偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

もう一段上がるためにする工夫と、成績データ分析

いよいよ8月に入り、残り半年になりました。現在も感染者が増え続け、心配は尽きませんね。学校の対応、通塾の電車とか、塾の授業でも感染するかもしれないとか。また休講になったりしないか。動画授業や自宅学習では、思うように進まなかったり。入試自体、ちゃんとやれるのか、変わることもあるんじゃないかとか。

でも、不安や不利を数えても役には立ちません。不安に取り込まれない最良の方法は、今できることに集中して最善を尽くすこと。今年の受験生が例年と違う状況ではあっても、昨年の受験生と競うわけじゃない。競う相手は、同じ今年の6年生。

合不合やSOの問題と得点の分布を見ても、例年に比べて大きな変化はなく、どちらかと言えば中間層は少し落ちてるかなという印象。おそらく年間を通して、数万人のデータを比較すれば今年はこういう傾向だった、という特徴は出るでしょうが、まぁ過ぎた後でわかっても意味ないですね。

塾によって、小学校や担任によって、或いは家庭教師などによってハンデがある。これも毎年のことです。例年以上に自学自習力の高い子に有利な傾向はあるかも知れませんが、そもそも毎年、自学自習できる子と安定した家庭環境の組み合わせは最強です。

ですから結局、自分のペースを作って、一歩ずつ前進することに集中するのが一番有利ですね。ごく当たり前ですが、これが本当にわかっていて、実行できる人はそんなに多くないので、実行できればプラスです。

 

テストの内容と結果を分析する

前回の記事でも書いたように、まずは目標ラインに向けた問題を抽出して、どう進めるかを決めていきましょう。

各塾でデータベースがあり、模試結果などに正答率や分野ごとの得点傾向なども見ることができますね。これをきっちり活用しましょう。自分で色々と扱いたい時は、以下のように得点と正答率を入れた表を組みます。

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正答率順に並べるとこんな感じ。

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不正解分だけの抽出だとこうなります。

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で、これを過去模試や週テストの分を統合して、自分用の優先度の高い問題を抽出するわけですね。更に、分野別に整理して、特に弱い分野の対応テキストをやり直したり、問題集の同じ分野を全問解いたりします。

Sが全部スラスラ解ければ偏差値このくらいの子と同等になる、Aならこのくらい、という目安になります。独自の表に落とし込まなくても、塾のデータベースの活用でかなりのことが出来るので、自分なりに把握できるように工夫してみましょう。

ご相談の方と算数講座の受講者に、成績データ分析が好評だったので、この記事の最後に一時的に受付を設置しておきます。

通塾していない、模試以外の週テストなどがない場合は、仕上げる問題集を一冊決めて、時間を測って取り組みます。一周目でどのくらい正解しているかを把握して、周回プランを立てましょう。

 

ペースの守り方

未経験な上に、不測の事態も起こり得る状況でペースを守るには、「全部ちゃんとやろう」より、「必要なことをひとつずつやろう」という意識が大事です。優先順位を決める、緩衝地帯を設けておく、良い時間帯を大事にする、の3つがあると良いですね。

まず、やるべき内容を段階別に分けておきましょう。例えば休日なら①最優先2時間、②優先4時間、③普通2時間、残りは④余裕、といった感じです。最優先には、一日の中で一番良い時間帯を充てる。予定外のことで時間を使うときは優先度の低い方で吸収して、①や②には影響が出ないようにする。

一日中ずっと机に向かったところで、そうそう全部は頭に入りません。何度も抜けるので、それを丁寧に埋めていくだけ。ひたすら高速道路の拡張工事を行いながら、出来た範囲も日々点検して破損箇所の補修を続けるようなイメージですね。作りっぱなしでは崩落事故多発です。

1日6時間×週7日で42時間。25週として1000時間以上ある。多い分には困らないけど、塾の時間込みで、まずはこの枠でしっかり前進することが基準です。一日夏期講習に行ってる場合は、家では最低限の基礎練習くらいでも良い。

週休2日の週40時間勤務の大人でさえ、フルで集中してない人っていますよね。残業してる人でも、朝イチからフル回転とは限らない。もちろん、1日16時間働けるハードワーカーはいますけど、そういう人たちは、基本的に強制されてないし、高額な報酬や自己実現の一環だったりもしますね。

親が制限をかけるくらいの子でなければ、塾のある日はそこでお疲れが普通です。帰宅後や登塾前、そんなにがっつり出来ないのも珍しいことではない。だから、そういう面は許容しつつ、どうやってプラス1を乗せるかを考える。

 

受験は6〜70点で良い

子供に向き合う前に、まず自分を採点してみてください。100点満点じゃないにしても、0点でもないでしょう?怒鳴ったり、殴ったり、ネチネチ追い詰めたり。そういうのはマイナスとして、マイナスする前の素点、どのくらいあるか。

安心して眠れる家と布団はありますか?ご飯は毎日食べられますか?清潔な衣類はありますか?水道光熱通信費はきちんと払っていますか?塾やテキスト、筆記用具代は足りていますか?そこまでやると、親の役割としては、80点あげて良いと思うんですよね。あとは本来、子供の努力と塾の腕の問題でしょう。

入試なんて6〜7割で合格ですから、80点の親ならもう十分。マイナスなければ70点でも良いくらいです。あとは子供を有利にする下駄を履かせようとしてるだけ。他の家には、もっとスーパーな親や家庭教師がいるかも知れないけど、本当にスーパーな人なんて、そんなに転がってない。割とみんなフツーです。そんなに凄くもないし、そんなに酷くもない。

だから、まず1日に15分、自分の影響で「元気に一生懸命取り組んで前進する時間」を作り出せたら、かなり良いです。30分、1時間になれば相当すごい。全部をコントロールしようとしなくて良いです。元々80点あるところに、1点プラス。週に1点前進でも、入試までには満点な親になっちゃいますね。

 

テーマを決めて取り組む

15分の影響力を発揮するには、テーマを決めて取り組むとやりやすいです。ケアレスミス克服のための練習の時間でも良いし、算数の苦手分野をきっちり添削したり、漢字や地理用語を出題するクイズにしたり。その時間は一緒に楽しんで、集中しやすくなるようにする。

例えば、ケアレスミスの改善や高速化には、正解している問題をもっと楽に解いて見せると効果的です。1問2問でなく、毎日のように何十問の単位で見せてあげる。受験算数をある程度自力で解ける人なら、やってみる価値はあります。

正解している問題は、構造部分の理解は出来てストレスが低いので、その中でやっている計算の順序だったり、選ぶルートだったりの改善を目指すわけですね。もっとシンプルに解ける感じとか、計算が一瞬で終わる感じとか。こうしろって命令するんじゃなく、バカにするんでもなく、ただカッコ良いところを見せれば良い。

そうすると、時々真似をして、たまに上手くいく。そこを逃さずに褒める。そうすると、その回数が段々増えていく。それを繰り返していると、以前の方法と新しい方法を使う回数が逆転して、定着していきます。2〜3ヶ月で結構変わるので、まだ入試には余裕で間に合いますね。真似しないなら、それは子供が頑固な馬鹿者ではなくて、自分のやり方が魅力的でないのかも、と考える方が良いです。

見本が無理な場合は、教材のタイム計測をして、タイムと正解率が向上したら喜んで褒めちぎる係でも良い。前もって、これまでの類似問題の履歴を把握しておきましょう。最近の授業ノートとか、プリントでやった問題で×だったのを覚えておいて、前回不正解で解き直した問題を正解したら、更にもう一段テンションを上げて褒める。

解き直しをしたのに不正解の問題は、「あ〜これ苦手みたいだね〜」で良いです。出来た時に褒める。不正解でも、正しい方法をやっていたら、前に進もうとしていたら褒める。

週に40時間も勉強していれば、いろんなことをやっています。塾でやってきたプリントやノート、○×とか点数を見てもサポートにはあまり役に立たない。書いてあることを一文字ずつ追って、思考を辿ってみてください。何を気にして、どんな工夫をして、何に苦しんでいるか。

その40時間を把握もせず、上っ面の点数や家での態度だけを見て石をぶつけるようだと、せっかくの80点の親が台無しになりかねない。マイナスにするくらいなら、黙ってましょう。なにをどれだけ頑張っているか、どれだけ前進しているか。ちゃんと把握して、進んでいるところを褒める。

好きで×貰ってくる子はまずいません。○は他人も褒めてくれるから、○未満の前進を後押ししてあげるのが一番良いです。頑張ってるけどまだ結果が出ていない時にこそ、これで良いんだ、って思わせてあげましょう。楽だけどツマラナイではなくて、多少しんどくても楽しい、って流れが大事です。

 

目に見える必死さを求めない

80点の親が台無しになるマイナス、よくあるパターンは、子供に「必死」とか「真剣」を求めちゃうやつ。な〜んで中学進学ごときに、命の関わるワードで取り組まないといけないんでしょう。少なくとも、親や周囲に強制されたり、負い目を感じて絞り出すもんじゃないでしょう?

成績が横這いか、やや低下。意欲も見えない、とかね。みんな走ってる中で、一人だけ止まったらどうなるか。あっという間に遥か彼方ですよね。嫌気が差してたり、疲れたりしていても、どうにか頑張って走り続けているから、同じくらいの位置にいる。

みんな年間数十万、多い人は100万円以上かけて勉強してる。月10万超えもゴロゴロいる世界。週に何日も塾に通い、日曜日にはテスト、長期休みには季節講習。そんな子たちの中で、変わらない位置を維持しているなら、結構頑張ってるんでしょう。

親は内心は必死でも良いですよ。金も手間もかけてる。いっぱい考えて時間も使ってる。何より、子どもの人生に大きな影響を与えられるし、「いいとこ」に入れば見栄もついてくる。でも、その頑張りの成果が欲しいなら、その見返りに同じ必死さを子供に求めるのは損です。子供とはあらゆる物差しが違うから。

報われたいなら、下心たっぷりでもニッコニコ。勝ちたかったら笑いましょう。親の最大の武器は、家庭で意欲と体力のエネルギーを最大に回復させること。家庭学習の量とか、内容の精査も大事だけど、そういうのまとめて笑顔の次くらいです。

不快感。嫌悪感。怒り。苦しみ。怖れ。そういうものを、自分から撒き散らすのは、良くない方法です。子供が、親の影響力を打ち破って空気を良くするなんて、相当なこと。つまらなそうにしてる人がいると、場を盛り上げるの難しいですよね。逆に、ニコニコ楽しそう、相槌うまい、そういう人がいるところでは動きやすい。家庭って場で親は、空気を作る大きな役割を持てます。

出来ると面白いです。わかる。出来る。褒められる。得意になる。こういう循環を作るのに必要なこと、最初の一歩は面白がること。楽しそうにすることです。まずは楽しい空気、自分にしか見えなくて良いから、あったかくて楽しいオーラを放出しましょう。

人は、感情を増幅させる性質を持っています。怒れば怒るほど、どんどん怒る。不安になればなるほど、もっと不安になる。逆に言えば、ぶった切ってしまえば、大抵のことはそこまで大きくならない。はい次。今できることは?って向きを変えると良いです。

本当は、いつもなら、こうしていれば。それは、現実ではないことです。妄想の世界に逃げ込まないで、はい次。はい次。目の前の、今自分が変えられること、働きかけられることをプラスに動かす。正義の刀を振り回すんじゃなくて、幸せの団扇で風を送ってあげるくらいが良いです。

 

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対象は2021年受験予定の6年生で、先着順に対応します。ご希望の方には折り返し詳細をご案内しますので、こちらからお申し込みください。9月30日まで受付。

※通常はデータ受領後2〜3日で結果をお届けしますが、現在は5日ほどかかる状態です。分析データ量にもよるため、見込み日数はデータ受領時にご連絡します。(2020.8.6)