偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

「自分から勉強する」素質のある子のケースを、自分の手柄にして語る絵空事を信じ込むと窮屈になる。

叱らない子育てで子供のやる気を伸ばしました!自分から受験勉強に真剣に取り組み、○○に合格!

こんなのは、実例であっても、ほとんどは錯誤。そりゃ難関上位校に合格した子は、頑張ったでしょう。親が虐め抜いてやらせてることも少ないでしょう。でも、それはもともと、そういう素質がある子です。その子の資質を伸ばせば、勉強を自分で進んでするようになる子を伸ばしただけ。どんな子でも受験勉強に自分から進んで取り組むように仕向け、しかも中学受験に確実に間に合わせる。そんな方法は、ありません。

そういう素質のある子はいます。そういう傾向を強める、そうでない傾向を弱める方法ならあるでしょう。でも、1〜2年の短期間で、受験勉強への取り組みを本人が自分からやるようにする、これは基本的には出来ないことだと考えた方が良い。

受験勉強に取り組む強い意志が、不可能を可能にした!

強い意志って。艱難辛苦汝を玉トスですかね。修行僧でも、煩悩断ちのためには山に籠る。煩悩を遠ざけることで、そこから脱する。意志の力なんて、そんなにアテにしない。一定の経験を積み、勝ってきたことのある大人ならまだしも、10歳やそこらの子に求めても無駄です。目的のためには、艱難を最小限にした方が良い。

経験と勝利や達成があって、その積み重ねで培われていくのが意志力です。経験より先にあるのはこだわりや執着で、これは個人の素質がモノを言う領域。読書や数学や工作や天体や歴史や生物、学問に通じる系統のマニア的素養のある子が、それを許容され、伸ばされた結果で勉強をやるならあり得るけど。目的があるから、頑張る!みたいなのは思春期以降でないとほぼ無理。脳も経験も未熟すぎるから。

意思とか自発ってやつに、あまり頼らない方が良い

いわゆる一流のビジネスマンや成功を収めた富裕層、トップアスリートでも、パーソナルトレーナーをつけることは珍しくありません。ライザップみたいな、トレーニングやダイエット系も同じ。もちろん、より効率的な正しい方法とか、オーバーワークやケガを防ぐなどの意味合いもありますが、特に専門外の分野で雇う場合には、最初の数週間で最も大切な要素がスイッチです。

この人が来ればトレーニングする。計画を考えることも、起動するエネルギーも必要ない。その時間にやってきて、その時間に、指示されたことをやる。この効果がとても大きい。何かを始めるのにはエネルギーがいるけど、そこを外的な力で自動化する。

それにお金を払う。その価値は、自分のスイッチになり、進捗を見守ってくれること。部活の仲間なんかも同じ。部活の時間にとりあえず集まり、練習するのが当たり前。苦しいことも、一緒に頑張る仲間もいる。だから出来る。

トップに行く人は、好きなことは延々と出来るような人が多い。一日中でも出来る。そういう人でも、内的な興味でなく、「やった方が良い」ことは、継続が難しい。ほとんどの能力や技術は継続が一番の基本で、そこが出来るなら、正解のあるものは手に入ったも同然。1日16時間くらいしかないのは、誰でも同じ。心や脳のエネルギーも限られている。だから、スイッチを外部委託する。

もちろん、既に経験を積み、優秀なレベルに達している人なら、計画に組み込み、その場では判断を挟まずに実行するスキルも一般的な人より高い。これも訓練の結果手に入る、スイッチを意志の力に頼らない技術、経験則であって、子供が最初から持ってるものじゃない。

親がやると良いのは、スイッチを入れるパーソナルトレーナー

意思が強いということを礼賛しがちな傾向もありますが、意思の力は決める時に使う。決めたら異論を挟まず、ただやる。これが自分の中でも、相手に対しても有効です。決めること、あとはやるだけというシンプルさ。受験も同じこと。やる気を出させるなんて絵空事を目指すからうまくいかない。やる気はあってもなくても良い。どっちにしろやれる仕組みを作ることに注力した方が良い。

親がやった方が良いのは、スイッチを入れ続けてあげる役割、認め続ける役割、やれば確実に目的に近づくことの提示。“なんでやらないの”じゃない。やらないから、スイッチを入れてあげる。スイッチを入れるのは自分の仕事だから、それまでは他のことやってろ、くらいでも良い。スイッチを何十回、何百回と入れ、報酬を与え。本人の努力と結果が結びつき、そのことに欲が出て、初めて自律的にスイッチが入ります。この順番を間違えてはダメ。

上手くいけば、スイッチを入れ続けているうちに、塾での周囲との競争意識、先生への見栄、テストでの成績の向上、あるいは志望校への憧れなんかで、スイッチの自動化に成功します。それまで根負けしないでスイッチを入れ続けるのが、優秀なパーソナルトレーナー。その子に合う、確実に伸びるルートを提示できるのが、優秀なコンサル。ついでに、子供の状態を良く観察して見極める、かかりつけの医師、カウンセラーとか。このあたりの役割を親が担えると、強いですね。

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これからもちょくちょく、サポートした子の親御さんとお話ししたことや、子供にした話なんかを書いていく予定です。中学受験も、親の不安につけ込み、煽るような側面もあるので、気に入らないと感じてることに対する異論なんかも含めて。より個人的な趣味趣向が出るので、あまり参考にならない方もいるかと思いますが、ご笑読頂ければと思います。こんなことはどう思う?みたいな質問、ご相談なんかもお気軽にお問い合わせからお寄せください。