏の間の弱点克服、算数の強化などについて

ご相談などの中で、割と頻出だったのが算数の夏休みの強化や穴埋めについてだったので、基本的な流れを書いておきます。テスト名は四谷のものを使っていますが、他塾でも同じなので、毎週のテストと模試などの全体テストで読み替えてください。

 

対象問題の抽出

まず目標とするラインを定めて、問題を抽出します。クラス別の週テストと、組分けや合不合などの全体模試は分けておきましょう。全体模試とレベル別テストでは偏差値の母集団が異なるので、志望校のレベルに合わせて調整します。

例えばBクラスの場合、偏差値45〜55あたりの集団の中での位置ですし、Cクラスは55〜63あたりの中での位置になります。志望校の偏差値が60なら、算数偏差値55が必須ラインで、60が目標、65が標準などと区切るイメージですね。

正答率で50%以上をS(最優先)、30%以上をA(優先)、10%以上をB(標準)、10%未満をC(余裕)などに分けます。この際、どの分野からの出題かもリストしておくと、重点強化すべき分野が見えやすくて便利です。正答率50%以上の問題を全て正解した場合の目安偏差値は55、30%以上で60、10%以上では65くらいのイメージです。

正答率は絶対的なものではなくて、正答率の低い問題が多い回、平均的に分布している回などによっても偏差値は異なってきます。例えば、7月の合不合では、正答率50%以上正解で偏差値50、30%以上で58、10%以上で60ですが、6月の組分けだと同52、62、67となります。このあたりは、目標偏差値との兼ね合いで適切なラインを引くようにしてください。

そして、それぞれのブロックを習得したら偏差値が幾つになるか、というのも明記しておきます。ここで大事なのは、1回解き直して正解した程度ではその偏差値相応の力はつかないということ。習得したと言えるためには、①何周か回してノーミスにすること、②テキストの関連問題と紐づけること、③より速く正確に解く工夫する意識を持つこと、そして④人に説明できるように解くこと、などが重要です。

 

周回のやり方

問題を分類し終えたら、まずはS問題のみ、或いはSA問題、などと区切ってプリントにまとめ、解き直しをします。算数の得意不得意によって、S〜A問題だけで80〜100問になる子もいれば、Cまで全てで10〜20問の子もいますので、適切なブロック分けをしてください。ひとまとまりを30〜50問程度にしておく方が良いです。

解き直しの際は、目安時間をテスト時間と問題数を参考に設定しますが、時間を超えても解き終えるまでやりましょう。実際に何分かかったかを記録しておくと良いです。

次は採点して、不正解問題は解説を読んでしっかり理解しましょう。この際、テキストの該当範囲の例題や類題で説明されていることもしっかり読んで、テスト中に使えなかった技術などを書き足しておくと良いです。翌日は不正解分を解き直し、採点して不正解なら上記をやりなおしで、全問正解まで潰していきます。これで1周目。

次は、1週間ほど空けてから、再度解き直しをしましょう。間違ったら繰り返し。目安は4〜5周くらいですが、2周目で全問瞬殺ならやめる、5周でも1回目で解けなかった問題はそれだけ抜き出して次の周回に入れるなど、適宜調整していきましょう。

基本的には正答率でバッサリ区切りますが、例えば50%と49%には大した違いはなく、90%と50%の方が差は大きいですね。なので、50%以上の周回問題数が減ってきたら、40%あたりまでのA問題を足すなど、適切な問題量になるように調整しても良いです。

また、S〜Bの間のどこかで、テスト時に正解した問題も全問解き直しを入れます。授業やテスト勉強をした直後は記憶が残っていて解けた問題も、暫くすると解けないことはそう珍しくないからですね。基本的な流れは、満点まで解き直す+テキストと紐付ける+暫く経ってからやり直す、ということです。

 

解き直しの際に注目すること

解き直しで大事なのは、内容をしっかり見ること。正解/不正解でなく、最も効率よく解いているかどうかを見てください。工夫は足りているか、検算はその場でできているか、混同しないように書けているか、同種のミスを繰り返していないか。

ただ同じ問題を解き直すだけでは、答え自体を覚えてしまっていることもあります。正解数を競うのではなくて、より良い形で解くことを身につける練習と捉えることが大事ですね。良いところ、他の問題での反省を活かした方法、新しい試みや工夫を見つけたら、必ず褒めましょう。

大事なのは解き方です。どんな手順で解いてるのか、それはベストか。いわゆる教科書通りの解き方、解説に載っている解き方というのは、手間が多くて上位校の入試に対応するには効率が悪いものも少なくありません。まとめるところ、潰すところ。比と等積変形、頭に入れておくべき数字などの工夫や練習が足りているかをチェックしましょう。

例えば図形の基本項目だけでも、対角線や補助線を引いて出てくる形(相似、合同、平行、錯覚や同位角を見つける)、30度や15度の時は正三角形を意識する、等しい角度を挟んだ辺の比で面積比を求める、などがありますね。どれかを使えば早いのに、別の方法で何倍も手数を踏んでいる場合などは、より良い形の練習をしておくことが後々効いてきます。

また、数字を約数の組み合わせで見る習慣がついていると、問題のポイントを掴んだり、分数計算などもかなり楽になります。例えば、18の平方数324は9*2*9*2なので、覚えていなくても81*4=324とやって求められますね。14*14なら、7*7*2*2=49*4=196(200より4小さい)と考えても良い。

こういう、数字の中の約数が使えると、九九+加減の形に持ち込める回数が増えて、頭の消耗が少なくて済みますから、平方数自体を忘れていて工夫で解いていても、褒めるポイントになります。平方数だけでなく、周辺の2桁も覚えてしまうと楽ですね。

 

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以前の記事の数字表などもご参考に。

より良い集中の状態を覚えるのも大事

1回やって終わり、正解すればOK、ではなくて、正解した問題の効率も見るようにしていくと、伸びるペースが速くなるので、丸つけで終わりにせず、思考を辿ってあげるようにしてください。

もちろん、そんな時間もない、良くわからない、ってこともあると思います。でも、それならスコアだけ見て文句を言うのはやめましょう。自分では満足にプレイもできない外野に「下手くそ〜」って言われてるのと変わらないので、プレイヤーからすればウザいだけです。

算数は、速く解こうとすると視野を狭くして全力疾走のようなイメージになる子が多いのですが、これはあまり良い方法ではありません。むしろ、背筋を伸ばして軽い感じで解いていく方が、視野を広く保ちやすく、数字の整合性をチェックしたり、別角度での検討をしたりという、ミスなく最短ルートを取るための能力を発揮しやすくなります。

リラックスして、面白がって、楽をしようとする意識を持てるようにするには、良いことを教えて、見せて、やったら褒めるに尽きます。ミスをしにくい、良い集中を身につけられるように、良い行動を褒めて、一緒に面白がってあげてください。