偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

6年の夏休みまでにやっておきたいこと

学習能力を地力・暗記・テクニックの3つに分けて考えると、基本的には5年生〜6年生の夏前までは暗記とテクニックよりも、地力の向上に力を入れて指導します。特に6年生の場合、夏は講習や合宿と基礎の総ざらえで忙しく、秋以降は志望校に合わせた対策に時間を取られるので、4月末〜7月末までの3ヶ月は、地力を上げる最後のチャンスと言えます。

もちろん、学習の進度や現在の偏差値によっては、少しでも早く上位クラスに押し込んだ方が良いケースもあるので、その場合は暗記やテクニックを優先することもあります。6年生の場合、ざっくり分けると以下のような感じです。


4教科とも志望校の80%偏差値をクリアしている場合

地力アップと、効率化(短時間化)を中心にします。最後の追い込みや志望校合格後、学習能力5×時間10で頑張ってきた子は、学習能力10×時間5で同じレベルに到達した子と競うことになります。知能差はある程度仕方ないとしても、学習能力には効率や集中など後天的に磨ける要素も多く、努力を出来る子は、集中力や思考力、表現力を磨くトレーニングに取り組めば、地力も伸び易いです。

算国で不足、理社はクリアしている場合

地力の強化が最も重要なグループです。算国が弱い場合、ここから受験までの間に更に差が開き、理社での優位性は削られ、相対的に順位は落ちていく可能性があります。学習する習慣や最低限の記憶力はあるので、頭と時間の使い方を学んで夏以降に伸びる土台を作ります。

算国はクリア、理社が不足している場合

夏の合宿や講習、秋以降の志望校別など、成績で振り分けられるクラスは上に入る方が有利なので、理社の暗記+テクニックを中心に、算数の計算や漢字の取りこぼしも含め少しでも得点を多く取ることを目指します。算数で穴がないかのチェックも一通りやっておきます。

3〜4教科で不足している場合

学習時間自体の不足が考えられるので、根本的な学習への取り組みを改善することも意識しながら、算数の基礎問題、国語の解き方、理社の暗記+テクニックを詰め込みます。特に偏差値50前後までの場合、夏前に一旦受験が来るくらいの圧をかけてキャパをあげておかないと、追いつくことはほぼ出来ません。人間は自分の経験がモノサシになるので、例えば同じ5時間の努力でも、最大3時間の子にとっての5時間と、最大10時間の経験がある子にとっての5時間では、感じる厳しさが違ってきます。夏を有効に使うためにも、一度本気になる経験をさせてあげるように組みます。


ここで言う地力の内容は、精読する力、想像する力、説明する力、再構成する力、記述する力などです。精読には語彙力や記憶力も必要ですし、完全に他の2つと分離独立しているわけではありませんが、学習能力自体の部分だと考えて下さい。次回から国語、算数と理科(物理化学)、社会と理科(生物地学)の3つに分けてお話しする予定です。