偏差値60の壁なんてない

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各塾の2023年中学入試合格実績分布と模試の受験推奨範囲

この記事では、各塾の2023年中学入試合格者数を5つのグループに分け、それぞれの塾の合格比率をグラフ化しています。志望校を目指すには自塾でどのあたりを目標にするかのイメージや、他塾の模試受験を検討する際の参考などにどうぞ。

評価方法とグループごとの偏差値分布

各校の評価方法

今回の対象は304校・1504入試回です。集計対象校は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県+茨城県の一部で、関西や地方校の東京入試などは除外、域内でも受験者数、偏差値を確認できず、合格数もあまり見つけられなかった学校の幾つかはカウントしていません。

分布を把握する都合上グループを分けていますが、特に各グループのボーダー付近では塾によって偏差値の逆転も珍しくありません。

学校ごとの評価ポイントは、各入試回の偏差値を平均→各塾の数値を平均して算出しており、主に以下のような不正確な点があります。

・ある塾の偏差値が不明の入試で、他塾の偏差値がわかるものは推定値を入力し、全ての塾で偏差値不明の入試回は除外しています。

・各入試回偏差値の単純平均のため、入学者数の少ない高偏差値入試回の影響が出やすく、評価ポイントが実際の入学者の中央値より高めになることがあります。

・男子偏差値と女子偏差値の調整もしていないため、女子校>共学校>男子校の順に上ぶれしやすくなっています。

・推薦、第一志望、帰国生、英語入試などは基本的に除外していますが、定員合算のものは含むこともあります。同様に合格数も、SS-1や受験ドクターなど帰国を分けて表示してあるものは除いていますが、全ての塾が同じようにしているとは限りません。

集計シート[PDF]はこちらから閲覧可能です。

集計対象の塾は33、合格数合計は108,827で、取得日時によっては最終の数値と異なることがあります。グループは各塾の公表合格者数合計を均等に近づくように5分割していますが、①が少なめです。

偏差値分布の画像は、左からSAPIX四谷大塚日能研、首都圏模試の偏差値を正規分布として、各グループの該当範囲を赤系で示したものです。

グループ①

評価64以上(合格数16,377)

SAPIXの上3分の1、四谷日能研では上1割に入らないと厳しいグループ。1回入試校も多く、能力的にはっきり浮いている子や、賢い上に相当な努力を積めた子が届くところ。普通に賢いくらいの子が2年の通塾だけで合格することは稀です。

対象校一覧

 

グループ②

評価59以上(合格数24,801)

SAPIXボリュームゾーンに入り、四谷日能研の上3分の1くらい。クラスで指折りくらいの子が2〜3年の通塾と結構な家庭学習をこなして届くグループで、①に届くレベルにあった子の受け皿にもなっています。

対象校一覧

 

グループ③

評価53以上(合格数24,186)

SAPIXの真ん中より下、四谷日能研では真ん中より上あたりで、首都圏模試ではまだボリュームゾーンに届きません。クラスの上位2〜3割には入る子が数年の通塾と家庭学習でこのグループまで届けば大健闘です。

対象校一覧

 

グループ④

評価45以上(合格数21,632)

SAIPXでは下3分の1にかかり、四谷日能研ではボリュームゾーンからやや下方向、首都圏模試の上3分の1くらいのグループ。このあたりがクラス上半分から通塾して頑張れば届く可能性があるゾーンで、日大や東洋大まで上がれる学校や、マーチ以上の大学への推薦枠を多く持つ学校もあります。

浮きこぼれて苦労しているレベルでなければ、志望校は③④あたりから探しはじめ、中学受験の適性が高ければ段階的に上げていくのが良いやりかただと思います。

対象校一覧

 

グループ⑤

評価44以下(合格数21,831)

四谷日能研の下3分の1、首都圏模試ではボリュームゾーンから下3分の2。今回は集計上ひとまとめにしていますが、学校数は全対象校の約4割を占め、④と同等レベルから比較的入りやすいところまで入試難易度の差も大きいグループです。

対象校一覧

 

模試の受験目安

まず、ひとつの模試を継続的に受験して、補強ポイントや立ち位置を確認していくのがベースになります。

ただ、塾のカリキュラムや模試には得意な範囲があるので、主な分布から外れる場合には他の模試を受けることが有効な場合もあります。志望校が会場になる模試があれば、雰囲気を経験するために挑戦するのも良いでしょう。

分布が厚めな範囲は、SOでは①〜③、合不合と日能研は②〜④、首都圏模試は④⑤になっています。志望校が①の場合はSO、⑤なら首都圏模試の受験者層が近くて参考にしやすく、逆に首都圏模試では①②、SOでは④⑤での立ち位置はわかりにくいですね。

自塾の偏差値を基準に他塾模試を検討する場合は、サピ45未満なら合不合か日能研で35未満なら首都圏模試、日能研で65以上ならSO、45未満なら首都圏模試を考えてみるようなイメージですね。

 

各塾の合格者分布

集計対象の塾は33、合格数の合計は108,827で、全合格者のグループごとの分布は以下のようになります。この形との差が大きいところが、その塾の特徴的なところですね。

また、1人で複数合格することもあれば合格なしのケースもあるため、在籍生の進学先比率や学力分布と同じではありません。

こちらは私が直近3年でサポートした受験生の合格校(薄色)と進学先(濃色)の分布です。進学先のひとつ下のグループなどで、複数の合格を獲得することが多いことがわかりますね。

 

なお、合格実績を一部のみ公開している塾(ena・臨海セミナー・あづま・スピカ・湘南ゼミナール・ステップ)は分布がわからないため、グラフ化していません。

 

SAPIX

まずは①②の合格者率が高いSAPIX型の5塾。SAPIX希学園首都圏、グノーブルはよく似た分布になっていて、いずれも全合格数の6割以上を占めています。

駿台浜学園は①②合計では6割を下回るものの、①が最も高い分布です。

逆にエルカミノは②が突出して多く、①②の合計比はこの5塾でも最も高くなっています。

 

四谷・早稲アカ型

次は全体分布に近いバランスで⑤が少し減る四谷・早稲アカ型。

ジーニアスは②→③→①、啓進塾は③→④→②、啓明館は④→②→①と、それぞれ少し異なる分布になっています。

 

日能研

次は①が1割未満で下の方が広い日能研型の6塾。この中では日能研はバランスがよく、他塾はそれぞれ特徴が出ています。

市進は⑤→③→④となっていて、①②は合計20%前後。

アントレとエデュコは、このタイプの中では②がかなり多めで、①②が約3割を占めます。

おぎしん、日本教育学院は③④がかなり多く、計6割を超える分布になっていますね。

 

栄光ゼミ型

最後は④⑤で5割を超える栄光ゼミ型の5塾。

このタイプでも数%は①が出るので、◯◯塾だと①には行けない、なんてことはありません。要は相性と本人の努力、詰めどころで間違わないことが大事なので、やりやすく信頼できる環境で楽しみながら継続できると良いですね。

 

個別指導塾など

ここからは集団塾との併用が多い個別指導や算数塾です。

SAPIXかグノーブルとの併用を勧められることが多いフォトン算数クラブは、①②に大きく偏った独特な分布になっています。

 

SS-1、受験ドクター、TOMASは②が最多で①も多めの似た分布で、タイプとしては四谷・早稲アカ型に近いですね。

 

個別進学館は日能研型に近く、ユリウスは栄光ゼミ型です。

 

こんな感じで、塾の方向性や地域性によって経験値が多いゾーンやカリキュラムの相性があり、雰囲気も変わってきます。

いわゆる難関校の実績だけで指導力がわかるものでもないので、選べる場合は学力と志望校、通塾負担などから合いそうな塾を選び、体験などを通して相性の良い塾を見つけられると良いですね。

また、通塾開始後に合わないと思った場合には、まず塾の教室長や担当講師としっかりコミュニケーションを取り、納得のいく対応でなければ転塾を考えるという順番がおすすめです。

転塾は相性次第でぐっと改善する事もあれば、聖杯探しになってしまって疲れるだけのこともあるので、まずは今ある環境を使い倒せないか試し、無理そうなら早めに決断すると良いですね。

 

グループ別学校リスト

上述の通りいろいろとブレもあるグループ分けなので、◯◯より◯◯の方が〜といったこともあると思いますが、塾の方向性や指導経験が多いゾーンのイメージ用としてご覧ください。

グループ①

男子校12・女子校10・共学校10

https://e-tutor.tokyo/data/20230510/p1.png

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グループ②

男子校11・女子校6・共学校15

https://e-tutor.tokyo/data/20230510/p2.png

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グループ③

男子校7・女子校8・共学校43

https://e-tutor.tokyo/data/20230510/p3.png

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グループ④

男子校5・女子校18・共学校35

https://e-tutor.tokyo/data/20230510/p4.png

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グループ⑤

男子校6・女子校39・共学校79

https://e-tutor.tokyo/data/20230510/p4.png

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