偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験に活用したい5つのポイント

私が指導する場合の基本方針は、(1) WISCなどで能力の特徴を見る、(2) エゴグラムなどで性質を見る、(3) 志望校合格に必要な学習の内容を把握する、(4) 忘却曲線などを踏まえた効率の良い学習プランを立てる、(5) 報酬系を活用して前向きな取り組みを支えていく、ということです。

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中学受験に活用したい5つのポイント

まず、左側のWISCとエゴグラムについてざっくり書きます。WISCは良く言われる「地頭の良さ」を可視化しようとする知能検査です。知能は変化しないもので、スコア自体はテストに合わせたトレーニングで上げることも可能ですが、あまり意味はありません。人の能力の全てを計測することなど出来ないことと、IQ自体も標準とされるスコアからの乖離を見る偏差値の一種に過ぎないので、タイプ判定くらいの意識で活用すべきだと考えています。

参考:「WISC-IVの分析と活用」新潟大学教育学部教授 長澤正樹

エゴグラムは心理テストとか性格診断などと言われることもありますが、心理と言っても表層に近い範囲で、ロールシャッハなどで見る深層心理とは異なるものです。普段の人との関わり方の影響を受けるため、成長段階や演じる役割の変化によって結果も変わってきます。

IQ・知能がCPUなら、エゴグラム・性質がOS、学習で獲得する学力や知識がアプリに該当します。CPUが極端に低速だと困難もありますが、普通のレベルならOSやアプリの使い方次第というイメージですね。数年前の安価な中古PCでも稼ぐ人もいれば、最新の高額な最新スマホSNSとゲームしかやらない人もいる。能力や性質も同じで、どう使うか、価値を生み出すかが大事です。

知能検査の結果は、全IQは90程度あれば気にしません。むしろ注目するのは、下位検査の数値です。まず、数値差が大きいと生きづらさを感じやすいと言われています。この点は医師やカウンセラーからの説明やレポートを踏まえて頂くのが良いですが、一般に自分は数値の高い方で自分を評価しやすいのに対し、周囲は数値の低い項目で評価されることが多いこと。逆に数値の高い方で評価された場合、低い方の項目で手抜きだと思われやすいこと、などがあります。

例えば処理能力の高い子が、遅い子より何事も早いので自分では優秀だと思っているのに対し、周囲は言語能力の低さを評価して頭が悪いと思っている、というケース。或いは、言語能力が高くワーキングメモリーの低い子を賢いと評価した上で、言ったことを忘れたりすると手抜きや真面目に聞いていない、などと判断してしまうケースなどがあります。

これらのマイナスを避け、プラスの部分で補ったり、失敗を回避することが、学習効率をあげることにもつながります。例えば、言葉で説明した方が入りやすい、図で説明するとすんなり理解する、音で繰り返した方が覚える、聞いても忘れるからToDoやカレンダー、チェックリストを活用する、などの手段の選択がハマりやすくなります。自分に合った学習法というのは、要は知能の傾向に合った方法という意味ですね。

WISCは発達障害疑いの場合などは教育センターや公的病院で無料〜保険適用で受けることができますが、任意で受診する場合は児童精神科や発達障害外来で2〜3万円で受けられます。子育て支援センターなどで聞いてみるか、直接クリニックなどに「親戚に発達障害と言われた子がいて、心配だからWISCを受けてみたい」などと言って予約すれば特に紹介状などは必要ありません。日常生活に困るほどでなくても、人それぞれに能力は違うので、それを踏まえて適したプランを考える方が良いと思っています。

エゴグラムはインターネット上で無料診断可能なテストが公開されています。スコアの評価は書き手によって様々なので、幾つか解説を読んでみて特に注意すべき接し方などを考えるようにしてみてください。

例えば現時点ではA(大人)の部分が低い子でも、数年後には高くなっているという変化は普通に起こりますし、リーダーや管理職をやっているうちにCP(厳格な親)の方の傾向が強くなる人もいます。ですから、この子はこうなんだ、と決めつけるような見方は誤りで、現時点での傾向を把握し、それに適した指導方針を考える材料として使います。

そして、エゴグラムについては親もテストをしてみることをおすすめしています。自分の現在の思考パターンや行動習慣にどのような特徴があるのかを把握し、その短所による失敗や損失を回避することに努めることが、学習への取り組みを支える上でも有効だと思います。