偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

ちょっと誤解があるように感じること

今日は、相談とか指導フォローの中で、誤解というか、バランスの偏ったイメージになっていると感じることが多いことを色々書いてみました。推敲足りないと思いますが、もう受験も始まっている人もいるので、公開しておきます。

あと、時間的に対応できる限界になっているので、新規のご相談受付は2月上旬まで休止することにしました。今年度受験が終了したら、2月中旬以降に再開する予定です。

 

生活リズムを整える目的

就寝と起床のリズムを整えることを推奨していますが、これは「入試の際に十分な睡眠が必要だから」とか、「前夜の寝付きを良くするため」が主目的ではありません。そうなればラッキーくらいの感じです。

大事なのは、入試前日に興奮とか緊張で眠れなかったり、夜中に目が覚めたりして寝不足になっても、普段の覚醒リズムって1日では崩れないので、横になってさえいれば、いつもの時間帯にそこそこ覚醒してくることの方です。

なので、もちろん眠るに越したことはないですけど、本番当日はそんなに気にしなくて良いです。プレッシャーの薄い期間のうちに、覚醒リズムを整えておいて、眠れないとしても実力の95%くらいは発揮できるように備えておく、っていうのがメイン。

前日によく眠れなくっても本番の緊張感があるので、試験当日の半日くらいは大丈夫ですから、覚醒のリズムを整えておくことが大事。試験時間全部を使い切って合格点ちょうどを取るってこともあまりないので、解ける問題くらいは解き終えます。


唯一の正しい形はない

生活リズムに限らず、このブログでも「○○すると良い」ってことをたくさん書いています。やると良いこと、やってはいけないこと、巷にも溢れかえっていますね。

それを参考にして、取り入れられることを試すのは良いです。でも、そのせいでどんどん息苦しく、狭くなっていくのは避けて欲しいと思っています。

これまで普通に生きていたのに、新たに「正しいこと」が出来ると、それ以外が「正しくないこと」や「悪いこと」になってしまう。これでは、良いことを知るたびに居場所が狭くなり、選べる道が減っていきます。

より良い人間になりたいはずが、了見の狭い方向に突き進んで、自分や周囲に「悪いこと」のラベルを貼りまくるような状態に陥ると、苦しくなるだけ。過去も悪いことだらけになって、自己評価まで下げたり。

人に点数をつけること自体も難しいけど、例えば50点だった子が60点になっているなら2割も成長しているのに、100点を決めてしまうと、40点も足りない子って感じるのは、間違った方向への後押しです。

悪い行動を意識して攻撃するより、良いと思う時間を増やすこと。時間は限られているので、良いことが増えれば悪いことは勝手に減ります。「より良い」くらいに留めて、それ以外を否定する気持ちを自分の中で育てないこと。

もし誰にでも通じることがあるとすれば、頑張ったらその分の回復も必要ってこと。「今の自分も良いけど、もっと良くなりたい」って方向の欲は、子供だけでなく、親にとっても大事です。自分を責めて罰するのでなく、自分の欲張れる範囲で進むようにしてみてください。


塾のカリキュラムとか、範囲とか、課題とか。

模試でも入試でも、合格に満点が必要なことの方が珍しいです。トップを含めて一人も満点を取らないテストも多い。全員が何かしら間違うのが普通の競技なのに、間違いを責める、がっかりする、というのはピントがずれてます。

この範囲を仕上げようとか、今度のテストで満点目指そうとか、「可能なら」それ自体はとても良い目標設定だけど、取れなくて怒ったり残念がるのは本人がやれば良いこと。周りから石をぶつけるメリットはないです。

塾の課題、問題集、宿題、全部やること<出来ることを増やす方が大事。全部やって50点より、半分でも70点や80点を取る方がずっと良いと思いませんか?数字が合わないように見えるけど、実際に良くあること。100問を1回やるより、20問を出来るまで、多いものは5回以上も周回して仕上げた方が高得点になるなんてザラです。

しつこいほど書いてきたけど、出来ることを増やすのが大事。人と同じことをやるとか、過去問や模試で得点するとか、手段として有効に練られているから目指すのは良いけど、そこを間違っていると落としものが増えるだけ。

出来ることって言うのは、入試当日の答案で正解できること。合格点を超える分の正解を取れば良いだけ。知識が増えて、理解が深まり、良いことしかないのに、マイナスを数えていては成長を妨げます。

増えた分を数えて、それを束ねて、どうやってやっつけるかを考える。1週間、2週間、1ヶ月後には抜けることがあるから、落としたものをまた回収する。

焦っても怒っても、基本的に損しかないことは意識した方が良いです。得する行動が何か、損することは何か、ちゃんと向き合ってください。人の努力や成長を、正論とか理想から減点して責めるだけの、一番身近な邪魔者にならないように。


見直しは最後の手段

昔から「ミスをなくすには」といった相談がすごく多く、おそらくかなりの受験生の親が気になるポイントだと思うんですが、まず大前提として、そう簡単にミスは無くなりません。半分以下の時間で完答できるくらいのレベル差があれば良いですが、本命校って割とギリギリのラインで受験する子が多いので、時間も余らない全力でやることになりますね。

つまり、ゆっくり見直しをする時間自体がなかったりもするし、緊張感の中全力で解いていくので、落ち着くなんて心理になる子の方が珍しいくらいです。

なので、よく言われる「注意しろ」「落ち着け」「見直ししろ」などは、あまり効果ないです。手抜きには効きますけど、ほとんどの子は入試で手を抜いたりしませんし、その呪文が効くタイプならとっくに効いてミスが無くなっているはずです。

 

落としものを避ける

落としものに例えてお話するんですが、全力で40分とか45分走りながら落としたものを、5分や10分で自転車で戻りながら見つけるって難しいですよね。落とした場所を知っているとか、10分で走ったところを40分で歩きながら見ていくならまだしも、間違った箇所を知らない状態ではそう見つかりません。

採点後に「不正解」ってわかってる問題を見直せば、どこで何を間違ったか気づくのは容易ですけど、全部ちゃんとやってるつもりで、それを解いた時の数倍の速さで見直して、そうそう見つかるものじゃない。ほんの数分や数十分前のミスを、同じ人間が同じ思考ルート、しかも急いで辿っても、見落とす確率は高いです。

もちろん、1問でも見つかればラッキーなので、見直し自体は時間の許す限りやるべきです。ただ、アテになるものじゃないですね。拾えたらラッキーの部類。

なので、大事なのは解ける問題の総量を上げること+未然に防ぐことの意識です。落としもので言えば、ポケットに入れたら蓋をするとかチャック閉めるとかすれば、走っても落ちにくいですね。手に持てる数は限られています。解いてからチェックより、既にやったミスを検証して、「このタイプの問題に入る時の呪文」を持っておく。計算なのか、図形なのか、記号なのか、止め跳ねなのか。工事現場の指差し確認みたいなノリですね。

毎日やれば、ここからでも20回くらい、その日に解いた問題の反省ができます。これまでのノートや、模試の答案も使えますね。そこに出ている、もったいないミスについてのコメントを考え、自分に言い聞かせる回数を増やせれば、ミスは減ります。

そのコメント自体の有用性もありますが、それを挟むことによってテンションが一定の幅の中に入ってくる効果も大きい。思考の速度が緊張で100%とか、逆に不安で50%とかになっているところから、ちょうど良い70〜80%くらいの幅に入ってくると、ミス自体をしにくい状態になります。これが「落ち着け」のやり方ですね。漠然とした指示より、具体的な方が効きやすいです。

 

余分に持っておく

あとは、多少落としても合格するだけ持っておくこと。合格ラインが70点で、ギリギリ70点くらいしか手持ちがなければ1割落とすとアウトですけど、80点持っていれば1割落としても72点で合格しますね。簡単ではない、それこそ理想論みたいなものだけど、基本的にはこれが大事。

それに、ベストを叩き出してなんとか合格ってレベルだと、これまでの努力が足りてないか、合っていない可能性もあります。勉強なんで進学後にしっかりやれば問題ないですけど、受験期に劣る努力しかできなかったなら、入学後もそのまま足りないグループになる可能性は結構あります。素質云々より、そっちが心配ですね。

なので、「ミスっても合格」ってくらい、残り期間やれる全部を注ぎ込みましょう。持てるだけ持っていく。落とさないようにする仕組みを作る。見直しとかはその後の、ラッキー狙いって思いましょう。

見直しのルールは、言い方を変えて本文を読むこと、計算は別ルートか逆算をすること、などが有効です。先に書いたように、同じように本文を読み、同じルートで計算すると、同じ間違いのまま気付かないことは良くあります。

見直す時間に余裕があるなら、本文を別の言い方で言ってみたり、本文に区切り線を入れてもう一度図を書いたり、色々な計算の工夫から別の計算方法でやり直したり、という形でやれば、間違いを見つけられる率は上がります。

ただ、時間かかりますよね。なので、見直しには基本頼らないこと。落とす前の段階で釘をさす可能性を少しでも上げて試験会場に送り出してあげた方が良いです。


午後入試などの前にしておくと良いこと

問題のレベル差は、難問→易問ならどうってことはないけど、易問→難問だと調子が狂うことは良くあります。特に午前の方が与し易い入試になっている場合、問題文の雰囲気も含め、レベル調整をしておくことは割と大事。

オススメは、過去問の正解した問題と、不正解問題で見つけた注意事項などの見直し。思考をその学校の入試レベルに最適化しておくことが得点差を生む可能性は結構あるので、自分なりのセッティングを整えておくように働きかけてあげてください。

これは入試全般で共通ですが、過去問をやっていれば、出題形式のパターンがある程度ありますね。これに対応した一言を覚えるのもありです。

最初に計算、次は小問集合、比と速さ、図形、、、みたいな並びが多いとしたら、こういう姿の問題を見たらこう言え、ってセットを組む。計算問題なら「約数は?」とか、図形なら「まず条件の数字を全部入れる」とか「どこかに相似はない?」とか。

持っているものを全部出せれば合格点を取れる子は割といるはずなので、その中で勝つために、こういう調整をしっかりやって、その日の時点でベストの答案を出してこれるように取り組みましょう。

 

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