偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

子供の叱り方・関わり方

中学受験のサポートをしていると、割と多くのご家庭で「叱り方」のご相談になります。お子さんのタイプやお母さんとの関係性によって違いますが、同じ話で時間ばかりかかる、ちっとも改善されない、叱りすぎて後悔、といったお悩みの場合にお話する方法を書いてみました。必要のない方はパスで。

自分の姿を見る

まず、自分の姿を録画することを勧めます。家事をしているところ、話しかける態度、声のトーン。それが見せたい姿かどうか、どうしてこのように振舞っているのか、それは良い印象を与え、信頼されるのか、観察してください。

自分の姿は、子供に最も身近で、影響を与えられる手段です。空気が良くなる、元気が出る、安心できる、熱意を持てる、そういう影響を与えられるのは、どんな姿か。

人に良い変化を与えたいなら、まず自分の姿を見せてください。良い姿勢、優しい所作、穏やかで、思いやりのある態度で話す。これは全て、神経を使わないと出来ないことです。隅々まで神経が行き届けば、美しく振舞うこともできます。

仕事や家事で疲れている、家でくらい気を抜きたい。よ〜くわかります。でも、子供の見る姿はそれです。見たものの真似をし、一緒にいる人の影響を受けるのが人間で、特にほとんどの子供ではそれが顕著です。どんな人の傍に居させたいのか想像しましょう。

心の立ち位置を決める

人を傷つけたり、自分が危険になるような悪いことは(感情を込めて)叱っても良いでしょうが、それ以外はこうすると良いという導きです。受験という目標を突破する。物事の基本になる学力をつける。決めたことを守る。その先の中学高校生活、更にその先の大学や将来。子供のプライド、親の見栄もあるでしょう。

監督や教師のような立ち位置をイメージしてしまう方も多いですが、ほとんどの方は中学受験や個人の成果をあげるコーチの経験がありません。中学受験は親子で多くて数回、一人なら初体験が最後。監督や教師の立場で関わるには経験不足ですし、受験に指揮官や上官は不要です。
中学受験は親子で闘うチームスポーツで、親は先輩部員や主将くらいの立ち位置の方が適しています。一緒に、先頭に立って努力する姿勢を見せる。それも無理なら、マネージャーや応援団。教えるなら、トレーニングを一緒にやるパーソナルトレーナー
特に小学生の段階では、これが有効です。時間的に難しい場合は、塾の講師にメンターになってもらい、自分は応援に回る。先生に言われたことをやり遂げられるように、一緒に頑張ろう。こういう立ち位置を自分の中に作りましょう。

スピーチを作る

話して伝えるべきことがあるとしても、5分以上の話は無駄です。受け身な状態で楽しくもない話が入る量には限りがありますから、仮に1時間話しても、最初と最後しか覚えていません。

基本3分でどう話すべきか、スピーチを作りましょう。普通に話すより少しゆっくりの800文字が目安で、もっと短い100〜200文字でも良いです。ちなみに、この記事中の前2つの本文が約400文字と500文字。話すならどちらか1つ分で良いくらいです。

叱るケースは決まってきますね。帰ってきてダラダラしている、片付けをしない、勉強を始めない、すぐにサボる、、、などなど。そのケースごとに、どう伝えれば良いのか、自分の気持ち、子供のタイプを考えて、良いスピーチを作りましょう。

内容の一貫性を確認し、人に聞かれても良いか考えてください。親兄弟、友人、知人、同僚や上司。どんな内容か、どんな口調が良いのか。子供のどういう行動に対して、何をして欲しいのか。自分は、子供は、どうすれば良いのか。こういうことがあったら、こう話す。

自分のエゴだと自覚する

指導は、相手の人生に影響を与えようとすることです。良い影響だと信じられなくては、効果も価値もありません。信念を持って、相手の人生に干渉することです。

エゴがないのは人間じゃありません。自分の子が可愛い。誰より可愛い。笑っていてほしい。元気でいて欲しい。幸せになって欲しい。自分の欲です。でも、そういう欲を持ってくれる繋がりは、人の幸せな基盤のひとつです。

自分中心にものを見て、自分の経験と価値観で良し悪しを判断することしか出来ないのですから、子供の将来にプラスと信じられる、自分に出来る最高の形で伝えましょう。

話すことはいつも同じ

仕上がったら、同じことを同じトーンで100回言うことに決めます。伝え続けることを決めて、それを守るだけ。人の考えは伝わらないものです。本人がある日勝手にわかるまで、正しい方向に力を加え続ける。受験までに、何割伝わるか。3割で上出来、5割ならすごい!偉業です。

ほんの数回で内容を変えてはいけませんし、別の話につなげてもいけません。1回1テーマ3分。「何度も同じ話で嫌でも、これは大事だから、何度でも言うよ」くらいの心でちょうど良いです。あるべき姿に矯正するのではなく、育つ方向に力を加える。自分の言葉は、雨だれです。いちいち反省の色や謝罪の態度を求めなくても、同じ場所に、正確にヒットさせ続ければ、いずれ石をも穿ちます。

セルフイメージを作る

指導の際には、多少のことではビクともしない大きな岩や木のイメージを勧めますが、お母さんの場合はもう少し親しみのある方が好まれることが多いです。メイちゃんがお腹で跳ねてもビクともしないトトロや、子猫がじゃれついても動じない大きな犬。よるくまの手を引く男の子のイメージの人もいました。イメージをきっちり作って、それを演じてください。

いつも同じタイミング、同じ内容。トトロになって、練り上げたスピーチを100回。自分の感情で怒る、叱るという意識から、この場面ではこうすると良いと教える、出来るようになるまで付き合う意識に近づけていく。

人には仮面をつけ変える能力があります。抑えられないから、怒ってしまう。と言いつつ、電話がかかってくるとコロッと声色も変えて出られたりするものです。本当は変えられるけど、家族や同僚や友人に甘えているだけですね。仮面は窮屈で、ちょっと頑張らないといけないから。

甘える側ならそれも良いですが、教え導く対象に甘えるのは見当違いですし、自分よりずっと幼い子供に、同情や理解を懇願するのも無理がある。きっちり演じ切りましょう。演じることは嘘や虚像ではありません。役割に合った、正しい振る舞いをする自分自身、なりたい自分をなぞることです。

中学受験に限らず、親なんてやっと経験を積んだら終わりで大変なんですが、出来ないことを数える必要なんかありません。自省しながら子供をよく見て、一番いいと思うことをやっていけば、それが自分にできる最高です。 

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