偏差値60の壁なんてない

中学受験のサポート歴20年以上の経験から、心構えや考え方を公開します。

5つのポイント:学習計画の立て方(1)集中力について

 

子供の能力を把握し、目標までの距離を見積もった後は、学習計画を立てていきます。学習計画は親や指導者側がある程度主導しますが、子供なりの理解や納得も大事です。そして、学習効果を高めるためには反復と集中力の活用が不可欠なので、次のような話を子供にします。

 


 

同じ点数を取るために、1時間か2時間かけるなら1時間の方が良いし、同じ1時間をかけるなら100点と60点なら100点が良いよね。そのためには、自分の集中力の良いところを使うことと、繰り返しが大事。

1回やっただけでは完璧に覚えてることが少ないのは、もう分かっているよね。授業やテキストを1回やっても、1週間もすればかなり忘れる。忘れないためには反復が大事だし、新しいことを理解したり、難しい問題を解いたりするには、特に集中が大事。
集中することを、根性や気合いでどうにかなると考える人もいるけど、よほどガッチリ条件が噛み合わない限り続かない。一日だけ頑張れば良いならそれもアリだけど、何ヶ月、何年という期間で成功するには、そういうものだけに頼るのは難しい。

集中するために、やる気が出てから始めるというのは間違い。こういう人の集中力は、良くてこんな感じになる。最高の集中を10として、半分を境に良い状態と悪い状態、山のかたちが集中力の度合いで、色付きの面積が作業量だと考えてね。

f:id:aswg-tutor:20190419235037j:plain

集中力:ノーマルな状態

この形だと、始めてからピークが来るまでに時間がかかって、ピークも一度きり。次に調子が出て来る頃には1時間が終わってしまう。つまり、しっかり身につく状態は1時間座っていてもほんの15分くらい。でもこの良い状態の時間は、やる気に関係なく、すぐに始める訓練をすることで、必ず増やすことが出来る。

f:id:aswg-tutor:20190419235116j:plain

集中力:すぐ始める訓練をした場合

こういう形で、1時間に3回くらいピークのある形が一番身につきやすい。ピーク自体は最高の8割くらいだけど、学習をこなせる量(色付きの部分の面積)も増えているし、身につく部分が時間にして2倍、面積では3倍くらいあるね。比べるとこうなる。

f:id:aswg-tutor:20190419235251j:plain

集中力:訓練した場合との比較

多くの人は、自分の10割をベストだと思っていて、その最高を出せないと意味がないと感じる人もいるけど、この10割っていうのは100m走みたいなもので、長時間続けることは出来ないし、そんなに簡単に毎日出せるものでもない。もちろん練習次第で出せるようになるけど、全開に近い集中をするパターンだと、1時間に2回くらいが限度になる。

f:id:aswg-tutor:20190419235328j:plain

集中力:全開を目指す場合

こんな感じで、頑張った分、下降も大きくなる。すごく難しい問題に取り組むときなどは、こっちの集中を使った方が良い場合もあるけど、その分うまく休憩を入れることも大事だね。それから、難問を解く場合なんかは、集中しないで頭のどこかに引っ掛けておくような、ちょっとぼんやり考え続けている感じが有効なこともある。だから、最高の状態はそんなに続かないし、普段の勉強では無理に出す必要もないよ。

もう一つ、考える要素が少ない学習、読書や授業に集中する場合なんかはこうなる。

f:id:aswg-tutor:20190419235445j:plain

集中力:読書や授業などインプット優先の形

ピークはそんなに高くないし、緩やかに落ちていくけど、ある程度身につきやすい良い状態が持続しているね。こなせる量も多いし、しっかり集中して授業を聞いてられると効果が高くなるよ。授業を受けるだけじゃなくて、自分の知っていることを整理しながら教える側になっている時も、こういう集中の仕方をする。人と関わりながら集中するときはこの形、って覚えてね。それから、とても高いレベルに訓練された人だと、こんな形も可能になる。

f:id:aswg-tutor:20190419235624j:plain

集中力:高度に訓練されている場合

練習次第では高校生くらいになったら出来るようになるかも知れないけど、こんな形になるのはすごく特殊だから、あまり気にしなくて良いよ。最後は、集中が途切れるパターン。すぐ始めても、すぐに気が散るとこうなる。

f:id:aswg-tutor:20190419235736j:plain

集中力:気が散る環境の場合

机の上が散らかっていたり、周りの声に反応したり、スマホや関係ないものに気を向けて気が散ると集中はリセットされるから、また高めていく必要があるし、次はピークが低くなる。同じ時間座っているのに、こなせる量も少ないし、身につく部分がとても少ないのは最悪だね。この形になると、幾ら頑張っても忍耐力のトレーニングになるくらいで、ほとんど成績は上がらない。

だから、やる気はあってもなくても良い。行動することで脳がやる気を出すから、音読でも計算でも見直しでも、ルールとして決めて(=変更なしで)、最初の5分を始めてしまうことが大事。

ルール通りにやるのは、自分の気持ちを無視するってことじゃないよ。受験を頑張ろうとか、やるなら受かりたい、って気持ちはあるでしょう?だから、その気持ちを大事にして、その場その場の気分は相手にしないってこと。その場の気分なんて、お腹が空いても眠くてもトイレに行っても変わるよね。その気分と、自分のなりたい姿を天秤にかけるのはもったいない。

ルール通りに始めた後は、ピークに合わせてやることを3つ決めておく。20分で区切るのが短すぎて、調子のいい時にやめる感じがするなら、もしかすると他のタイプになっているかもしれないから、それに合わせた予定を入れてみると良い。

そして、机の上や周りを片付けたり、お母さんと一緒に始めたり、自習室を使ったり、自分が集中しやすい環境を整えること。しっかり環境を整えないと、同じ時間勉強しても、苦しい割に力が伸びないから、嫌になるよ。

 


 

概ねこんな感じです。このとにかく始めるという集中の仕組みと、自分の集中しやすい環境を作ることの大切さを、最初だけでなく繰り返し状況に応じて教えていきます。その子の成熟度によっては、最初から1時間のコマにせず、2〜30分のコマで区切るような話にすることもあります。

集中力が高いほど、苦痛は薄くて効果は高くなり、低いと苦痛が強く効果は薄いという性質があります。もちろん低めの時間帯でも作業は進み、記憶の反復などには活用できますが、学力の向上が実感しやすいのは高めの時間帯にやった内容です。

ですから、集中できない時間は無駄と割り切り、短いコマでも集中できる時間を積み重ねるように指導した方が伸びは早く、負担も少なくなります。学習に必要な力の中でも、集中力は後天的に伸ばしやすいものなので、上手に力を発揮できる環境を整えてあげましょう。環境を整えるのに有効な、認知特性の把握についても書く予定です。