偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

入試までの3ヶ月の取り組みかた

入試まであと3ヶ月に突入し、過去問への取り組みや模試偏差値、弱点補強などについてのご相談が多くなっています。

基本的には通っている塾での説明会や個人面談などの方針を踏襲すると良いですが、講師との相性や質など、どうもしっくりこないこともありますね。

今回の記事では意識しておくと良いポイントなどに触れるので、使えそうな部分をうまく活用してしっかり力を蓄えてください。

 

基礎固め周回の重要性

これまでに受けたテストの正誤は、土台を固める上での重要な指針になります。成績分析では正答率50%以上をS問題、30%以上をA問題、10%以上をB問題、10%未満をC問題として分類しますが、合不合やSO、組分けなどの全体テストでの正答率と偏差値の関係性は以下のようになります。

S問題を全て取れば偏差値50前後、A問題まで取り切ると58前後になるので、目標偏差値が50以下の場合はS問題、58以下の場合はA問題までを周回に組み込みます。58以上の場合はB問題も解き直しますが、周回には組み込まないことが多くなります。

また、成績分析では正誤を範囲と正答率で分類し、どこを優先的に仕上げるかの方針を立てます。

特に弱い分野がある場合、その分野のテキストに戻って他の問題も復習することを勧めます。上記の例だと、規則性と場合の数では正答率50%以上の問題もかなり落としているため、不正解の周回に加えこの分野の復習にも取り組む、といった形ですね。

学力の土台は夏までのテキストとテストをしっかり仕上げることなので、演習に忙殺されて土台が疎かにならないようにペースを作りましょう。

学校別演習が必要なレベル

塾の学校別対策講座は偏差値63以上の学校がほとんどなのは、テキストと入試問題の差によります。各塾の偏差値55くらいまでの入試は、支給されているテキストを仕上げれば合格点を取れるようになっているので、学校別対策で偏った演習をする必要性が薄いわけですね。

下は9月以降の学習の目安と、時期ごとの学習レベルです。レベル2までは標準のテキストに載っている問題をしっかり仕上げることで身につき、それが出来れば55くらいまでは合格点に届きます。

55以上の入試になると応用問題の比率が増え、応用レベルを取らないと合格点に届きにくくなり、63を超えるとまず届かない、という感じになります。各校特徴も強く出るので、それぞれの志望校に合った対策をした方が有利→学校別講座開設、となるわけですね。

ですから、志望校が偏差値55くらいまでの場合、徒らに演習を増やすより、夏までのテキストをしっかり仕上げることが合格力を高めることになります。まずは5〜6年のテストの正誤確認と、不正解の周回仕上げなどに取り組むと良いですね。

 

過去問での得点目安

いまの時期に過去問で得点できないと不安になる方が多いですが、2〜30点足りない程度なら危機的状況ではありません。特に高偏差値帯では、10月くらいではまだ取れないのが普通です。

夏までは基本的な解法を入れる期間で、その解法を用いた応用演習は9月から。9月から1月までの5ヶ月を3分割して50日ごとに区切ると、いまはふたつ目の期間に入ったところですね。

現時点の過去問結果で不安になるのは、例えば「3年間通えば資格試験に合格できる」というスクールがあったとして、2年目の最初に「まだ合格できない」と言っているようなものです。ちょっと気が早いですね。

目安としては3年目の頭=12月上旬に合格ライン突破なら順調ですから、あと1ヶ月あまり、合格点に足りないところを把握して、差を詰めるための練習に取り組んでください。

また、課題は①テスト中の行動、②学習の方針の2つに分けて把握することが大事です。①はひとつの問題にかけて良い時間、どの程度面倒なら次に行くかなどを決めておくこと。設問の読み方などの注意事項や、一定の段階で見直すタイミングも決めておけると良いです。

②は特定の分野の補強や演習の追加など、日々の学習への反映ですね。少し応用の入った問題の演習には、「中学への算数」や「図形の必勝手筋」など、必要な問題群に当たることができるものを決めて、日々コツコツ取り組んでいく形がおすすめです。

そして、入試では合格ラインを1点でも超えれば良いので、その意味では入試直前まで最低点をクリアできなくても合格の見込みが無いわけではありませんが、できれば入試までに合格者平均点超えを目指すのが良いペースです。

本番にとても強く、運にも恵まれれば過去最高点を取れるでしょうが、大抵は緊張によってベストより低くなります。合格者平均点は合格最低点より2〜30点上のことが多いので、ミスをしても大丈夫な安全マージンを確保できるわけですね。

 

学校による出題傾向の違い

次の画像は、2回以上の入試回があり、合格者平均点と合格最低点を開示している学校の、1回と2回の算数の得点表です。

①は合格者平均点、②は受験者平均点、③は国理社で合格者平均点を取った場合の合格最低点までの残り点数、④は②と③の差です。ほとんどの入試回で、算数が受験者平均点にギリギリ届かないくらいの得点でも合格ラインは超えられることがわかりますね。

算数は配点も大きく、ある程度得点も読みやすいので重要科目ではありますが、他の3教科が凹んでいない場合、算数を受験者平均前後まで持っていければ合格の見込みはそれほど低くありません。

その意味でも、大コケしないように基礎をしっかり固めることが、まずは第一ですね。

また、同じくらいの偏差値でも、学校によって出題の難度はかなり異なります。

2つめの表はY56前後の入試回の合格者平均と受験者平均を並べたものですが、例えば学習院の合格者平均点が8〜9割なのに対し、世田谷2次や攻玉社1回は約6割と、ほぼ同じ層の受験生でも得点が1.5倍くらい違っています。

大きく分けると高速で正確に解くことが求められる入試と、思考型の出題が多い入試があり、タイプによって「一方では9割取れるがもう一方では5割」だったり、「どちらも7割」だったりするので、特に併願校では、偏差値や頻出分野だけでなく、出題レベルの傾向も見て候補を絞り込んでおくと良いでしょう。

 

偏差値と合格者の比率

次の図は、受験生の持ち偏差値を、受験者数と合格者数に占める割合で並べたものです。

これは平均値なので入試によっても異なりますが、80%以上の偏差値を持っているのは受験者の1〜2割、50%以上でも半数前後になることが多く、残りは50%未満というのが普通の分布です。

もちろん合格率は異なりますが、合格者は50〜80%が最も多く約半数、80%以上と20〜50%がそれぞれ4分の1、20%未満はクラスに1〜2人、という感じになります。第一志望で40〜50%なら、モチベーション維持のためにも諦める必要はありませんね。

逆に、安全校にするには「ミスをしても80%以上」くらいの入試を組んでおくことが望ましいので、持ち偏差値より3〜5ポイントくらい余裕のある入試をひとつふたつは組んでおくと良いでしょう。

 

1月入試と2月の作戦を練っておく

子どもにとって、入試で合否を得ることは初めての経験ですから、それで受ける感情の変化も読みきることはなかなか難しいです。

あまり乗り気でなかった1月校も、合格を貰えると好きになって「ここに通ってもいいな」と思うようになることもありますし、逆に入試当日の学校までの道のりや教室の印象から「ここには行きたくない」となる場合もあります。特に後者の場合、2月の入試でしっかり合格をもらう必要が出てきますね。

ほとんどの入試ではスマホやPCで合格発表を見ますが、「不合格」の画面はおそらく想像以上に冷たく重いです。例えば2日まで合格なしの場合、これを3〜4回連続で見ることになり、ずっしり応えてきます。

ですから可能なら1日午後、少なくとも2日午後までには「ここは固い」と思える入試を組んでおくと良いです。たとえ志望順位が低くても、「合格」の画面にはほっとする暖かさがあるので、その後の受験継続にも力になってくれるでしょう。

子どもの代わりに勉強したり入試を受けることは出来ませんから、あまり無理のない範囲でいろいろな可能性を検討し、できる備えをしていってください。