偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

偏差値の捉えかたと比較の読みかた

こちらの記事は、先にツイートした比較早見表と、塾別偏差値比較の2023結果偏差値女子版に入れていたものなどを再構成して追記したもので、偏差値の捉えかたなどのお話です。

 

各塾模試の偏差値換算

四谷大塚日能研は同じくらいで、SAPIXは-10、首都圏模試は+10くらい、という話を聞いたことのある方や、±5〜6ポイントくらいのイメージをお持ちの方もいると思いますが、偏差値帯や男女によっても差が少し異なります。

こちらでは、各塾の偏差値を5ポイントの幅で区切り、対応する入試の偏差値が他塾ではどのくらいになるかを一覧にしています。

例えば男子の四谷大塚50は、50±2ポイントの範囲(48〜52)の入試を平均すると、SAPIXでは40、日能研は50、首都圏模試では62になっていますが、65(63〜67)だとSAPIXで59、日能研65、首都圏模試で73と少し差が詰まります。

年度によっても多少変化しますが、現状ではこのくらい、という感じでお使いください。

 

偏差値換算早見表 男子用

こちらは男子用。四谷大塚日能研は7区分中4区分で一致、3区分で1ポイント差で、全体的に見ても女子よりは数値が揃っている感じです。

 

偏差値換算早見表 女子用

こちらは女子用で、四谷大塚日能研で一致するのは40,45の2区分になり、50,55,60では1ポイント差、65,70では2ポイント差になります。SAPIX偏差値から見た四谷と日能研でも同様に差がありますね。

 

偏差値は過信せず参考に

学校をグループ分けした比較

同じくらいの層の学校の入試を比較してみると、結構な割合で塾によって上下も変わってくることがあります。ここでは、まず大学附属で2回入試の男子4校で比較してみます。

 

 

学習院2回の80%を基準に見ると、サピ49の子にとっては学習院の1,2回、明大中野1回、立教池袋1回は80%になり、両校の2回と立教新座1,2回は50%くらいになりますね。四谷大塚で56だと、80%は学習院の1,2回のみで、他3校は全て1〜3ポイント上になります。

日能研では57に明大中野立教池袋を含む5つの入試が並び、57の子から見ると80%でないのは立教新座だけ。立教池袋の1回と2回も、SAPIXでは5ポイント差があるのに対し、日能研では同じになります。

どれが正しいというより、偏差値は「だいたいこのあたり」のものとして捉え、あとは入試問題との相性や合格点などを踏まえて検討していくと良いでしょう。

もちろん、例えばこの学校群であればサピ55、四谷日能研63くらいになれば幾らか余裕がでてくるので、そういう意味で目標にするのは良いですね。

 

続いて女子では2回入試の学習院女子、香蘭女学校、東洋英和、頌栄女子の4校で比べてみます。

 

 

SAPIXでは学習院Bが最高の54で、Aも1回目入試では最も高い51で英和Bと並び、一番下は英和Aの46ですね。

ところが四谷大塚で見ると、各校の2回目の入試が62で並び、1回目では頌栄1が61、英和Aが60で、学習院Aは最も低い57になります。頌栄1,2の差は1ポイントしかありません。

日能研では2回目の中で学習院Bが一番低い60、最高の62には香蘭の2回目が来ています。学習院のAB差は2ポイント、英和のAB差は6ポイント。

例えば英和志望の子が日能研を見ていると、偏差値55のAで落としたら6ポイント上のBは相当厳しそうに見えますが、四谷大塚を見ると2ポイント差で、2回目ならなんとかできるかもしれないくらいの差に感じることもあるでしょう。

こんな感じで、2〜3ポイントで安心したり心配するようなものではありません。帯で見て目標設定や併願校選びに活用したあとは、入試で取るべき問題を正解できるように仕上げていくのみですね。

 

80%・50%・20%偏差値の出しかた

結果偏差値は、前年度の受験生の持ち偏差値と入試結果を比べ、受験生10人あたり8人以上が合格するラインを80%、5人以上で50%、2人以上で20%という判定にしています。

持ち偏差値として参照するのは6年の全体テスト、SAPIXならSO、四谷なら合不合と考えて良いですが、外部生が多く受験するこれらの模試と、内部生の比率が上がる組分けなどの全体テストでも偏差値は多少変わりますし、秋以降の偏差値に重みをつけていることもあります。

また、ラインは「その偏差値以上」という考え方で、例えば偏差値60で80%となっている場合は「60以上の受験生累計100人で合格者80人」みたいな感じなので、必ずしも60での受験生が10人中8人合格しているとは限りません。

予想偏差値は前年の結果偏差値をベースに、その模試を受験した志願者数と成績分布を加えて算出します。成績が良い生徒の志望数が多ければプラス、減ればマイナスになるわけですね。ですから、特に新設校の予想偏差値などは、その入試を候補に入れている受験生が多い模試ほど、次年度の結果偏差値と近くなります。

ただ、特に春の段階の模試での志願=出願・受験とはならないことも多いので、ある程度の出願と偏差値の予想には、11〜12月の偏差値表を見たほうが雰囲気は掴みやすくなります。

こんな感じで、前年の受験結果と今年の志望者動向の参考にはなりますが、例えば資格試験で「○割取れば合格」みたいな基準になるものとは異なり、割と不安定なものですね。

 

各回の偏差値の算出と分布

個人の偏差値は、ほぼそのテストを受けた中での順位です。テストごとの得点分布にもばらつきがあるので、「○位なら・上位○%なら偏差値○○」と決まるわけではありませんが、基本的な分布は以下のようになります。

全体を3つに分けると55と45が区切りになり、40〜60の間には7割近くが収まります。当然、出題ごとの得意不得意や調子によっても順位は変わり、その一回ごとの模試結果と上述の「以前の受験生の結果」や「他の志望者の偏差値」と比べていくわけなので、絶対的な指標にはなりません。

ですから、各回の偏差値は「今回の立ち位置」の確認程度に捉え、志望校の80%を超えるあたりの偏差値になる順位や得点を目標にする程度で、あまり過信したり、一喜一憂し過ぎないことも大事ですね。