偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

中学入試過去問を利用して対策と穴埋めの意義を教える

入試本番で、どんな問題が出るかはわかりませんね。傾向や難度が変わることもありますし、どんな問題にしても全部出来る必要はない。勝ち抜くためには、(1)対策のハマった問題で確実に加点する、(2)対策外でも他の受験生が取るレベルの問題は落とさない、の2つが重要です。

6年の夏休みまでにやっておきたいことでも触れたように、地力の向上と合わせて全範囲を一定レベルに仕上げておくことは有効ですが、この時期は6年になって難易度の上がった塾でのテストと宿題、更に最高学年としての学校行事などもあって、仕上げまでは気持ちが入らなくなるケースが結構あります。

ある程度は出来ることを、短時間で意識的に回して仕上げる=学校の休み時間や塾の往復の電車、トイレの壁に貼って読む、こういう親の目の届かない時間を有効に使う姿勢になると効率がとても良くなるので、少し刺激を与える工夫をします。

過去問を利用した刺激

目安は志望校の偏差値に届いていること。手間もかかるので誰にでもお勧め出来る方法ではありませんが、ある程度の学力と学習習慣のある子には効果が期待できます。

偏差値60以上あっても、この時点で対策なしに過去問をやらせると偏差値50台の問題で苦戦するのが普通で、特に苦手な傾向なら持ち偏差値より下の学校でも合格点に届くのは難しいでしょう。

まず、これまでの週テストや模試の結果から得意分野を絞り込み、志望校と近い偏差値の学校の過去問から、得意分野と被る範囲の多いもの=合格点を取らせることを狙うものと、少ないもの=合格点を取らせないことを狙うものを選びます。

四谷大塚 中学入試過去問データベースでは、登録すれば有名校難関校の過去問をかなりの数ダウンロード可能なので、活用しましょう。市販の問題集と違い解説はありませんが、こういうざっくりした用途には使いやすいと思います。

志望校の偏差値が55の場合、偏差値57〜58の学校で合格点を取り、偏差値50〜52の学校で届かない経験をさせるくらいが理想的です。

問題の選択を終えたら期日を決めて過去問をやることを伝え、1〜2週間かけて点を取らせる方の対策(ほぼチート)をします。同じ傾向の問題を入試問題集から選んだり、必要に応じて自作して、想定得点が合格平均点以上になるように調整しましょう。

そして、なるべく同じ日の午前に未対策、午後に対策済の過去問をテスト。午前中に落ちた感触の経験、午後に挽回する経験をさせるわけですね。これを経験することで、「どんな問題が出るか」と「対策できているか」で天地の差がつくことを教えます。

終わってから伝えること

“しっかり対策がハマれば○○中だって受かるし、弱いところが出ると△△中でも落ちるのがわかったね。どの分野でどのレベルの問題が出るかはわからないし、傾向に合わせて強化することは出来るけど、それだけに頼ると傾向が変わったら危ない。

傾向が変われば実力勝負になる。出来ることを増やせば合格する可能性が上がるし、増やさないと落ちる可能性が上がる。自分に出来ない問題は他の子にも出来ないと思えれば、どんな問題が出ても怖くない。秋以降は志望校対策以外に使える時間は少なくなるから、夏までにもう一周仕上げておこう。”

こんな感じですね。私の場合、スポーツや音楽などの習い事はなるべく継続し、時には遊びの予定も入れることを勧めているので、暇な時に読み直す習慣などの隙間の活用はとても大事です。

これが出来るか出来ないかで、息抜きの時間の精神的な取りやすさも違ってくるので、一定のレベルに達している方は部分的にでも経験させる試みをしてみてはいかがでしょうか。