偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

5つのポイント:学習計画の立て方(2)認知特性診断と活用

これまで関わった子の親御さんには「好きなことには集中するけど、勉強になると集中が続かない」「やると約束してもすぐ破る」なんてお悩みが珍しくありませんでしたが、興味や気分に関わらず、決めたことを継続的に集中し続ける力は、優秀な大人にしか求められないことだと考えています。出来る子はかなり特殊で、偏りや波がある方が普通です。

ですから、基本的に子供は「約束したくらいで努力や集中は続かないもの」と考え、動機付けと取り組み方を理解させ、環境を整え、寄り添うことが大事です。

人にはそれぞれ特性があり、静かな方が良いとか、片付いている方が良いなどの環境、何から始めると良いか、どのくらい持続するかなどの集中力のレベルが異なります。環境については、様子を見ながら最善の形を探っていくわけですが、認知特性を考慮するとベストに近いところから始めやすくなります。

認知特性の診断方法

認知タイプは、以下のページのエクセルシートを使って、簡易的に無料診断できます。

視覚・言語・聴覚の各2タイプ、合計で6タイプの数値が出ますが、ここで注意するのは特に高低差です。全ての数値が20〜30台で揃う場合は、世にある学習法のどれを使っても、それなりの結果を得やすいタイプと言えるでしょう。

15を下回る数値のものがあれば、苦手とする分野です。特に、視覚・言語・聴覚のいずれかが2つ揃って下回る場合、他の子には有効な学習法がその子にとっては効率が悪く苦痛でしかない、という可能性が高くなります。

また、40台の高い数値がある場合、それに影響を受けやすいとも言えます。例えば視覚優位な子は、視覚を活用した学習法をベースに組み立てると有効なだけでなく、目から余計な情報が入ると集中力が低下しやすい(気が散りやすい)ということでもあるので、視界に他のものが入らない環境を整えることが大事になってきます。

認知タイプごとの特徴

この認知特性テストを作った本田真美医師は幾つか本も書かれているので、詳しくはそちらをお読み頂くと良いと思いますが、ざっくり傾向を書いておきます。

視覚が強い…絵や画像、動画などの視覚を使った方法での記憶が強い。絵やチャートを書いたり、色分けの有効度が高い。散らかっているほどでなくても、例えば窓や室内の壁などの視覚情報も気が散る原因になりやすい。

言語が強い…ストーリーや語呂合わせなど、文字や言葉の情報を使って記憶する方法が有利。受験学習には比較的有利なタイプ。言われた言葉のイメージに敏感なので、ポジティブな声かけが大事。

聴覚が強い…音で聞き、声に出す方法が適している。黙読よりは音読。録音したものを繰り返し聴いたり、解説音声を聴く→すぐ同じことを口にする、といった方法での効率が高い。音に敏感なので、騒がしいところや音楽、人の声で気が散りやすい。

自分と子供の違いを知る

この診断は、なるべく親も試してください。自分のタイプと、お子さんのタイプが揃っている場合は、自分の子供時代の感覚や経験を振り返ることで理解しやすい部分があると思いますが、タイプ差が大きい場合は、自分に出来たことが子供には出来ず、自分には気にならなかったことが子供にはすごく気になる、というようなギャップが生じやすくなります。

このことを把握して、子供の特性に寄り添うことを意識するだけで、かなり強い味方になることも出来ます。特に低い数値が出た場合、専門家に相談するのはアリですが、自己流やネットで得た知識程度で、これを「直させる」ことを目的とするのはとても危険なので、やめたほうが良いです。

基本的に、知能検査や認知特性診断は「そういう傾向がある」ということを受け入れ、そのままの形でどう生きていくか、という使い方をするものです。高い数値のものをどう活かすか、過敏になる部分をどうコントロールするか、低い数値の分野で受ける不都合をどう回避したり、どうやって他の能力で補うか、という考え方で使うようにしてください。