偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験年度に向けた、休校期間の学習プラン例など

お休み中の予定、本人が10時間や12時間やる意欲があるなら止める必要はありませんが、きちんと管理されたカリキュラム、指導体制がある夏期講習の合間の休みなどと違って、親との相談だけで急遽一日中、それも長期間家にいて勉強できる時間は、学校の時間割程度の6時間程度までと考える方が良いです。

算数無料講座を実施することにしました。興味のある方は下記よりどうぞ。(2020.3.1)

集中して6時間やれれば十分にプラスになるので、一日中受験勉強のノリで気にし続けるより、6時間それなりに真面目にやることを基本線にして、学習の質と家庭内の平和を優先する方をお勧めします。

問題集などで進める場合は、午前3時間、午後3時間などでページ数を消化する予定を組み、採点した正答率で夕方以降の予定が決まるようにすると良いでしょう。不正解分は解き直し、全問正解なら自由時間。ゲームなどは通常の時間制限はキープした方が良いので、読書や映画、工作や実験キットなど、楽しめる時間にすると良いです。

内容的には、4教科全部をやるより、1〜2教科をしっかり集中して取り組む方がおすすめ。社会用語と漢字を一冊仕上げるとか、算数の4〜5年の範囲の総復習など、期間で仕上げる目標を明確にしてそこを目指す方が良いです。

以下、おすすめのテキストと進め方の例を載せておきます。あくまで一例として参考にして頂いて、下記のどれかひとつでも完全にやりきればかなり力がつきます。言及して頂いたにゃちさんの記事でも色々と紹介されているので、そちらもご参考に。

算数

●4科のまとめ

先日の記事でも触れたように、以下のように仕上げるのがおすすめ。

・1項目3問の例題をまずは完璧にする。
・5項目ごとに、ポイントチェックの30〜40問をテスト形式で解く。
・不正解問題を仕上げる。
・少し期間を空けて、再度不正解問題をテスト→仕上げる。

夏休みまでに2〜3周やれると理想的です。

●4〜5年のテストのやり直し(+テキストなど解いた問題)

週テストや模試で、とりたい偏差値レベルまでの問題を抽出する。予習シリーズを解いたものが残っていれば、それの不正解とも組み合わせるとより効果的です。

解答をしっかり読みこみ、ノートに正しい解法や自分なりのルートを書く。ここはかなり大事で、さっと答えを見て、その日に解き直して○になってもあまり意味ないと考えた方が良いです。

数日空けて、抽出問題だけで60〜90分くらいの量にしてテスト。例えば模試なら、配点からざっくり時間を決めるくらいで良いです。60分150点の模試で、15点分の問題なら6分など。

最初の計算や小問集合だけでなく、不正解問題を並べてみるとミスの癖が出ていることは多いので、計算ミスの傾向などを見つけたら類似問題をやり込むのもアリ。この場合、ミスをなくす手段を考え、その解き方で解くことも大事です。

●基礎トレ

基礎トレという名前ですが、これが6年1月分まで仕上がっていれば、あとは学校別やSSでの対策と過去問だけで合格ラインに届くレベルで、受験期まで周回する価値のある問題集です。

内容は入試の小問集合などで頻出のレベルで、6年後半期には基礎トレ6日分、60問を50分で解き、9割正答を目指すトレーニングに使用していました。ざっくりした目安ですが、これを時間圧をかけて7〜8割正答できるようになっていると、偏差値55前後の学校の算数はほぼ合格ラインに届きます。

算数優位の子でなければ先取りで回す必要はありません。不正解問題だけを抽出した2周目は50分50問にするなどして、より精度を高める工夫をすると良いでしょう。

 

理科

●4科のまとめ→コアプラス

4科のまとめは基本がコンパクトにまとまっているので、まずはこれを完全に仕上げる。天体や電気など、わかりにくい&親も解説しにくい箇所が出た時は、Youtubeで該当範囲を解説しているものを拾って視聴したり、詳しい解説をしているページを見つけてプリントするのもあり。コアプラスで仕上げのチェックをやるイメージです。

社会

●4科のまとめ/白地図/年表トレーニン

社会はこの3冊が仕上がっていれば、55あたりまでは特に足すことなく合格点が取れるので、用語の漢字ミスなども含め徹底的に仕上げると良いです。どれか1冊が夏前までに仕上がっていると後半戦がかなり楽になるので、丁寧に周回しましょう。

 

国語

●漢字語彙テキスト一冊
漢字の要ステップ1か、漢字とことばの6年上まで仕上げれば、漢字で得点を落とすことはほとんどなくなります。全問→不正解のみ→不正解のみ→全問、という感じで、周回の内容を変えながら漏れを無くすと良いです。市販されていることば1200もやりやすいテキスト。

 

●過去問の本文読解
受験可能性のある学校以外で、同じくらいの偏差値帯の入試過去問を使うのがオススメです。四谷の過去問DLで国語の問題と回答が揃っているものを選び、説明文や論説文の大問ひとつを毎日進めると便利ですが、解答が答えのみなので、解説が出来ない場合は問題集を利用するのも良いでしょう。物語文の方が苦手な子は物語で。読むペースを掴むのも大事ですが、まずは文章中の言葉で内容を把握したり、表現できることを主目的にすると良いです。

もし見れるなら、解いたものを一緒に読みながら記述の根拠になる部分やキーワードを拾っていく過程や、選択問題の弾いていく根拠を見つけていく過程などを話し合ってあげると良いです。そこまで出来なくても、時間内に本文を読んで、どんなことが書いてあったか話し合うだけでも有効なので、できる範囲で取り組んでみてください。

公立小学校の休校中のスケジュールについて

春休みの開始がほぼ1ヶ月早まるような状況で、特にシングルや共働きのご家庭には緊急事態になっていることと思います。この期間を有効に、かつ親子の衝突を避けて活用することは、受験に限らず親の負担を軽減する上でも重要なので、親子でよく話し合って内容を決めるようにしてください。

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スケジュールに関しては、開始時間とページ数を決め、離れている場合はビデオ通話などで開始終了だけでも付き合うようにすると良いです。集中や姿勢まで、普段以上のものを求めるのは無理だと割り切り、机に向かっていれば良し、くらいのレベルで見守ることを基準に置いておくと良いでしょう。

スマホ、ゲーム、問題集の解答などは鍵をつけたエコバッグなどに入れて一元管理するのがオススメ。漫画など気が散る+嵩張るものは、予めダンボールなどに入れて封印してしまう方が良いです。これらは必ず相談の上で、ガス抜きのポイントをどこにするか、折り合いをつけておくことが大事ですね。

予定の量やレベルを達成したら、自由時間にしてあげるのも良い方法です。出来ても出来ても次コレね、ってやるよりは、目標が見えやすくなる効果もあり、衝突も防ぎ易いので、意識しておいてください。

進める内容は、本来学校に通っていた時間が丸々空くので、テキストを一冊仕上げるなどの取り組みがおすすめです。新小6の方は、5年までの総復習をする大チャンスなので、丁寧に読み返したり、目標得点を決めて取り組むように働きかけましょう。

中身はうっすいですが、大事なことなので書いてみました。この降って湧いた時間をプラスに出来るように、のんびりニコニコ頑として。楽しく過ごすようにしてください。

 

 

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子供のやる気がない!ということについて

今日は、ご相談の中でも非常に多い「子供のやる気」についてです。ひとつ前の記事で書いた、自分用の調整時間を持つこととも絡めて書いてみました。

子供のやる気がない、足りない理由

中学受験で親の割合が大きい理由のひとつが、特殊な子以外は受験勉強自体が自主的にやる気にはならないものだからです。特殊な子というのは、大きく分けると下記3つです。

①明らかに周囲の同級生と異質な浮きこぼれ(吹きこぼれ)で、同じ環境に合わない子
②イジメや嫌いな子がいるなど、同級生と同じ学校に行きたくない事情のある子
③電車やマインクラフトにハマる子と同じように、たまたま4教科の勉強が好きな子

特に難関に合う資質は①と③だけ。③は国語や理科など1教科なら珍しくないのですが、中学受験に合う4教科とも上げられるようなタイプは稀です。これは、広告のターゲットを見ても容易にわかりますね。大学受験や資格取得、英会話などのターゲットは、そこで学ぶ本人だけど、中学受験のターゲットは親。

子供が欲しがる年齢でないから、お財布を握っていないから、ではありません。おもちゃでも遊びでもゲームでも、子供をターゲットにした広告は山のようにあり、それに惹きつけられて親にねだる子供も、買い与える親もいますが、中学受験は本人が魅力を感じるコンテンツではないので、訴求する意味がない。

少子化でパイが減っていく市場で、顧客と雇用を確保したい塾と学校。ないパイを増やすには、不安を煽る系の市場開拓をしていくことになります。公教育の不備、高校受験の内申の理不尽さ、大学受験や将来の不透明さ、そして「子供の将来を考える、心ある親はやっている」。今の中学受験市場は、これらを10年20年と積み上げて形成されてきたわけですね。

同じ日本なのに、全国では7〜8%の中学受験率が、首都圏では13〜15%、都内の受験熱の高い地域では25〜50%。私学の生徒数だけではない偏りが生じるのも、ある程度経済的に余裕のある層が「将来への不安」+「みんなもやっている」で煽られた結果ですね。親には「将来への不安」はあるけど、「みんなもやっている」が薄い地域では動機付けが弱いのに加え、都内の高所得層ほど本人が難関大学出身、あるいは職場に旧帝早慶以上の同僚が多い、などの条件も影響を強める。

子供にとっては、別に受験などしなくても、普通に中学生になれる。中学校に通ったこと自体がないので、みんなの行く中学に進学することにそこまでネガティブな印象もない。受験しないと入れない学校の良さがピンと来ないので、お子さんの意欲が「普通の習いごと」や「普通の部活」くらいの熱量なことは、自然なことです。

これを、塾などの特殊な環境で「洗脳」に近いことをしていくのが中学受験の「意欲」の基本です。毎週のテストと偏差値や順位で競争心を煽り、それに向けて競っている仲間のいる環境に身を置くことで、価値観として刷り込む。これに感応しやすいタイプ、競争心の強い性質や、たまたま比べた相手に勝てる資質を持っていた何割かは意欲が出てきます。

ネガティブな感じで書いていますが、私は中高一貫校への進学は肯定派です。YN偏差値45以上くらいだと、全体から見ると上から2〜3割の資質と家庭環境の子が集うので、モラルや進学意識が高い。学校が提供する様々な体験の機会も公立とは一線を画し、高校受験もなく部活や留学など好きなことに中断なく取り組める。更に55以上になると、就職用の学歴としては十分なGMARCH以上が当然の空気。通学の負担が大き過ぎなければ通うメリットがあると思います。

ただ、参加する以上は煽りの影響を少なからず受けること、勉強の本質や、受験の目的はそこじゃないことは、意識しておいた方が良いということですね。何度も「大学進学まで考えたら1周目」と書いているように、どの中学でもその先が大事。勉強を嫌いにさせたり、家庭が安心できない場所になったりしたら、マイナスが大きいです。

 

煽りを受け、費やすお金と時間が増えるほど、不安と切迫感が増す

こんなにやってるのに、成績が上がらない。なぜか。他の子もやってるからですね。週1日の部活で甲子園に行くことはまずないでしょう。でも、週7日でも2〜3回戦で負ける学校はたくさんあります。それ以上は練習の質の差、素質の高い選手が集まっていること、組み合わせの運不運などの要素も絡んでくる。

集団と個人の違い、対戦相手がいる競技と問題を解く受験の違いはありますが、人と競うものは基本的には同じ。努力をしても、相手も同じようにやっていれば差はつきません。塾から提供される膨大な量をこなして得られるのは、脱落する可能性を減らすこと。

これからも他の子と同じように通塾して、同じくらいの努力と年数十万以上の費用をかけて1年を過ごせば、同じような偏差値帯の学校を数回受けて1〜2校の合格を取れるのが基本線ですね。塾が学力向上に素晴らしいプログラムを提供して、全塾生の学力が上がれば、その塾内での立ち位置は変わりません。

この基本線を、他の子が100m進むところを105m、110m進めるようにする手伝いが家庭教師や個別ですね。その分、外注費用が嵩みます。親は重課金するほど成果が欲しくなり、更に絡め取られる仕組み。単にお金の問題だけでなく、色々なことを我慢して時間もかけて、偏差値の高い学校に行けなければ「子供の頭が悪い」とか、「親の教育が悪い」というプレッシャーも強烈になる。

でも、このプレッシャーを子供にぶつけても、ほとんどプラスはありません。むしろ子供の認識の中では、勉強が「苦しいけどやらないと怒られるもの」になって、好きになるのとは逆方向に進む。親に対する印象も、自分の苦しさや努力を理解するより、スコアや基準との比較でもっと頑張ることを求めてくる人。そんなに良い印象とは言えないですね。

 

子供の意欲を引き出すには親の意識を変えると良い

親の勉強に対する意識が変わると、子供の意欲にも有利に働くと考えています。勉強が楽しいものだと思っていること。その楽しさを教えてあげる、一緒に遊ぶ延長のような感覚が良い。自分が嫌なものを押し付けて、責任論で怒鳴りつける人とか、想像してみてください。げんなりしませんか?

例えばトイレの掃除や、寒い中の窓拭き。山のような書類の数字チェック。楽しくなさそうな、キツそうなことを「やれ」と指示して、遅いと怒鳴る。汚れや間違いを見つけては叱る。たまに来て、責任感がないだの、もっと高い意識を持てだの言っていなくなる。これで楽しむとか、意欲を持つとか出来る人は、かなり特殊枠でしょう。

だから、キツいことは率先してやって、至らない箇所は直るまで付き合う。あと笑顔。ビビらせない。むしろ一緒にいれば、怖い相手が来ても平気って思えるくらいの安心感。このあたりは大事です。必要な厳しさは頑丈な態度で示せば良くて、怒りや攻撃性で示す必要はない。

一流大学に入りたい!とかで、苦労して努力して徹夜して受験勉強した人とか。必要だから、決めたから、根性で苦労を乗り越えた。それ自体は素晴らしいですけど、そのノリを中学受験に持ち込まれるのは邪魔なことの方が多い。高校生と小学生では、体力も目的意識も全然違うからですね。

高学年にもなると、子供が急に大人びたり、生意気を言うようになる。大人より詳しいことも出てくる。でも、それで相応の大人らしさを求めるのはズレてます。掴まり立ちやヨチヨチ歩きから、上手に歩ける、跳んだり走ったり出来るまでは時間がかかりますね。生意気を言える段階と、中身が伴うまでにも時間差があります。いっぱしの口はきけるけど、それに伴う責任やその後の展開を想像するには経験が足りていない。

高校生や大人みたいなことを言える頭と、小学生の経験。アンバランスな時期だから、大学受験や仕事と同列に並べることは出来ません。あくまで小学生の習い事のひとつとして、楽しさとか、やりがいを感じやすく仕向ける方が良い。

何かに詳しくなったり、出来るようになって、しかもそれで評価されるってのは楽しいことです。小学生の頃にハマった遊びとか集めたもの、思い出してみてください。大したことないことに熱中したり、欲しかったもの、ありませんか?

今のソシャゲの課金とか、トレカも同じですね。そのコミュニティの中で価値のあるものに反応して、射幸心や競争心が煽られる。このあたりの意識を、うまく勉強に向けることが大事です。

勉強で評価される場所は、既にありますね。塾や模試。なので、あと用意するのは楽しさです。塾のカリキュラムは、かなりの量と密度で、楽しんでいられない。ついていくのがやっと、こなすのに必死、って状態になりやすい。

だから、そこで少しブレーキを踏んであげる。1〜2割はカリキュラム以外に目を向ける。少しくらい、課題が終わらなくても良いって気楽さも同時に伝える。だって、課題を「やること」自体には、ほとんど意味がないです。こなすことに必死→成績上がらない→もっと頑張れ、ってのはどんどん苦役になっていく悪いループ。

あれはみんなにやらせるだけ。その回数で完全に身につく子はほぼいない。やらなくて良いとか、意味がないってことではないですよ。全部こなして、全部身につくのが一番だけど、優先順位をつけるなら、身につく>こなす。自分の身になるペースを見つけることの方がより重要。

勉強で大事なのは、身につくまでやることです。そして楽しいこと。出来た!わかった!なんか出来るようになってきた!って感覚を味あわせてあげる。そして得点を取らせて、塾の先生や仲間から「すごいね」って声をかけてもらう。もっと出来るようになりたい、って思わせるのが近道です。ご褒美で釣るのも、短期なら効果があるので、要所要所で組み合わせるのはアリ。

そのためには、問題を解いている時に、険しい顔をしない。出来ないことを責めない。イライラしない。合コンでも想像してみてください。相手がつまらなそうな態度、気が散っているとして。人の話はちゃんと聞け!って相手を責めてもモテませんね。相手の態度が悪いなら、自分の話が退屈なところを変える方が良い。話が面白ければ、もっともっと、ってせがんでくることだってある。教えるなら、解答暗記するくらいきっちり準備をして、のんびりニコニコの方が良い。

 

自分の時間で仕上げるプラン

偏差値40台くらいで苦戦している場合は、何か一冊仕上げることを考える。例えば、算数の4科のまとめは50項目、例題は3問しかありませんが、ちゃんと納得して自分でも丸々説明できるように仕上げると、かなり力がつきます。解説と遜色ないレベルで解けるかどうか、確認しておきましょう。

1日3問で、完答ならそれでおしまい。出来る範囲なら15分くらいです。出来ない問題は、しっかり解説を読み、わからないならわかるまで聞く。解答を丸写ししても良いですが、その場合は翌日以降、何も見ないで再現すること。

5日やったら、6日目には1〜2時間くらいで該当範囲のポイントチェックをテスト形式で解きます。1問2分目安ですが、全問確認することが大事なので、1問4分まではやっても良いです。それで解けない問題は不正解に入れる。不正解問題は、7日目に例題と同様に納得いくまで解説を読んだり、解答を丸写ししたりして、これで1セット。10セット回すと10週間なので、これから始めればGWあたりには1周終わりますね。

2周目は、最初のポイントチェックで不正解になった問題だけを適量で解いていきます。3分の1、100〜120問くらいあるとして、1日5問でも3週間くらいで終わりますね。ここでも不正解があれば、やはり解説精読、書き直しをします。このペースで夏までに3周は出来ますし、2周やったら6年上までの予習シリーズの問題をやっても良いです。これが仕上がれば偏差値50超、これまで塾でやってきたことの歯車が噛み合えば、55以上に来る可能性も十分にある。

で、もうひとつのプラスは、そんなに辛そうに延々とやらなくても力がつく経験をできること。親とニコニコ楽しくやって、自分の力が伸びた経験を与えられたら、相当なプラスです。そんなに簡単には運ばないでしょうけど、目指す価値はある。少なくとも、親はイライラ、子供はこなすのに精一杯ってだけの毎日よりは、伸びる見込みがあります。

塾はあくまで、全体向けに全範囲をやらせるペースメーカーに過ぎません。出来ないことをそのまま放置したら、穴だらけになる。自分の理解や知識を仕上げる時間を確保することが、どの段階でも必要です。嫌でも仕方ないから決まったことをやる、仕事どころか苦役のようなイメージを持っているなら、それを拭うことも大事ですね。

 

おまけ

新型コロナウイルス、感染力は高く重症化率は低い、、、云々は置いておいても、特定のウィルスだけ選んで防御する方法もないし、インフルやノロも貰わない方が良いので、この機会に感染予防の習慣をしっかり定着させておくと良いですね。昨日公開された、東北医科薬科大学病院の新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブックはコンパクトにまとまっているので、ご参考に。

おまけのおまけ。着けないけど好き。

 

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複数の解法について

昨日の記事がちょっとわかりにくいと感じた方もいらしたので、例題を2つ挙げてみます。

例題1

高さ60cm、幅100cmの長方形ABCDがあり、点Aから射出された球が反射して点Pに届く。点Pの位置は辺BCから20cm、辺CDから60cm。BE間の長さを求めよ。

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で、下図のように長方形を反転させた図を繋げていって直線と考え〜みたいな方法だけしか使わないクセがついていると、反射回数が多い問題の時には書くのも面倒、スペースがないと苦労して時間もかかります。

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で、上下の辺にタッチしている回数を数えてみると3回なので、縦の移動距離は60×3+20=200cmとわかります。

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左右の辺にタッチしている回数が2回なので、横の移動距離は100×2+(100-60)=240cmですね。

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縦:横=5:6=AB:BEなので、BE=60÷5×6=72cm。という感じに考えると、30秒くらいで出来て苦労もしませんね。

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補足:上下の移動距離、左右の移動距離をカウントしたものを比が等しい三角形で考えているので、図にするとこんな感じです。

例題2

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こんな形の問題も、全て通分して計算すると、数の個数が多くなるほど大変になります。でも、最初の組み合わせを見ると前の数字の半分を引いて残りが半分になり、次も同様に前の数字の半分を引いて残りが半分、の繰り返しと気付けば、最後に引いた数=答えになるとわかるので、計算しなくて良いですね。

2の倍数の分母が続いている限り、最後の数字を書くだけでOKです。1024分の1だろうが、2048分の1だろうが、計算しないで済む。この問題は規則性の問題ですが、なんでも通分&計算してしまうクセで計算問題に見えてしまうと、却って時間を使ってしまうわけですね。

色々考えて楽をする

これらの方法を、こっちが正しい!って覚えるのではなくて、両方を使える、試せるような気楽さが大事です。ほとんどの問題で簡単な方法と複雑な方法があることや、途中式でもより簡単に出来る場合もあることを常に意識しておくと、パッと見で思いつく方法で解けない時に次の手を試すのも気楽に出来るし、より安全で早い方法で解くことも出来ます。

食塩水の濃さなら面積図でも天秤算でも数字だけでも解けるとか、人数や平均点でもはみ出す部分だけ考える方が早いとか、図形の等積変形や移動なんかでも正解までのルートが複数あることは多いです。

特に、解答解説を見ながらの解き直しは、正解を知っているからこそルートを精査することもやりやすくなります。昨日も書いたように、超難問ではなく、ほどほどの難度の問題で色々と考える練習をしておくと、初見の難問でも幾つか試す武器を持てるので、上位校の入試で有利に闘うためには練習しておくと良いでしょう。

新中1と新小6の方へ

新中1の方へ

強いプレッシャーのかかった受験が終わり、目標が見えにくくなる感覚を味わったりする時期ですね。今の時期から通塾を始める方もいると思いますが、通塾自体はどちらでも構いません。勉強のペースを完全に失う事さえなければ、必要に応じて塾を選べば良いだけです。

何度か書いていることですが、小4〜高3までの9年間を中学受験の3年間に置き換えれば、中学受験が終了した今は小4の終わりの組分けの段階に過ぎません。サピだろうが地元塾だろうが、最上位クラスだろうが普通クラスだろうが、まだ何も決まっていない段階ですね。この時期に学習習慣を捨ててしまうのは本当にもったいないので、何かしらの意図を持って毎日数時間の勉強は継続するようにしましょう。

 

独学で英語の準備を進める場合

この時期には英語の基本的なことに馴染んでおくことを最優先にすると良いです。授業が始まるまで50日ほどあるので、有効に使いましょう。毎日1時間でも50時間、2時間なら100時間の準備ができます。

もちろん、英語塾に通ったり、英検取得に向けた勉強や基礎英語などに取り組んだり、教科書ガイドで先取り学習するのも良いですが、あまりプレッシャーをかけずに独学で進める場合は、発音の練習と基本的な動詞の暗記、教科書例文の並べ替えなどをやっておくと良いです。

発音は、英語耳やフォニクスの利用がオススメ。まずは英語の音を聞き取り、その音を真似する意識を持つことが有効です。これは最初の一週間くらいで一周きっちりやったら、後は毎日リピートして慣らしていくと良いでしょう。

 

 

動詞は原形、現在分詞、過去形、過去分詞、三単現の変化と複数の意味を覚えておくと良いです。動詞の変化を知って、とにかく動詞はこう使う、といったイメージを持っておくと文法の理解が早いので、中1レベルの50語程度は頭に入れるようにしましょう。

余裕があれば、それぞれの時制で例文をひとつ暗唱しておくとなお良いです。例文暗唱を入れると負荷が格段に上がるので、本人の意欲を損なうことがないように様子を見ながら進めましょう。

教科書例文の並べ替えは、言葉通り教科書に載っている例文を単語カードなどに書き、日本語を見て並べ換えるだけの遊びです。カードを用意したら、教科書を通読し、並べ替えに挑戦。やっているうちに感覚を覚えていくので、いきなりで構いません。カードは、名詞は黒、動詞は赤などに色分けして書いていくとより効果的です。

数学もなるべく先取りで

難関国立や難関理系に進みたい場合は、数学の先取りの習慣はかなり重要な差になります。勉強は何周やっても良いですし、入学までに1年の教科書を終える程度なら大した量ではないので、消化ページ数を決めて毎日続けると良いです。

理解度や得点に強くこだわる必要はありませんが、例題や基本問題とされているものは容易に正答出来る程度にはしておきましょう。一周目は本文と基本問題のみに絞る形などでも良いです。教科書の本文は良く吟味されているので、本文をしっかり読む習慣をつけておくことも大切です。

 

新小6の方へ

塾のカリキュラムをこなし、週テストや模試などでの順位争いだけに意識が向いていると、間違った問題の分析や弱点の補強、志望校に合う実力の養成が足りなくなりがちです。志望校の過去問を使っての演習などは夏以降に確保できるので、それ以外の部分での実力養成を心がけるようにしましょう。時間配分は状況によりますが、なるべく1〜2割は塾の進行とは別枠で自分用の調整時間を持つようにした方が良いです。

 

難関上位校を目指している場合

御三家や同等クラスを目指している子に伴走する場合は、過去問の傾向とレベルを把握しておくと良いです。特に算国は、それぞれの傾向に合わせた実力養成を意識しはじめておくと良いでしょう。

併願校も出題傾向や雰囲気の近い学校を中心に選ぶと有利なので、志望校の傾向を調べる→傾向の似た併願候補を調べる→学校説明会や文化祭などの機会に併願校もきっちり見ておく、という流れが理想的。また、第二志望と言えるような併願校が複数あるのが好ましいので、併願候補自体は3〜5校は選ぶようにしましょう。偏差値や日程だけでなく、出題傾向と校風を重視しておくのがお薦めです。

 

細部と難問対応力の向上

四谷63以上くらいの子は、基本的なことはほぼ出来るので、ここからは細部の仕上げと難問に対する取り組みで差がついてきます。

算数は、ミスの原因を詰めて改善方法を考えること、複数の解法を考えるクセをつけることの二つは重要です。書き方や思考のクセがミスを誘発していることは多いので、「注意する」などでなく、具体的に何をどうやってミスを回避するのかの手順を習慣として磨いていくことが大事です。

解法については、解答に載っている以外のルートで解いて、どちらでも正答まで書き上げる、などのトレーニングが有効です。数字のみ、線分のみ、ベン図や面積図、天秤を利用して、など複数の解き方で取り組み、書くスペースや時間、計算の複雑さなどを見返すと良いでしょう。平面図形なら別の場所の角度や計算順序で解いたり、立体なら投影図のみで解いてみる、なども有効です。

似たような問題をいつも同じ解き方で解く癖がついていると、そこに仕掛けのある問題では詰まる上に時間も使いやすいので、どの解き方が楽かを考えて始めたり、詰まったら方針変更を苦にしないように習慣づけしておくと良いです。特に難問である必要はなく、過去問で言えば偏差値55以上くらいの学校の問題で良いので、色々と試してみてください。

模試や週テストなどの不正解問題のやり直しは、あまりに正答率の高い問題を取りこぼしている場合は別ですが、基本的には正答率には固執せず、どうやって希望順位までの得点をとるかを考え、自分の取る問題を選んだらそこを突き詰めること。

国語の速読力と文意把握や記述力はこの時期から磨いておく方が有利です。男子なら女子上位校、女子なら男子上位校の過去問などから、文字数の近い素材でトレーニングすると良いでしょう。週1回、大問ひとつなどでも良いので、夏までに積み上げていくようにすると有利です。個別などに通っている場合は、可能なら添削と解き方の指導を受けると良いです。

 

希望の立ち位置にいない場合

夏前までに、5年のテストやテキストの総復習を入れましょう。5年の模試で偏差値55くらいの得点に必要な問題を抽出し、その問題を正答するのに必要なことをやり直すことが大事です。簡単な問題を簡単に解いて間違わないという技術が身についていると後々すごく有利になるので、丁寧に仕上げていきましょう。5ヶ月で何をどう進めるか、しっかり穴の埋まる計画を立てることが重要です。

漢字、語彙のトレーニングが不十分な人は、4月までに習慣化することにも取り組んでください。毎日15分でも良いので、欠かさず周回していくことはとても大事です。社会の用語なども含め、毎日これをやる、という積み重ねと正誤のチェック、不正解分の繰り返しは欠かさないようにしましょう。

社会用語の漢字チェックシートを載せておくので、必要な方はプリントしてお使いください。見本はこんな感じです。

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あくまで漢字チェックですが、用語カバー率もそこそこあるので、正解して周回から外す時などに内容の簡潔な説明も出来るようにしておくと良いです。

 

2020年中学入試合格実績の各塾の比較 暫定版(四谷大塚/SAPIX/日能研/早稲田アカデミー/栄光ゼミナール/ena/TOMAS/市進)

久々の更新、まずは2月15日頃までに公開された各塾の合格実績比較、3月後半に最終版が出揃うまでの暫定版です。まだかなり穴がありますが、2019年合格実績比較のページへのアクセスがかなり増えているので公開することにしました。

比較表の文字色は占有率20%以上でオレンジ、30%以上を赤にしています。20%なら十分なノウハウがあり、30%以上ならその学校に強いという感じですね。四谷大塚でまだ数を出していない学校が結構あるので、出揃うと比率も変わります。

画像は見やすいように4塾にしてありますので、他塾も含めた合格数のPDFデータは下記よりご覧ください。

https://e-tutor.tokyo/data/2020pv.pdf

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合格比較:男子校

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合格比較:女子校

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合格比較:共学校

 

 合格数の伸びで見ると、SAPIXは筑駒、開成、聖光、浅野、立教新座、筑附、渋渋、女子学院、豊島岡、浦和明の星といった上位校で更に実績を伸ばしています。また、今年激化した巣鴨世田谷学園の増加数も最も多く、難化する学校にサピ生の動向が影響を与える傾向も見られます。SAPIXで大幅に減ったのは青山学院と早稲田。

四谷大塚は麻布、桜蔭早実早大学院など、早稲アカは武蔵、早大学院、早稲田などで伸びています。四谷大塚慶應中等部とSFC立教新座浦和明の星など、早稲アカも立教新座浦和明の星で大幅に減らしました。

他塾の増減で目立つのは、合格者数を絞った渋幕で4塾がそれぞれ減らした中で、市進は9名増加と比率としては2割増で、千葉方面での強さを示しました。また、日能研は都立小石川で圧倒的に強いenaと同じ6名増加。カリキュラム的にも、公立中高一貫には相性が良さそうですね。

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合格数増減

 

お酒と中学受験の話

今日は受験生の親ってだけでなく、お酒を連日飲んで、なんとか凌いでる人向けに。

色々しんどいこともあって、酒がないとやってらんない。よくある話で、悪くもないけど、本当に酒がないと、ってなってるなら捨てたり諦めたり削るものを探した方が良いです。

毎日お酒の入ってる状態=感覚を鈍麻させた状態に慣れていて、それでなんとかバランスを取っていると、どんどん通常のシラフの方の感覚を「知覚過敏で染みる」ように感じるようになって、ストレス耐性が下がって弱っていくので。

受験終わればクリアになることもあるけど、この先もやっぱりストレスは湧いてくるので、感覚鈍らせずに、逃げたり発散したりするパターンも持った方が良いです。酒は向精神薬の一種だし、薬は過ぎれば毒になる。

しんどいのはどこかの疲労が回復を上回って債務超過になってるからで、気力体力の支出を減らすか、回復量を増やさないと。全部抱え込んでこなしつつ、気を紛らわせる方法が酒しかない状況だと、収支のバランスが取れないからどっかで無理が来るので。

自分の意思で1日抜けるなら、それを交互にやるだけでも通常の感覚でいる時間を増やせるので、シラフに慣らす時間と、たまには感覚を鈍らせて休む時間みたいに使い分けて、別バージョンを増やしといた方が良いです。

キャパオーバーをお酒で麻痺させてるのは、心と体にリボ払いさせてるようなものなんで、誰かにまとめて借りてでも、財産売り払ってでも、一括返済しちゃった方が良い。収支合わない人が借りて凌いでも返せないから破綻するのと同じで、心と体は破産で逃げることも出来ない一品もの。

受験なんてやめられます。合格と、ママと一緒に生きてくのとどっちが良い?って聞いて、合格!って子はそんなにいない。健康と天秤にかけるもんじゃないです。欲張るならちゃんと両取りに行かないと。

エネルギーにも時間にも限度があるから、何か欲しければ優先順位の高い方から取っていくしかないし、健康とか家族はだいたい一番上の方なんで、他を犠牲にした方が良いです。家事とか、つきあいとか、お金とか。削れるもの全部削って、家族と健康と受験だけになって、それでも足りないなら、削るのは受験。

でも、そんなこと言ったって!って思う時点で危険。本当に、何を手に入れても、健康と家族を失って「成功」って感じる人なんか見たことない。気をつけてたって病気もするし、頑張っても家族がうまく行かないこともあるけど、自分が大事にしないのは違う。

しんどいなら、削れるものを探して。足りないなら、助けてくれる人を探して。それでも無理なら、中学受験は投げて良いです。お酒もたまになら良いし、時々でも大丈夫。楽しいお酒で、潤いになってるなら問題ない。

でも、お酒で失敗したり、自分がお酒に頼ってるって感じるなら、とりあえず、一日酒を抜いて、誰かに愚痴でも聞いてもらう。家事を適当に切り上げて、のんびり風呂に入る。好きだったことをやってみる。それだけで、一年の半分は抜けます。

 

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