偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

子供のレベルで適切な予定は違う。ただマス目を埋める計画表はマイナスかも。

私がサポートを始める時、最初は1日2〜3時間、週15〜20時間の勉強を本気で出来るようにするところに目標を置きます。これは、学校からの帰宅後〜就寝までの時間の半分くらい、学校で経験している授業時間の半分でもあります。ここから最終的には、志望校や残り期間によって週35〜40時間まで増やすこともあります。

これは中学受験に限りませんが、効率化をやる際は状況の把握から入ります。何にどのくらい時間を使っていて、効率がどのくらいなのか。ここから、改善点を絞り込んでいきます。本人の現時点でのベストの効率が出ているかどうかも大事なポイント。

ある6年生と熱心なご両親の話

6年生になってから見ることになった子で、親から週40時間目標の学習予定表を渡されていた子がいました。お父さんもお母さんも熱心で、一生懸命テスト結果も分析して、間違った問題のプリントもして、志望校のリストアップ、週間計画表、年間予定表も作って。

でも、学習内容と集中のレベルを見ると、20時間以上は座っているけど、ベストパフォーマンスに換算すると正味12時間分くらい。親の描く3割しか出来ていないわけですね。もちろん成績は低迷、家にいる時間の長い母親とは頻繁にバトル。

熱心なのに残念ですが、これは完全に親の熱意が空回り、空振りしていると伝えました。理由は、全く子供の「勉強に取り組む実力」と合っていないから。登山なら遭難しますと。ただ絵に描いた餅の話をして、子供の口からわかったという答えを引き出して、やっていないことを責め、成績は伸びない。これを続けていたら、中学受験も失敗に終わる可能性が増します。

学習には、それ自体に訓練が必要

単に1時間でこれだけ出来る、ならば10時間やればこれだけ進み、30時間でこれだけ出来る。これは誤った考え方です。なぜなら、学力には知識や応用力だけでなく、それをこなす集中力と持続力、意欲も含むから。

小学校のテストでは満点、トップクラス。やれば出来る賢い子。だから夢を見てしまう。その気持ちは良いです。子供の可能性は無限大。でも、険しい山に登らせるなら、ちゃんと体力と装備と技術、ルートの見極めをしないといけない。30分出来ることを、30時間出来るようになるには、そのための訓練が必要です。

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いきなり学習時間を増やせる子の条件

本人に意欲があり、35〜40時間集中した経験もあり、他の誘惑がないなら出来るでしょう。例えばこれまで読書や工作、オタク的な趣味などに朝から晩まで時間をかけていた子が、自分から受験に興味を持ち、全部そっちに突っ込む。こういう子ならいけます。

登山家が山を登る時、地元のシェルパを雇う。登山家が酸素ボンベを使うようなところで、酸素も使わず重い荷を上げてしまう。登山はしていなくても、日常でその能力がついているパターンですね。

読書や工作、他の分野でも高い集中や持続力を要することに取り組んできた子には、これと同じことが言えます。入力と集中に特化して鍛えているから、基礎体力がある。出来ない子の意欲が足りないのではなく、基礎体力に大きな差があるんですね。

学力の停滞期を抜け出すために

いろんなことに興味を持ち、友達と遊んだり、ゲームをしたり、テレビを見たり、という風に過ごしてきた普通の小学生なら、今からどこまで登れるようになるか。取らぬ狸の皮算用、絵に描いた餅では仕方ない。まずは今やれている時間の効率をあげる。少しづつ時間も増やしていく。どんな学習法、どんな参考書、どんな塾より、肝心なのは本気でやれる時間を増やしていくこと。

負荷の高い運動をすることと、集中力の高い学習をすることはほぼ同じ。それが出来ること自体にも訓練が必要で、休息も必要。とにかく勉強することで持続力や集中力がつく、というのも方法の一つですが、それは同伴者がいればの話。もし、子供にいきなりありったけの時間を学習させたいなら、一緒に、それも楽しくやらせる人がいないと無理です。無理なことをいくら強いても、不快な思いと無駄な時間が増えるだけ。

20時間座っていて、正味12時間の子。この成績を上げるには、20時間の質をまずは高める。次に、20時間の枠を24時間にする。これで、実質的には倍の学習量になります。今の偏差値が40台なら、これでまずは50台。50台の子なら、60が見えてきます。

この手応えを経験させること。意味のある、効果のある学習をすると、成績が上がるという実感。停滞している子の成績をあげるには、これが一番大事と言っても良いと思います。可処分時間をみっちり学習計画で埋めるのは、それが出来てから。そうでないと、むしろ首を絞めることになりかねません。

また続きを書きます。