偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験本番まで、あと夏休み1回分。

とうとう12月1日になりました。あと夏休み一回分で、1月入試が始まりますね。このブログで言えば、「秋からの100日の過ごし方(1)」から中61日経ったので、同じ日数で2月1日の東京入試を迎えます。

最後の模試に冬季講習、過去問に穴埋め、時間が幾らあっても足りないとか、インフルもらったらどうしようとか、痺れてくる時期。で、この時期に話すのが、地に足を着けて勝ちの目を増やしましょうってこと。


立ち位置を間違えないこと

緊張や不安が強くなると、とにかく必死で勉強してる姿とか、良いスコアとか見せてくれないと辛く感じるようになる。感情移入が強くなりすぎて、しんどさから今度は安心させてくれない対象に攻撃的になる恐れも出てくる。でも、内輪で攻撃してる場合じゃないですね。時間も気力も無駄にしてしまうなら、金と飯だけ用意して手を離すほうがマシなくらい。

約束したから、頑張るって言ったから、って責めるのもイマイチ。スケジュールとかやることを決めるのが悪手ってことではなくて、それを破ったからって怒りや凹む材料にするのは損。目標を持つ、やることを決める、そしてやり抜く、って流れを身に着ける練習のためにするもの。

親と子の約束は対等ではなく、有利な契約書を作れる業者と、無知な素人くらいの差がある。怒るのは「本当に悪いこと」とか「危険なこと」くらいにした方が良い。

勉強しないとか、隙あらば遊ぶとか、気が抜けるなんてのは、本来悪いことですらない。罰は要らないけど、何度でもリトライさせる。努力しないで成果を得ることもないし、親の影響で鍛えられる期間はもう残り少ないから。

理想通りの育ちかたじゃないかもしれないけど、親だって完璧じゃないでしょう。良いことをしよう、楽しもうって姿勢を見せるだけで良い。否定したり投げ出したりしないで、根負けしないところを見せてやる。失敗したり負けた時は、頭に「今日は」をつければ良い。

責める時は、正義とか被害者のポジション取りがちだけど、「私は正しい」ってそんなに意味ないです。「子供が希望通りに頑張って勉強してくれない被害に遭ってる親です!」なんて、目指してる役回りじゃないはず。約束したとか頑張ってるとか、そういうノイズを外した中身がそれに近づいてるなら、少し立ち位置をずらした方が良い。

正しさの傘に隠れて、向き合って石をぶつける位置に立たないこと。誰かが子供に石投げるなら、横に立って守ってやるくらいの方が良いんじゃないかな。親だってそこまでタフじゃないけど、子供よりは年の功がある。なんだって良いから味方する。最後までやる。それくらい言えれば上出来。闘う相手は入試であって、子供じゃないですよね。

 

追い上げたい時の基準線

これからの学習量や姿勢に対して、過去最高の大幅更新を見込むのは良くない。不安が強いほどパツパツの計画を立てたくなるけど、絵に描いた○、机上の○○、取らぬ狸の○○○、ってやつです。例えば可処分時間の4〜5割しか勉強しなかった子が、急に10割出来るようになるなんてほぼ妄想の域です。

気持ちはわかるんですよ。もういい加減、本気出してくれ〜ってね。でも、理想と比べて腹を立てたり凹んだりするなら、期待値をコントロールして出来ることを一つでも増やすことに集中した方が良い。

今まで出来たことのないことを基準に戦略を立てるのは、現実から目を背けるのと大差ない。来るかどうかもわからない援軍や兵糧をアテにして、それがなければ玉砕って、ダメ軍師ですよね。あるものを基準に、勝ち目を増やすことを考える。今まで、ベストの集中や時間を取れたのはどんな時で、どのくらいの量か。

エンジンのかかりが遅いとか、15〜30分で集中が切れるとか、もう散々見てきて、タイプは知っていますね。例えば、一緒に問題を読んで、解く時間も隣にいた時は結構出来たとか。時間区切って問題解いて、採点してる間は休憩ルールにしてた時は集中力が高かったとか。そういう過去ベストの再現が最高ラインで、そこをキープするのさえ容易じゃない。

だから、本人の過去ベストの8割程度でこなせる量を基準に考えて、何をやって合格の目を増やすかを考えましょう。増える分には困らないので、ベストが出ればコレ、更に超えてきたらコレ、って感じで三段階くらいのメニューを作ります。

1〜2割は自由時間にするのがオススメ。休憩でも良いし、好きな科目の勉強でも良い、完全に本人任せの時間。全部決めてたくさんやらせたい気持ちにもなるけど、なるべく本人が納得して、短時間でも集中を繰り返しやすい環境にしていくことを心がけた方が得です。

それに、2〜3年も受験勉強してきた子なら、夏休み1回分くらいの日数は割とリアルに想像出来るようになっています。もう勉強した方が良いってのはわかってる上で、「やらないと」で動けない子は珍しくない。

プレッシャーがかかってくる中で、弱点埋めとか見たくない事をやる必要がある。これまで何度もやってるのに、覚えられなかったりした項目。やらないといけないと思うほど、出来ないことに向き合わなきゃいけないから、気力を削がれるんですね。

外野からすれば出来ないところ埋めるのは当たり前だけど、苦手なこと、出来ないを実感することと延々と向き合うって、普通の神経ならうんざりする。逃避はむしろ正常な反応です。

だから、始動の自動化はとても大事。ただやる。出来不出来に拘泥しない。とにかくやる。さっきやったのに忘れる。昨日できたのに間違う。そういうことに拘泥しない。ただカウントして繰り返す。日本語できるんだから、しつこくやれば覚えることも出てきます。増えた分を数える。特に2〜3年もやってきて苦手な範囲では、これが本当に大事。苦手でも増やせる。増やせると苦手感が少し減る。入試でアタリが出れば大儲け。そういう流れを作ってあげることが支えになります。

 

容量を増やすためのプチ合宿

過去最高までしか求めないとしても、そのラインが心細過ぎる場合には、以前の記事にも書いた、土日利用など2日間のプチ合宿を勧めます。基本的に、誰かがずっと一緒にいる形で進め、張り付いているのが難しい場合は、開始と終了には動画チャットなどで付き合うと良いです。誘導するなら「自主的に始めて欲しい」は無くしましょう。ツアーガイドにでもなったイメージで「次は○時から算数で〜す」ってノリで良い。

50分やって10分休憩くらいのサイクルで、食後に昼寝を挟むのも良いです。昼寝込みで組む場合は、午前中の最後のコマに記憶系科目を入れて、起床後のコマでチェックするのも有効です。出来るかチェックというより、忘れ物チェックのつもりで。これも何度か書いてるけど、本当に試験当日まで記憶は増えるので、何個正解とかに拘らず、ひたすら回し続けるイメージを共有するようにしてください。

 

記憶系の入れ方

時間が経過したものは忘れますね。だから、受験には12月や1月にやったことの影響が大きい。たまたま最後の一週間に仕上げたところが出れば、それだけで10点以上加算することだってあり得るんだから、最後まで積み上げることが大事。あるもの全部置いてくるためには、やったことは身についたって感じが要る。

ざっくり概要を覚えて、それに肉付けしていくのは記憶の基本ですが、「重要語句」とか「基礎知識」みたいなことに捉われ過ぎないようにしましょう。

教える側は、テストに出る確率の高いことを中心に話すクセがあるし、テキストもそういう作りになります。全てを知って、全体像を整理するとこう並びますよ、って完成形。頻出順に整理されているし、基本線として使うのは当たり前とも言えます。安全で説得力もある。

でも、子供の覚え方や理解のパターンには個々の特徴があって、そっちに合わせた方がベストラップを叩き出しやすくなる。記憶のツリーは幹から枝、葉って広げてく感じですが、この幹になる部分でも同じこと。

とりあえず何周か読んで記憶チェックしたり、翌日もう一度やったりすると、すぐに頭に入ることと、入りにくいこと、間違って覚えること、しばらくすると抜けることなどがあります。この、すぐ頭に入って間違えにくいものを幹にして、そこから枝を広げていく。3〜4回読んで、全く何も覚えていないってことはまずありません。その繋げ方を教える、見つけるのが効率化のポイント。

まずこの20個が幹、次はこの40個が枝、この60個が葉、みたいな順番通りに覚えようとするのでなく、最初に覚えた20個を幹、そこに絡めた40個を枝、って風に考える。最終的に120個入れば何でも良いし、100個だって当たる確率は上がる。入れたものを整理し直して、繋げ直すのが大事。

まず基本の太いライン、次に枝〜って考えに縛られ過ぎると、子供の中に勝手に出来ていく幹を活かしにくい。どのルートだろうが全部覚える気でやるんだから、どこが幹でどこが葉でも、最終的に全部入れば困らない。覚えきれば整理統合されて、本来あるべき形っぽい流れも作れます。

歴史や地理などの大量の事柄を並べてみれば、確かに大きな流れがある。原因と結果、相互の影響もある。それを理解すると忘れにくいし、難関校の問題にも対応できて、記述や説明も可能になる。それは正しいけど、だからって事柄に「重要事項」として発生していることなんかない。

織田とか武田とか今川とか徳川とか豊臣とか小早川とか、バラバラで覚えたって大丈夫。覚えると、あ、こいつも織田と関係ある、あ、こっちも、って繋がって、中心に織田ー豊臣ー徳川の流れが見える。その順番でも大丈夫です。最初に川中島とか軍配を覚えても、刀狩りや僧兵を覚えても問題ない。

どこから始めても良いし、どこに道が出来ても良い。全部入れば、俯瞰も繋がりも見えてくるし、整理統合もされていく。歴史的事実って言われてることや生物の分類も、しばらく経てば新たな発見や解釈によって変わることもあるのが学問です。

だから、最初の何周かで頭に入ることを大事に幹にして、枝葉をつけていく。自分の頭に合わせて覚えていくことがとても大事です。何度も目にする、絵にする、音で聞く、ストーリーで入れる。手段も色々ですね。

こんな大事なことを〜とか、こんな基本的なことを〜って責めても何も生まないし、気合いで記憶力が上がることもない。特に用語系は「なんとなくこっち」って当てにいく意識のこともあるから、正解不正解で一喜一憂して見せないほうが良いです。

漢字なら、何と混同しているのか。音から入るんじゃなくて、絵と意味から入れるとか。線とか止め跳ねを間違うなら、間違いと正解を混ぜたクイズ形式にするとか。何か自分なりの根拠を持って選ぶ土台を作ることが、記憶の索引を作ることに役立ちます。

 

算数の解法まとめ

算数は、過去問中心の解法プリントを作るのがオススメ。これまでにも書いてきたように、目標得点に届かせるために必要な問題、あと少しで解けそうな問題。今までの過去問を見直したり、解く度に追加したりして、最終的に30〜50問くらい抽出するのが目安です。

プリント1枚に1問で、たっぷり書き込むスペースを取り、解答やノートから考え方や手順を網羅した模範解答を作ります。自分が間違ったポイント、気づかなかった箇所もなるべく丁寧に書き込みましょう。模試などの目標問題も追加しても良いけど、試験前日に見直すメイン資料としても、過去問抽出プリントは役に立ちます。

解法まとめを作ったら毎日触れるようにする。隙間時間で眺める手帳に追加したり、机の前やトイレに貼ったり。年明けからは、解答を見ないでプリントを解きましょう。間違ったら解法を書くところからやり直し。入試では、考え方や注目するポイントが似ている問題が出ても有利なので、特に直前にはその学校の分をしっかり解いておくと良いです。

 

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