今年も各塾の2024年中学入試合格者数を5つのグループに分け、それぞれの塾の合格数の比率をグラフ化しました。前年度からの増減比や、1日10校の合格数在籍比も出しています。
志望校を目指すには自塾でどのあたりを目標にするかのイメージや、他塾の模試受験を検討する際の参考などにどうぞ。
評価方法とグループごとの偏差値分布
各校の評価方法
今回の集計対象校は314、集計対象の塾は33、合格数合計は116,391で、取得日時によって最終の数値と異なることがあります。
集計対象校は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県+茨城県の一部で、関西や地方校の東京入試などは除外しているため、各塾の全合格者数とは異なります。
分布把握のためのグループ分けは、特にボーダー付近では塾によって偏差値の逆転も珍しくありません。評価ポイントは各入試回の偏差値を平均→各塾の数値を平均して算出しており、主に以下のような不正確な点があります。あくまで大まかな分布の目安としてご覧ください。
・ある塾の偏差値が不明の入試で、他塾の偏差値がわかるものは推定値を入力し、全ての塾で偏差値不明の入試回は除外しています。
・各入試回偏差値の単純平均のため、入学者数の少ない高偏差値入試回の影響が出やすく、評価ポイントが実際の入学者の中央値より高めになることがあります。
・男子偏差値と女子偏差値の調整もしていないため、女子校>共学校>男子校の順に上ぶれしやすくなっています。
・推薦、第一志望、帰国生、英語入試などは基本的に除外していますが、定員合算のものは含むこともあります。同様に合格数も、SS-1や受験ドクターなど帰国を分けて表示してあるものは除いていますが、全ての塾が同じようにしているとは限りません。
グループは各塾の公表合格者数合計を均等に近づくように5分割していますが、①が少なめです。
偏差値分布の画像は、左からSAPIX、四谷大塚、日能研、首都圏模試の偏差値を正規分布として、各グループの該当範囲を赤系で示したものです。
グループ①
評価64以上の32校(合格数16,448)
SAPIXの上3分の1、四谷日能研では上1割に入らないと厳しいグループ。1回入試校も多く、能力的にはっきり浮いている子や、賢い上に相当な努力を積めた子が届くところ。普通に賢いくらいの子が2年の通塾だけで合格することは難しいです。
グループ②
評価59以上の31校(合格数24,347)
SAPIXではボリュームゾーンの上寄り、四谷日能研では上3分の1くらい。クラスで指折りくらいの子が2〜3年の通塾と結構な家庭学習をこなして届くグループで、①に届くレベルにあった子の受け皿にもなっています。
グループ③
評価53以上の58校(合格数23,906)
SAPIXの真ん中〜下寄り、四谷日能研では真ん中より上あたりで、首都圏模試ではまだボリュームゾーンに届きません。クラスの上位2〜3割には入る子が数年の通塾と家庭学習でこのグループまで届けば大健闘です。
グループ④
評価45以上の60校(合格数24,949)
SAIPXでは下3分の1にかかり、四谷日能研ではボリュームゾーンからやや下方向、首都圏模試の上3分の1くらいのグループ。このあたりがクラス上半分から通塾して頑張れば届く可能性があるゾーンで、日大や東洋大まで上がれる学校や、マーチ以上の大学への推薦枠を多く持つ学校もあります。
浮きこぼれて苦労しているレベルでなければ、志望校は③④あたりから探しはじめ、中学受験の適性が高ければ段階的に上げていくのが良いやりかただと思います。
グループ⑤
評価44以下の133校(合格数20,655)
四谷日能研の下3分の1、首都圏模試では全体の3分の2ほどを占めます。平均的な学力の子が受験勉強に取り組んで狙えるのはこのグループですね。対象塾合格数の集計上ひとまとめにしていますが、学校数は対象校の4割強で、④と同等レベルから比較的入りやすいところまで入試難易度の差も大きいグループです。
模試の受験目安
ひとつの模試を継続的に受験し、補強ポイントや立ち位置を確認していくのが基本ですが、塾のカリキュラムや模試には得意な範囲があるので、主な分布から外れる場合には他の模試を受けることが有効な場合もあります。志望校が会場になる模試があれば、雰囲気を経験するために挑戦するのも良いでしょう。
分布が厚めな範囲は、SOでは①〜③、合不合と日能研は②〜④、首都圏模試は④⑤です。ですから、志望校が①の場合はSO、⑤なら首都圏模試の受験者層が近くて参考にしやすく、逆に首都圏模試では①②、SOでは④⑤での立ち位置はわかりにくいと言えます。
自塾の偏差値を基準に他塾模試を検討する場合は、サピ45未満なら合不合か日能研で35未満なら首都圏模試、日能研で65以上ならSO、45未満なら首都圏模試を考えてみるようなイメージですね。
各塾の合格者分布
今回の集計対象の全合格者分布は以下のようになっています。この形との差が大きいところが、その塾の特徴と言えます。
また、1人で複数合格することもあるため、在籍生の進学先比率や学力分布と同じではありません。こちらは私がサポートした受験生の合格校(薄色)と進学先(濃色)の分布です。進学先のひとつ下のグループなどで、複数の合格を獲得することが多いことがわかりますね。
なお、今回の集計対象のうち合格実績を一部のみ公開している塾(ena・臨海セミナー・あづま・スピカ・E-style・湘南ゼミナール・ステップ)は分布がわからないため、グラフ化していません。
SAPIX型
まずは①②の合格者率が高いSAPIX型の4塾。SAPIXとグノーブルはよく似た分布、希学園首都圏は①が最多の形で、いずれも全合格数の6割以上を占めています。エルカミノは①②の合計比率が最も高め。
早稲アカ型
続いて①②の合格者率が40%台の3塾。駿台・浜学園は①②で5割に迫り、①が最も高くなっています。
四谷大塚型
続いて、①が10%台で③④にボリュームがくる3塾。四谷大塚は②③④が20%台でほぼ同じ、啓進塾は③が突出していて、アントレは④が多めになっています。
日能研型
①が10%未満で④が最も多い日能研型は、それぞれ特徴が出ています。
啓明館は④が4割超で②が2番目に多く、②④で約3分の2を占めます。
おぎしんは③④で約7割を占め、⑤は少なめですね。
エデュコは②〜⑤が20%台で偏りが少ない形。
茗渓塾は③〜⑤で約9割です。
スタジオキャンパスは②③が約3分の1、④⑤で約6割という分布。
栄光ゼミ型
最後は⑤が最も多い栄光ゼミ型。栄光ゼミは⑤が4割超で特に多いですね。
市進は⑤>③>④の形になっています。
個別指導塾など
ここからは集団塾との併用が多い個別指導や算数塾などの分布です。集団塾との併用ではSAPIXやグノーブルを勧められるフォトンは、今年も①②で9割超と偏った形です。
受験ドクター、SS-1、TOMASは早稲アカ型に近い分布になっていて、上位校志向の子がもうひと押しするために併用する傾向が強そうな形です。
個別進学館は日能研型、ユリウスは栄光ゼミ型の分布ですね。
1日10校の合格率
こちらは、2月1日入試の10校の合格数が在籍数に占める割合を示したもので、対象は在籍数を公開している11塾、在籍数合計は15,680、合格数合計は2,342(約15%)です。
例えば開成合格者は、1月渋幕、2日聖光、3日筑駒などに複数合格するケースも珍しくないため、重複しない1日10校に絞ると難関合格率の目安になります。
SAPIXは20%で5人に1人。18%のグノーブル、20%超の希学園首都圏とエルカミノの4塾は全体平均を上回る「難関志向の強い塾」と言えますね。グノーブルは開成よりも駒東、麻布の合格数が多くなっています。
在籍数最多の早稲アカは約11%で9人に1人、駿台・浜学園もほぼ同じです。アントレは12%で、合格数の7割強は武蔵。世田谷区に多いジーニアスも武蔵比率が高く、神奈川の啓進塾は女子はフェリスのみ、男子も普通部が多く地域性が出ていますね。
各塾の前年度合格実績との比較
こちらでは今年度と昨年度の合格数を比較し、増減率を出しています。在籍数の増減や1人あたりの受験数・合格数の多寡の影響もあるので、目安としてご覧ください。並びは対象校の合計合格数が多い順、右上の日付は情報取得日です。
四谷大塚は全体的にやや増加傾向。日能研も全体で見ると増加していますが、①②は微減です。
SAPIXは全体で見ると微減で、特に⑤の合格数がかなり減少、④は増加しています。早稲アカは①〜④が全て1割台の増加ですね。
栄光ゼミは全帯で増加傾向。市進は②が減りましたが⑤は増え、全体的には増加です。
グノーブル、ジーニアスはいずれも増加傾向。ジーニアスは④が増えて⑤が減った形です。
啓進塾は全体にはやや増ですが①②が減り、スクールFCは①が少し増えて全体では微減。
希学園首都圏は全体に大きく増加しています。啓明館は①が大幅減、②③も減らして全体的に減少です。
エルカミノ、おぎしんはいずれも②以外が増え、全体的に増加しています。
アントレは⑤以外が増え、特に①③はかなりの増加。駿台・浜学園は③⑤が増えています。
エデュコは①は減ったものの②〜④がかなり増え、全体でも増加です。茗渓塾は①②を中心に全体に大きく減っていますね。なお、このくらいの規模になると数名分の合否でも割合に与える影響は大きくなってきます。
スタジオキャンパスは①⑤が大きく減って②③が増え、全体にはやや減。日本教育学院は①⑤が増加、他は減少で全体には減少となっています。
ここからは個別指導塾など。
ユリウス、TOMASともにやや減ですが、TOMASは①は増えています。
個別進学館は①④を中心に全体にやや増、受験ドクターは①増加で③〜⑤が減少して全体的には微減です。
SS-1は全体的に増加していて、特に③④はかなり増えています。フォトンは更に①②に寄った感じですね。
グループ別学校リスト
先述の通りいろいろとブレもあるグループ分けなので、◯◯より◯◯の方が〜といったこともあると思いますが、塾の方向性や指導経験が多いゾーンのイメージ用としてご覧ください。
グループ①
男子校12・女子校10・共学校10
グループ②
男子校11・女子校6・共学校14
グループ③
男子校7・女子校8・共学校43
グループ④
男子校5・女子校18・共学校37
グループ⑤
男子校7・女子校42・共学校84