偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

5つのポイント:目標決定について

目標を決定し、必要な内容の把握と分析をする。中学受験なので、まずは志望校を決めることですね。分析というのは、過去問や合格ラインからどのような問題を解けるようになれば良いのか、そのために必要な内容と量、時間はどれくらいなのか、そういうことを詰めていく作業です。

もちろん、6年の秋に思ったより成績が上でも下でも目標を修正するのはアリですが、目標を決めずに走り出すのは良い方法ではありません。東京から京都に着くために出発するのか、名古屋なのか。ただ遠ければ良いなら、大阪でも仙台でも良いわけですが、通るルートもペース配分も違って来ますね。

現時点の学力偏差値と学習能力、目標とする学校の合格に必要な量が決まれば、どれくらいの進度で習得が進めば間に合うかがわかります。マラソンと同じで、ペース配分やエネルギー補給をどうするか、という作戦がとても大切です。

エネルギー補給というのは、体力的には寝食を疎かにせず、運動も少しはすること。可能な限り楽しい時間も入れ、心のエネルギーも補充すること。何より、全てを捨てて勉強だけに全力でないと入れないようなレベルだと、進学後が厳しい=どこの学校でも上位層をキープして6年後に好きな進路に進むのは、ON/OFFの切り替えが出来て、楽しみを捨てない層だと考えています。

基本的には12月に合格レベルに達し、1月は全部まとめた周回と1月校入試に充てるのが良いので、6年時のベースプラン(麻布)は下記のような感じです。志望校によっては6年を薄くして5年上下や問題集を始める時期を早めたり、週テストのペースで学習を進めることもあります。

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6年時の受験学習ベースプラン

これらを塾と並行して進めるので、それなりの学力がないときついですね。その子のタイプによっては宿題をやらないなどの相談をしたり、テストコースに切り替えたりもします。

報酬系のところで触れる目先の目標を決めるのにも、最終的なゴールが必要です。今日の積み重ねが、きっちりとゴールに辿り着くには、予めゴールが見えている必要があります。やりがちだけどあまり良くないと思っている(不十分な)目標設定は下記です。

「◯◯絶対合格!!」
合格まで休めない。イメージとしては良いけど、遠すぎるために日々のエネルギーになりにくい上に、休みを取りづらい心理になりがち。

「今度のテストで◯点を取る/◯クラス入り/偏差値◯」
点数は問題次第、順位は周囲の出来次第で変わるので、ラインが曖昧。もちろん週テストの算数で満点を目指すとか、絶対にダメではないけど、それより何をどれだけやるかの量的な目標の方が適している。

なので、基本的にはどのテキストを何ページやるとか、何問解く、正解する、などの設定を多用します。このためには、何をどれくらいやれば出来るかを把握しなくてはいけません。つまり、本人の力と目標の距離がわからないとその話が出来ないわけですね。

とにかく塾に通って、毎週テストも受けて、席順や模試での順位やクラスを上げなくてはいけない、少しでも上の偏差値の学校に進学した方が良い、と考えてしまいがちな人もいますが、実際は違います。

まず、知能と学習時間にも関係があり、志望校の難易度が上がるほど「より知能が高く学習継続力も高い子」が集まります。本人なりの最大で頑張っても5の子もいれば、10の子もいます。無限に時間と体力があるわけではないですし、相手も走っているので、どう頑張っても同じ期間の中で抜ける相手には限度があります。

体力のある子が5周走る間に、運動不足の子が吐くほど必死で走っても、周回遅れになった挙句に2〜3周で終わることは普通に起きますね。中高の6年も使えばかなり上まで行ける可能性はありますが、中学受験の短い期間では抜けない相手がいます。

そして、本人の力量と性質を踏まえ、適切な目標設定をして成長の実感を味わうことが、中高でのモチベーションにもつながり、より高いレベルでの学習にも繋がっていくと考えています。

偏差値50台の学校でも、一般の公立中よりはずっと高い進学意識とモラルを持つ子の比率が多く、学校側の進学への意識も高いものです。その中で、多感な中高生の時期を過ごし、様々な経験を楽しみながら学習への意欲も持ち続けるには、人としてのバランスを損なわないで受験を通過することが基本なので、「頑張らないと届かないけど無謀でもない」、ちょうど良い目標を設定してあげることが大事だと思います。