偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学受験偏差値54以下の学校と、高校受験偏差値61〜69の都立高校の進学実績比較

中学受験は難関校を目指して始める人も多く、そこに入れないと大失敗とか、○○以下は行かせる意味がない、なんて論調も見かけます。でも、同級生より難度の高い受験勉強に数年間取り組んできたことに、意味がないとは思えません。

難関上位校に限らず、中学受験〜私学コースでは一定の教育費をかけられる=平均的な層より教育への熱意が高い家庭が自動的に選別されるので、学校行事でも公立校と比べれば「お金をかけられない家庭」へ配慮する必要が減り、部活動や課外活動、留学などの選択肢も広がります。

また、進学実績は学校の生き残りに直結するため、とても熱心に関わってくれる学校も多く、夏期講習や勉強合宿、成績不振者への補習があったり、プログラミングや国際化に向けたカリキュラムも充実している学校が多数あります。持ち偏差値より少し下でも合格した学校に通うことは、通学が過酷でなければ十分に意味のある選択だと考えています。

もちろん、仕切り直して高校でトップ校を目指すのも魅力的な選択肢ですし、歩いて通えるメリットは大きいので、前向きな気持ちで公立中に進むのは良いことです。ただ、それほど偏差値が高くなくても、充実した中高生活を送れそうな学校はたくさんあって、進学実績もなかなかのもの。

私は偏差値55以上の学校なら自分次第でどこの大学でも行ける、って言い方をしますが、じゃあ54以下はどうなのってことで、今回は四谷大塚80偏差値54以下(A〜Bクラス)の進学校と、偏差値61〜69の都立高校の大学進学実績を比較してみました。

都立高校には併設型中高一貫の武蔵、両国、大泉、白鴎、富士を含み、附属中学の四谷大塚80偏差値(平均)は58〜63です。比較基準に、最近人気で高校募集もある広尾学園(63)も載せてあります。

合格数は現役既卒の合計で、進学実績の指標になりやすい以下の大学に絞りました。

旧帝一工
東京大、京都大、東北大、九州大、北海道大、大阪大、名古屋大、東工大、一橋大

早慶上基
早稲田大、慶應大、上智大、国際基督教大

GTMARCH
東京理科大学習院大、明治大、青山大、立教大、中央大、法政大

 

1クラスあたりの東京一工国公医合格数(中学受験校・高校受験校)

偏差値54以下の進学校と都立高校の進学実績比較

桐蔭学園中等や公文国際は、神奈川という立地もあってやや競争が低いだけで進学実績は難関上位校に匹敵するので、今回は偏差値50未満の学校に注目していきます。偏差値欄は四谷大塚80偏差値(複数入試・男女平均)で、都立高校は太字で高校偏差値(リセマム)を記載しています。88校分の一覧データは貼り付けるには大き過ぎるので、一部抜粋した画像をご覧ください。

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まず、国公立合格率では、穎明館(44)が29.5%と大健闘。桐光学園(45)は22.9%、佼成学園(41)が21.2%、成田高付(43)が20.3%、開智未来(45)が20.1%、光塩女子(45)が19.4%、西武学園文理(46)が19.2%。ほぼ5人に1人は国公立に進学する環境は悪くないですね。ここまでは、広尾学園(63)を上回る数字です。

他にも宝仙学園(45)が16.7%、狭山ヶ丘高付属(39)が16.3%と、高校偏差値65の都立三田などを上回る実績を挙げています。入学後に上1割を走れば国公立が見える学校は、湘南白百合(49)、順天(47)、昌平(42)、城北埼玉(46)、安田学園(47)、城西川越(43)、藤嶺学園藤沢(39)、京華(43)があります。

 

2021.6.3 以下のコメントを頂きました。

この記事の穎明館の2019年の実績
(東大1 京大1 東工大3 早慶上理85 GMARCH100)は、偏差値44の生徒ではありません。

2013年入学の生徒の偏差値は52~55でした。

また2015年までは偏差値51程度(今年の卒業生が入学した時まで)でしたが、2016年以降は偏差値が下がっています。
2015年 51→2017年 47 →2018年以降44

なので現在の偏差値の44と今年までの卒業生の実績を結びつけることは出来ないです。ご存知でしたら申し訳ありませんが、誤解を招きそうな内容でしたのでお知らせしました。

そうですね。この記事では54以下の学校という括りだったのであまり気にしていませんでしたが、確かに現時点の44という数字は誤解を招く可能性もあるように思いますので、引用させて頂きました。

個人的には、入学時Y45くらいの子が中高の学習にしっかり取り組めば、かなり高いところまで学力は伸びると考えていますが、全体で見れば入学時偏差値と進学実績にはある程度の相関性はあると思いますので、大事な補足ですね。ありがとうございます。

 

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次に対象私大合格率でも、穎明館(44)は134.2%、湘南白百合(49)が132.0%で、広尾学園(63)や都立併設型中高一貫の大泉(60)、白鴎(58)、富士(58)を上回る数字になっています。

例えば、偏差値63の広尾学園に入ったら大成功、偏差値44の穎明館だったら大失敗なんてイメージの人もいそうですが、そう悲観したものではありませんね。広尾学園は医学部に70名以上の合格者を出すなど、この表では出てこない実績も優れているので、この数字だけで同等の進学実績などと考えることは出来ませんが、中学偏差値だけで失望しなくても良さそうに思えます。

 

88校分の一覧データは下記よりご覧いただけます。

 

偏差値54以下の大学附属・系属校の進学実績

こちらは、大学の附属系属校50校分のデータです。実績上位には、偏差値50台の東京都市大付、都市大等々力、帝京、國學院久我山、女子校の大妻と共立、千葉の芝浦工大柏と専修大松戸など、難関上位校との併願候補に上がることも多い学校が並んでいます。

偏差値50未満で見ると、多摩大聖ヶ丘(37)、麗澤(47)、獨協(43)は国公立合格率10%を超える良好な実績を挙げています。

 

こうして見ても、中学受験の偏差値40台というのは、決して出来の悪い層ではないことがわかると思います。中学受験の段階ではまだ伸びなくても、東大や東工大早慶などの難関大学に進学する子はたくさんいるので、どこに進んでも意欲を持って、学業に励むことが大切です。

これからの文化祭や説明会も活用し、学校の魅力を十分に調べて、子供に合った雰囲気を持つ学校を探してあげてください。

 

おまけに、高校受験偏差値70台前半の学校の中学偏差値との比較表。

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偏差値は、その時点での集団の中での位置の目安としては有効ですが、将来の可能性を判定するものではありません。また、学校の合格判定偏差値は人気によって上下するもので、教育レベルや環境を示すランキングではありません。囚われ過ぎることなく、有効なツールとしてうまく使ってください。

 

2019.8.14 追記 面白いブックマークコメントを頂きました。

中学受験の偏差値と高校受験の偏差値を同列に見てもどうしようもないだろ。標本が違いすぎる。

念のため補足すると、偏差値の記載は共学・男子・女子などと同じ属性値の位置付けで、偏差値順に並べ替えたり、同列に見る目的ではありません。進学実績を見る際に、この学校の中学受験時の偏差値はこれ、高校ではこれ、という参照用です。

合格率自体も現役既卒混合な上に、大学の難易度も学部によって差があり、本文でも書いたように記載外にも難関大学・学部は多数あるので参考に過ぎませんが、割と巻き返せることは多いっていうひとつの目安に。

中学受験では中央値付近の偏差値40〜50台でも、高校受験だと上位1割の60台後半から70台になる学校があることや、大学進学実績で比較しても、高校偏差値60〜70くらいの学校と遜色ない学校はかなりあること、などを見て頂ければと思います。

何度か書いていることですが、中学受験は大学受験までの3分の1〜4分の1の途中チェックポイントに過ぎず、最終学歴は中高の努力次第で決まりますし、中高は大学受験の予備校でもない。仮に中学受験で第一志望や偏差値50に届かなくても、絶望や恥を感じたり、子供を責めたり蔑んだりすることなく、意欲を持って新しい生活を始められると良いと願っています。