偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

偏差値の捉えかたと比較の読みかた

こちらの記事は、先にツイートした比較早見表と、塾別偏差値比較の2023結果偏差値女子版に入れていたものなどを再構成して追記したもので、偏差値の捉えかたなどのお話です。

 

各塾模試の偏差値換算

四谷大塚日能研は同じくらいで、SAPIXは-10、首都圏模試は+10くらい、という話を聞いたことのある方や、±5〜6ポイントくらいのイメージをお持ちの方もいると思いますが、偏差値帯や男女によっても差が少し異なります。

こちらでは、各塾の偏差値を5ポイントの幅で区切り、対応する入試の偏差値が他塾ではどのくらいになるかを一覧にしています。

例えば男子の四谷大塚50は、50±2ポイントの範囲(48〜52)の入試を平均すると、SAPIXでは40、日能研は50、首都圏模試では62になっていますが、65(63〜67)だとSAPIXで59、日能研65、首都圏模試で73と少し差が詰まります。

年度によっても多少変化しますが、現状ではこのくらい、という感じでお使いください。

 

偏差値換算早見表 男子用

こちらは男子用。四谷大塚日能研は7区分中4区分で一致、3区分で1ポイント差で、全体的に見ても女子よりは数値が揃っている感じです。

 

偏差値換算早見表 女子用

こちらは女子用で、四谷大塚日能研で一致するのは40,45の2区分になり、50,55,60では1ポイント差、65,70では2ポイント差になります。SAPIX偏差値から見た四谷と日能研でも同様に差がありますね。

 

偏差値は過信せず参考に

学校をグループ分けした比較

同じくらいの層の学校の入試を比較してみると、結構な割合で塾によって上下も変わってくることがあります。ここでは、まず大学附属で2回入試の男子4校で比較してみます。

 

 

学習院2回の80%を基準に見ると、サピ49の子にとっては学習院の1,2回、明大中野1回、立教池袋1回は80%になり、両校の2回と立教新座1,2回は50%くらいになりますね。四谷大塚で56だと、80%は学習院の1,2回のみで、他3校は全て1〜3ポイント上になります。

日能研では57に明大中野立教池袋を含む5つの入試が並び、57の子から見ると80%でないのは立教新座だけ。立教池袋の1回と2回も、SAPIXでは5ポイント差があるのに対し、日能研では同じになります。

どれが正しいというより、偏差値は「だいたいこのあたり」のものとして捉え、あとは入試問題との相性や合格点などを踏まえて検討していくと良いでしょう。

もちろん、例えばこの学校群であればサピ55、四谷日能研63くらいになれば幾らか余裕がでてくるので、そういう意味で目標にするのは良いですね。

 

続いて女子では2回入試の学習院女子、香蘭女学校、東洋英和、頌栄女子の4校で比べてみます。

 

 

SAPIXでは学習院Bが最高の54で、Aも1回目入試では最も高い51で英和Bと並び、一番下は英和Aの46ですね。

ところが四谷大塚で見ると、各校の2回目の入試が62で並び、1回目では頌栄1が61、英和Aが60で、学習院Aは最も低い57になります。頌栄1,2の差は1ポイントしかありません。

日能研では2回目の中で学習院Bが一番低い60、最高の62には香蘭の2回目が来ています。学習院のAB差は2ポイント、英和のAB差は6ポイント。

例えば英和志望の子が日能研を見ていると、偏差値55のAで落としたら6ポイント上のBは相当厳しそうに見えますが、四谷大塚を見ると2ポイント差で、2回目ならなんとかできるかもしれないくらいの差に感じることもあるでしょう。

こんな感じで、2〜3ポイントで安心したり心配するようなものではありません。帯で見て目標設定や併願校選びに活用したあとは、入試で取るべき問題を正解できるように仕上げていくのみですね。

 

80%・50%・20%偏差値の出しかた

結果偏差値は、前年度の受験生の持ち偏差値と入試結果を比べ、受験生10人あたり8人以上が合格するラインを80%、5人以上で50%、2人以上で20%という判定にしています。

持ち偏差値として参照するのは6年の全体テスト、SAPIXならSO、四谷なら合不合と考えて良いですが、外部生が多く受験するこれらの模試と、内部生の比率が上がる組分けなどの全体テストでも偏差値は多少変わりますし、秋以降の偏差値に重みをつけていることもあります。

また、ラインは「その偏差値以上」という考え方で、例えば偏差値60で80%となっている場合は「60以上の受験生累計100人で合格者80人」みたいな感じなので、必ずしも60での受験生が10人中8人合格しているとは限りません。

予想偏差値は前年の結果偏差値をベースに、その模試を受験した志願者数と成績分布を加えて算出します。成績が良い生徒の志望数が多ければプラス、減ればマイナスになるわけですね。ですから、特に新設校の予想偏差値などは、その入試を候補に入れている受験生が多い模試ほど、次年度の結果偏差値と近くなります。

ただ、特に春の段階の模試での志願=出願・受験とはならないことも多いので、ある程度の出願と偏差値の予想には、11〜12月の偏差値表を見たほうが雰囲気は掴みやすくなります。

こんな感じで、前年の受験結果と今年の志望者動向の参考にはなりますが、例えば資格試験で「○割取れば合格」みたいな基準になるものとは異なり、割と不安定なものですね。

 

各回の偏差値の算出と分布

個人の偏差値は、ほぼそのテストを受けた中での順位です。テストごとの得点分布にもばらつきがあるので、「○位なら・上位○%なら偏差値○○」と決まるわけではありませんが、基本的な分布は以下のようになります。

全体を3つに分けると55と45が区切りになり、40〜60の間には7割近くが収まります。当然、出題ごとの得意不得意や調子によっても順位は変わり、その一回ごとの模試結果と上述の「以前の受験生の結果」や「他の志望者の偏差値」と比べていくわけなので、絶対的な指標にはなりません。

ですから、各回の偏差値は「今回の立ち位置」の確認程度に捉え、志望校の80%を超えるあたりの偏差値になる順位や得点を目標にする程度で、あまり過信したり、一喜一憂し過ぎないことも大事ですね。

塾による偏差値の違い 2023年中学受験結果偏差値版(女子) SAPIX/四谷大塚/日能研/首都圏模試

各塾の中学受験偏差値比較の女子版です。比較対象はSAPIX四谷大塚日能研、首都圏模試の2023年度入試の結果偏差値です。

※現在偏差値表の画像を表示できなくなっているため、PDFを閲覧してください。

日程順の並びは三塾偏差値合計の降順で、灰着色枠は偏差値不明のもの。多少並びがずれている箇所があるので、後ほど修正予定です。偏差値順は三塾で偏差値が確認できている入試だけで、並びは同様に合計の降順です。男子版はこちら↓

日程順

12月〜1月19日

1月20日〜31日

2月1日

2月1日午後

2月2日

2月2日午後

2月3日

2月3日午後

2月4日

2月4日午後

2月5日

2月5日午後

2月6日以降

 

 

偏差値順

 

偏差値は過信せず参考に

※以下の部分に、塾ごとの偏差値換算や偏差値の算出などを加えた記事を追加しました。

 

同じくらいの層の学校の入試を比較してみると、結構な割合で塾によって上下も変わってくることがあります。ここでは、まず大学附属の四つの男子校で比較してみます。

 

 

学習院2回の80%を基準に見ると、サピ49の子にとっては学習院の1,2回、明大中野1回、立教池袋1回は80%になり、両校の2回と立教新座1,2回は50%くらいになりますね。四谷大塚で56だと、80%は学習院の1,2回のみで、他3校は全て1〜3ポイント上になります。

日能研では57に明大中野立教池袋を含む5つの入試が並び、57の子から見ると80%でないのは立教新座だけ。立教池袋の1回と2回も、SAPIXでは5ポイント差があるのに対し、日能研では同じになります。

どれが正しいというより、偏差値は「だいたいこのあたり」のものとして捉え、あとは入試問題との相性や合格点などを踏まえて検討していくと良いでしょう。

もちろん、例えばこの学校群であればサピ55、四谷日能研63くらいになれば幾らか余裕がでてくるので、そういう意味で目標にするのは良いですね。

 

続いて女子は学習院女子、香蘭女学校、東洋英和、頌栄女子の4校で比べてみます。

 

 

SAPIXでは学習院Bが最高の54で、Aも1回目入試では最も高い51で英和Bと並び、一番下は英和Aの46ですね。

ところが四谷大塚で見ると、各校の2回目の入試が62で並び、1回目では頌栄1が61、英和Aが60で、学習院Aは最も低い57になります。頌栄1,2の差は1ポイントしかありません。

日能研では2回目の中で学習院Bが一番低い60、最高の62には香蘭の2回目が来ています。学習院のAB差は2ポイント、英和のAB差は6ポイント。

例えば英和志望の子が日能研を見ていると、偏差値55のAで落としたら6ポイント上のBは相当厳しそうに見えますが、四谷大塚を見ると2ポイント差で、2回目ならなんとかできるかもしれないくらいの差に感じることもあるでしょう。

こんな感じですから、偏差値は前年度の受験生の結果と今年の志望者動向の参考にはなるものの、2〜3ポイントで安心したり心配するようなものではありません。帯で見て目標設定や併願校選びに活用したあとは、入試で取るべき問題を正解できるように仕上げていくのみですね。

塾による偏差値の違い 2023年中学受験結果偏差値版(男子) SAPIX/四谷大塚/日能研/首都圏模試

各塾の中学受験偏差値比較の男子版で、比較対象はSAPIX四谷大塚日能研、首都圏模試の2023年度入試の結果偏差値です。今日明日くらいで女子版や偏差値増減などの記事も順次アップしていく予定です。

※現在画像を表示できなくなっているため、PDFを閲覧してください。

日程順の並びは三塾偏差値合計の降順で、灰着色枠は偏差値不明のもの。多少並びがずれている箇所があるので、後ほど修正予定です。偏差値順は三塾で偏差値が確認できている入試だけで、並びは同様に合計の降順です。女子版はこちら↓

 

日程順

12月〜1月19日

1月20日〜31日

2月1日

2月1日午後

2月2日

2月2日午後

2月3日

2月3日午後

2月4日

2月4日午後

2月5日

2月5日午後

2月6日以降

 

 

偏差値順

 

※塾ごとの偏差値のばらつきや偏差値換算などについての記事を追加しました。

併願校検討時には、どんな入試をどの層が受けるかも考える

併願校を考えるときに偏差値をベースに検討するのは基本ですが、倍率やどういう系統の入試形式かも踏まえて考えておくと、リスクを把握しやすくなります。今回は2023年度入試の倍率や結果偏差値を基に、このあたりの考え方を書いておきます。

 

偏差値と倍率の考え方

入試偏差値は、その入試の出題難度や学校の教育レベル、進学指導、施設、環境面などを数値化したものではありません。

結果偏差値は前年度の入試結果を元に「この入試は偏差値○の子が10人受けて8人、偏差値△の子が10人受けて5人合格した」、予想偏差値ならその年の出願希望者の持ち偏差値を加味して「すると思うよ〜」というものです。

つまり、「どのあたりの学力層の子がどの程度受けてどんな競争になったか・なると想定されるか」という人気度や競争率の予想くらいの感じですね。

また、1日午後や2日以降などは「安全校」や「滑り止め」といったイメージで選ばれる入試も多いですが、これらは決して「入りやすい」とか「安牌」な入試とは限りません。

当日の受験者の中で実力が圧倒的に上ならかなりの確率で合格しますが、併願校も「ギリギリ納得できる」「そこそこの偏差値」などで選んでしまえば、他の受験生との差もつきにくくなります。

差が少ない場合、同じ偏差値でも高倍率ほどリスクは上がるイメージは持っておくと良いでしょう。例えば4倍なら同じ教室で受験した40人のうち30人が落ちますし、10倍ならその日受験した100人の中に10人、自分より得点した子がいたらアウトです。

高倍率ということは、同じように「安全校」「ギリギリ納得」といったイメージで受ける子がたくさんいて、たくさん落ちる入試ということですから、そこを取れる前提で計画するのは相応のリスクが伴います。

 

2023年度入試の倍率

こちらは10倍を超える入試の一覧です。このあたりを志望する場合は厳しさを十分認識し、偏差値的に十分な余裕を持って受験するか、なるべく早い段階で他の進学先を確保する作戦を練ることも大事ですね。

集計データの閲覧はPDFでどうぞ。

①入試別一覧_倍率順

①入試集計_東京

①入試集計_東京合計数内訳

 

学校ごとの倍率と入試回の設定

こちらは東京の各校の全受験者数と合格者数、募集定員に対する比率を設定入試回数ごとに分けたもので、4倍超は黄色、5倍超は薄赤、6倍超は濃赤で着色しています。

まずは1,2日の1回入試校。大学附属でも人気の高い青山学院は倍率が4.3倍、御三家併願の多い白百合は定員比2.1倍の合格者を出しています。1日校は第一志望が多いので、定員比1.2倍程度が多いですが、筑駒聖光と天秤にかかる開成は、最難関ながら1.4倍の合格者を出していますね。

 

3日の1回入試校は、高倍率で知られる国公立と慶應ですね。合格数が定員ぴったりのところも多く、実質倍率は4〜5倍も普通です。

 

こちらは2回入試校。平均倍率は3倍超、定員比では1.5倍程度の合格を出していて、最高でも桐朋の2倍ですから、それほど辞退者は多くありません。第一志望も多く、第二志望でもより高偏差値の生徒を確保できるので、受験生集めにそれほど苦労していません。

 

こちらは3回入試校。平均倍率は3倍超ですが、定員比で本郷は2.6倍、渋渋で2.4倍、豊島岡が2.2倍と、トップクラスの人気校でも多めの合格を出すところが増えてきます。それだけ最上位層の併願辞退者が多いということですね。

 

4・5回入試校になると、平均でも定員比2倍を超えます。近年共学化した学校も増え、生徒集めに何かを変えてきた学校が多いグループです。

 

6・7回入試校になると、改称+共学化など、はっきりと生徒集めに力を入れている学校が増えます。定員割れ、偏差値表にも載らない、といった状況から抜け出すために努力してきた学校も多いグループですね。

 

最後は8回以上の入試を設定している学校です。平均倍率は3倍近く、定員比でも平均2.4倍の合格を出していますから、合格を出しても5人に3人が辞退するペースですね。

各校の出願者数と合格者数や集計データを閲覧したい方はPDFでどうぞ。

②学校別出願倍率集計

 

生き残り手段としての改称と共学化

2,000名前後の受験者を集めても、募集枠が大きい本郷(280)や豊島岡・東京都市大(240)などは、それほど無理な合格を出さずに3〜4倍に収まります。

これに対し、芝国際や広尾小石川の一般入試枠は85名で、ただでさえ小さな枠を更に細切れにするので、非常に高倍率な入試も出てきます。惹かれたらチャレンジするのは良いですが、安全校としてはリスクが高いと言えますね。

塾への営業+魅力的なプレゼンで集客し、5〜10人などの極端に小さな枠にする組み合わせには、「持ち偏差値の高い子を落とす」機会を学校側が得る面があります。例えば5人枠のところに偏差値55の子が10人受けてくれれば、5人落として「偏差値55で合格率50%」という結果を作り出すことができますね。

こちらは入試の種別回数、全入試の受験数と合格数の合計から出した学校全体での倍率、生き残り策の実施状況を一覧にしたもので、改称は1990年以降を対象にしています。

 

高倍率の上位を、共学化+改称といった施策をとった学校が占めているのがわかりますね。全体の一覧はPDFでどうぞ。

③学校別倍率と共学化等

 

中学偏差値と大学合格実績は強い相関があり、首都圏模試40〜50くらいの一般的な学力の生徒が、東京一工や海外名門大に進学できることは稀です。優秀な生徒が集まれば数字も出るし、集まらなければ出ないのは塾の合格実績も同じで、「どんな指導か」より「どんな子たちが集まるか」の方が、影響は大きいです。

現実に「偏差値が高い」「大学合格実績が良い」ということが学校の「教育の質」を示すように思われるし、どんな教育をしようが、低いゾーンになってしまえば、説明会はスカスカ、合同説明会に出ても閑古鳥、ホームページも観にこない。

どんな教育か、どんな教員か、どんな先輩か、伝わりようもありませんから、少子化で潰れるのを待つか、人気大学の系列に入るか、看板掛け替え+極小枠で偏差値を釣り上げるか、ほぼ三択です。

 

改称+共学化の威力

首都圏模試で偏差値50以下の入試は四谷や日能研の偏差値表に載らないケースが増え、45未満はほとんど載りません。55以上の入試は9割以上が載っていますが、50〜54だと66%で約3分の1が見えなくなり、45〜49では44%で半数以上、44以下では17%ですから5分の4以上が消えることになります。

偏差値表に載らなければ受験生や保護者は存在にも気づきにくく、検討候補にもなりませんから、最低でも45〜50まで上ってくることは死活問題で、そのための手段が改称+共学化とも言えます。

偏差値が上がれば、偏差値表でいつも目に入る位置に学校名が出ている。これだけでも広告効果は抜群で、偏差値表で上の方にある=「良い学校」というイメージになります。逆に、偏差値表の下の方や載っていなければ「イマイチな学校」と思われたりもする。

看板を掛け替え、塾にも営業をかけ、魅力的なプレゼンをして、募集枠を絞る。同じ教員に同じ校舎でも、全く違う層が受けにきます。卒業生は母校の校名が変わることを歓迎しないことが多いですが、それでも変えるだけの魅力があるわけですね。

こちらのGIFは改称+共学化の威力がわかりやすいように、2007年以降の首都圏模試の主な共学化校の結果偏差値平均の推移をグラフ化したものです。※芝国際は四谷結果偏差値+9

主な共学化校の結果偏差値の推移

何をしても“見えない”45以下のゾーンから出られなかった学校が、“見える”45ラインを超え、“はっきり見える”55以上に届く学校も多いですね。

2023年と共学化直前または2007年の結果偏差値の比較

各入試の結果偏差値の推移はこちらのPDFを閲覧してください。
④結果偏差値の推移_首都圏模試_改称+共学

 

共学募集開始後の1日午前入試の偏差値で見ると、広尾学園(2007)とかえつ有明(2006)は40前後、開智日本橋と三田国際(2015)は50前後、広尾小石川(2021)と芝国際(2023)は60前後からのスタートです。共学推しの風潮や、先行する渋渋や広尾の大学合格実績なども影響して、勢いがつきやすくなっていますね。

中学受験の基本は同じような学力と経済的背景を持つ集団に入って快適に過ごすことですから、同じものに惹かれる層と同じ学校に入ることには意味があります。大学合格実績などが全てではありませんし、校風などと言っても外からわかるものは僅かなので、魅力的な教育方針やプレゼンに惹かれるところを選ぶのもアリですね。

ただ、改称+共学化に極小枠入試を揃えているような学校は、生き残り戦略に基づいて行動していることはイメージしておく方が良いでしょう。

 

どういった層が受けるかを考える

今年話題になった芝国際の対応には残念な点があり、本科全体での倍率も13.9倍と非常に高くなりましたが、国際枠で合格0や100倍超があったことなどで煽り、受験生がかわいそう、ビジネス本位の経営、などと叩いてビューを稼ぐのは外野がやれば良いこと。

受験生の保護者としては我が子の入試を無事乗り切ることが大事ですから、特に改称+共学化+国際化+極小枠といった典型的な入試には過熱に近い面もあることに、ある程度の警戒心は持った方が良いですね。

こちらは、改称+共学化+国際化に取り組んでいる各校の入試倍率の一覧です。

他の改称共学化校と比較しても、本科Ⅰ類は異常な倍率ではなく、帰国が多い国際生も11〜1月の入試で決めるのが大半です。特徴的なのは、選抜基準がより厳しく枠も小さいⅡ類(募集25+若干名)に、Ⅰ類の約3倍の受験者(1638名)が殺到したことで、Ⅱ類だけの倍率は35.6倍になっていますね。

 

次の表は改称+共学化校の全受験者数と合格者数、定員比の一覧です。

もし「たくさん合格を出す」という表現に見合うように、他の改称+共学化校と比較して最も高い募集数の3倍に設定しても、合格数は255で実質8.7倍、全学校中の最高倍率のまま。追加の合格数96名を按分しても、Ⅱ類は22倍に下がる程度でハイリスクなのは変わりません。

実際にどの程度集まるかは蓋を開けてみないとわかりませんが、広報や入試分割の手法からすれば、受験者層は広尾小石川や三田国際、開智日本橋などと競合するわけですから、塾関係者や家庭教師なら上はYN55・首都模試で60台に乗ることは想定できるでしょう。

私の知る範囲では、サピでもグノでも四谷でも、ハイリスクで読みにくく、広尾小石川や開智日本橋くらいになる可能性があることの説明を受けています。いきなり渋渋や広尾を上回れば想定外なのもわかりますが、今回の本科Ⅰ類の結果偏差値YN52〜57は普通に考えられる範囲ですね。

 

同様の想定は、今年の倍率2番手の日本学園でも考えられます。まだ男子校ですが、2026年から明治大学付属世田谷に改称+共学化+大学系列化、2029年度からの推薦入学受け入れが決まったことで多くの受験生を集めました。

今年の首都圏模試結果偏差値は昨年+20の60ですが、これはまだ控えめ。名前だけの連携ではなく推薦枠目標も7割、最寄駅は明大前という好立地から考えても、いずれ明大明治明大中野と同じ帯の首都模試70前後、YN60〜63までは上昇していくのが自然な流れです。今年の結果を見て「これなら届きそう!」なんて考えだけに支配されるのはリスクが高いと言えます。

特に5倍を超えるような入試には十分な警戒心を持ち、より安定した受験者層が見込める入試での合格確保を優先、その上で惹かれるならチャレンジしてみる、くらいがちょうど良いですね。

スペース用資料

中学入学に向けたお話をする予定なので、スペース用の資料を貼っておきます。それぞれタイトルと画像からPDFにリンクしています。

 

大学偏差値分布と所得等

大学合格実績のカウント対象になっている国公立大学の偏差値分布や、私大も含めた所得分布など。

 

一般入試の割合等

1点目の資料の表部分の拡大と、各大学の一般入試:学校推薦:特色入試などの比率。

 

大学入試における英語資格優遇やTOEFL

英検準1級相当での優遇と、アメリカ大学進学に必要なTOEFL iBTスコア。

 

学習アプリや入学に向けた学習

スマホタブレット学習でおすすめのアプリと、入学に向けての学習や準備などについて。

 

このスペースのアーカイブ

 

2023年中学入試合格実績の各塾の比較 追加データ

前回の記事の95校以外(まだ四谷大塚では公開されていない学校の合格数)についてのご要望があったので、206校分のデータを追加公開しておきます。集計データを閲覧したい方はPDFでどうぞ。

206校合格数一覧[pdf]

 

 

  

 

塾ごとの傾向

前回記事同様に、こちらでも複数回入試校は各回の偏差値を単純平均+切り捨て→男子+1ポイント、女子-1ポイントで出した数値で並べています。

最初の層はY50台が中心ですが、該当する多くの学校は前回記事の95校に入り、残りの中には都立小石川をはじめとする公立一貫校を多く含んでいます。合格数は日能研SAPIX>早稲アカ>栄光ゼミの順になっています。

2番目の層でも日能研が最も多く、早稲アカ>栄光ゼミ>SAPIXの順。3番目の層でも日能研が最多で、栄光ゼミ>早稲アカに次いで市進が出てきます。4番目の層では栄光ゼミが最多、日能研>早稲アカ>市進となっていますね。

 

層による分布

以下は合格数の占有比をグラフ化したものです。日能研は全体的に多く、栄光ゼミは段階的に増え、SAPIXや「その他(9塾の合計)」は減っていくのがわかりますね。

校舎のある場所や、どの層がメインターゲットかにより、それなりに棲み分けがされている印象ですね。

その地域から進学しやすい学校の情報や経験は、地元の校舎がより多く持っているので、塾の先生としっかりコミュニケーションを取れば、「この学校ならテキストのここまでは完璧に」とか「この学校を目指すなら偏差値○以上取って○○校舎の志望校別クラスへ」など、適切なアドバイスをもらえる可能性も上がります。

偏差値だけでなく、通いやすさや学校施設、部活動の活発さや留学についての方針など、選ぶ理由もそれぞれありますから、志望校に合った学習の進め方を把握できると良いですね。

2023年中学入試合格実績の各塾の比較 暫定版(SAPIX/四谷大塚/早稲田アカデミー/日能研/グノーブルほか)

2023年度入試の塾別の合格数や占有率、前年度からの増減などを掲載します。この記事では、現時点で四谷大塚で数字が出ている95校を対象にしています。

全一覧はPDFでどうぞ。

95校合格数一覧[pdf]

 

↓最終版はこちら

各塾の合格増減

下段左から1人あたりの合格数、合格数の前年比率、合格数の前年比増減数で、青系色は増加、赤系色は減少です。対象95校のみで、全体での増減とは異なります。

SAPIXと早稲アカは合格数を伸ばし、四谷大塚日能研は減少ですね。他塾では駿台浜学園が2.67倍と大きく伸ばしているのが目立ちます。


在籍数を公開している塾の合格専有率

こちらでは在籍数を公開している塾のみを対象に、各校の合格数と、合格数比率÷在籍数比率の表にしてあります。

在籍者数の割に合格者数が多いと高くなるので、小規模でもその学校に合格者を出しやすい塾は上位にきます。

例えば浅野ではSAPIXの在籍数全体に占める割合は約45%、合格数に占める割合は約66%で1.46になっているのに対し、グノーブルは1.71、希学園は1.62となります。他校でもエルカミノやジーニアス、アントレなどがかなり上位にきている学校があります。

小規模だと数名の合格で比率が大きく揺れるので、これだけで測るのには適しませんが、どの学校に強いかの傾向はある程度見えるので、興味のある方はPDFでご覧ください。

合格専有率_在籍数公開[pdf]

 

全体での合格者占有率

今回の集計対象の全ての塾の合格数と合格者占有率の、各校の一覧です。

こちらは単純に合格者数の多い順なので、規模が大きいほど上位にきやすく、ほぼSAPIX、早稲アカ、四谷大塚日能研が上にきます。こちらもPDFでご覧ください。

合格専有率_全塾[pdf]

3大模試受験者の合格数

※一覧の男女・複数回を統合する際の並び順として以下の操作をおこなっています。

・複数回入試校は各回の単純平均・端数切り捨て
・男子校+1・女子校-1ポイントで補正

偏差値を均す時点で正確ではありませんが、便宜上の並びとしてご覧ください。

1日10校

重複のない1日のみ入試の10校の合格者数比較で、SはSAPIX、Y+Wは四谷大塚+早稲アカ、Nは日能研の合格者数と比率で、それぞれサピックスオープン、合不合、日能研全国模試の受験者層と近くなります。

50%以上を占めると青系色、34%以上は緑系色で着色してあり、この層ではSAPIXがかなり強く、四谷早稲アカも健闘、日能研は着色なしですね。

第一グループ

掲載当初は[Y63以上]と表記していましたが、均した数値を記載しておくのも誤った印象を与えてしまうので、単純に上から3分の1あたりで区切った「第一グループ」という表記にします。

1日10校も含みます。SAPIXは青10・緑15、四谷早稲アカは青9・緑15でほぼ互角、日能研は着色なしですね。

 

第二グループ

[Y58以上]→第二グループという表記にします。

こちらではSAPIXは青着色が無くなり、四谷早稲アカが強くなります。日能研は増えてきますがまだ無色。

第三グループ

[Y58未満]→第三グループという表記にします。

S=青0・緑4、YW=青23・緑9、N=青0・緑8となり、四谷早稲アカが強く、日能研も増えてきます。

 


偏差値帯ごとの合格者比率

前年度との比較と、占有比のグラフです。今回の記事ではY50以上の95校が対象ですが、Y50以下まで含めると日能研もかなり多くなります。それぞれに得意な層があるので、目標や自分のペースに合った模試や塾を選ぶと快適ですね。