偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

秋からの100日の過ごし方(3)偏差値を5ポイント上げる基本的な考え方

1月10日まであと84日、2月1日まで106日。合不合も残り2回ですね。今日は100日の過ごし方の最終回です。

偏差値を1上げるには、たった1問できれば良い(但し完璧に)。

この時期に偏差値が足りない子には「偏差値を1ポイント上げるには1問完璧にすれば良い」って表現を使います。もちろん、たった1問勉強して上がるわけではありませんが、目的を明確にすることで進みやすくなる効果は侮れません。

まず、合格判定80%・50%・20%の偏差値幅は概ね7〜10ポイントなので、5ポイント上げれば20%の子は50%≒入学者の平均偏差値に届くし、50%の子は80%クリア。なので、偏差値が足りない場合は、まず5ポイントアップを考えます。

合不合の4教科偏差値は、1ポイントあたり6点刻みが普通で、算数の配点が1問6点。なので、1問正解が増えると、1ポイント上がるわけです。5ポイントなら30点ですね。

合不合やSOは、中学受験に必要な範囲をかなり広くカバーしています。だからこそ偏差値の信頼性も高い。週テストやテキストも組み合わせて、模試の得点に必要だった問題をやり込むことで、実力を上げることは可能です。例えば第5回合不合までの範囲を仕上げても第6回で偏差値が5ポイント上がるとは限らないけど、受験までには間に合いますね。

模試で高偏差値を取ることが最大の目的じゃなく、入試に間に合えば良い。既に足りている場合は、違う範囲の模試でもその位置をキープすることを目指せば良いけど、足りていないなら「入試までには出来るようにする」って意識が大事。何度か書いたけど、本番以外の週テストや模試は、弱いところを見つけて改善するための検査です。 


秘密偏差値

追い上げる状況の時は、自宅で取る「秘密偏差値」という表現でスコアアップを目指します。みんなには内緒で実は出来るってやつ。内容はただの模試のやり直し、過去に戻って同じ模試を受ければ偏差値○○だった、ってだけ。問題知ってて、出来るまで何度でも解説受けてやり直しだから出来て当然ですが、効果は確実にあります。

過ぎた模試で、答えを知ってから点が取れるようになっても意味ないのでは?と心配する親御さんがいますが、週テストでも模試でも、もっと言えば入試でも、中身はそう変わりません。幾つかの問題の授業やテキストに取り組み、似たような問題のテストを解き、それで偏差値やクラスが決まり、それを繰り返して学力をつけていきます。

それに、テキスト自体が各校の入試問題から抽出した過去問題集でもあります。塾が色々な学校の過去問を分析してテキストを作り、それを解説しているのが授業で、それが身につけば大半は解けるのが入試。理解した問題を解けるのは当たり前で、その当たり前を身につけるのが受験の仕組みです。ちょっと量が多いので小学生にはきつい闘いですが、別に天才も奇跡も要らない。やり切れるかどうかの勝負です。

まずは偏差値5アップ、合不合の得点にして30点程度を目安にセットを組むのがオススメ。その回の平均点によりますが、合不合だと大体30〜35点くらいです。算数は1問6点で2問、国理社でも各6点取れば、5ポイント上がるわけですね。算数4問+理科1問とか、好きな組み合わせで構いません。


目標ラインの設定

以前も書きましたが、入学する子の偏差値と50%偏差値はほぼ同じ。例えば麻布の80偏差値は67ですが、50偏差値は62くらい。合否は半々だから心配だけど、合格すれば周囲の麻布生と比べて遜色ない学力です。まずはこの50%ラインをクリアしましょう。もちろんお好みで、目標は80%超えでも+5ポイントでも良いです。

補足:合格者の平均偏差値は、80SSと50SSの間の50SS寄りになります。また、辞退者の多くは上位で、入学者の平均偏差値は更に50SSに寄ります。→入試では、持ち偏差値の順番通りに入るとは限らない。

予習シリーズでもプリントでも、授業を聞いたり解説を読み、問題を解いたら答えを見て、出来るまでやりますね。で、ほとんどそっくりな問題をその週にテスト。それで実際に、問題を解く力がついていく。例題・類題、基本問題、練習問題、応用・発展問題。これらの分類と、正答率の分布はかなり近いです。

模試は年数回のチャンスで、その偏差値と合格実績が一致するように、バランスを考えて作られています。そして、競う相手の出来がわかることが、テキストより優れているところ。模試で目標偏差値を超える得点を取れる分まで間違った問題をやり直すことは、必ず力になります。

例えば算数なら、解答や解説があれば次は出来そうな問題を2問と、正解したけど正答率が低い問題を合わせて3〜4問選びましょう。次に、選んだ問題と同じ範囲の週テストで、似た問題を探します。同じような問題を同じように間違っているパターンが多いですね。最後に、テキストからも同じように抽出して、合計10〜20問。問題のダウンロードやスキャン切り貼りで、直に書き込めるプリントテスト形式にするのがオススメです。

これを、解説や模範解答をそのまま書けるくらい読み込み、不明点は親や講師に聞いてわかるまでやるのが1周目。1問3〜5分かけて、30分〜1時間半くらい。毎日30分だと1日〜3日ですね。次は時間を区切って解く。合不合は50分で6点25問なので、1問2分が基準です。プリント1セット15問として30分ですね。間違った問題は理解のやり直し。2回正解したら外して、全部無くなるまで繰り返します。

ポイントは、最低でも週3回やること。時間が出来た時に回すのではなく、優先的に時間を割り当てます。全部仕上がったら、模試の問題を時間通りに解いて、得点出来ることを確かめましょう。模試の時には出来た問題を間違うこともありますが、それも次の周回に組み込むだけ。

6回分の合不合の全てで目標偏差値を取れるように仕上がったら、同等の力はあります。余裕があれば、組分けなど別の模試でも同様に。12月までの模試の全てを無駄にせず、1月に仕上がりきるように着々と埋めていきましょう。

目標に到達した模試は、評価シートを書き換えてプリントしたものを渡したり、小さな賞状を用意したりします。賞状用紙は送料込み100枚で3,000円とか、10枚入り2〜300円くらいで手に入りますし、賞状用紙のイラストをダウンロードして、文字を入れてプリントしても良いです。1枚目はイラストACで無料DLできるイラストを使用しています。

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学校に通い、塾のペースも維持しながら仕上げていくのは、時間の配分もなかなか大変です。義務教育なので学校には通うべきですし、塾も厚みを増す時期なので、そうそう削れない。でも、弱点克服や得点力強化は、自分専用。状況によっては、塾や学校を休ませることも視野に入れます。

実際には滅多なことでは休ませませんが、一番大事なことがコレ、次はコレ、という意識や優先順位を家族で共有し、それを受験までブレなく守り続けることは大切です。


周回の内容と時間配分

毎日1時間半〜2時間くらいは、自分にフォーカスした時間を確保していくことを勧めます。もちろん、塾の宿題や復習もあるでしょうが、塾だけにペースを任せることを、少しづつ減らしていく時期です。例えば以下のような感じで、周回していく内容を決めてください。

算数は、先述の模試の目標偏差値突破と関連問題。徹底的に周回して、何割かは問題を暗記してしまっても良いです。これさえ出来れば、という意識を持ち、それを身につけることで、穴を埋め切りましょう。これに30分。

国語は以前も触れたように時間がかかりますが、地力の強化で書いたタグつけとマッピング、選択肢からの理由づけは短期間でも「論理立てて考える」トレーニングになるので、毎日1〜2問で良いので続けましょう。ここも30分。

計算は、満点まで繰り返す。漢字と用語系は、完璧に覚えきることを目指します。毎日何ページやって何周するのか。ここに30分〜1時間。

国語の漢字ことわざ、社会の地歴、理科の生物などの記憶系のテキスト。これまでに1〜2周は通しているはずですね。これを10、11月の2ヶ月で仕上げる予定を立てます。コアプラスや四科で満点とか、目標をセットします。締め切りは11月末に設定し、日々分割して進めていく。11月末に仕上がり確認のテストをやって、そこから年末までに漏れを仕上げる。12月はこの仕上げと、公民の時事ニュース系に時間を割きます。1月にはそれまでやったことを回していきましょう。

子供には、記憶の家を建てる話をします。家は一部屋づつ作るのではなく、大きく基礎、建物、内装と仕上げる。今までが土台や基礎で、11月までに家を建て、12月に内装を仕上げる。1月には入居して、勝手知ったる我が家にする、と。

仕上げのポイントは、問題→答え、答え→問題の双方向でやること。答え→問題は、単純に解答をプリントして設問を書いていく形や、口述していく形で構いません。時間をかけて丁寧にやるというより、軽くペラペラ喋りながらポイントとなる語句を含むことが出来るように取り組みます。

難関校なら、なぜそれが起きたのか、ということをブロックごとにメモ書き。問題を解くついでに書くのを積み上げます。テストとして時間を区切り、余り時間で書き込む。で、書くべき知識を書ききれなかったことにツッコミを入れ、時間が足りなかった、というやり取りをする。この時間の圧をかけながらベラベラ喋るように書き出す練習は、短期間で厚みを出すのに有効です。ただ、どんなにやっても1回では忘れるので、繰り返すことが大事。

塾の授業からは、携帯用の見直しノートを作ります。1日分を1見開きで、塾では見出しだけ書いてきて、前日の授業を思い返しながら、学校の休み時間や隙間を使って書き込んでいくのがベスト。雰囲気や性格によっては学校では出来ないので、その場合は家で書き込む時間を確保しましょう。時間は15分くらいで良いです。授業中のノートやプリントを参照しても構いませんが、書き写す感じではなく、思い出す補助として使うこと。

過去問は1年分に3〜4時間、直しに2時間として5年分で30時間。ピックアップした問題と、類似の問題で10時間。仕上げに1〜2年分を解いて10時間で、合計50時間。これを2校分で100時間。他の学校は解くのと不正解ピックアップを3〜5校分、15〜25時間。合計で120時間くらいは過去問にかけることが多いです。最低でも80時間くらい。

1月に120〜180時間くらいは勉強時間を取れるので、そこから40時間を確保すると、年内に80時間分くらい消化しておきたいですね。過去問は出題形式とペース配分に慣れるための練習なので、特に年内の出来にはあまり一喜一憂しない方が良いです。似た問題が出たら解けるように、模試と同様のやり方で仕上げていきましょう。


運動と睡眠を大切に

夜遅く、23時や0時近くまで勉強する子もいるようですが、睡眠を削るのは集中力や記憶力、成長や進学後の生活を考えても薦められないので、睡眠は確保した上で可処分時間で集中することを大事にしていました。何時間の睡眠が必要かは個人差がありますが、昼間眠そうとか、顔色が悪くなるようなのは絶対に避けたほうが良いです。

短期の合宿などでは追い込みもアリですが、それ以外は普通に寝起きして、使える時間で集中した方が良い。起床時間も、一番早く家を出る入試に合わせて、いつもの時間に起きて行けば間に合うリズムにしておくのがオススメ。

就寝の2時間前までに食事を済ませ、1時間半前までに入浴。照明は暖色系に変え、入浴以降はスマホなどのディスプレイは一切見せないようにしましょう。寝る前の歯磨きなどは、洗面所の照明もテーブルランプなどを置いたりして、薄暗い方が良いです。天井照明の蛍光管を暖色にしたり、手持ちのスタンドに調光器を付けたり、照明の工夫は雰囲気づくりにもなるので、挑戦してみてください。

また、小学生でも運動不足は集中力や能率の低下を招くので、軽めの運動を取り入れるようにしていました。野球や剣道経験者なら素振りとか、サッカーの子はリフティングとか、屋内で出来る踏み台昇降でも十分です。

踏み台昇降は通常より低い階段程度の段差でも良いので、リズムに合わせて10分程度。音楽でも良いですが、リズム音に重ねて地歴公民などの用語クイズを録音しておいて、それに答えながら運動する形は楽しんでやる子も多く、休憩ごとに踏み台昇降クイズにしていることもありました。

体育や通塾時の徒歩などもあるし、必ず毎日などと気張らなくても良いので、塾のない日は運動してから入浴などの形で少し体を動かしましょう。