偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

6年生のこの時期は、情報収集や戦略に大事な局面。本気で多くの学校の検討を。(6年生の志望校選び 4/5)

ここまで書いてきたように、子供を満足いく結果に導く戦略を練るためにも、この時期に情報収集しておくことは本当に大事です。現在の偏差値から、どのゾーンで志望校を厚めに探すかについて書いてみます。

四谷偏差値45未満(A)の場合

4〜5年からやっていて現時点で45未満なら、やり方を変えて本人に火がつかないと変わりません。知能的な問題ではなく、何か未成熟な部分があって勉強に集中できない場合、無理に圧をかけるよりは相応の学校を手広く受けるか、公立でも良いという気楽な雰囲気を出すことも大事。進学実績が高く面倒見の良い学校や、大学附属校など、幅広い選択肢を考えましょう。

中学受験にフォーカスしていると、どうしても「あまり成績が良くない」という意識になりがちなゾーンですが、この帯の附属校にもそれぞれ魅力はあります。ただ、上位校に比べると、指導が行き届かないと頑張らなかったりハメを外す子が多いので、校則や生活指導が厳しかったりします。校風は十分に調べ、納得できる学校を選んでください。

特にスポーツや芸能面に素質のある子は、受験で部活などを中断しなくて良い大学の附属校は良い選択肢になります。精神的にガツガツしたところの見えない子も、受験でひと頑張りして日東駒専成成明学に進める環境を手にいれることは、安心感の意味ではかなり大きいです。校風さえ合えば、のんびりしたところがある子や勉強以外の方面に素質のある子こそ、附属校はオススメの選択肢ですね。

例えば日大豊山。ここは校則厳し目の男子校で、偏差値は38〜40くらいですが、日大に約8割のほか、上智理科大学習院、明治、立教、中央、法政などに指定校推薦があり、早稲田や青学にも現役で進学しています。明治学院キリスト教系の共学で、偏差値は39〜44。上位8割まで推薦資格のある明治学院大に109名のほか、上智ICU学習院、青学、中央、理科大、法政などに指定校推薦があり、国公立に6名、早慶ICUに7名、GTMARCHに69名。東海大高輪台は偏差値36で共学。ここは9割が東海大進学の、純然たる付属校。早慶GMARCH上位学部と並ぶ難関の東海大医学部にも12名が進学。吹奏楽部が有名で、運動部も強い。SSHでアクセスも良く、横浜や川崎からも通っている子は結構います。

四谷偏差値45〜55くらい(B)の場合

このゾーンの子は、親から見れば頼りなくても、最低限の努力はしています。四谷の偏差値50は、小学校のテストでは楽に満点を取る子が、学校の勉強よりは真面目にテキストをこなして取るもので、ただのサボりに取れる点数ではないです。ごく一部の突出した子以外は、受験生らしい気持ちは持っているので、算国に不利がなければ、秋以降の理社の詰め込みと志望校対策で一発逆転も狙えます。

伸び悩みの原因が、勉強に対するつまらなさや不安感、親からの圧力であるケースが多いのもこのゾーン。つまり、なんでやらないの、早くしなさい、といった意欲を削ぐだけの声かけや、成績が悪いとがっかりした態度など、マイナス要因を取り除くと伸びる。秋以降は余裕がありません。今の時期に、元気に取り組む姿勢を育てたり、自信を取り戻させてあげること、親子の良い流れを作ることが、とても大事です。

学習内容的には、ここから夏までに、5年上下の穴を埋めることに全力を注ぎましょう。夏までは算数と語彙力だけで良いくらいに割り切り、やることをシンプルにして仕上げないと、秋以降の逆転は困難です。

仮に逆転というほど伸びなくても、同じ偏差値帯の学校を手厚く受けて合格を取るには、算数でしっかり得点できる+国語でポカをしない力は必須です。算国に穴があると、コケ出したら止まりません。このB偏差値帯を死守できるか、その下のAになるかで、選べる進学先の幅は大きく変わってきます。

最終的な偏差値が50前後から逆転を狙えるのは、C下、偏差値55〜58くらいの学校まで。このゾーンに1〜2回挑戦するのは良いでしょう。後半2〜3回が偏差値58を超えてきたら、厚めに挑戦する学校をC下に変更すれば良いです。

本命の志望校は同じBの帯、45〜54で探すのがオススメ。特に持ち偏差値が46〜48くらいだと、同じゾーンで学校を探すのは勇気がいるかも知れませんが、そこは数でカバー。もちろん下の偏差値帯の学校を探すのも良いですが、進学後の周囲の雰囲気を考えると、同じゾーンで手厚く受ける意味がとても高いです。たくさん受けるのは大変だけど、10校も受ければどこかは当たるくらいの伝え方で、あらかじめ手広く受けるイメージも持たせつつ、通える範囲からしっかりと志望校を探してあげてください。舐めてかからず、本気で探せば良い学校がきっとあります。

四谷偏差値55以上(C〜S)の場合

「あんまりやってない」とか、「そんなに本気じゃない」のレベル自体が、A〜BとC〜Sでは隔絶しているくらいの差があります。だからこそ、確実に合格が欲しいとしても、偏差値63以上=Sクラスの子なら、C以上の偏差値55以上から探す方が合います。逆に言えば、偏差値70前後でSの子が偏差値55くらいの学校に行っても、ひどくがっかりする環境になる可能性は低いです。

この帯の学校には、数人はSからの残念組がいて、その多くはトップを走って大学合格実績に一役買います。少なくとも、公立に行くよりはこの学校でよかったと思えるくらいには、周囲の子の大学受験や学習に対する意識もしっかりしている可能性が高く、学習意欲をなくさなければ学校側からも手厚いフォローが望めます。

ギリギリC、偏差値55くらいの子からすると、偏差値52くらいの学校はあまり余裕のない偏差値帯ですが、だからこそ過去問をしっかり分析し、相性の良い学校を選んでおきましょう。受けられる回数も多く確保し、受かるまで機会を与えてあげること。B下の46まで広く見ておくことのは良いことですが、52以上で受ける学校数を分厚くする方が良いです。

入試の内容と合格点は、63以上のS、59〜62のC上、55〜58のC下でそれぞれ様相が変わります。SとC上の帯では、偏差値での番狂わせがかなり起きやすいのに対し、C下やBの帯では、穴がない子はかなり偏差値通りに合格を取ります。以前の記事でも書きましたが、偏差値58くらいまでは5年上下が万全なら取れる数字で、これは入試にもほぼ同じことが言えます。つまり、傾向が合うところならば実力通りに高得点が取りやすい。

ですから、得意教科で加点して合計偏差値が55以上でも、算数が50くらいの場合は、特に基礎を完璧に仕上げることが大事。熱が出ていても寝不足でも、このレベルなら取れる!というところまで仕上げることに価値があります。過去問の傾向や配点もよく見て、合う学校を選んでください。実力的には解ける問題でも、配点の不利があったり、出題形式に戸惑ったり、プレッシャーによって自滅すれば危なくなるので、ここの戦略や準備はとても大事です。

まず、通ってがっかりする可能性が低い、それでいて地力できっちり得点を取りやすい偏差値52〜58くらいの学校をいかに調べ、しっかり準備するかが重要。この帯で通える1月校や午後入試校の合格をきっちり押さえるのがベスト。それを押さえたら、子供の憧れなどを踏まえながら、より高偏差値の学校に挑戦すれば良いと思います。