偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験に必要な学習時間

中学受験などさせるより、小学生の時くらい思いっきり遊んだ方が〜なんて話も聞きますが、この手の人は「時間がない病」の人だと思います。私が指導を引き受ける場合は、最初に下記のような目標偏差値と学習時間の目安をお話ししています。

中学受験に必要な学習時間目安:偏差値別

偏差値別の合格までに必要な学習時間の目安

これは、スタートから学校別対策までに必要な学習量の合計時間です。例えば、偏差値55くらいの学校に必要なのは四谷大塚の予習シリーズ5年上下8冊、4科のまとめ4冊、補強用の問題集2〜3冊、漢字と計算で2冊、過去問で約1冊分、計18冊を仕上げることを想定していますので、1冊あたり平均100時間かけられます。仕上げるというのは、算数で言えば1問平均2分で全問正解が目標で、95%を越えれば一応完了です。より高い偏差値で増える時間も、概ねテキスト1冊分で100時間です。

実際には週テストなどの誤答プリントも含めてやりますし、算数で周回が多く必要な子もいれば、記憶系で苦戦する子もいますが、トータルではこの時間内に収まります。また、5年開始時点までに、ある程度の受験学習をやって来た子なら、3〜400時間少なくなることもあります。

なお、集団塾での学習時間は塾2時間=学習量1時間のように割り引いて考えることが多いです。ある程度の段階からは授業や全体向けの課題より自学自習の方が効率が良く、間違ったところ、わからないところの解説と理解以外には指導者は必要ないことが多いのが理由ですが、SAPIXの志望校別などレベルに適していて、個々への目配りも適切な優れた内容のこともあります。

これが正しいとして、偏差値50〜55の学校に進むために必要な1,800時間を2年でこなす場合、週17.3時間が必要です。これだと週6日×1時間半で9時間、休日に8時間強です。休日も半日は出かけられますし、友達とも遊べて、好きなことも出来ますね。6日×3時間こなせば終わってしまいますから、丸一日遊ぶ休日を設けてもOK。この量でも学習院や立教などの付属校が視野に入ると考えています。

実際に、毎日朝30分夜2時間のペースで学習を続けながら、6年の後半まで習い事を続けたり、塾のない日は夕方5時まで遊んで来る形でも志望校に合格しています。また、ほとんどの子は受験直前期には学習時間を増やしたがるので、この量を超えてしまうケースがほとんどですし、途中でより上の偏差値を目指して量を増やす子も珍しくありません。なぜかと言えば、成績が伸びて、親にも喜ばれ、塾でも褒められ、自尊心もアップして、欲が出てくるからですね。

私は経営者から一般社員の方まで多くの研修指導もやってきましたが、レジュメを配布してしっかり読んでくる層と、所得や評価の高い層はかなりの重複が見られました。目を通すくらい、通勤中でも昼休憩でもお風呂の中でも出来るわけですが、残業もほとんどなく、学んでもいない方の理由の大半が「忙しくて時間がない」。別に家庭を一人で切り盛りしているわけでもなく、SNSスマホゲームやネットや酒などに使う時間はあっても学ぶ時間はない…これが最初に書いた時間がない病ですね。

なぜこうなるかと言えば、学ぶ意欲が薄く、勉強=苦痛なもの、仕事=仕方なくやる事、という刷り込みがあるからです。取り組みとの相関性は、学歴はあまり関係なく、関係が強いのは仕事に対する意欲と、職場での評価でした。

誰でも、好きなこと、楽しいこと、気持ちいいこと=欲望には時間をかけることを厭いませんが、嫌いなこと、苦痛なことにかける時間は削りたがるものです。そして、意欲の薄い人は基本的に評価が低く、評価の薄さが意欲の低下につながり、という悪循環。

欲望は良いイメージでは使われにくいですが、そこに意思と願いを加えて意欲や願望に変えると、なかなか良いイメージになりますね。やる気を持たせたいなら、何かを奪うのではなく、与えること。与えると言っても、物やお金などのご褒美だけのことではありません。出来るようになり、喜ばれ、信頼もされれば、プライドも生まれ、意欲も増すものです。

刷り込みと自己評価の出来上がった大人の意欲改善は、なかなか大変なことが多いです。それに比べると、経験が少なく、変に低い自己評価もついていない子供に良い影響を与える方が、ずっとやりやすく、効果も早く出てくるものです。◯◯大学卒などの学歴がどの程度の価値につながるか、どのような友人に恵まれるか、などの未来はわかりませんが、目標に向かって学ぶ力を付けることは必ず役に立つのではないでしょうか。