偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

子供の教え方その2 学習習慣の定着のために

まだ学習習慣が定着していない子には、毎日の継続を身につけることが必須ですが、親が「こうすべきだ」と計画を示して、子供がそれに同意する形で約束するのは、あまり良くない方法です。

子供には責任能力がない

未成年者が契約を出来ないのは、責任能力がないからです。「約束を守る」という教育は正しいですが、未経験+長期間の約束に責任を負う能力自体が子供にはありません。経験がなく、具体的な想像力に欠けるからです。

良い学校に行きたいだろう→受験勉強した方が良い→テストで良い成績を取りたいね→じゃあ◯◯をやろう、、、こういう話をされれば、子供は約束してしまいます。なぜなら、その方が良いと思うからです。

でも、自分の興味とは関係なく次から次へと課題が現れ、短期間で習得していく受験の経験がありません。どれだけやれば出来るようになるのか、どのくらい大変か、どれくらい遊びや気が散ることを抑える必要があるのか、何も知らない。良いものは欲しいけど、対価がわかっていない状態です。

これを約束として強制力を持たせようとするのは、仕事の過酷さを教えず、契約を盾に縛るブラック企業などと構造的には変わりません。子供の将来を思っての正しいことでも、責任能力を超えているので守れないのは当然。せっせとバトルのタネを撒いているようなものですね。

短期間の約束を自分で考えさせる

これを防ぐには、子供に内容を決めさせて短期間の約束にする、明確な開始時間を決めて一緒に始める、といった方法を取ります。親がするのは「成績を上げたい」「弱点の克服」などの目標と、学校や塾を除いた家庭での可処分時間の提示。

何をどのくらいやると出来ると思うか、いつ取り組めば良いのか、子供に考えさせましょう。子供が何か言って、足りないところがあれば指摘して、どうするか聞きます。ある程度相談したら、十分なプランに見えなくても、それでとりあえずやらせてください。不十分な計画なら、計画は守った上で失敗させましょう。

計画を守っても思うような点数が取れなかった時こそ、理解が足りない、量が足りない、やり方が悪い、などの理由を考える機会が生まれます。この、考えて取り組み、失敗してやり直す、という経験はとても重要です。

自分の見通しの甘さを痛感したり、気づきを得るのは何かを実行して失敗したとき。目標の点数が取れなくても、全て無駄になることはなく、前回やったことをベースに考えることが出来ます。成長するために重要な“良い失敗”ですね。

逆に、計画を守らないと「約束を破ってサボったから出来なかった」という理由になり、学習の中身や効率を考えることが出来ません。決めたことを実行する能力は「実行した時」に経験値が上がるもの。約束を破っている限り経験も積めず、抑圧された気分と怒られる時間が増えるだけ。こちらは“悪い失敗”、後悔や自己嫌悪の類ですね。

約束はするのに守れない理由

何かを決めるのは、「やった方が良いこと」なのに「自然には出来ないこと」だからですね。やらないでも困らないことや自然に出来ることは、決めたりしません。

ところが、目標達成の経験が少ないと、本人はやる気があるつもりでも、頭の中で他のことと同列に並べてしまいます。

同列だと出来ないから決めたのに、また同列に戻すから出来ない。やらなくちゃいけない意識はあるから気分は抑圧、結果も伴わず自信も育たない。このループは、抜け出せない限り大人でも延々と繰り返します。

本人に約束を守る意欲があっても、経験が少ないうちは時間の把握が出来ません。本人なりに理由のある他のことをやっているうちに、時間が無くなってしまいます。

何で先にやらないの!と言ったところで、その時はそうした方が良いと感じた、後でやろうと思ってた、以上の理由などありません。

決めたことは先に時間を確保して、実行を確定する。優先順位を高くするというよりは、固定してしまう。このために、初動に付き合う効果は高いです。

一緒に始める方法については、次回の記事にする予定です。