偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

秋からの100日の過ごし方(2)やることを自分に合わせて選んでいく。

ここから直前期までは、塾で取り組む問題の難度と量もなかなかのもの。全てのテキスト、プリント、宿題を完璧に仕上げると、志望校合格どころか、最高点や満点を目指せるくらいの量だったりします。

もちろん余裕があれば全部仕上げても良いけど、合格を目指す上では全部をこなす必要はありません。宿題には、自分は出来る問題や出来なくても困らない問題も含んでいるのも、無駄な負荷になる理由です。

必要な分だけやりたいわけですが、この取捨選択自体も難しいので、まずはざっくり時間を切り分けるのがオススメ。先に自分に必要な分を確保して、塾のことは可能な範囲で回していくようにシフトしていきます。

 

時間配分

時間配分の目安には、第一志望の偏差値と、6年生の模試の平均偏差値を比べましょう。四谷で現時点なら組分けと合不合3回分ですね。志望校の偏差値が80%で67、50%で62、20%が57の場合を例に考えます。

平均偏差値64以上くらい、判定が60%以上なら順調です。これまでの方法でしっかり目標に近づいているので、大幅に変えることはありません。塾の戦略に乗って対策を詰めましょう。気をつけた方が良いのは、過去問対策や難問に囚われて基礎や周回を疎かにすること。可処分時間の2割は基礎と周回に使うことを心がけ、用語や計算などの基礎、自分用の見直しノートなどを毎日続けましょう。

以前の記事にも書いた、夏期講習のプリントなども含め、塾の他に今週は何を周回するか、習熟度のチェックはどうやるか、という目標を刻んでいくと良いです。10〜12月の模試でも偏差値は多少変動すると思いますが、間違った問題や失敗の原因を詰めるだけで良いので、バランスを崩さず、着実に定着度を上げていくことを心がけましょう。

偏差値61〜63くらい、40〜50%ならまずまず。同じ学力の子が2人に1人は落ちるのは怖いですが、合格すれば同級生の中で普通レベルの学力にはなっているので、焦る必要はありません。合格しても良いところまでは来ているんですから。12月までに偏差値を上げるより、模試結果は50%のままでも構わないから、対策を厚めにします。

過去問演習の時間を確保すること、類似の問題を探し、塾での質問を活用することなどを意識しましょう。1点の差が最も大きいところなので、基礎の他に、理社での得点力アップを意識して厚めにやると良いです。問題を解くだけでなく、設問を口述出来るような暗記を試みたり、単語カードなどの記憶強化アイテムを隙間で何十周も回すような取り組みが良いです。比率的には基礎2、弱点2〜3、塾5〜6くらい。

57〜60くらい、20〜40%だと危なくなってきます。もちろん対策も大事ですが、50%超まで仕上げることにも時間を割きましょう。比率は基礎2、弱点や実力アップに4〜5、塾3〜4くらいの感じです。

現時点で20%未満の場合は、テストを受ける回数を減らしたり塾を辞めることも視野に入れてやり方を変え、実力アップに取り組まないと高確率で負けるので、短期合宿のような取り組みすると良いでしょう。塾比率は2くらいに下げ、実力アップに6以上割きます。

次の記事でも触れますが、過去問の時間は年内に80時間くらいは確保しておくと良いです。特に親の方は、過去問の傾向をしっかり分析、把握しておくこと。併願校を似た傾向で揃えると対策が奏功しやすくなるし、どうしても埋めておきたい範囲の絞り込みにも有効です。全部の問題に目を通すことが難しくても、過去問題集の回答や配点は数年分に目を通し、子供の得意分野との重複具合や傾向を把握しておくようにしましょう。

 

学校を休むかどうか

インフルエンザなどを貰いたくない、過去問を本番と同じ時間帯でやる、直前の詰め込み、などの理由で1月に学校を休ませるのは特に反対もしませんでしたが、12月までは暦通りに行くことを推奨していました。

成績が足りていないと焦るのもわかるし、たまに休むくらいは良いでしょうが、秋から不登校状態にするのは精神衛生上も良くないし、12〜15時間みっちり100日続けることなんて、まず出来ません。

何かをガッツリやらせてスイッチを入れたいなら、休日と重ねて2日間のプチ合宿を勧めます。週テストを1回飛ばして土日などでも可能ですね。12時間*2日の24時間あれば、相当の量をこなせます。

この場合、ただ家にいて勉強しろ!って放置では意味がありません。親か家庭教師など、一緒に張り付いて集中的にやること。怖い感じを出さず、ひたすら一生懸命、前向きに課題をこなしていけることが条件です。

レベルにもよりますが、例えば週テストで振るわなかった単元の、テストで間違った問題+模試で同じ範囲の問題+予習シリーズの5年上下と四科のまとめの該当箇所などから100問ほどピックアップして、問題を解く→解説→問題を解く→解説で1日目を終了。2日目には不正解分→解説の繰り返しで完答を目指すような形でやると良いでしょう。

 

テキスト周回

学校に通っていると、可処分時間は週45時間くらい、14週で630時間。この中から塾に通い、自宅学習をするわけです。四科のまとめくらいのテキストは、2〜3周やって80〜120時間くらいを見積もるので、これから手をつけても5〜8冊仕上げられる時間がある。1周やっているテキストなら、1冊4〜50時間くらいで結構仕上がります。

数は少ないですが、この時期に偏差値40台から関わった子でも偏差値55以上の学校に合格しています。偏差値だけで見れば10以上差があるところからの合格なので、駆け込み紹介の人には「すごく精度の高い予想問題を作れるんじゃないか」「すごい教え方があるんじゃないか」なんて誤解をされたりしますが、特別なことは何もありません。

やったのは、予習シリーズ、四科のまとめ、プリントとテストからの抽出、過去問のみ。通塾自体を辞めるか週テストコースに変更して、問題数も絞り込んで、みっちり回す感じです。算理社は予習シリーズ5年上下、四科のまとめで9冊。国語は他校過去問中心に読解と選択肢をやるので、テキストは漢字語彙の1冊。これで10冊ですね。

2周目以降のテキストは、週テストの間違った問題と正解していても正答率の低い問題に注目し、類似の問題を抽出して使います。例えば週テストから5問、テキストやプリントから10〜15問で、1単元あたり計15〜20問くらいのプリントを作成する感じですね。これを20セットくらい作ります。志望校の傾向も加味して、有効な絞り込みをしましょう。

これまでの記事でも書いていますが、全部の問題ではなく、次のレベルに必要な問題に絞り込むことが大切。偏差値55くらいを目指すなら、合不合や組分けの正答率30%以上の問題を完璧にすれば良いので、苦手単元の20%台以下の問題は基本的に無視。得意な範囲なら正答率低めの問題に手をつけても良い程度です。

 

問題の抽出

やることの大枠を作ったら、解く問題と、身につける問題、どうしてそれを選ぶのか、どのくらいの時間で出来るか、と言うことを話して、子供主導で決めている形にしていきます。大枠、時間、進捗の管理には親が関わるけど、中身は本人が決める。これは結構大事です。「この問題をやりなさい」は減らしていく。最初は、正答率高めの問題を数問ピックアップした中から選ばせるなどでも良いです。

何度か書いていることですが、これなら出来そう、これならもう少しでわかった、そういう問題を本人が抽出していくことは、もう一歩に見えるから有効なんですね。ゴールが見えないと、頑張り続けるのは難しい。ゴールが見えると、もう一歩踏み出す力になることは多いし、出来るようになると更に良い気分。

切羽詰まってくると念力みたいな話になってくる人もいるけど、苦痛に耐える根性で成績は上がりません。しっかり集中して、理解が進み、コツを掴んでこそ上がります。そのためには、苦しみに耐えている感は少ない方が良い。前向きな気持ちで頑張って、量が多いから結果的には「苦しい時もあるけど頑張った」になるくらいがベストです。最初から「嫌でもやる」などの苦痛に耐えるのが目的じゃない。

これが出来れば、って意味があり、頑張れば出来そうな気がする。出来るようになると気持ち良い。頑張って、実際に出来るようになる感覚を経験し、常にそれを親子で確認して、小さな喜びも共有する。このサイクルを回すように仕向けることが、次第に自律的な行動にも繋がると感じます。これは初期だろうが直前期だろうが変わりません。

共有するには、親は出来たこと探しゲームのつもりで。出来たこと、進んだことを見つけて、何個気付けるか。ここは設問読みながら条件書き出してあるね〜とか、字が読みやすいとかでも良いです。

正しいことを何周かやれば出来るようになるので、意欲を持ってやり続けさえすれば、あとは時間が足りれば良いわけですね。逆に、どんなに時間が足りなくても、出来ないこと、間違ったことを責めても何の成長もありません。

怒られて成績上がります?理解は増えます?不真面目だから解けないとか、真面目なら解けるとか、ありません。出来る問題は不真面目にやっても出来るし、真面目にやってもわかってない問題、気づけない問題は解けない。そして、初見じゃない問題は、気づきは要りませんね。理解と使用方法が身につけば、解けるようになる。

初見の難問に対応してサクサク解けるなんて、受験にはほぼ必要ありません。似た問題を解いたことがあり、その解き方を身につけていること。その数が合格ラインに届けば良いだけだし、ほとんど全ての学校の合格ラインに届くだけの量は、問題集やプリントに似た問題があります。見たこともないような問題を解けないと合格点に足りない学校は、ほぼありません。

子供にも自分にも完璧は求めず、出来ることに集中する。合格に必要な力をつけること、役に立つことだけに集中するように心がけていきましょう。すぐには上手に出来なくても、3ヶ月かけてそういう意識に馴染んでいけば、受験直前の1ヶ月には力になれるようになります。

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毎年お世話になっている湯島天神のお礼詣