偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

報酬系を活用した方が良い理由

前回の記事で、必要な学習時間の目安を書きました。この途中段階、例えば6年春に偏差値50の子は、400時間分相当の学習量と換算します。つまり、同じ偏差値50の学校に進学するためには、6年生の1年間で残り800時間分ほど仕上げないといけないわけですね。必要量をテキスト12冊分として、4冊分が完璧という形ではなく、7〜8冊分が5〜6割仕上がっているくらいの可能性が高いでしょう。

4年開始でこの量の場合、配分が4年で学んだことが100時間分、5年で300時間分とすると、4年→5年で3倍、5年→6年で更に2.7倍も身につけて、やっと集団の中で同じ位置をキープ出来るわけです。5年開始だとしたら5年→6年で2倍身につける必要があり、もし5年時と同じ量だと合計800時間分しかこなせず、偏差値(相対的な順位)は下がる可能性が高くなります。

総量が少ないほど定着のための周回数が少なくなり、1〜2周だと時間の経過と共に学習の効果がかなり薄れやすいので(これも別記事を書きます)、過去に遡るほど実際の時間数より目減りしますが、それでも学習時間自体が1.5倍→1.5倍くらい必要になるでしょう。

一日の時間、一週間の時間全体を見れば、まだ出来る時間はあるように見えるでしょうが、これ、相当本人としては頑張っていますよね。自分史上最大の頑張りを更新継続しているところです。頑張りが足りないから成績が伸びないのではなく、本人の経験の5割増しで頑張っても順位は上がらない。

大人で考えてみるとわかりやすいかと思います。一昨年は毎日5時間働いた。去年は7.5時間働いた。今年は10時間働いている。それでも職場での評価は上がらない。給料も上がらない。或いは、去年と同じだけ働いている。なのに給料は下がる。ガッカリですね。

家に帰れば、なんでもっと頑張らないの?もっとたくさんお給料もらっている人がいるのに。まだ時間あるじゃない。なんでゴロゴロしてるの?もっと出来るでしょう!お給料下がっても平気なの?休んでる暇なんかあるの?遊びに行くなんてとんでもない!時間のある限り働きなさいよ!。。地獄ですね。

さて、ここでポイントになるのが報酬です。ゲームなどの楽しいこと。人に褒められること。自尊心が満たされること。お金がたくさんもらえること。どれも報酬がありますね。報酬が、自分の努力に見合っていると感じられれば、それを続けることも、より多い時間を費やすこともできます。それこそ、一日の時間をフルに使って取り組むことだって出来るようになるかも知れません。

受験勉強、それも4教科満遍なく面白さを感じられ、純粋に興味や知識欲で楽しめる子は、素晴らしい講師や希少な才能に恵まれている子でしょう。一般的には、どれか1〜2教科は楽しい子でも他の教科はそれほど好まないですし、同じ教科の中でも小説文は好きだけど説明文は苦手とか、生物は楽しいけど物理は面白くないとか。むしろ4教科とも、それほど面白いとは感じずに取り組んでいる子も多いです。

つまり、受験勉強自体から楽しいという報酬を得ることは割と難しいですから、なるべく多くの報酬を与えるためには、頑張りを認められる、頑張ったことを褒められる、出来るようになる、順位が上がる、などの別の報酬を与えられるようにした方が良いわけですね。楽しくなくても続けられることはありますが、報われなければ続きません。