偏差値60の壁なんてない

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中学受験の男女の得点差や入試の傾向について

ほぼ同条件の中学受験でも、全体で見ると男女で異なる傾向があります。同じ共学校でも、入試偏差値が女子の方が高いことを受けて、女子の方が入試が厳しいという話を目にすることもありますが、これは正しくもあり、間違っていることもあるので、今日はそのあたりのデータを少し出してみます。受験雑学的な記事ですね。

 

男女の学力傾向の違い

まず、男子と女子では得点分布の傾向が異なることについて見ていきます。合不合は男女共通の問題で、偏差値は男女別で出るので、昨年の合不合の得点分布からの抽出データで見てみます。

男女の得点分布

下の画像は2〜4回の得点分布を男女それぞれ重ねたもので、青が男子、赤が女子です。男子の方が、やや高い位置にピークがきていますね。

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こちらは各回の得点分布を重ねたもので、紫色は重なっている部分、青は男子、赤は女子が多いことを示します。どの回も、得点上位に男子が多く、下位に女子が多くなっています。

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同じ得点での偏差値差

次は、各回での得点に対する男女の偏差値評価です。同じ得点では女子の方が男子より1〜2ポイント高い偏差値が出ることが多くなります。なので、合不合で男女一緒の組分けと同じレベルの得点を取った場合、男子は1ポイントほど下がり、女子は1ポイント上がりやすくなります。

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科目別に見ると、算数、理科、社会では男子の方が得点が高く、国語は女子の方が高くなります。なので、同じ偏差値の子を比べる場合、男子は平均して算数で+9点、理社で各+6点、国語で-6点という感じで、4科目だと15点ほど得点が高くなります。

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算数が強い女子や国語が強い男子も当然いるので、「女子は算数ができない」みたいな言説は●ですが、全体としては国語以外の得点力は男子の方が高い傾向にあります。4科で見ると点差は小さくなりますが、偏差値55で11点ほど男子の方が高くなります。

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なお、100人中では女子5位と男子7位、女子10位と男子15位が互角くらいなので、男子50位くらいで「女子ってさ〜」なんて言ってもコロッと負かされる相手は多いです。適当な大きすぎるラベルは個人には合わないことが多いので、その子の特性や能力をきちんと見ることが大事ですね。

 

同じ得点帯の男女の比率

男子の偏差値63までに入る男子は587人で、男子6,344人の9.3%。この枠内に入る女子は371人で、女子5,417人の6.8%です。同様に偏差値55〜62では男子は23.4%、女子該当者は19.7%で、同レベルに達する比率が女子の方が少ないことがわかります。

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男女比較_得点[PDF]

 

ですから、同じ得点ラインで区切る場合、偏差値55以上ではだいたい6:4で男子が多くなります。仮に同じ偏差値の男女同数が入試を受けて、合格最低点を同じにした場合、合格者数は女子の方が少なくなる可能性は高いわけですね。

ただ、各校の入試偏差値も女子の方が1〜2ポイント高くなっているため、同じ入試を男子が55なら女子は57の子が受ける形になり、そこまで差はつかないケースが多くなります。つまり「同じ学校でも女子の方が難しい」のではなく、男子よりも女子偏差値で1〜2ポイント高い子でないと、同じ得点を取ることが難しいということですね。

ただ、これが当てはまるのは偏差値差が2ポイント前後のケースで、それ以上の差がある入試の場合には実際に「女子にとって厳しい」可能性が上がります。

 

各入試の男女偏差値の違い

共学校の男女80偏差値の比較

定員やカットラインの差で、女子の方が厳しい入試もあります。こちらは男女の80偏差値の比較で、偏差値差の大きい順に並べてあります。

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偏差値差の大きい学校はカットラインが高め

割と合理的な2ポイント差までの入試が多いですが、それ以上の差がある入試も結構ありますね。お茶の水は共学ながら男子は高校に上がれないなど、偏差値も含め全く別の学校なので、次から見ていくと、偏差値差が5ポイント以上の5入試は全て大学付属の人気校でした。

このうち、青山学院と成蹊の2校は得点も開示されていますが、特に青山学院は受験者数が女子546人:男子353人で女子の方がかなり多いのに対し、合格者数は女子90人:男子118人と女子の方が少なく、合格最低点も女子191点に対し男子162点と29点も差があり、女子にとってかなり厳しい入試になっています。

成蹊も青学に比べれば緩やかですが、1回では8点、2回では17点も女子の方が合格最低点が高く、合格率も低めになっています。

3〜4ポイント差の18入試にも、女子人気の高い学校が並びます。マーチ付属では法政第二、法政大学、明大明治も合格最低点に差があり、特に明大明治以外の2校は10点以上差の入試回があって厳しい戦いです。付属以外では、渋谷教育渋谷が10点、15点、8点とどの回も女子に厳しめ。

その他の学校は、差があるとは言えない〜男子の方が厳しい入試まで様々です。これらの一覧データは表が大きくなってしまうので、 PDFで閲覧してください。

男女比較_入試[PDF]

 

募集枠で見る男女の厳しさ

下の表では、Y63以上をS層、55以上をC層、45以上をB層、37以上をA層、36以下をα層とした場合の、合不合得点での人数比と定員比を比べています。Y偏差値の出ていない学校については首都模試+8ポイントで換算しています。

人数は、共学で男女別定員を設けていない学校では男女別の合格者数、男女別の合格者数非開示の学校では前年の入学者数を入れています。

偏差値基準を男子にしていること、複数入試回の各校の偏差値は平均のため全ての入試回の偏差値が厳密に反映されないこと、対象が合不合のみで他模試受験者は分布に含まれないことなど、いろいろざっくりしているので、あくまで門戸の広さの目安としてご覧ください。

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得点で見ると男子S相当の男女人数比は61:39ですが、同じS層の定員比は別学共学合わせて68:32になります。S層の女子にとって学力相応の学校に入学することは、男子以上に狭き門と言えますね。C層では少し女子の方が入りやすくなり、B〜A層では更に間口は広くなります。 

首都圏全体で見ると、全体の3分の1の人数に対して枠が22%の男子B層が一番厳しい印象で、A層も薄めなので、中学受験の厳しさを最も痛感しやすいのはA〜B層の男子で、次がS層の女子と言えそうですね。もう少し細かく見たい方はPDFをどうぞ。

募集枠集計[PDF]