偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

地力の向上(3-1)記憶の仕組み

社会と理科(生物地学)の地力アップのお話の前に、記憶についての考え方を少しお話ししておきます。

ワーキングメモリ(作業記憶)は、シンプルに一度に覚えておける短期記憶という捉え方をしている場合と、長期記憶の活性化されている部分という考え方があります。通常は、5〜9桁の数字を記憶できる、3〜7個の単語を記憶できる、複数の指示を覚えておく、などの能力とされています。

このワーキングメモリは、最近の研究では訓練次第で伸びると考えられています。これと、忘却曲線(数十分でかなり忘れ、翌日には大半を忘れている)の考え方を組み合わせることで、精読力や記憶の定着力を上げることが出来ると考えています。

記憶は時間と共に不活性化していく

f:id:aswg-tutor:20190427060515j:plain

時間の経過による記憶の不活性化と注意の焦点

この形は、忘却曲線と組み合わせて解釈すると、時間の経過と共に不活性化していく記憶(思い出せない状態)も、繰り返しによって活性化を保つ(思い出しやすい状態)ことも可能で、参照しやすい長期記憶として定着する、という考え方ができます。

記憶の仕方には音、視覚、繋がりがある

f:id:aswg-tutor:20190427060600j:plain

記憶の種類

こちらは記憶のパターンによる分類です。音や視覚によって記憶するほか、関連付けによってもワーキングメモリの参照に使える=記憶の方法を強化することで補えるという考え方も出来ます。語呂合わせをしたり、図や色文字やイラストを活用したり、それらを関連付けて話したりすることが記憶の強化に繋がります。

記憶のグループ化で一度に覚えられる量を増やす

f:id:aswg-tutor:20190427060737j:plain

グループ化訓練によるチャンクの伸長

こちらは、多くの桁の数を一度に覚えられるような訓練をしている場合の記憶容量の使い方で、ファイルの圧縮のようなことが脳内で行われているという考えです。これは訓練で伸びることがはっきりしているので、当然これも活用できます。

読書は記憶の参照訓練としても有効

単に記憶を受け取って頭に入れるのではなく、より能動的に自分の記憶を参照して引っ張り出す訓練が有効だと考えています。読書などでは7つ以上の長期記憶に入れられたチャンクを参照しながら結合させていくと考えられています。読書量の特に多い人が、会話や映画などでも一度で入る情報量が多くなる傾向があるのは、この脳内で繰り返し参照する訓練を積んでいると考えられます。

次の記事で、暗記系の地力を上げるための方法を紹介します。この方法は、ワーキングメモリーが低いと評価された子にも一定の効果がありました。単に私の経験上の数人に過ぎず、サンプル数は極めて少ないのであまり確定的なことは言えませんが、少なくとも「暗記・記憶が弱い」と言っている子に有効な可能性が高いと考えています。