偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験をさせるメリット

進学塾の模試の結果で特待勧誘があるのは、受験に関わってきたプロが「素質のある子は進学実績を稼ぐ金の卵になる」という実感を持っているからです。この素質には2種類あり、一つは知能(IQ)などの才能、もう一つは根気強さなどの継続力で、学力=才能×学習量と言えます。そして、中学受験や大学受験に必要な学力に限れば、かなりの範囲を学習量でカバーできます。

知能が高くても知らない事は知りませんし、普通の子でも知識を身につければ多くの問題は解くことが出来ますので、IQ=学力偏差値にはなりません。学力には後天的な要素も大きいと言えます。(いずれ別稿に書きますが、私が指導する子にはWISCを受けて貰うことを推奨していました。全IQの高低ではなく、特徴を把握する目的と、それをご両親に説明して客観性を持って協力してもらうためです。)

仮にIQ130以上を才能10、115以上を才能7、100以上を才能5として、あるレベルに必要な学力を50とすれば、10×学習量5、7×学習量7.2、5×学習量10のいずれでも届きますね。小学校のテストでクラス上位3分の1に入れる子は、この才能5はクリアしている可能性が高いです。

ウサギとカメの話で言えば、全力で走り続けるウサギは受験の世界にはいません。飛び抜けたウサギにとって受験は全力を出すに値しないレベルなので、ほどほどにやって最上位を取り、あとは好きなことをやっています。初めて受けた模試で特待を受ける子がこのレベルですが、全国に100人もいないでしょう。

そして私の知る限り、並以上の頭のある子が十分な学習量で届く学力50の偏差値はかなり高く、ほとんどの学校に合格する事が可能だと考えています。2年あればどこでも入れるとまでは言いませんが、偏差値40台から60台に上げることは高確率で可能です。

そして、ある程度の難度と量のある学習に取り組ませることは、その子の能力や性質を見極め、得意なものを活かし、不得意なものを補って目標に到達するための練習をする、大きなチャンスでもあります。

中学受験の目的は、親から離れて成長しだす中高生時代に、同じような学力と進学価値観を持つ集団に入れ、良い環境を与えることですが、もう一つの大きなメリットが、この継続的な努力を早い段階で学べることです。努力の継続で学力を上げることの出来た経験と、その価値を知ることは、その後の人生にも役立ちます。

どんな分野でも高く評価されるようになるためには、人より努力することが基本です。そして、この根気や継続力は、叱る、怒る、縛る、疑う、などでは養われません。励ます、認める、喜ぶ、信頼する、などで育つものです。

中学受験は、親が直接的な影響を与えられる最後の時期でもあるので、その子の性質を活かして継続する練習をさせてあげることを目的にすると、良い結果もついてくるのではないでしょうか。